世界初のブラックホール画像からわかることまとめ

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  • author Ryan F. Mandelbaum : Gizmodo US
  • [原文]
  • Kaori Myatt
世界初のブラックホール画像からわかることまとめ
Event Horizon Telescopeのより明るく輝く下半分の画像 Image: EHT

ブラックホールは存在するんだ。

SFや宇宙が好きならブラックホールの存在について、一度は調べたり読んだりしたことがあるはず。こんな画像になって目の前に現れると、ふたたびロマンを感じずにはいられませんよね。細かい数式はわからないけど、科学好きなら相対性理論は誰でも聞いたことのある理論。その理論が証明されるかもしれないなんて。

米GizmodoのサイエンスライターRyan F. Mandelbaumが、今回の画像からわかることについて、細かく紹介しています。


これは幕開けにすぎない

科学者たちがブラックホールの画像をリリースしましたね。これは地球上の望遠鏡を結合してブラックホールを観察している、Event Horizon Telescope: EHT(イベント・ホライズン・テレスコープ)で作成された画像で、この大規模電波望遠鏡の世界初のブラックホールの画像と言われ、今、世界が騒然としています。センセーショナルな画像発表があるその横で、科学者たちは画像を作成した過程と、約5500万光年のかなたにある銀河M87の中心に位置するこの巨大ブラックホールについてわかったことを記した6つの論文を発表していますよ。

ペリメータ理論物理研究所のエイヴリー・ブローデリックさんはアメリカ国立科学財団のプレスカンファレンスで「これは幕開けにすぎない」と意味深な発言。研究者たちは「この画像を綿密に精査して、それを繰り返すことにより、素晴らしい科学を展開することができる」とのこと。

ブラックホールは宇宙にある非常に高密度な場所であり、ものすごい重力を持っています。これは「事象の地平線(Event Horizon)」と呼ばれる境界で、そこを超えるともはや光が戻って来れなくなる境界線(面)のことを言います。

超長基線電波干渉法という技術を用いて、世界各地にある8台の電波望遠鏡が、銀河M87の中心にあるブラックホールのデータを収集するのに成功したのは、2017年のこと。研究者たちはそれぞれの電波望遠鏡からの電波データを集積し、この画像を作成しました。最終的な画像は実際には写真ではなく、大規模なデータ解析とモデリングにより作成されたもので、発表された論文のうちのひとつによれば、画像には常に影がある状態であるとされています。

「一般相対性理論」は正しく、事象の地平線は存在する

この画像は、特に重力について説明するときに物理学者が使う「一般相対性理論」が正しいことを証明するものでもあるという点が、特に重要であるとされています。イェール大学の航空宇宙学者であるプリヤムバーダ・ナタラジャン博士は、米ギズモードのメールでのインタビューで、これは銀河の中心には超巨大なブラックホールが存在し、光が戻って来れなくなる「事象の地平線」という境界を擁しているという仮説が正しいことを証明する、これまでで最強の証拠であるとしています。

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世界初のブラックホールの画像
Image: Event Horizon Telescope

実はこれだけでも大きな収穫なのです。

混沌としているにもかかわらず、相対性理論では「質量」「回転」「電荷」という3つの特性に基づきブラックホールの行動は予測可能であるとされています。複数のブラックホールが衝突した際の時空の撹乱を測定するLIGOおよびVirgoの重力波検出器の観測により、M87のものよりも小さなブラックホールがこの規則にしたがっているということは確認されているのです。ただし、大きなブラックホールでしか発生していないような効果については、今まで確認されていません。ですので、今回の功績により、小さなブラックホールと大きなブラックホールにある違いを知ることにより、暗黒物質などの宇宙の不思議を解明するきっかけになるかもしれないのです。

ブラックホールの大きさだけでは暗黒物質の謎は解けない

さらに、このEvent Horizon Telescopeがもたらした初のブラックホール写真は、大きなブラックホールと小さなブラックホールのいずれもが同じ規則にしたがっていることを示すものでもあるのです。「LIGOのブラックホールは太陽のほんの数十倍の質量を持つブラックホールにしかすぎませんが、これ(M87のブラックホール)はパッと見だけでも太陽の数十億倍の質量を持つ巨大ブラックホールであり、これが重力の修正を制約している可能性があるのです」とシカゴ大学天文学部の大学院生マヤ・フィッシュバックさんは米ギズモードに語ってくれました。これが何を意味するかというと、ブラックホールの大きさだけでは暗黒物質の謎は解けない、ということ。

画像を作成することにより、ブラックホールの細かい部分も見えてきました。この画像ではこのブラックホールの事象の地平線は見ることができません。ですが、中心天体を回る光子の軌道が不安定なために光のふちにぼんやりと影が見えます。科学者は、この影はシュワルツシルト半径の約5倍か、事象の地平線と同じ大きさであるとしています。この情報はブラックホールの特性の一部を推測するのに十分なもので、研究者はその質量を太陽の質量の約65億倍と計算しています。

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銀河M87とそこから放射されるジェット流
Image: Hubble

重力レンズを証明

影の存在によりさまざまな見地が得られただけでなく、周囲の放射リングからもいろんなことがわかります。

このリングは左右対称となっており、下半分のほうがより明るく輝いています。銀河M87の過去の観測では、中心から高エネルギーを有する物質が放射されていることがわかっています。物理学者は、この放射がブラックホールの回転に関連するエネルギーによりパワーを得ているのではないかと仮説を立てています。輝く部分の左右対称性は、ブラックホールが回転している証拠となります。この回転により放射が発生しているのです。『アストロフィジカルジャーナル』に掲載された論文によれば、その他の形状は、天体より遠いところからその空間を通って届く光は曲げられて観測されるという、重力レンズを証明するものになります。

ですが、残念ながら、この噴射はまだ確認されたわけではないと、EHTのイメージンググループを率いるマサチューセッツ工科大学ヘイスタック天文台で博士研究員を務める秋山和徳博士。米ギズモードの電話によるインタビューに回答してくれました。これは銀河M87が一般的にどう進化するのかを解き明かす鍵となるため、研究の核心部分にもなりえる重大な研究分野ですが、噴射そのものと噴射を形成する領域を見ることができるほどの画像感度に至っていないのが実情とのこと。

やがて時間とともにこのブラックホールの周りの領域に変化を見ることができるのかどうかは、まだわからないと秋山博士。今回、画像グループは4つの画像を生成しています。電波望遠鏡で観測した日によって画像は少しずつ違っています。秋山博士は「時間の変動の元を特定する十分なデータはまだない」としながらも、「来年さらに多くの天体望遠鏡を追加して観測を重ねていくことで、ブラックホールの画像にどのような変化が見られるかを特定できると思っています」と語ってくれました。

わが銀河系「いて座A*」のブラックホール画像も

このプロジェクトにはさらに多くの望遠鏡が追加されていく予定で、もうすぐわれわれが住む銀河系の中心にある、いて座A*のブラックホールの画像も見られるようになるということです。このブラックホールは今回のものよりもずっと小さく、周囲には運動があるため、画像作成は今回よりももっと難しいとされています。

それにしても驚くべき画像を見ることができてわくわくしています。そしてこれからもっといろんな画像が届くことで、わたしたちの宇宙の夢はさらに加速されるでしょう。

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