Googleの新ゲームサービス「Stadia」まとめ:これは歴史に残るぞ

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  • author 西谷茂リチャード
Googleの新ゲームサービス「Stadia」まとめ:これは歴史に残るぞ
Video: Stadia/YouTube

新時代の幕開けとともに、新世界が広がり始めた。

Googleがやっちまいました。ゲーム業界の革命です。GDC(ゲーム開発者カンファレンス)で発表した新ゲーム・ストリーミング・サービス「Stadia」は、すべてを塗り替えるポテンシャルを秘めています。それもそのはず。Googleは持てるパワーとテクノロジーのすべてを投入してきたのだから、なにかが変わるのは絶対。いや、すべてが変わるやも知れません。

消費者向けの情報はこちらの記事にスッキリまとめています。一方この記事では、そのディテールスゴさ、そしてGoogleの見据えているであろう未来を探ります。

大きな船。果たしてどれほどのゲームデベロッパー達が乗船するのでしょうか。というか、どこが乗り遅れる?

ゲーム・ストリーミングのおさらい

あるゲームをプレイしたいとき、ハードウェアが大きな枷となる場合があります。対応している端末をもっているかどうか、または持っている端末のスペックは十分に高いか、などですね。これを一挙に解決するのが、ゲーム・ストリーミングというサービス。

ゲームにありがちな負荷の高い処理を大きなサーバー群に任せて、そのプレイ画面だけを動画のように自分の端末にストリームしながらゲームをプレイすることで、ハードウェア面での問題の多くをサーバー側が解決できるという寸法です。これは別段新しいものではなく、海外ではすでにShadowやVortexといったサービスが運用されていました。

でもGoogleの強みは、なんといってもそのスケール! 200カ国以上に7500以上のクラウドの端っこ(エッジ)を走らせているので、やろうと思えば世界中の多くの人々に低遅延で高クオリティーのゲーミング体験を提供できちゃうんです。これはゲーム開発者にとって、それだけ市場が大きい=魅力があるということ。乗船者が増えそうな予感がしますよね。ちなみにローンチ当初は4K HDR 60fpsでプレイできるそう。

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Image: Google Developers/YouTube
左から右:Pixelbook、テレビ、Pixel 3、Pixel Slate、低スペックPCです。

そして、ゲームプレイまでのお手軽さがエグい。まず対応ハードウェアがとても多く……Windows、macOS、Linux、Chrome OSなどのパソコンOSではGoogle Chromeブラウザーを通じて遊べて、Chromecast Ultraを挿せばテレビでもプレイできます。もちろんPixel Slateなどのタブレットや、Pixel 3といったスマホもOK。端末のスペックは気にせずよし。

リンクを踏めば最速5秒でゲームが起動して、ゲーム自体のダウンロードもアップデートも一切なし。しかもどんなゲーム画面であろうと、こっちの端末からあっちの端末に一瞬でプレイを移行できちゃうという利便性。ここまできたクロス端末プレイを目の当たりにすると、手持ちモードと据え置きモードの2択しかないSwitchが懐かしく感じてしまいますね。

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Image: Google Developers/YouTube
既存のコントローラーには見られないボタンが2つあります。YouTubeシェアボタンと、Googleアシスタントボタン。後ほど。

一応Googleから専用コントローラー「Stadia Controller」も発表されていて、特徴としてはWi-Fi接続だというところ。そのままGoogleのサーバーに繋がることで、クライアント端末を経由すると発生するラグを削れるみたい。もちろん、すでに持っているコントローラーや、キーボード・マウスも使えます。

要するに、Googleは「うちのクラウドでゲーム処理をやるから、みんなお手軽にプレイしなよ」と言いたいんです。

Stadiaの様々なウマミ

最近売れるゲームは、SNSや動画配信サイトで流行ることが一番の条件となっています。ナンバーワン配信者Ninjaと著名ラッパーのDrakeがコラボして話題になった『Fortnite』然り、100万ドル(約1.1億円)払ってNinjaに24時間プレイ配信してもらってヒットした『Apex Legends』然りです(League of Legendsも面白いよ)。SNS映えの点においても、Googleは様々なウマミを提供すると発表しました。

まず、YouTubeとの連携です。Stadia ControllerにあるYouTubeシェアボタンを押すと、4K HDR 60FPSで配信できちゃいます。それも、ゲームプレイのパフォーマンスを低下させることなく。従来だと自分の端末がゲーム処理と映像配信の処理をしなければならず、高スペックの端末だったり2台目の端末を用意する配信者もいました。ところがStadiaならサーバーのリソースが自在に割り当てられるので、配信用のリソースが瞬時に処理を開始してくれるわけで、世界中のプレイヤーがお手軽に配信し始めて流行る可能性がグッと高まります(増えるぶん内容のクオリティーには差が開きそうですが)。しかも配信中のゲームに視聴者が飛び入り参加できるという「Crowd Play」機能もあるので、マジでワイワイしかありません。

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Image: Google Developers/YouTube
Androidで培った「Instant Apps」技術を活用していそうな感じ

続いて「State Share」。これがかなりユニークな機能で、ゲームとある瞬間を、ゲーム世界の状態・プレイヤー位置・所持アイテムなども含めて、そのままプレイできる形でシェアできちゃうんです。それも、リンクを貼るだけで。だからたとえばホラーゲームをプレイしていて、すごいピンチを切り抜けたぜ!って自慢したかったら、そのピンチ状態ごとシェアすればOK。ツイッターでもどこでもいいのでリンクを貼れば、それをクリックした誰もがその状況を楽しめるわけです。まるで記憶ごとシェアするような感じ。タイムアタック競争でも使えそうですよね。シェア欲をここまで刺激する機能は、なかなか無いぞ!

Stadiaが提供する最先端のゲーム体験と開発

上記の「最先端っぷり」じゃ足りないぜと言うが如く、Googleは持てるすべてをぶつけてきています。なんと、「無限の処理能力」があるというのです。ちょっと言いすぎ? でも、実質そうなのかなぁという気もしなくなくて。

従来のゲームは、ゲーム機やPC一台分のスペック(主にGPUがボトルネック)でプレイでできるように設計されてきました。それがたとえばPS4 Proだったら4.2teraflopsで、Xbox One Xだったら6.0teraflopsですね。でもStadiaなら、「ひとつの処理インスタンス」が2機の合算値を超える10.7teraflopsを提供できるといいます。これを実現したのは、AMDと共同開発したカスタムGPUと、IntelのカスタムCPU(明言されていませんがHyperthreadとあるので)。でも、それだけじゃ「無限」とは程遠い。

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Image: Google Developers/YouTube
詳しいスペック。ちなみに10.7teraflopsはNVIDAのRTX 2080(10.1teraflops)を超えます。ゴイスーです

Stadiaは、すでに高性能なひとつずつの処理インスタンスを、何個も何個も組み合わせられるのだそうです(クラウドサービスではよくある技術)。これにより、たとえばこれまで「作れるけどプレイできなかった」超美麗グラフィックだったり(え、Crysis?)、将来的には8K 120+fpsゲーミング、または数千人単位が同時に遊べるできるマルチプレイゲームなどが実現可能になります。しかも、そのオープンマップ上にあるすべての物が厳密な物理法則に従っていて、全部壊せるぜ、みたいな夢のステージも可能。高精度なレイトレーシングを採用したゲームとかもやってほしいですね。これでMOD積みまくりマイクラをみんなでやりたい。グッバイリアル。

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Image: Google Developers/YouTube
左がGPUひとつの場合。右が複数GPUを組み合わせた場合。とくに水の描写が段違いです。

でもね。「こんなゲームが作れまっせ」といっても、これだけじゃすでにパツパツのゲーム開発者達に崇高な夢を見せているだけ。そこはGoogle。GDC(ゲーム開発者カンファレンス)にふさわしい飛び道具をいくつか用意していました。

ゲーム開発が大変なのは誰もが聞き及ぶところだと思いますが、たとえばグラフィック・スタイルも、凝れば凝るほど全体の開発の難易度は上がっていく仕様です。そこで、「はい、Style Transfer ML」。機械学習によって、ひとつグラフィック・スタイルをゲーム全体にリアルタイムで適用できちゃいます。ご覧の通り:

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Image: Google Developers/YouTube
グラフィックスタイルを一枚の画にすれば、あとはAIがすべてに適用してくれる。

Google I/O 2018からもわかっていましたが、相変わらずGoogleのAIパワーは健在すぎですね。そしてStyle Transfer MLとゲームステージを自動生成できるAI技術を組み合わせたら、とんでもなく無限の世界が広がるのは明確。やってもやっても次から次へとゲームが展開しちゃうんですよ。われわれはとんでもないものを望んでしまったのかも知れません。

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Image: Google Developers/YouTube
左から:Googleサーバー、ローカル用のサーバー、デスクトップ型の開発機器。

あと、ゲーム開発者には朗報な2大ゲームエンジンUnreal EngineのフルサポートとUnityのサポート、その他もろもろ(Vulkanとかhavokとか)のサポートが発表されました。開発者用のハードウェアもすでに開発済みで、もう1000以上の開発者に届いているそうです。万全すぎる体制。こういうところに安心感を見出す開発者もいるのでしょうか。やっぱり、Googleはプラットフォーマーの鏡ですね。開発者が集まったら、僕らプレイヤーもそこに行くしかないですし。ほんと、逃れられないよ。GAFAMめ。ありがとうございます。

Googleが見据えるデジタル世界への大きな布石

Stadiaの発表とともにGoogleは、自社ゲームスタジオ「Stadia Games and Entertainment」の発足も発表しました。そしてそのリーダーに任命されたJade Raymondがこう言ったんです:

It was obvious to me, that one day, games would take place in fully immersive worlds

私にはハッキリわかったのです。ゲームはいずれ、完全に没入できる世界で遊ばれるのだと

明らかにVRのことですね。でもこれでようやく、Googleの真意が見えてきた気がします。シンプルにゲームプラットフォームになれたら儲かりそう、というのもあるにはあると思いますが、そのさらに先もGoogleは見据えて全力投球しているはず。なにが言いたかっていうと、これからは空間コンピューティングの時代(AR=拡張現実とか)であり、Stadiaのシステムはかなり汎用性が高いということ。

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Image: Google Developers/YouTube
Googleの総力戦であることがわかりますよね

Stadiaをシンプルに説明するとすれば、映像リモート処理の技術とインフラです。ユーザーからのインプット(操作)があり、それに応じて画像(フレーム)が生成され、高解像度のまま低ラグで届く。これを1秒に60回以上繰り返すための技術とインフラ。だから2D画面のゲームで使えるのはもちろん、2D画面ふたつ分の映像であるVRでも使えます。

それどころか、ARメガネを表示デバイス、ユーザー環境のセンサーデータをインプットとすれば、超高度なVRレベルのARが実現します。しかもそのAR環境には数千人単位で接続できるので、Googleは現実世界の上にもうひとつ別のAR世界を上乗せできるようになります。イメージとしては、『HYPER-REALITY』の世界観。この「デジタル視界のサブスク」を提供するのがGoogleになる感じ。いずれはGoogleマップも絡んでくることでしょうね。ARナビゲーションのベータテストも始まっていますし…。プラットフォームに乗せられるアプリがゲームだけじゃないのは確かです(たぶんなんでもできる)。

AR不動産会社、Google。これこそが、今回の発表で確定したかもしれない未来です。

人間とAIが触れ合うフィールド(3/20 13:00追記)

でも、Googleが近々に期待しているのはARではなく、AI(人工知能)の成長であることは明確です。Google傘下のAI研究者集団Deepmindはこれまでの研究の多くでゲームを使ってきましたし(『スペースインベーダー』・囲碁・『Starcraft』とか)、様々なAI技術を無料のwebゲーム線画画像ポーズの認識ゲームなど)を通じて磨いてきました。自動運転のWaymoもゲーム環境でAIを調教しています。Stadiaも、例外ではないと思います。

Googleにとってなにが最高って、世界中の人間(プレイヤー)のデータがリアルタイムで集まってくるので、まず「」があります。AIの調教ではデータ量がかなり大事で、データのエキスパートであるGoogleがこれまで無双できた理由はこれゆえ。そのリードがさらに広がります

次に、ゲームのルール内で人間がどう行動するか、場面ごとで切り分けてデータが集められるのでデータの「」が高いです。現実世界の人間を頑張って観測してデータ化するより、ひとりひとりに自身の意思をデジタル化(ゲームを操作)させたほうが不確定要素が少なく、観測者の偏見が排除できますからね。プレイヤーたちに手作りの「AI餌」を作ってもらう感じ。それもゲームの設計次第で意のままに欲しい種類データが手に入るという、オーダーメイドの高級品です。

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Image: Google AI

さらにさらに、シングルプレイのゲームにはAIキャラがつきものなので、Stadiaは人間とAIが直接触れ合うフィールドにもなるんです。これは、ずっとチューリングテストしているようなもので(人間のフリをしたAIがバレずにいられるかのテスト)、想像でしかありませんが、AI研究者なら垂涎モノだと思います。人でいえば、世界中から最高の師匠が24時間体制でつきっきりで付いてくれる感じ。マンツーマンどころか万ツー万(万単位のプレイヤーと、万単位の並列化されたAI)。

その結果どうなるかというと、Googleは「人間らしさのモデル化」に一歩先んじることになります。そのモデルで人間らしいAIを作るのもいいですし、万人受けする最強の八方美人AIも作れるはず。人騙すAIだって、人を救うAIだって、逆に人の真逆のAIも作れるかも知れません。自由自在です。とはいえ、Googleは人に害をなすAIをつくらないポリシーなので、そこは一安心して良さそう。

あとStadia ControllerにあるGoogleアシスタントボタンを押すと、ゲームに音声コマンドを送ったり、ゲームの攻略法が聞けるのだそうです。「ねぇGoogle、このパズルはどうやって解けばいいの?」なんていうふうに、たとえマルチプレイに対応していないゲームでも、Googleアシスタントと一緒にプレイしている感覚になれるのかも。プレイヤーはGoogleアシスタント世界を冒険できてハッピー、Googleも音声とやりとりのデータが出に入ってハッピー、開発者も表現の幅が広がってハッピー。ほんと、Win-Win-Win…な状況を作るのが上手すぎますよね。

このようにして、GoogleはStadiaを通じて人間性の攻略に近づくのかも、ということです。

ライバルはいるの?

ここで気になるのが、Googleに睨みを利かせるライバルはいるのかというところ。まぁ……いるっちゃいるんですけど、もちろんその他GAFAMのメンバーです。

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Image: Gizmodo US

なかでもMicrosoftは最近、Xbox Liveのクロスプラットフォーム化に力を入れていますし、AI処理ありのクラウドプラットフォーム「Azure」を運用しているほか、MRヘッドセットHoloLens 2を発表していたりと狙い所が丸被り。「ゲーム界のNetflix」を作ると意気込んでいますし、Googleと切磋琢磨してほしいところ。

あとAmazonもAI処理ありのクラウドプラットフォーム「AWS」を運営しているほか、買収したゲーム実況配信サービス大手のTwitchでゲームストアを解説していたりと、その雰囲気を匂わせています。こちらはむしろネット通販の面でライバルが現れてほしいですね。

Appleは今週末に動画とニュースサービスを発表するので、まずはそちら、といった印象ですが、余力が出てきたら各社のスマートテレビに搭載したApple TV機能やiOS端末を通じて参戦してくるかも知れません。ただ、自動運転のProject Titanが縮小されたりと最近いろいろあったので、手を出すかは微妙そうです。いまはiPad miniなどに感謝しましょう。でも初代Apple Pencilのみ対応とはどういうこと?

Facebookは頑張れ。

僕個人としてはWeb 3.0の分散型ゲームストリーミング・プラットフォームが生まれることに期待しています。プレイヤーたちはそれぞれ仮想通貨を支払うことでゲーム・ストリーミングできて、その処理能力を提供しているひとたちは逆に仮想通貨が手に入るという循環でしょうか。ベルリンに期待

ちなみにソニーもゲーム・ストリーミングやってるけど…受信先がPS4かPCのみ。足りないよ! あとPS5は大丈夫?

ニンテンドーも『アサクリ』などのゲームでSwitchへのストリーミングやってるけど、その次はどう動く?

ローンチ年と、まだ不明なところ

2019年にローンチされる予定です。でもまずはアメリカ、カナダ、イギリス、ヨーロッパの大部分からで、日本は未定プライスも不明で、サブスクなのか買い切りなのか、全体的にどういった種類ゲームがあるのかもわからず。どの程度のインターネット接続が必要かも未発表です。いちおうISP(インターネットサービスプロバイダー)とGoogleサーバーとの間ではダイレクトに接続されるそうですが、ユーザーとISPの間にもいろいろありますからねぇ。とはいえ、それも5Gが普及するまでの問題。

5月7日のGoogleI/O 2019と6月12日のE3でさらなる詳細が発表されるかも? 待ちきれません。

Source: Google Developers/YouTube

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