「ウェブの父」、息子にはかなりがっかりしている様子

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  • author Bryan Menegus - Gizmodo US
  • [原文]
  • 塚本 紺
「ウェブの父」、息子にはかなりがっかりしている様子
Image: Bryan Bedder/Gettyimages

ウェブ、大人になれよ。

「ウェブの父」と呼ばれるティム・バーナーズ=リーがWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)を提案したのは30年前のこと。インターネットを発明した人物として紹介されることが多い彼ですが、インターネットの現状にはかなり失望しているようです。

先日、30周年を記念して出された公開書簡に彼は書いています。

「ウェブはさまざまな機会を生み出し、社会から無視されたグループに発言のチャンスを与え、我々の生活をより便利にしました。その一方で偽証行為を可能にし、増悪を拡散する人々にも発言のチャンスを与え、あらゆる種類の犯罪をより簡単にしました」

ここ数年だけを見ても、データ流出、インターネットによって可能になった劣悪な労働水準による勤務、その他もろもろのスキャンダルや法律違反など、インターネットに失望する理由は挙げるとキリがないわけです。とは言え、ティムは敗北主義を宣言したわけではありません。「より良いウェブを作ることを今諦めてしまうと、失敗したのはウェブではありません。私達がウェブに失敗したことになるのです」と書いています。

「今年、テック従業員の多くが立ち上がり、より良いビジネス慣習を求めました。この志を私達は応援する必要があります」。これはおそらく、GoogleのプロジェクトMavenの関与マイクロソフトのペンタゴンと共同してのHoloLensの軍トレーニングへの応用開発などに反対の意思を表明した社員たちの行動を指しているのでしょう。


ティムは昨年11月に「ウェブの契約書」を提案しています。振り返って、ウェブの問題点を改善しようと試みる提案であるこの契約書には、9つの基本原則が書かれています。そのうち3つは政府に向けられたものであり、3つが企業に、そして3つがユーザーたちに向けられています。

中でも政府によるユニバーサルなネット接続、といった項目は信条としてはポジティブでも、理想主義に過ぎるかもしれません。提案されたばかりでまだ初期段階にあるこの取り組みは今後形を変えていくとは思われますが、企業がもっと“ポジティブ”なインターネットを作るべきだ、という主張は現実が見えていない印象が拭えません。

もともと「インターネットを誰でも使える(経済的なハードルが低い)ように」するために、現在のような広告によってサポートされる形になっています。その結果として、FacebookとGoogleがマスデータ収集を通じてここまで巨大かつ大きな資本を手にするようになったわけです。ティムが述べる「消費者のプライバシーと個人情報を尊重する」という項目は大事ですが、この項目と上記のモデルが対立するアイデアであることは事実です。

またオンライン・プラットフォーム自身が「人間性のもっとも良い部分を支え、もっとも悪い部分に挑戦する」という項目も、それ自体は健全かつ良いものですが、「プラットフォーム上で何が許される、何が許されない、といった線引をどこにしようとも、コンテンツがその線に近ければ近いほど人々は平均して、そのコンテンツとエンゲージメントをより多く持つ」というFacebookの知識を考慮すると難しいことが分かります。

「デジタル青年期からより成熟した、責任のある、多様なものを内包できる将来へと」進むための曲がり角に差し掛かっている、という彼の指摘はその通りでしょう。消費者、テック従業員、議員たちのすべてがウェブ全体にはより大きなコントロールが必要とされているという点で同意しています。ユーザーの安全性、データプライバシー法案、ウェブから生まれた巨大企業に対する反トラスト事例といったものがその具体例となっています。

「ウェブの契約書」が目指す通りに今後のウェブの方向性の指針となるかも気になりますが、ウェブの父が依然として、ウェブの責任ある成熟のために努力しているという事実は重要に思われます。

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