人工流れ星を降らせる株式会社ALEに潜入! エモい秘密を探ってみた

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  • author 岡本玄介
人工流れ星を降らせる株式会社ALEに潜入! エモい秘密を探ってみた
VIdeo: ALE_Astro Live Experiences/Vimeo

社長の夢が、宇宙規模で叶うまでもうすぐ!

去る1月18日、JAXAの「革新的衛星技術実証1号機/イプシロンロケット4号機」に相乗りして、地球の周回軌道に乗ることができた人工流れ星衛星「ALE-1」

「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」というミッションを掲げた民間宇宙企業「株式会社ALEが、任意の時間と場所に人工流星群を降らせることを目的に作ったほぼ純国産の人工衛星です。なんと一部のパーツは日本の職人さんにしか作れなかったのだそう。

Video: ALE_Astro Live Experiences/Vimeo

そして今回、その衛星を作っている株式会社ALE,へとお邪魔させて頂き、どうして人工的に流れ星を流そうと思ったのか? JAXAのロケットに載せて宇宙へ飛ばした人工衛星には、どんな技術が投入され、夜空でどのようにして流星群となるのか? などなど、今まで誰もやったことがない試み=壮大な夢を、現実のものとした人々の宇宙愛と熱意を感じ取って来ました。

人工流れ星を降らせたいエモなきっかけ

普通の人なら、何かの折にキラっと流れ星が見えたことはあるかもしれません。でもだからといってそれを自ら作ろうだなんて思いませんよね? ちょっと本気を出しても、自宅に家庭用プラネタリウムを導入し、オプションの流れ星機能でほうき星を見る程度じゃないでしょうか?

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Image: @ALE_StarAle/Twitter
「ALE-1」衛星を搭載したイプシロンロケット4号機の打ち上げ1日前の岡島CEO

しかしこれを実現させようとしているのが、東京大学理学部天文学科にて、博士号を取得したCEOの岡島礼奈さん。彼女は2001年に獅子座流星群を見に出かけたときに、キラッ……キラッ……と短い流れ星が断続的にしか見られず、これだったら自分で人工的にシャワーの如く降り注ぐ流星群を作りたいと考えたのだそうです。そして2011年からこの事業がスタートし、始めは流れ星となる粒=「流星源」の研究開発から始めたのでした。

確かに、実際、ナントカ座流星群を見にわざわざ外やベランダに出ても首が疲れるだけで、10分やそこら踏ん張って見れるのは……運が良くて1つか2つの短い流れ星、ってところが相場です。それも風情がありますが、本物よりも明るくて長い流星群が、期待した場所で時間どおりに見られるというのは超画期的ですよね。

しかもそれだけでなく、流星が空に残す軌跡が高高度の大気の研究に役立つのだそうです。たとえば、流れ星を降らせるたびに天気予報の精度が改善するかも?みたいなイメージ。宇宙エンターテインメントを通じて、サイエンスを社会に繋げるって、こういうことなんですね。その勢いで宇宙をさらに活用していけば、いずれ一般人も参加し始めて、宇宙で新たな文化が育まれ始めるのでしょう。楽しみすぎます!

「SHOOTING STAR challenge」でお披露目!

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Image: 株式会社ALE

この「人工流星群」を世界で始めて実現する初号機「ALE-1」は、すでに宇宙にて地球の周りを周回しています。そしてその華やかなデビューイベントは、2020年春、広島・瀬戸内地域で予定されている、「SHOOTING STAR challenge」

イベント当日、ALE-1によってオーストラリア上空400kmから放出された流れ星の粒は、15分かけて徐々に降下します。するとちょうど広島・瀬戸内上空60km~80kmの中間圏あたりで大気に空力加熱(断熱圧縮)され、高温にさらされた粒はプラズマ化して眩く発光。その人工流星群たる姿は、直径200kmに及ぶ範囲にいる何百万もの人々によって目撃されることとなるのです。

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Image: 株式会社ALE

なお、その見え方は直径200kmのどこにいるかによって違ってきます。 から北へ流れる流星群なので、その東・西側から見れば左・右に流れるように見え、その線上にいれば頭上にズアァーっと降り注いでくるといった感じ。さらにそこに流れ星ウォッチング用のフェリー便や空の旅も加わる計画もあるということで、ほんとうに様々な視点からひとつのイベントがエンジョイされるわけです。ちなみに、もし2020年春までに2号機も打ち上がっていたら、2機から同時に流れ星を放出……なんてことも可能になるらしいですよ?

しかし、なぜ広島・瀬戸内なのか? それは、岡島CEOが、昔見た朝もやの瀬戸内の景色がステキだったから「ここに流れ星を降らせたい」と願ったのがきっかけとのこと。加えて現地の春は晴天率が高い、という気象条件も合致しているのだそうです。

ロマンとデータが合致したならそれはGOサイン。皆さんだったら、どこに降らせたいですか?

人工流れ星衛星はテクノロジーの塊

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Photo: 西谷茂リチャード
「ALE-1」衛星(左)と、その中に組み込まれている「流星源放出装置」の模型

ポンポンポンと粒を放出して流れ星を直線に並ばせても美しいでしょうが、ALEはそのさらに先を求めていました。なんと、降り注ぐ流星群のフォーメーションを扇形に広げたり、十字型に並ばせたり……なんていうことが可能なのだそうです。ここで大事になってくるのが、「ALE-1」にも搭載されている「流星源放出装置」。

上の画像の右側にある、このカッコいい装置この中には、粒を収めたパーツとその粒を押し出すヘリウムガスを詰め込んだガスタンク、そして粒の放出をガイドするための日本の職人による手作りバレルが組み込まれています。これらの連携プレイによって、粒たちは10秒に1粒、最大400m/s(時速1440km/h)という速さで衛星の後ろに向かって放出されるのですが、キモとなるのがある程度放出の角度と速度がコントロール可能なところ。

角度と速度が調節できると粒の放物線を狙って描けるようになるので、流星“群”に見せるため、粒達が発光するタイミングでまとまった群れになるよう計算しながら放出でいます。これで初号機です。スゴい。放出装置の精度がさらに上がれば、光の軌跡を組み合わせて絵や文字なども大空のキャンバスに描けたりするかもしれませんね。

でも、とにかく、安全第一

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Image: 株式会社ALE
初号機の実機。60×60×80cmで68kgだそうで、だいたい成人男性ひとりくらいの重さですね。

そもそもJAXAが人工衛星を打ち上げる際には、厳格な安全基準をクリアしていないと積んでくれません。しかし人工流れ星という衛星は前代未聞であり、衛星から粒を放出することを前提に安全基準を作っていないため、「ALE-1」をほかの衛星らとイプシロンに相乗りさせる際に独自の審査項目がいくつも設けられることになりました。

安全性についての疑問は、たとえば「ALE-1」衛星や放出した流れ星が、そのたの人工衛星や飛行中の旅客機にぶつからないのか? といったところ。これ関しては、「ALE-1」はほかの衛星の位置情報を踏まえた上で運用されるので、宇宙でぶつかることはまずありません。そして、放出された粒が流れ星となるのは60~80kmなので、およそ10kmの高度を飛んでいる旅客機と空中でぶつかる心配もありません。ずっと上空で燃え尽きるのです。安全!

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Image: 株式会社ALE
正確な縮尺ではありませんが、全体図はこんな感じです。

そして粒を放出する際も、本気で安全第一。流れ星の粒を放出するには、システム全体からのGOサインが必要なんですね。たとえば、ALE-1に搭載されているスター・トラッカーが星図と現在位置を比較し、それぞれ複数搭載されたジャイロ、GPS、内部時計、CPUといった計器類すべてがGOサインを出さないと、流れ星を放出することができない、といった具合。もしチェックリストにひとつでもNGサインが出れば、放出を見送ることになります。

でも、最悪のシチュエーションで、ことごとくの放出予定がNGになって衛星に寿命が来たとしても、ALE-1衛星そのものが大気に突入し、自らが火球クラスの流れ星になるといいいます。ALEの衛星は必ず1回は夜空を照らしてくれるわけですね。衛星自体が火球となるのは、粒たちをすべて放出し終えて粒切れになったあとでも同じ。いずれにせよ衛星は華々しく燃え尽き、最後の最後まで私たちの目を楽しませてくれるのです(ひとの目につかない場所で火球となる可能性もあります)。

Video: NASA's Ames Research Center/YouTube
「はやぶさ」が帰還して火球となったときの映像

ちなみに私も中学生時代、長ーく尾を引いて落ちる火球を見たことがあります。流れ星よりも滅多に見られる現象ではないので、人工的とはいえあの驚きがもう一度見られるのは非常に楽しみです。

次世代の衛星と粒……ガジェットじゃん!

大抵のガジェットと同じように、ALEの次世代衛星はレベルアップ&長寿命化するみたい。2号機には初号機になかったスラスターが搭載され、3号機はボディーの軽量化、保持する粒の容量追加、それに任務以外では観測機になれるアップグレードがやってきます。流星源のも、色数や燃焼時間の増加などを進化すべく、研究が進んでいます。

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Photo: 西谷茂リチャード
ちなみにバレルの先から「流星源放出装置」を覗くとこんな感じ。

まず2号機は初号機とほぼ同じ構成で、2019年6月に打ち上げられる予定です。初号機と違うのは、スラスターが内蔵されガス圧で高度を調節できるようになるところ。そもそも初号機ではイプシロンで打ち上げられた高度500kmから、軌道降下装置(DOM)が大きな膜を張って空気抵抗を高めて400kmまで降りてくるのですが、これがスラスターに取って代わられるのです。でもスラスターは軌道を上げることにも使えるので、初号機は寿命が2年程のところが、2号機では3年程と少し長寿になるというわけ。

続く3号機は飛躍的に機能が革新される予定で、粒の搭載総数が4桁になります。そしてさらに軽くなったボディーの中には、基礎科学に役立つ測定器が内蔵されることに。というのも、ALEの衛星は流れ星を放出する予定がないときは、ただ地球の周りをグルグル飛んでいるだけになってしまうので、その間に放射線測定などを行なって、さまざまなデータを収集しようというわけです。ALEの掲げる「科学とエンターテインメントの両立」が、加速しますね!

で、もちろん2号機も3号機も、最後は大気圏に突入し火球となってハデに散ることとなります。可哀想で勿体ない気もしますが、スペース・デブリは極力減らさないといけませんし、これもひとつの見所ですね。

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Image: 株式会社ALE

初号機に積まれた流れ星の粒の色は、明るい順に白、オレンジ、緑、青があります。現在は4色ですが、2号機、3号機になるに連れ、9色に増え、明るさや燃焼時間がアップする工夫もされるのだとか。ちなみにこれらの粒は宇宙から降り注ぐ塵などを人工的に再現し、化学反応で色を変えられるよう調節したものだそうです。でも詳しい情報は企業秘密…。

長寿命科、軽量化、大容量化、カラバリ増加…。こうして振り返ってみると、ALEの衛星はやはりガジェットですね。ていうかはやぶさ2もガジェットでしたし、衛星はみなガジェットなのかもしれません。手にとって操作こそ出来ませんが、そんなガジェが宇宙を飛んでいるだなんて、ロマンを感じちゃいます。


ひとりの女性が思い描いた夢が、本当に実現しようとしていて、それが一度に何万人の目に触れることになることが最高のエンターテイメントに…。いつの日か、『下町ロケット』よろしくドラマ化とかしちゃってもおかしくありません。

技術面でも新しいことだらけですが……夢が詰まった箱に対して、開発者や投資家、そしてスポンサーなど多くの人や企業がサポートしていることがわかり、思わずその熱意に心を打たれてしまいました。技術を作るのは、結局人間のハートなのです。2020年春の初放出が楽しみですね!

Source: Vimeo, 株式会社ALE, SHOOTING STAR challenge
Reference: Wikipedia

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