発表から5年、待望のIntel第10世代プロセッサ「Ice Lake」はノートPCをこう変える #COMPUTEX 2019

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  • author Alex Cranz - Gizmodo US
  • [原文]
  • かみやまたくみ
発表から5年、待望のIntel第10世代プロセッサ「Ice Lake」はノートPCをこう変える #COMPUTEX 2019
Ice Lakeを搭載する最初のPCとなるDell XPS 13 2-in1の内部 Image: Alex Cranz/Gizmodo US


数年前、私の向かいに座ったあるメジャーノートPCメーカーの代表が自信ありげな表情だったのを覚えています。彼のかばんの中には特別なモック(新製品の原寸大模型)が入っていて、それを見せたかったのです。

中から出てきたのは、非常に薄いWindows 10ノートPCでした。ファンが必要なく、厚さはわずか10mm(参考:MacBookが13.1mm)。IntelのIce Lakeを搭載した、彼の会社の最初の製品のひとつになるとのことでした。Ice Lakeは長く開発中の10nmプロセスのチップです。彼は私に来年の今頃にはホンモノを見せますよと言っていました。でも1年経っても、試作機を見ることは叶いませんでした。

Ice Lakeも行方不明になりました。しかし、そんなIntel第10世代X86チップがとうとう正式発表に。

今私たちが使っているノートPCにIce Lakeの多大な遅れがどれほど大きな影響を与えたのかを理解するまでにはいくらか時間がかかるでしょう。市場をよく見れば、Ice Lakeを搭載するはずだったであろう製品でありながら、Ice Lakeが出なかったためにマーケットの影に消えていったものたちがいくつか見つかるかもしれません。

そんな待望のIce Lakeが登場する準備がついに整いました。今後、私たちは「極薄ノートPC」についてもつイメージを改める必要が出てくるでしょう。

Ice Lakeって何?

Ice Lakeとは、IntelのSunny Coveマイクロアーキテクチャに基づいた第10世代プロセッサの名称です。IntelのノートPC向け第10世代プロセッサにはどれもこの名称が用いられるでしょう。

処理速度とバッテリー効率が向上した、完全に新しいプロセッサ

Ice Lakeには10nmプロセスルールが採用されています。Intel製品では2014年以来14nmプロセスルールが採用されていますが、そうした製品に比べると格段に回路が小さくなっています(AMDやApple、Qualcommのチップに用いられている7nmプロセスルールよりは大きいのですが)。一般に、プロセスが小さいほど処理速度が向上します。データをそれほど遠くへ伝える必要がなくなるイメージですかね。それに伴ってデータを伝えるのに必要なエネルギーも小さくなるので、バッテリー効率も向上するという寸法。

Ice LakeはIntel初の10nmプロセッサではありません。昨年、IntelはCannon Lakeチップ「i3-8121U」を出していますが、これも10nmプロセスルールを採用しています(マイクロアーキテクチャは以前からあるSkylakeですが)。IntelのClient Compuing GroupシニアVPのGregory Bryantは米Gizmodoに、i3-8121Uは「少量生産」であり、Intelが10nm自体に慣れるために生み出されたのだと語っています。一方でIce Lakeは、完全に新しいマイクロアーキテクチャであるSunny Coveに基づいており、まったく新しいチップです(IntelはIce Lakeを10nm+と呼び、10nmとは呼称していません)。

電話取材の中で、IntelのフェローでありClient Architecture TeamのリーダーであるBecky Loopは「Ice Lakeは楽しくクールなもののひとつで、いちばん興味を惹く点は私たちが実際に何もかも変えてしまったところでしょう」と語っています。彼女が言いたいの、CPUを一から作り直した、ということ。「基本構造を変えました。どのIPコアにも手を入れています」と彼女は言っていました。

高い目標が多大な遅れに

こうした動きはIntelにとってチャレンジングなものだったようです。Ice Lakeの遅れについてBryantは次のように語っています。

「私たちは極めてチャレンジングなゴールと極めて積極的な成長目標を設けています。私たち自身の基準で見てもです。それらがより難しいものだとわかり、もっと時間がかかるとわかったのです」

その結果として何度も遅れが生じた、というのが彼の言わんとすることです。Ice Lakeは2014年に最初にアナウンスされ、2016年に登場すると思われていましたが、実際はそうはなりませんでした。結局、Intelがプレスに対してIce Lakeが絶対に、確実に、とうとう出るのだと発表したのは昨年の冬ということに。最初の発表から5年後、もともと予定されていたときから3年遅れとなりました。

しかし、IntelはIce Lakeには挑戦する価値があり、遅れるだけの価値もあると考えたようです。IntelはIce Lakeは今まで開発したプロセッサの中でもっとも高速で、もっとも複雑で、ハイパフォーマンスな製品のひとつになると主張しています。

何がすごいの?

PCメーカーが私に語ったところでは、Ice Lake Yシリーズのチップは現行のノートPC用として一般的なUシリーズよりもパワフルな一方で、バッテリー消費は少なく、場所もとらないのだそうです。

グラフィックス・Wi-Fi接続・AI処理が大幅強化

具体的なチップもそのスペックも発表されていませんが、Intelは第10世代のチップはグラフィックス性能が2倍、Wi-Fi接続速度が3倍、複雑なAI関連のタスクを2.5倍速くこなす能力もあるとしています。

EngadgetがComputexのライブデモに参加していましたが、そこでIntelは第10世代UシリーズチップのGPUパフォーマンスが披露するために、第8世代i7-8565Uチップと競わされていました。デモというものは企業が強調したい部分をしっかり見せられるように作られているものではありますが、その結果はすばらしいものでした。『Counter-Strike: Global Offensive』を起動すると、第8世代チップでのFPSは40にすぎませんでしたが、第10世代Uシリーズでは70だったのです。

Thunderbolt 3もより高速に

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Dell XPS 13 2-in-1のThunderbolt 3ポートはより高速でしょう。ダイレクトにIce Lakeとつながっているのです。
Image: Alex Cranz/Gizmodo US

また、Thunderbolt 3とWi-Fi 6はCPU内に直接組み込まれています。Loopは、遅延が劇的に削減され、CPUのメモリにすばやくファイルを読み込み保存できるので、日常的に外部ストレージを利用する人にとってとりわけ有益だろうと私に語りました。

いつ手に入るの?

これは微妙なところです。Ice Lakeは今年出ますが、Intelは具体的な製品も私たちがそれを手に取れる日についてもアナウンスしていません。代わりに、Project Athenaについて見ておくべきかもしれません(Project Athenaも今年のComputexでIntelが推していたものです)。こうした情報から予想するなら、Ice Lakeがやってくるのは夏の終わりか秋の頭くらいでしょうか。実際そうだといいんですけどね。遅れを繰り返したIce Lakeですが、すでにIce Lakeを搭載する新プロダクトがいくつも発表されている今、ひとつの遅れも悲惨な事態につながりかねませんから。

ちょいまち、Project Athenaって何なの?

Project Athenaとは、薄くて軽量かつ超パワフルでバッテリーにも優れたノートPCのための一連の仕様です。Project Athenaの責任者のひとりでClient Computing GroupのVPであるJosh Newmanによると、ノートPCの品質を改善して値段も落としつつ、スマホでできるようなすばやくシームレスな体験をより多くの人に提供することを狙ったもののようです。

軽く、薄く、タフなノートPCを実現する新基準

Intelはその目標に向けてノートPC設計の概要を示しているわけですが、ノートPCメーカーが満たすべきProject Athenaの基準はそれは厳しいものになっています。Project AthenaノートPCは3.3ポンド(約1.5kg)より軽く、15mmより薄くなければなりません(Intelは例外もあるとしていますが)。インターネットにはノートPCを開いてから2秒で接続できなければならず、バッテリーはブラウジング・ワード文書の閲覧・ストリーミング動画視聴を含んだ新しい利用テストで9時間もたなければなりません。

バッテリーは重要なポイントです。Project AthenaのシニアディレクターでありエンジニアのSudha Ganeshは、この点に関する取材に誠実に答えるためにIntelが開発した検査項目のいくつかを大まかに教えてくれました。現在、ノートPCのバッテリーはレビュワーとメーカーによってテストされています。ディスプレイの輝度が特定のレベルに設定され動画が再生されます(ローカル保存された動画とストリーミング動画の両方)。でも、それが私たちのノートPCの使い方ってわけじゃありません。重要なタスクを行ない、それが済めばより重要度の低いタスクにすばやく移る。それを繰り返すのがリアルな私たちの使い方じゃないでしょうか。Intelの新しいテストは、いくつかのプログラムをバックグラウンドで起動したまま複数のプログラムを渡り歩くような、ユーザーのリアルな使い方をなぞることを意図したものになっていました。

Intel「メーカーも必死になれ」

別のテストでは、バッテリー的に安定しているかがチェックされます。現状、パフォーマンスとバッテリー持続時間はトレードオフの関係です。「パワフルなノートPC」も「バッテリーに優れたノートPC」も手に入りますが、バッテリー持続時間が長いということは総じてパフォーマンス等の面では劣るということです。

しかし、IntelはIce Lakeを通じてこの問題を解消できると考えています。ソフトウェアサイドでやるべきこともあると考えているようですが、コンピュータはより賢くプロセッサとバッテリーをマネジメントできるようになるのです。こうした仕事はデザイン面でもなされます。Project Athenaに関して多く話すなかでNewmanは、ノートPCメーカーについても言及しました。彼はProject AthenaはノートPCメーカーにとっても乗り越えなければならないチャレンジ──単に安いノートPCではなく、よりよい製品を目指して懸命になるべきところだというのです。

たとえば、Dellが新しいXPS13 2-in1を発表しましたが、これはIntelとともに開発されたProject AthenaノートPCです。第10世代プロセッサとアクティブ冷却を備えており、Dellがいうには第8世代プロセッサを搭載した前XPS13 2-in1の2.5倍速いとか。Dellいわくバッテリー持続時間は16時間で、こちらは2倍近い数字。

しかし、それは1年目に訪れるものにすぎません。NewmanはProject Athenaが数年にわたる取り組みになると予想しており、その各年でノートPCメーカーはよりよくなり、パーツもより求めやすい価格になるでしょう。今すぐProject AthenaノートPCを買うなら1000ドル(約10万円)しますが、将来的には700ドル(約7万円)、500ドル(約5万円)にさえなるかも。

ここまで語ってきたのは現時点での見込みですが、Intelは私たちに数年の開発の成果をすぐに見せると約束していますよ。

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