機械学習が「タスク」を自動化、「仕事」は再設計される

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  • author Brian Merchant - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kaori Myatt
機械学習が「タスク」を自動化、「仕事」は再設計される

AIがどんどん進化しています。

米Gizmodoでは、『Introducing Automation』と題し、オートメーションが近未来に与える影響についての特集を組んでいます。この記事は、いろんな分野でAI化が進めば、今後さまざまな仕事のありかたや職種自体が変わる可能性もでてきているという主旨ですが、Brian Merchant記者が仕事をさらに細分化して「タスク」というセグメントに焦点をあてている点で貴重な分析記事だと言えます。

今わたしが身をおいている翻訳業界でも機械翻訳のトピックが真っ盛り。ディープラーニングを使ったニューラル機械翻訳が登場して品質が向上、機械翻訳は無視できないところまで来ています。

一番下にAI化できる可能性が高いタスクの一覧があります。さて、あなたの職種はAI化できる可能性があるでしょうか。


自動化や人口知能が仕事を奪う。

そんなトピックは今やそこらじゅうに蔓延していますよね。多くの場合これは機械学習のことを指すわけですが、最新の研究はどんどん加速しています。これからもたらされる莫大な収益や、商業への投資など、AIへと熱い視線が向けられるようになっています。それがどのように事務所や工場など実際の現場に影響を与えるのかを知っておくことは、非常に重要といえます。自動化によってどの仕事が消えるのか、そしてどの仕事が残るのか。結構な数の研究がAIが雇用に与えうる影響について語っていますが、特に機械学習について焦点をあてている研究はそれほど多くありません。

946の職業への機械学習の適用を細かく調査した希少な研究

トム・ミッチェル博士はそんな研究をしている先駆者のひとり。カーネギーメロン大学で機械学習の学部長を務め、自身もこの分野ではすぐれた研究者であるミッチェル博士は、機械学習がこれから雇用にどう影響を与えるのかということを評価するにふさわしい肩書きを持つ重要人物です。機械学習の学習書なども執筆しています。その題名もずばり『機械学習』。

2017年、同じくビジネスオートメーションの研究者であるエリック・ブリニョルフソン博士と共著で『Science』誌に研究論文を発表しました。この論文では、機械学習がさまざまな仕事に与える影響を細かに説明しています。この研究ではO*NETデータベース上における2069の作業活動、1万8156のタスク、946の職業に機械学習が適用される可能性について調べており、特に機械学習応用の可能性が非常に高くなっている21のタスクについて調べています。(O*NETとは世界の職業を網羅した仕事のオンラインカタログです)

「タスク」は自動化されるが、完全に自動化される「仕事」は少ない

機械学習は、今や疑いもなく「汎用テクノロジー」であるとし、この研究ではどの職業に影響がおよぶのか、特にどんな作業が機械学習に取って代わられるのか、すなわち機械学習や統計的機械学習を応用するのに最適な仕事について調べています。たとえば、テキストブック中にある画像にキャプションをつける仕事や、医療記録にラベルをつける仕事など、定義された入力事項と定義された出力事項のマッピングがうまくできるような仕事には、機械学習が向いているとしています。

「まずわかったことは、非常に多くの仕事が機械学習によって影響を受けるということです。次にわかったことは、完全に自動化できる仕事は実は少ないということ。ある仕事を遂行するために必要ないくつかのタスクは機械学習や半自動化、または自動化により置き換えることができるようになり、ほとんどの仕事は影響を受けるようになりますが 」 インタビューの中でミッチェル博士はこう語っています。

去年、ミッチェル、ブリニョルフソン、それからマサチューセッツ工科大学(MIT)デジタルエコノミー・イニシアチブの研究者であるダニエル・ロック博士の3人は別の論文も発表しています。この論文では、この分析をさらに掘り下げ、さらに2つの項目をルーブリック(学習到達度を評価する基準)に加えています。これは仕事を構成するタスクの分類を評価するもので、これから機械学習によって取って代わられようとするタスクの数を調べることにより、統計的機械学習の影響がおよぶと思われる職業を判断しています。それによれば、マッサージセラピストのような仕事がもっともSML指数が低く、コンシェルジュがもっとも高い指数を示しており、コンシェルジュの遂行するタスクのうちのほとんどは機械学習による自動化によって影響を受けるとされていました。

両研究ともに、ロボットが工場の組み立てラインで猛威をふるう産業オートメーションと異なり、機械学習は仕事の一部、またはその仕事に関連するタスクの一部だけを取り去るものにしかすぎないと結論づけています。

「仕事の再設計」が必要

ミッチェル博士は「ほとんどの仕事については、職業そのものが失われてしまうというわけではなく、タスクの組み合わせを再バンドル(構築)することによりタスクの配分が大きく変わり、それにより仕事に影響がおよんでくる」のだと言います。

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ミッチェル博士とブリニョルフソン博士の論文は「仕事の再設計が必要となる」ことを示すもので、仕事を構成するタスクの区分わけを見直し、構成しなおす必要があるとしています。

「仕事に関連づけられるタスクが変わることにより多くの職業は肩書きが変わってしまうことを余儀なくされるでしょう」

「近未来の医師たちは、診断を下すのにコンピュータを使用する割合がずっと多くなると言ってよいでしょう。事務員が行う事務仕事の一部は消えますが、人と接するという部分がこれからより一層重要になってくるのではないでしょうか」

人と人とのコミュニケーションといったものは、機械学習には不向きです」

とミッチェル博士。

仕事がなくならないと考えるのは楽観的すぎでは?

総合すると、仕事にまつわるタスクというレベルにおいての影響の広さを調べるという意味では、これは大変面白い研究です。ですがミッチェル博士の結論のとおり、私たちは楽観視していてよいのでしょうか。ミッチェル博士と共著者はタスクの「再バンドル化」という点に着目しました。ですが、これにより職業の地位の没落や、賃金の低下も予想されるのではないでしょうか。

たとえば医師。医師の報酬は高く、専門性の高い職業です。これから外科医ロボが進化してすべての手術はロボットが行うようになるような世界が到来するまでは、機械学習の影響は受けないでしょう。まあ、そんな世界はこないと言ってもよいかと思いますが、ミッチェル博士の話のように、事務員やアシスタントが機械学習の応用によるオートメーションによってミーティングのスケジュール管理や会計管理、経費レポートのファイリングをする必要がなくなったとしても、会社は果たして人間対人間のコミュニケーションを根拠に事務員を雇用しておくでしょうか。

雇用するところもあればしないところもあるでしょう。わたしは事務員を雇うべきと主張したいのではなく、作業員は多いほうがいいと言っているわけでもありません。機械学習によるオートメーションの結果により、これらの仕事は侵食されていき、賃金の安いパートタイムに置き換えられてしまうか、まったくポジションがなくなってしまうかのいずれかになったとしてもおかしくないと言っているのです。これにより、現在の雇用のランドスケープがまったく今と形を変えてしまうことになるのではないでしょうか。

トラックドライバーがそのよい例です。ミッチェル博士は「トラック輸送においては、トラックが道路を走るというタスクもあれば、道をそれて停車し荷下ろししたり荷積みしたりするというタスクもあるわけです。長距離トラックの運転という仕事ひとつをとってみても、自動化できるさまざまなタスクがここに含まれています。荷積みというタスクは自動化するのが難しいタスクです」

でも、雇用主はトラックの荷下ろしという作業を倉庫の作業員の仕事に組み入れることもできるわけです。これで長距離ドライバーの仕事がなくなる可能性があります。高い能力が要求されないような仕事の多くは、不定期雇用者に分散させることもできるわけです。その結果、仕事の「人間的側面」は機械には置き換えられないという考え方は、ちょっと誇張されすぎているんじゃないかなと思うわけなんです。Amazonは、レジ担当者は「金銭受け渡し係」ではなくこれから「挨拶係」へとシフトすると言いましたが、これにより、やはり時間削減や収益の確保のために仕事が失われたり、正社員からパートへと地位が下がったりするわけです。自動化が進むサービス業の分野では、すでにこれは始まっているわけで、作業員たちはそれに抵抗を試みてもいます。

研究者は「政府がインセンティブを投入する」と楽観的

ミッチェル博士にこれからどうなるのか聞いてみたところ、この問題は非常に興味深く、政府がタスクの再構築にインセンティブを投入するのではないかと楽観視していたとのこと。

「タスクの構成を再構築することにより最適化がえられ自動化が進む可能性がある仕事は、別のタスクのトレーニングを進めていったり、現在の仕事を向上させるインセンティブを用意することを考えた方がよいでしょう。仕事の内容を再構築することにより、新たな魅力が生まれる可能性だってありますから」 とミッチェル博士。

それでは、自分のやっている仕事のタスクが再構築され、タスクの大部分が機械学習に奪われてしまうかもしれないことは不安材料ではないのでしょうか。

機械学習で解決するのに向いたタスク8項目

ミッチェル博士とブリニョルフソン博士の論文には、機械学習に向いている(=機械学習に奪われるかもしれない)タスク8項目が示されています。(全21項目のうちScience誌に詳細が掲載されているもの)ここにあなたの仕事が含まれているなら、アルゴリズムがあなたの仕事をこれからやってくれるようになるかもしれませんよ。

1. 定義可能な入力と同じく定義可能な出力のマッピングが可能なタスク

分類(犬の画像を種類別に分類する、医療記録をがんの可能性が高い順にラベルづけするなど)や予測などがこれにあたります(将来的に支払い不可能になる可能性を予測しながらローンの申し込みを分析するなど)。

2. 大きなデータセットが存在するか、入力・出力のペアを含むデータセットを作成できるタスク

機械が学習するトレーニングのサンプルが多ければ多いほど正確に学習ができます。

3. 明確に定義可能な目標と数値が存在し、わかりやすいフィードバックがあるタスク

目標を明確に説明できさえすれば、その目標達成のプロセスを最善に定義できなくても機械学習はうまく機能します。

4. 多様な背景知識または常識に依存する論理または脈絡の連鎖が長くないタスク

機械学習のシステムは、データにおける経験的な関連性を学習するのが得意ですが、常識や、コンピュータが知らない背景知識に依存する根拠の長い連鎖や複雑な計画がタスクに必要な場合には効果が高くありません。 Ngの「1秒ルール」(訳注 : Andrew Ng (2016) による、人間が1秒以下で判断できることはコンピュータによって今すぐ処理が可能か近い将来処理が可能になるという理論)によれば、機械学習は素早いリアクションが必要とされるビデオゲームや瞬発的なフィードバックが必要とされるゲームではうまく機能しますが、判断に時間の経過が必要なものや、未知の背景知識に基づき、発生するイベントの記憶に依存しながら最適な行動を選択するようなゲームではうまく機能しません。

5. どのように意思決定するかを詳細に説明しなくてもよいタスク

大きなニューラルネットワークは、人工神経に相互接続された膨大な数値ウェイト(重み)を微妙に調整しながら意思決定を学習します。機械学習によく使用される深層ニューラルネットワークは、多くの場合人間と同じ中間抽象化を使用しないため意思決定の理由づけを説明するのは難しい場合があるのです。現在、「説明可能なAI」システムについて研究されていますが、現在のシステムにおいてはこの部分が比較的脆弱となっています。たとえば、コンピュータは特定の種類のがんや肺炎などについて人間の医師よりもうまく診断できるのに対し、どうしてそのような診断をしたかという理由づけをする能力は人間に比べて低くなっています。聞き取った音声から言葉をどのように認識するのかなど、多くの知覚的タスクについては、人間ですら説明できませんよね。

6. エラーに許容度があり解を修正したり最適性を修正する必要がないタスク

ほとんどの機械学習アルゴリズムは統計や蓋然性に依存しています。そのため100%正確に機械に学習させることはできません。最高の音声認識や物体認識、臨床診断コンピュータシステムでも間違いを犯します(人間だって同じです) 。そのため、エラーの許容度は重要な指標となるのです。

7. 学習させる現象や機能が時間の経過とともに大きく変化しないタスク

一般的に機械学習のアルゴリズムは将来的にテストするサンプルがトレーニングしたときのサンプルと類似しているときのみ機能するものです。(たとえぱ、迷惑メールのフィルタリング機能では、広告メールの仕分けが得意ですが、それは新規メール取得率のほうが迷惑メールの変化率よりも高いからです)。

8. 特殊な器用さ、肉体的スキルや移動性が必要とされないタスク

現時点では、構造的ではない環境やタスクにおいて肉体的な操作が必要なタスクについては、ロボットは人間よりも不器用となっています。これが必ずしも機械学習の欠点とはいえませんが、これがロボットの一般的な物理的機械的操作の最高水準なのです。

どうですか。これらを参考に自分の仕事が機械学習に置き換えられる可能性を考えてみてください。自動化政策は単純なものでなく、職業によって大きく異なります。ですが、ミッチェル博士たちの言うように、少なくとも事務仕事については、さらにこれから自動化がタスクごとに進んでいくと思われます。

果たしてあなたの仕事は進化していくでしょうか、それとも退化するでしょうか。

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