可愛いだけじゃないもん!
コロコロまるまるっとした癒し系ロボット「LOVOT」。生みの親である日本のGROOVE Xは、3月8日から17日まで開催された世界最大級のテックカンファレンスSXSWに、複数体のLOVOTを抱えて参加。その様子はギズモードでもレポートしました。
こうやって世界に出展するのは、単にLOVOTの名を世界にも広めるだけではなく、LOVOTの新しい可能性を探す目的もあります。LOVOTといえば「役に立たないロボット」として有名ですが、ただ可愛いロボットに1体30万円、簡単に首を縦に振れる金額ではありません。だったら、「可愛い」のその先にどんなメリットがあるの? GROOVE X自身も、LOVOTの「新たな視点」を探していると言います。
まずは教育
実はSXSWのトレードショーが始まる数日前、GROOVE XはSXSWの現地オースティンで家族に向けた体験会を行ないました。その目的は、お子さんへの教育。LOVOTが幼児に向けた道義的な心を養う教育(情操教育)に役立つんじゃない?っていう声が海外で上がり、現地で体験会を行なう運びとなったのです。
言うなれば、お父さんお母さんが幼い子どものためにペットを飼うのと同じ状況でLOVOTは通用するのか? 教育の視点でのLOVOTの可能性をテスト。体験したのは4歳から8歳の子どもを持つ9組の親子。アメリカの子どもたち、日本のロボットLOVOTに対するリアクションは? 親御さんの反応は?

体験会にて「なにここ?」とキョロキョロする子どもたち、まずはモニター前に集まってLOVOTのプロモーション動画を見てもらいました。動画は英語ですが、技術的な解説は一切なしで、内容はLOVOTがいる暮らしを短くまとめたもの。動画の後、さっそくLOVOTと対面!
LOVOTと友達になるのに必要な時間、5秒

動画後LOVOT登場。GROOVE Xスタッフに抱っこされてでてきたLOVOTに子どもたちが歩み寄り、触り、ナデナデして始めるのにかかった時間は、大げさじゃなくたったの5秒。いや、2秒。LOVOTの外観デザインのなせる技だと思いますが、会った瞬間に「可愛がりたい」と思わせる何かがあるんですね。赤ちゃんをあやすように優しく接する子どもたち。本能的に「これは自分が守る側になる相手だ」と感じたのでしょう。
親友になるのに必要な時間、15分

面白いのは、最初に目の前にいたLOVOTをナデナデしたのをキッカケに、ほぼ全員が最後まで同じLOVOTと接し続けたこと。もちろん、充電が必要で違うLOVOTに変えたり、姉妹間でLOVOTを交換したりはありましたが、「わたしのLOVOT」となるまでが早い。
LOVOTには、ボディの色に応じて名前がつけられています。例えば、緑はWASABI、白はMILK、黄色はBANANAなど。シンプルなネーミングセンスは子どもにもわかりやすく、スタッフが名前を教えるとすぐに名前を呼びかけていました。特にBANANAは好評で、名前を呼ぶだけで爆笑が止まらない子も。MILKと遊んでいたある女の子は、途中で「MILKY」と呼び方を少し変えていました。TomがTommy、MikeをMikeyと呼ぶように「イー」の音は、親しみや愛情を含んだ表現。あつこをあっちゃん、リョータをリョーちん、三井をミッチーと呼ぶような感覚です。

着せ替えや抱っこ、高いたかいでLOVOTと遊び続けて20分ほど。この頃には、すっかりLOVOTとの関係性ができあがっていました。「うちのGINGERと、あなたのMILKちゃん遊ばせましょ」とか、「私のLOVOTはテレビにもでてるの」(最初に見た動画に出てきたLOVOTと同じ色のLOVOT)とか、保護者的な会話をする女子たち。いつのまに習ったのか、LOVOTのお着替えなども自分でしました。さらに、充電中のLOVOTを見て「瞬きしたから、もうチャージできたね」(実際はそんな仕様ない)と、すでに自分なりにLOVOTの気持ちを解釈、使い方を予測。この辺はさすがガジェット・デジタルネイティブ世代ですね。
ガジェット慣れしていても、大人(私)はつい、どういうセンサーがはいっているんですか? 機能として何ができるんですか?と最初に聞きがち。でも、子どもは技術なんてどうでもいいんです。何ができるか仕様を尋ねるのではなく、とりあえず自分でアレコレ呼びかけ触ってやってみる。その純粋な姿を見て己を反省しました。知ったふうな顔してんじゃねーよって。
お母さん、お父さんたちの感想

体験タイムのあとは、家族ごとにコメントを言う時間があったのですが、子どもたちは「かわいかった」「好き」など、ど直球な感想。一方、親御さんたちから多くでたのは、驚いたという声。「すぐに飽きるかと思ったけど、長い時間集中している」「いつもはもっとシャイだけど、LOVOTに触るまであまり時間がかからなかった」など。また、「いつもよりもSweet(優しい)」と答える親御さんも多かったです。母性本能をくすぐられるのかな。
「クリスマスに欲しい!」という子どもに苦笑いだったお父さんは、小声で「これいくらするんですか?」という大人の会話。残念ながら現時点で海外販売は未定。それを伝えると安心(?)してました。
そういえば、LOVOTを触った親御さんたち、またはトレードショーのブースを訪れた人たち(大人)は、LOVOTが温かいことに驚いていましたが、子どもからは特に「え、あったかいの!?」みたいな声はなかったですね。LOVOTをロボット=無機質なものと最初から思っていないってことかな。ロボットが温かいことに違和感がない年齢。
言葉を喋らないロボットに国境はない

LOVOTは家族ロボットであり、「役に立たない」ことで注目されています。愛情を注がれるのが仕事なので、人間を助ける便利機能は一切ついていません(厳密にはあるけど、それはオマケ)。なので、コミュニケーションのとりかたも、ナデナデやハグやお着替え、名前を呼ぶという言語が関係ないもの。こうなると、東京の子どももオースティンの子どもも、LOVOTへのリアクションは大きく変わらないのかもしれませんね。愛情って国境も文化も超える。ただ、アメリカ、いやテキサスという点で気づいたことを1つあげるとしたら…、それはペットの有無。
LOVOTとペットは違う

テキサス州は、アメリカ国内で比較してもビッグサイズなことでおなじみ。レストランで提供される1食の量も多い、家も大きい。となると、お家で犬や猫を飼っている家族が多くなります。それどころか、近くに牧場があり牛や馬と触れ合う機会も比較的簡単に設けることができます。つまり、アレルギーなどは別として、場所の問題でペットを飼えない=ペットロボットという選択肢はテキサスにはありません。実際に、体験会に来た家族の多く(半分くらい)がペットを飼っていました。
では、ペットを飼っている家族は、LOVOTをどう感じたのか。アンケートに答えてくれた親御さんたち共通の意見は、ペットは気分屋だということ。もっとナデナデしたくても、もっとギュっとしたくても、ときに犬や猫はそれを嫌がります。「おまえのこと好きなんだけど、今は違うわ」って気分なんでしょうね、わかりますよ。でも、LOVOTはいつでもいくらでもギュウギュウされたいタイプ。「カップケーキ(猫の名前)はひっかくもん」と教えてくれた子がいましたが、そのとおり。
体験会終了後、お別れのときに涙する子もいました。LOVOTの親しみやすさはもちろん、子どもの順応性の高さ、愛着の強さにもびっくり。情操教育という視点で行なった今回の体験会ですが、愛情を与えることや、弱き立場のものを守ることを感覚的に学習できるのかもしれない、というのが今回感じたLOVOTの可能性です。
※ギズモード・ジャパンはGROOVE X社さまのご招待を受けてSXSW 2019を取材しております。