いや、まだSXSWは17日までやってるんですけどね…。
「インタラクティブ(テクノロジー)」「映画」「音楽」の3本柱で今年も繰り広げられたカンファレンス&フェスティバル、SXSW。ギズモードのお目当てだったインタラクティブ中心の前半戦は終了し、編集部も日本に帰ってきたので全体的な感想をまとめました。
数年後のSXSWはどうなっているんだろ?

かつてのアングラ感は今は昔。完全に世界的メジャーイベントになったSXSW。あまりの人の多さから、地元民は開催中に昼のダウンタウンに近寄ることはありません。特にここ数年の注目度は目をみはるものがあり、スタートアップの登竜門という視点は残ってはいるものの、派手に街を席巻するのは大手企業やヒット間違いなしという映画。テック系企業にとっては、CESよりもくだけた雰囲気でサブカル感のあるSXSWに出展することは、クールでハクがつくってもんだ。
何事にも発展、ピーク、停滞の時期がやってくるのだとしたら、近年のSXSWはまさにピーク。「Keep Austin Weird(オースティンはヘンテコなままで)」がキャッチコピーの街と大企業ひしめくメジャーイベントのバランスがぎりぎり保たれているという印象でした。オースティンは急激に発展している街なので、それとともに「ヘンテコ」な部分がうすれ、数年後にはただのメジャーな大規模イベントとして、停滞時期を迎えてしまうのではという危機感も感じました。
面白かった企業ブース
とにかく華やか:LG

なんと言っても巻き取りテレビ。CESで見たという人もいるでしょうが、よりお祭り感の強いSXSWには、こういうインパクトあるプロダクトがぴったり! LGブースは、モノが多くぱっと見ただけで楽しめるブースでした。
オースティンの電気自転車メーカー:MOD BIKES

サイドカーがついた電動自転車、かわかっこいい。素敵。
SXSW慣れ感。:ソニー

SXSW常連のソニー。完成度の高いアトラクションでイベント全体を盛り上げるのに一役かっていたと思います。
早く日本にも来て!:Bose

日本未発売のARサングラス「Bose Frames」が体験できてよかった! メガネなのにオーディオ機器。単純ながら斜めに進んでみたってだけでかなり新鮮で、可能性を感じました。
面白かったトークセッション
SXSW全体を駆け足で走りぬけたので、トークセッションは2つしか参加できず。
Preparing for the Next Wave: Video Fake News

文字や画像ではなく、動画でも広がる嘘ニュース=ディープフェイクニュースをどう見破るのか。敵を知るために、ロイター内でフェイク動画を作ってみたという話。フェイスマッピングなどを使って作った高度な偽動画でも、音と動きのシンクロや、喋る内容とリアクションの温度差など、小さいながらも見破るポイントはあるというもの。
How Millennials are Shaping The Future of Payments

借金をかつてないほど嫌うミレニアル世代、クレジットカードとデビットカードでは断然デビット派のミレニアル世代。これからの消費の中心となるミレニアム世代。彼らに刺さったのは、今買ってあとで払う新サービス「Afterpay」でした。お店(対応している実店舗またはネットストア)でAfterpayアプリを介して買い物すると、その場で品物は受け取れるものの、支払いは2週間ごとに4回にわけて行う、金利なしというのがAfterpayの仕組み(支払い日が守れないと罰金あり)。Molnar氏は、分割払いという概念は古くからあるものの、それにヒネリを加えユーザーとの間に信頼関係を築いたのがヒットの要因だと考えています。現に、9割以上がオンタイムで支払いを済ませており、これはAfterpayというサービスを使い続けたいユーザーの意思と忠誠心の表れ、つまりは関係が築けているという証拠。
熟しきった感のある日本企業出展

ここ数年、日本でも注目度が急激アップし、メディアで取り上げられることも増えたSXSW。今年は(も?)力入ってました。日本館「The New Japan Islands」の奇妙奇天烈な外装内装&コンテンツをはじめ、トレードショーでもホール真ん中で大きな面積を占めていた日本関連ブース。間違いなく、他のどの国やどの街よりも気合いがはいっていましたよ。

SXSWは今や日本でも立派に名の知れたイベント。数年前まであったSXSWに日本から出展するエッジさがなくなってしまったのは、寂しいような気もするけれど。いいバンドってのは、いつか地元から巣立っていくものですから(あくまでテック=インタラクティブメインの視点なので、映画や音楽メインで参加する人はまた違った印象を受けると思います)。

今回、GROOVE X社さまのご招待でSXSW 2019にやってきたギズモードですが、取材でお邪魔したGROOVE Xのスケジュールの中には、オースティン在住の親子とLOVOT体験会がありあした。今後は、こういう「せっかくだから、ついでに」な取り組みが、日本企業間で流行っていくのかなとも思いました。
2019年公式移動手段だったUber JUMP、来年はどうなる?

近年アメリカで流行しているライドシェアの電動スクーター。オースティンも2018年に導入され、今年のSXSWでは公式の移動手段としてUber JUMPが幅をきかせていました。JUMP以外にも、LimeやBird、Lyftなど複数の電動スクーターサービスあり。ダウンタウン中でイベントが展開され、開催中は交通規制も多いので、電動スクーターはSXSWの移動には便利でありがたいアイテム。
ただ、現地にいた人は感じたと思いますが、危ない。危なすぎる。ただでさえ、その安全性を疑問視する声があがっている電動スクーターなのに、SXSWの人の多さの中で走るのは危険この上ない。SXSW開催中は、街の地理にうとい人が多いのも危険な理由の1つ。混雑が集中するエリアは電動スクーターの乗り入れが禁止されていましたが、そんなことおかまいなしな人(禁止を知らない?)もたくさん見かけました。もうね、いつどこで大きな事故が起きてもおかしくない状況でしたよ。
オースティン市は、市民の安全性・利便性が保証できるまで、ライドシェア電動スクーターに対する新たな許可発行は停止することを今年1月に発表しています。来年、もしSXSW開催期間中はダウンタウン電動スクーター乗り入れ禁止になっていても、正直驚かないですね。
と、ここまで今年のSXSWをまとめたところで、そもそもSXSWって何?という話にはいります。
で、SXSWって何なの?

ニュースを通して見ている人はもちろん、現地にやってきた人の中にも(特に初参加の人は)「結局SXSWって何なんですか? 何を見たらいいんですか?」という人は結構います。オースティンのダウンタウン全体を使って行なわれる大規模イベントなので、全部まわるのはもちろん全体像を把握するのも困難。
「インタラクティブ」「音楽」「映画」の3つの要素で構成され、10日間に渡って開催されるSXSWですが、近年は、昔ほど3要素が日にち分けされていません。テック系のトレードショーが前半にあったので、インタラクティブは開催前半に集中していたものの、企業によっては開催期間中フルでブースをかまえているところもあります。
近年はメインの3要素に加え、新ジャンルとしてコメディにゲームも加わりました。また、公式プログラムとしてヨガやらカヤックやら地元グルメが絡んできたかと思えば、アートギャラリーがあり、書籍のサイン会があり、非公式イベントでアパレルのお店がパーリーやっていたり、公園でライブが開催されたりします。SXSWを一言で表現するなら「お祭り」としか言いようがない…。
そして、このお祭りの根底にあるのは、若者(学生)のパワーだと思います。SXSWのパスは、カテゴリ別と全部入りのプラチナパスがあるのですが、これ大幅学割があります。学生=若ものが参加することで、お祭り騒ぎに拍車がかかり、SXSW特有の異様なエネルギッシュな雰囲気につながるのかと。
お祭りの中をのぞいてみるとこんな感じ(主にインタラクティブメインの視点)。
・トレードショー:企業ブース、国ブースがコンベンションセンターにて出展
・コンベンションセンターの外に出展される企業ブース、国ブース:ホテルのホールや、レストラン、空き地を借り切ってSXSW用にデザイン。開催期間は出展側しだい。
・セッション(講演):コンベンションセンター、ホテル会議室などで開催される講演会。他にも企業ブース内のステージでも様々な講演が開催されます。
・ライブ:公式非公式ふくめ、あらゆるところでライブやってます。特に夜!
・映画試写会:昨年は『レディ・プレイヤー1』のプレミア上映が話題でしたが、大手新作に限らずミニシアター系から、硬派なドキュメンタリまで多種多様。キャストによるトークショーや、映画上映後のアフターパーティーもあり。
・スタートアップコンテスト:Twitterブレイクのきっかけとして日本で注目されるようになったSXSWは、若手ビジネスの登竜門とも言われています。一般向けではないものの、あちこちで投資家にむけたピッチプレゼンも開催されているようです。
来年参加を考えている人へ
・歩きやすい靴マスト。
・公式アプリ「SXSW GO」は、生き抜くための必須アイテム。
・本気で参加したい人は、事前にスケジュールをチェック&計画しよう。ただし、ギチギチに計画すると死ぬ。
・トークセッションは30分前、人気のセッションは45分から1時間前には会場へ。並んでます。入れないこともあり。
・人気のセッションは、急遽アンコール講演が決まることも。(事前にアンコールが予定されているものもあれば、急に開催が決まる場合もあり。後者の場合は、公式アプリには表示されないこともあるのでスタッフに要確認)
・おもわぬ飲みすぎ&二日酔い注意。企業ブースやイベントで無料で振舞われるお酒。オースティンは地ビールが盛んな街なので、ビールはもちろん、ワインからハードリカーのカクテルまで企業によって幅広く提供されています。ノンアルはジュースやコーラで、ウーロン茶のようなありがたいアイテムは(ほぼ)なし。夜も遅くまで音楽班のバンドやDJが盛り上げまくるので、つい楽しみすぎると翌日死にます。
・お酒ばっかり提供される&歩き回る&夏日の可能性ありなので、(荷物になるけど)ウォーターボトルを持参すると重宝します。企業ブース内はもちろん、給水ポイントはたくさんあります。
・天気予報はアテにならない。日本出発直前まで天気予報をチェックした上で、夏日から肌寒い日までカバーできる服で。テキサスは日差しがジリジリ強いので、お日様の有無で体感温度がかなりかわります。
・テキサスの辛い食べ物を侮るな。ばり辛い、尻燃える。
※ギズモード・ジャパンはGROOVE X社さまのご招待を受けてSXSW 2019を取材しております。