Apple News+レビュー:わざとかと疑うくらい使いにくい

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  • author Adam Clark Estes - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kaori Myatt
Apple News+レビュー:わざとかと疑うくらい使いにくい
Photo: Adam Clark Estes (Gizmodo)

ニュースの購読、どうしてますか。

読みたいニュースはたくさんありますが、一部有料だったりすると全部読めないこともありますよね。ここからは有料、なんて。今まで私は諦めるか、どうしても読みたいときや仕事で必要なときには無料トライアルをしてあとで解約したりしてました。でも解約ってどうしても忘れてしまうんですよね。

インターネットには無料な情報があふれていますので、お金を払ってまで購読するなんて、という人もいるでしょう。まずいちいちアカウント登録をするのも面倒です。読みたいメディアすべてを購読していたら正直破産してしまいますし。

Apple のNews+は、そんな私の悩みを一挙に解決してくれる魔法のサブスクリプションなのかなと期待したのですが...。米ギズモードのAdam Clark Estesの辛辣な報告によれば、今のところ使い勝手はイマイチのよう。

現時点で日本ではApple News+はサービス開始されていません。欧州でもサービス開始はまだです。最初に展開された米国でのフィードバックを元に、日本で利用できるようになる頃にはぐっと改善されているとよいのですが。


サービスは不完全な生煮え状態

Apple News+が立ち上がってから数週間がたちましたね。数百種類の雑誌に、いろんな新聞のサブスクリプションをまとめてできてわずか月々10ドル(約1,100円)。Appleの煮えたぎる野望が見え隠れするけど、消費者にとっては、よさそうなサービスですよね。

これは、今年Appleが打ち出した新たな2つの有償サービスの1つです。その裏にはiPhoneの販売台数を増やすのが目的があるでしょうが、残念ながら、Apple News+はお世辞にもすばらしいサービスとは言えないようです。むしろ機能不全なサービスと言った方がいいかも。 3月25日にApple News+が発表されてから、僕は毎日これを使ってきましたが、正直なところ、今のサービスははっきり言って「生煮え」の状態。このままではApple News+サービスを使うことで、逆に欲求不満に陥りそうなんです。

まずApple News+パートナーになっているメディアのブラウジング。コンテンツを読むときに問題があります。コンテンツはそもそも雑誌のページをPDFに落としたようなものばかりで、小さな画面で見るのは難あり。さらに欲求不満を掻き立てるのは、Apple News+のサブスクリプションにお金を払っているのに、お目当てのメディアのコンテンツすべてが見れるわけではないという点。紙ベースのメディアについてはPDFでほとんどが見ることができるようですが。

これはApple News+のほんの一側面にすぎません。家族での共有などは、どうも広告のふれこみどおりとは言えないよう。 Appleサポートによれば、「Apple News+のサブスクリプションに登録すれば、すぐにApple News+にアクセスできる」とのことですが、残念ながらそんなにスムーズではありませんでした。

ボクもさっそくサブスクリプション登録したのですが、家族はそんなにすぐにコンテンツにアクセスできていません。実際はAppleに何度も連絡をとらなくてはならず、そのあとにやっと「購入コンテンツを共有」をオンにしないとApple News+を家族とシェアできないことがわかったのです。

「購入コンテンツを共有」をオンにすると、自分のApp StoreやiTunesの購入を家族が見ることができることもわかりました。さらに、これによりボクのクレジットカードで家族がアプリなどを購入できるようになってしまいます。今のところ「購入コンテンツを共有」がApple News+サブスクリプションを家族と共有できる唯一の方法のようです。

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Photo: Adam Clark Estes (Gizmodo US)
Apple Musicのサブスクには購入を共有するボタンがあるけど、Apple News+のはない。

家族共有はわかりにくく、コンテンツは探しにくい

Appleは家族での共有がうまくいくように努力はしているようです。サービスの開始初期にはトラブルはつきもの。次第に改善されていくのでしょうがね。あのApple Musicだってサービス開始から数ヶ月は問題続きでしたし。苦情に次ぐ苦情で波乱に満ちていましたよね。Apple News+もまた、これを彷彿とさせるんですよね。

これは非常に残念なことです。Apple News+はすっごくいいアイディアだと思います。サービスの利用料金はたったの月10ドルで、「The New Yorker」「 Vanity Fair」「 GQ」「 The Atlantic」「Wired」「 New York」「Scientific American」など、300種類の雑誌を購読できるんですよ。それだけじゃなく、「The Wall Street Journal」に「The Los Angeles Times」といった新聞だって読めちゃいますし(The New York TimesとThe Washington PostはApple Newsのフィードには流れてきますが、Apple News+には参加していません)。わずかな購読料で雑誌類と経済ニュースの両方を長期購読したいなら、Apple News+こそすばらしい選択肢といえましょう。だって普通に「The New Yorker」だけを購読するのに年間で90ドル(約1万円)はかかるんですよ。

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Photo: Adam Clark Estes (Gizmodo US)
My Magazinesの画面には最近開いたメディアが表示されるようになっている。オフライン時にはダウンロードしたメディアのみ表示される。

すべてのコンテンツにアクセスできるとは限らない

Apple News+のサブスクは、それぞれのメディアを個別に購読するのとはちょっとわけが違うようです。かならずしもこれらのメディアのデジタルコンテンツにすべてアクセスできるとは限らないのです。オンラインで読めるけど雑誌には載っていない「Wired」の記事はApple News+では読めない可能性が高いです。Apple News+では何が読めて何が読めないかは、雑誌により方針が異なるようなんです。ウェブにしか載っていないデジタルコンテンツが見れたとしても、それを探すには大変な時間がかかります。これは、Apple News+は雑誌のデジタル版が基本となっていることが原因です。

雑誌によってはデジタル版はあるものの、すべての号にデジタル版があるわけではありません。またほとんどのApple News+の雑誌のバックナンバーはせいぜい1年ほどしかありません。これはAppleがTextureというデジタル雑誌のサブスクサービスの会社を買収した時期と重なります。6ヶ月分しかバックナンバーがない雑誌もあります。

Apple News+のメディア体験はTextureでの体験とほぼ変わりません。「Vanity Fair」やCondé Nast(コンデナスト)のような大手出版社はこれまでTextureのサービス展開を引っ張ってきましたが、彼らのコンテンツはApple News+に最適なものを提供しています。これらのデジタル版はApple Newsに最適化してプログラミングされているため雑誌のウェブ版というよりはウェブサイトに近く、画面サイズに応じてレイアウトが調整されるように作り込まれています。これより小さな出版社、「Surfer」や「Guitar World」などは、Apple News+で読めるのは雑誌のPDF版といった形になってしまい、このPDF版は残念ながらiPhoneの小さな画面では、とっても読みにくいのです。

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Photo: Adam Clark Estes (Gizmodo US)
「Surfer」はPDFバージョンなのでズームインしないと読めないし、読みにくい。

いまのところ購読エクスペリエンスは最悪

ここまではApple News+の機能的な部分に触れてきました。たしかに雑誌のコンテンツは読めます。新聞のコンテンツも読めます。でも、購読エクスペリエンスは最悪。言っておきますが、かなり長いことApple Newsのファンを続けているボクにここまで言わせるくらい最悪なんです。

AppleはApple News+をわざと使いづらく作りこんでいるのかと、つい疑ってみたくなります。新しいアプリを開いて好きな雑誌の新しいフィードを見るのはわくわくするもの(Appleによればオススメのストーリーは人間がピックしており、信頼できる出版社のもののみ厳選しているとのことですけど) 。Apple News+が登場する前のApple Newsには「Today」というフィードがありましたよね。このフィードにも変なストーリーが流れてきたり、あまり良い出来とはいえないものでしたが、Twitterを開かなくてもだいたい世界に起こっていることを見ることができて重宝したものでした。

どうしたことか新しいApple Newsは内容が改悪されて、フィードにはApple News+パートナーのニュースしか表示されなくなって、Wall Street Journalばっかり表示されてNew York Timesが見れなくなっています。ニュースフィードは個人の好みで表示が異なるため、News+パートナーのコンテンツがどのくらい表示されていて、無料コンテンツがどのくらいを占めるのかは、数を量ったわけではありませんが。

またAppleはユーザーのフィードに何を表示するのかを決めるアルゴリズムについても明らかにはしていません。いずれにせよ、「Today」のフィードが以前よりもつまらなくなったのは確かなことです。もっとも、これは主観かもしれませんけどね。

Apple News+体験がよくないという客観的な側面を述べるなら、アプリのNews+タブ上部のメニューが使い勝手の悪い例です。どの雑誌が購読可能なのかアルファベット順またはトピック順に一覧で見ることができるのですが、Appleはかつてのニューススタンド形式を採用しており、まるで書店で棚から雑誌を手にとってみるかのように陳列しています。ですが、この一覧から直接メディアをフォローすることはできません。メディアをフォローするには、雑誌をまず開き、画面上のロゴをタップして雑誌の初期ページに飛び、それから右上のハートマークをタップして、はじめてフォローできるようになります。フォローするとメディアは自動的にダウンロードされ、「My Magazines」のフィードに表示されるようになります。新しい号がでると通知が送られます。

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Photo: Adam Clark Estes (Gizmodo US)
ダウンロードアイコンはちっちゃい。タップするとオフラインで読めるようになるが、メディアがどこにダウンロードされるのかは、わかりにくくなっている。

Apple News+のブラウジングははっきり言って面倒。「My Magazine」の「Recent」の項目には最近読んだメディアのすべてが表示されるわけではません。最近フォローしたものだけが表示されます。フォローしていないメディアがここに表示されるのは、 その記事を読んでいるときのみです。その記事は「Reading Now」の項目に表示されます (フォローしているメディアもここに表示されます) 。ダウンロードされたメディアも見つけにくいこと極まりないです。雲のちっちゃなアイコンをタップしてダウンロードするとオフラインで見ることができます。ですが、オフラインにならない限り、これらのダウンロードは「My Magazines」のフィードには表示されないのです。 お目当てのメディアは一覧から探すか、履歴から見つけるしかありません。履歴タブもフォロー中タブの下に埋もれてわかりにくくなっています。「Following」タブではトピック、チャンネル、キーワードで検索ができますが、 検索をかけてもすべてのメディアが検索にひっかかるわけではありません

使いにくいのには訳がある?

Newsstand形式の一覧、「My Magazines」のほかに、News+タブにも「映画」や「テクノロジー」といったトピック別のキュレーションセクションがあります。また「ライフスタイル」といったテーマ別の特集モノなどもフィードに表示されます。お気に入りのメディアのすべてのコンテンツを見たい場合には、そのフィードから出版社の初期ページに飛ぶことができます。ここでも前述したとおり、コンテンツからメディアの初期ページに飛んで、ロゴをタップして、それから初期ページに行ける構造になっています。フォロータブで検索できるのは一部のコンテンツで、検索はすべてのコンテンツにはおよびません。また作者でコンテンツを絞り込むこともできません。ストーリーを保存しておくことはできますが、この保存の項目はフォロータブの中に隠れるように潜んでいるために、見つけにくくなっています。ここから履歴も確認できます。

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Photo: Adam Clark Estes (Gizmodo US)
自分の読んだ履歴を探すのは骨が折れる。履歴はフォロータブに埋もれてわかりにくい。

Apple News+では、たったの10ドルで大量のコンテンツにアクセスできると謳っていますが、コンテンツを読むのは結構大変。だったらなんのための購読!?って思っちゃいますよねえ。

ここからはボクの邪推(よくいえば分析)なんですが、もしかしたらAppleはわざと使いにくく設計しているのかも、なんて。自社のサブスクサービスを続けている出版社への譲歩として少し手加減してるんじゃないかって思うくらい使いにくんです。

Apple News+に参加する条件の悪さも噂としてささやかれています。なんでもAppleはNews+のサブスク料金の半分を受け取り、残りの半分はよく読まれているメディア順から分配しているとされています。あと、登録者のデータについては、Appleは出版社と共有していないようです。登録者のデータは新規参入企業やマーケティング戦略にとっては大切な情報ですよね。「The New York Times」や「The Washington Post」がApple News+に参入していないのも、それらが理由かもしれません。同時に、参入している出版社にとっても、Apple News+よりも自社のサブスク販売のほうが、断然儲かりますしね。Appleユーザーというだけで、大切な財源であるサブスクを千円札一枚で大盤振る舞いするのは、どうも腑に落ちないのではないかなと思うんです。自分で正規料金で売ったほうが、いいんじゃ?

安かろう悪かろうのサービスかも

とにかく、Apple News+を数日間使ってみての感想は、ひとことで「不完全」。この不完全性の中に使いにくさが加わっています。Appleのデザイナーがブラウジング体験を改善できないわけはない。Appleのエンジニアは数あるバグを修正していくでしょう。いずれNews+は広告どおりに機能していくのかもしれません。ただし、Apple News+で読むコンテンツと、出版社が提供しているネイティブな環境で読むコンテンツとの間には、差があることも指摘しておきたいと思います。これは同じにはならない。紙のメディアに載っていないコンテンツがApple News+に載るようになる可能性も少ないと思われます。Appleが打ち出しているマーケティングは、既存のメディアのデジタル版ということなのですから。このデジタル版メディアの一部はApple News+に最適化されていますが、多くは最適化とはほど遠い状態です。はっきり言って読みにくい、もしくは読めないです。これを考えるとApple News+の月に千円のサブスクは、安かろう悪かろうのサービスなのではないかなと。

でも、ボクが読みにくかったと言ったからといって、あなたがApple News+を読みにくいと思うかは別問題。Newsstandで登録メディアのコンテンツを購読している人なら、よいなと思うかもしれません。年間たったの120ドル(1万3400円)ですぐれたたくさんのコンテンツにアクセスできることは確か。Newsstandで購入すれば、New Yorker誌を13回購読できる計算です。紙の雑誌の購読をやめて、コンテンツごとの購読スタイルに満足できるなら、アプリの使い勝手はさておき、Apple News+には満足できるかも。

いずれにしても無料トライアルをする価値はありますよ。休暇中の暇つぶしにならガンガン読めて重宝することうけあいです。継続しないならキャンセルするのをお忘れなく。

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