公開から20年。『マトリックス』はすべてを変えた映画

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公開から20年。『マトリックス』はすべてを変えた映画
Photo: Warner Bros.

『マトリックス(Matrix)』公開から3月31日(米日時)で20年。初めてあの映画を観た日のことは一生涯忘れません。

ニューヨーク大学1年生で、NYということもあって、映画のプレビューイベントがしょっちゅう学内でやってました。日付けはもう覚えてないけど、キアヌ・リーヴス主演の変な新作があって『マトリックス』とかいうらしいって招待がきたのは、たしか2月下旬か3月上旬じゃなかったかと思います。

『スターウォーズ』復活秒読み、最悪のタイミング

1999年といえば、5月の新3部作公開で世界中のSFファンが『スターウォーズ』復活に沸いた年です。キアヌ・リーヴスは『雲の中で散歩』、『チェーン・リアクション』で一応名前は知られていたけどまだそこまで有名じゃなかったし、映画もたいして宣伝されていなくて、しかもアカデミー授賞式直後で賞狙いの力作プレミア上映がゼロの春シーズン。『マトリックス』はせいぜい「ファントム・メナス封切りまでの暇つぶし」ぐらいにしか思われていませんでした。

友だち4、5人で会場に何時間か早く行って並んだのもまさにそれで、単に水曜の夜、何もやることがなくて暇だったから並んだに過ぎません。ぜんぜん期待していませんでした(以下が当時のトレーラーです。ハイライト全部盛りなのだけど、劇場で観るほどのインパクトはなくて構成もありきたりな感じ。これじゃあ期待しろってほうが無理ですよね)。

それは映画館ですらなかった

上映場所もテキトーでした。NYといえば、映画館の充実度では世界最高レベルです。にもかかわらず、『マトリックス』が上映されたのは、ワシントン・スクエア公園に隣接する大学のボロッボロの学生会館「Loeb Student Center」(今はもっと大型最新鋭のキンメルセンターになってる)。映画館ですらなくて、だだっ広い学食みたいなところにただ折り畳みの椅子を広げて1,000個ぐらい並べて、一番前にスクリーンを置いただけ。

今でこそ学生寮もいい音響映像設備がそろってますけど、当時はそれほどでもなくて、これでプレミア上映ってどうよ...というものでした。ともあれ、暇な学生1000人がゾロゾロ入って席に着き、映画がスタートしました。

上映開始3分で学生1000人が総立ち

なんせ20年前の映画なので出だしのところはみな忘れてしまってると思いますけど、ちょっとミステリアスなんですよね。特に予備知識ゼロで観ると、何もかもが謎で、画面にコードが流れて、電話が鳴って、「The One」、モーフィアス。わからないことだらけです。

警官がビルに入ると、女がひとりコンピュータを操作しています。サングラスの男3人が現れ、なぜ先に突入したんだ、となじると、「小娘ひとりぐらい警察で十分だ」と笑う警部補。「2班を投入した。いま連行する」と言います。「いや、何もわかってないな。全員もう死んでる」と無視してビルに入るサングラス。へ~と思って観ていると、画面は件の女、トリニティに切り替わります。

手錠をかけられそうになった途端、拳法で交わして宙に舞ってフリーズ。カメラがそれを180度ぐるりとパニングすると、NY大の学生1000人が「おおおおおお!」と椅子を蹴って総立ちになりました。開始からたったの3分3秒でこれ。その48フレーム後にはすべてが変わります。壁を駆け回って警察を15秒で片付け、静かになったのもつかの間、息つく間もないシーンの連続でずっと叫びっぱなし。いやあ、あの日あの会場の熱狂はすごかった。映画はまだ133分も残っているというのに。

スポーツ観戦レベルの熱狂

ああいうのを、ザ・モーメントと言うんだね。トリニティがフリーズして会場が総立ちになったあの瞬間、歴史は塗り替わったんだと思います。映画を観ていて、あんな瞬間に立ち会えたのは後にも先にもあのときだけです。スターウォーズ旧三部作でも、『ジュラシックパーク』初上映ナイトでもなかったし、ティム・バートンの『バットマン』でも、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でもなかった。それはまるでスポーツ観戦イベントでした。

トレーラーで完全にネタバレしているはずなのに、誰も映画を観るまでそのすごさに目覚める人はいなかったんです。のちに監督のウォシャウスキー兄弟(現在は姉妹)が「バレットタイム」と呼んでる言葉通り、まさに爆弾ですね。ラディカル、ハイテンション、エキサイティングなものすべてを込めて10倍にしたシーン。第一波が去っても会場のどよめきは容易に収まらなくて、映画の本筋に集中するのに苦労したほどです。

映画はもちろんすばらしくて、頭をガツンとやられた気がしました。世界が塗り替わるようなプロット、どんでん返し、アクション。何もかもが過不足なく盛り込まれています。ネオが飛び去って映画が終わるとみんなわけのわからない雄叫びを上げて熱狂の渦でした。ウォシャウスキー兄弟に完全にしてやられた感じで、みんなもうフィルムスクール行くしかないって思ってましたね。

名画誕生の瞬間に立ち会った夜。会場を後にしながら友達のブライアンがこう言ってました。「1999年の一番いい思い出になったよ」。みな同じ気持ちだったと思います。『マトリックス』よ、永遠に。「DVD絶対買う」とも言ってましたね。

公開から20年。みんなは初めて観た日、何してましたか?

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