今年のGoogle I/Oはちょっと大人でした。
ハイテクゴリ押し・新機能モリモリな発表会だったI/O 2018から少し落ち着き、それらのしっかりとした応用が多かったGoogle I/O 2019。テーマは「みんなにとって便利なGoogle」です。
ガジェット好きの目には、ミッドレンジスマホPixel 3a/3a XL、お手頃スマートディスプレイのNest Hub(旧Google Home Hub)、そして10インチのスマディスNest Hub Maxの発表がキラッと光りました。
ソフトウェア方面ではAndroid 10 Qの新機能や、 爆速な音声認識を活用したリアルタイム字幕&Googleアシスタントによるウェブ予約の自動処理、そしてAIの小型化とパーソナライゼーションなどが目に止まりました。
クラウドゲーミングプラットフォーム「Stadia(ステイディア)」にはノータッチだったのが残念だなー、と感じつつ……今年はいよいよGoogle×AIが成熟してきた感じが見て取れてちょっと新鮮。イケイケだった天才君が「しっかりやろう」と気を引き締めた感じでしょうか。なんだかこれまでとは別の意味の本気が感じられて背筋がゾクッともします。
というわけで今年のGoogleはどこを向いているのか? I/O 2019を振り返っていきますよ。
1)ガジェット類

ミッドレンジスマホ「Pixel 3a・3a XL」

ミッドレンジと言ってもハイめなミッドレンジ。フラグシップモデルのPixel 3のほとんどの機能を受け継いだスマホが、4万8600円より今日から予約できますよ(発売は5月17日)。Pixel 3aと3a XLはミッドレンジのプロセッサ(Snapdragon 670)、シングルレンズの背面1220万画素カメラ、30時間も持つというバッテリーと、Google謹製のソフトウェアが搭載されます。3年間のセキュリティーアップデート保証も魅力的ですね。
Pixel 3よろしくステレオスピーカーやアクティブエッジ(ぎゅっと握ってアシスタントを呼び出す機能)もありますし、カメラの性能は(センサーや処理チップなどのハードウェアが他と比べて劣るものの)ソフトウェアの処理で担保するとのこと。とはいえ、専用の画像処理チップやハイエンドプロセッサのないPixel 3aでどこまで快適に撮影できるのかは正直、未知数です(Pixel 3でも4GBメモリに苦労していたのに)。
気になる点は多く残りますが(上のレビューでほぼわかる)、このプライスでGoogleの最新ソフトウェアに触れられるというのはNexusシリーズの魂が感じられて嬉しく感じます。そう、これを待ってたんだよ、Google。
スマートディスプレイの解:Nest Hub

Google Home Hub改め、Nest Hubとして再デビューした7インチのスマディス。日本発売の前段階として、いまウェイトリストに登録できますよ。詳しくはこちらの米Gizmodoレビューにありますが、サイズ感とソフトウェアの機能性が魅力的なかわいいやつです。あれから数ヶ月経ってアップデートされているはずなので、割と気になるプロダクト。
大きいスマディス:Nest Hub Max

こちらはまだ日本ローンチが予定されていないようですが、Nest Hubを10インチにしてフロントカメラをつければ大体それでNest Hub Maxの完成です。画面が大きくてカメラがあるのでYouTubeの視聴やビデオ通話に便利ですし、ステレオスピーカーを活かした音楽プレイヤーとしても優秀だそう。
あと声に加えて顔も認識するので、たとえ家族と住んでいても自分に合わせた内容が案内されるのでありがたい。ただし、顔写真で騙せちゃえないかがちょっと心配。
229ドル(約2万5000円)で買える米・英・豪が羨ましいですね。来年のI/Oに期待。
2)Googleアシスタント系

Duplexのウェブ対応で予約が楽チン
I/O 2018でデビューした、Googleアシスタントが代理で電話予約してくれる機能Duplex。アメリカではPixel以外のスマホ(iPhoneも含む)で使える便利機能となっていますが、それがさらにウェブ予約にも対応してスーパー便利に。例に上がっていたのがレンタカーの予約で、その操作フローの速さを目の当たりにすると今から羨まくなってきます。
「旅行のためにレンタカーを予約して」と伝えると、カレンダーにある予定から飛行機の到着場所と日時を読み取って近くのレンタカーを予約する画面を自動的に表示。さらにカレンダーなどの情報からわかる範囲のことを自動的に入力してくれて、車種のオススメまでもハイライトしれくれます。あとは追加オプションを自分で選んでタップしていけば、最後の承認タップで予約完了です。これはマジのマジメに便利なヤツ。
しかもこれらの操作の実現にレンタカー会社側でシステムの改変は必要なく、ただGoogleアシスタントが賢くなったおかげどんな予約サイトも半自動で操作できるようになったのだそう。ブラウザーの自動入力も便利でしたが、これまた異次元の便利さですね。アシスタントに命令すればあとはAIが手取り足取り一歩先を行ってくれて、「うん、それでいいよ」とタップするだけ。秘書のある生活をしたことがないので便利さの比較はできないですが、少なからずこんな感じなのでしょうか?
便利ですねぇ。
わかりやすい:画像&AR検索

レストランで写真のないメニューに遭遇した時は、Googleアシスタントの一機能=Googleレンズを向けることでネット上の写真を参照できます。これならフレンチレストランも怖くないかも。

そしてこれはGoogle検索になりますが、たとえば「Muscle flexion(筋肉の伸縮)」と検索したらこんな風にARでわかりやすく見せてくれたり、ホオジロザメと検索したら実物大の迫力満点なARザメが表示できたりするように。検索した対象がARに対応していれば、より身近に感じられる検索結果が表示されるというわけです。大人にとっても便利ですが、子供への影響がいちばん大きい気がします。
軽量化したら爆速になった音声操作
GoogleアシスタントのAIモデルは、かつて100GBもあったそう(これでも結構コンパクトだった気がしますが…)。それがなんと、たった0.5GB(約500MB)に軽量化。驚異の99.5%オフです。間違いない。これはJeff Deanの仕業に違いない…。
その結果どうなったのかというと、Googleアシスタントの賢い部分(音声認識だけなら元々オンデバイス)もある程度スマホ上でローカルで走るようにり、超爆速になりました。ご覧ください。
ほぼゼロラグで音声を認識し、スマホもすぐさまコマンド通りの操作をこなしていますね。メッセージの返信はもちろん、Googleフォトにある写真を場所や被写体で検索し、それを音声コマンドでメッセージ送信なんていうことも可能。しかも速い。速すぎる。ここまで来ちゃったらあとは脳波を直接読み取るしか加速する方法はない気がします。
見やすく素早く:ドライブに最適化
Googleアシスタントに「Driving mode(運転モード)」が追加され、運転用のUIデザインが最適化されました。ボタンが大きくなったり、いま必要とされている操作が予想→表示されてたり、ほとんどの操作が音声でできるみたい。ここでも爆速音声認識が役立っていますね。痒いところに手が届きそうな感じ。使ってみたい。
3)Android Q系

爆速リアルタイム字幕・音声
Googleアシスタントで実現した爆速な音声操作のうち、爆速な音声認識がいろいろな場面で使えるようになります。たとえばスマホに保存されている動画やポッドキャストなどのメディアに対してスマホ単体で(ネット通信なしで)字幕を表示したり、その場の会話をリアルタイムで文字起こしして字幕で表示したりできるようになります。耳が不自由な方の生活を一変する力がありますし、電車など公共の場で動画をみたいときなどにも重宝されそうですよね。
また、発声に不自由のある方の通話を補助するLive Relayのプロジェクトも進行中です。通話相手の音声をリアルタイムで文字に起こし、文字入力やサジェスト文言をタップ入力することで、Googleアシスタントに音声で応えさせるという仕組み。幅広いニーズに対応していくGoogle。
公式で折りたたみスマホに対応(5Gも)
そしてAndroidは、Qから公式に折りたたみスマホに対応します。マルチタスクと、画面を切り替えた時に操作がスルッと続けられる「Screen Continuity(スクリーン・コンティニュイティー)」が目玉。紹介の動画に出てくるデバイスは完全にGalaxy Foldのタイプですね。おそらくQのアップデートが行くのでしょう(似たような挙動はすでに実現していたっぽいけども)。
しかし気になるのは「今年はmultiple OEMs(複数のOEM=メーカー)から折りたたみスマホが出る」という発言。サムスン(Galaxy Fold)、Huawei(Mate X)、Motorola(Razr)、Xiaomi(Dual/MIX Flex)だけでも「複数」ですが…ほかのメーカーも参入するの? Googleはなにを知っているの? 今年のPixelは折りたたみなの?(ちなみにFlexPaiは2018年発売なのでノーカン)。
あと次世代モバイル通信規格=5Gもネイティブサポートだそうです。トレンドにしっかり追いついてきてますね。
セキュリティーとプライバシー
Android OS最大の課題である、セキュリティーアップデートが遅れる(最悪の場合そもそもない)問題。その解決策のひとつである、「OSの重要な部分のアップデートをアプリのアップデートみたいにバックグランドで行なえるようにする」、がAndroid Qに組み込まれました。再起動も必要ないそうです。やるじゃん。Qならアップデートがちょっとお粗末なメーカーのスマホでも購入する気になれそうですね(そのメーカーがこの機能を意図的にブロックしてない限り)。

プライバシーの面では、アプリに位置情報が共有されるのを、アプリが使用されている最中のみにも設定できるようになりました。iOSでは随分前からできたことなので、「おぉ、やっとかね」という感じです。技術的にはいつでも実現できたであろうに…優先順位が低かったんですかね。なんにせよありがたいアップデートです。
ファミリー機能にもシャレっ気あり
親からすれば、子供にスマホを与えるのはパンドラの箱。持っていればいつでもなんでもできてしまうだけに、安全&健康的にに使わせるのが難しいのです。その不安をある程度取り除いてくれる機能がAndroidではファミリー リンクという機能ですが(iOSでいうところのペアレンタルコントロール)、そこにデジタルウェルビーイング(テクノロジーと健康的な関係を持つための)機能も追加されました。

子供のスマホに対して、アプリごとの利用時間を設けたり、睡眠時間を設定できます。でも、堅苦しいリミッターだけ、というわけではなく、「今日はいつもより10分夜更かしOKよ」という時のためのボーナスタイム機能も完備しています。ボーナスタイム…。なんとも甘美な響きです…。
ダークモード投下&オンデバイス学習

我々ガジェット好きの声は届きました。ダークモード解禁です。省バッテリーモードをオンにした時も自動的に有効になるのもナイス。やっぱりダークモードは最高ですね。macOS Mojaveでダークモードがきた時も興奮しましたが、ダークなAndroidもなかなかカッコいい。

それと、オンデバイスでユーザーの使い方に合わせた学習が行なわれることで、どのアプリでもメッセージを受信したらスマートリプライ(返信の候補のサジェスチョン)のボタンが表示されるようになります。それどころかメッセージの内容に応じてアクションのボタンも現れるそう。たとえば住所を含んでいたら地図アプリを開くボタンが出る感じですね。細かい便利さは積み重なって満足感となることでしょう。
4)社会のためのAI

AIを通じて、人はもっと分かり合える
音声認識AIのトレーニングに元来使われてこなかった、発声に不自由がある方の音声・表情・ジェスチャーのデータを取り込んで、それぞれに合わせた発声AIをトレーニング・活用する「Project Euphonia(プロジェクト・ユーフォニア)」が発表されました。動画にある「To understand, and be understood. It's absolutely unbelievable(理解し、理解される。まったく信じられない[ほどの体験だよ]」という言葉に息を飲みます。
AIはただのテクノロジーですが、使い方では人の人生をまるっきり変えてしまう力も秘めているんですよね。こうやって一人一人のケースに合わせたソフトウェア機能を開発することが、発展した機械学習によってこれまでより容易に実現できる。究極のパーソナライゼーションもAIの真価な気がします。
データを提供してもよいという方は、こちらのフォームから申し込めるみたいです。
医療の現場にインストール

目の病気を診断するAIシステムがEUで認可を受けたほか、世界でもっとも死亡者の多い肺がんに診断にAIが活用できることを発表。病気は、いち早く検知することで治療の有効性がうんと上がります。その手助けをAIシステムが本格的に始めているみたいですね。ありがたい。
洪水アラートをAIで

衛星画像から地形の3Dマップが制作し、気象データと物理シミュレーションでどこが洪水の被害にあいそうか事前にアラート飛ばすAIシステム。毎年の季節風で強烈な降雨にさらされるインド地域で運用されているみたいです。ゲリラ豪雨・台風・津波の被害が発生する日本でも、ニーズのある機能かもしれません
ちょっと大人なGoogle I/Oでした。なんかしっとりしますね。今年のGoogleは、いつにも増してユーザーのニーズと向き合っている印象を受けました。StadiaとPixel Watchに触れられていなかったのが残念でしたが、これはこれで聞き入っちゃったなぁ。
さて、10月のMade by Googleのハードウェア祭りに備えないと。