ダブルクリックでSOS。スマートジュエリー「invisaWear」レビュー:思い出したトラウマと向き合う

ダブルクリックでSOS。スマートジュエリー「invisaWear」レビュー:思い出したトラウマと向き合う
Photo: Victoria Song (Gizmodo)

「もしも」の時の緊急通報ウェアラブル。

助けが必要なとき、手元にスマホがあるとは限りません。一度そういったトラブルに巻き込まれると、なかなか恐怖心や不安感はぬぐいされないもの。もし、通報してくれるデバイスを身に着けていたら少しは安心できるようになるのでしょうか?

トラブルに巻き込まれた経験を持つ米GizmodoのSong記者による緊急通報ウェアラブル「invisaWear」のレビューです。


映画館のトラウマ

2017年12月、レイトショーで『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を観ていると、場内の誰かが「銃を持ってる男がいる」と叫んだのです。その後は劇場全体が出口に向かって駆けていったため、大パニックに。その混乱の中で私はコート、リュック、靴そして絶望的なことにiPhoneをなくてしまいました。

いろんな面でこの事件は恐ろしかったのですが、一番記憶に残っているのは「ウソでしょ、友人に無事だと伝える手段がない。911(日本でいう110番)にかける手段がない!」と考えていたこと。幸いにも友人の1人が、映画館の外で裸足のまま身を震わせている私を見つけてくれたのです。

invisaWear

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これは何?:

危険な目に遭った際に2度押しすると、あらかじめ登録した緊急連絡先(とオプションで911にも)にSOSを発信してくれるスマートジュエリー

価格:130ドル(約1万4300円)

好きなところ:控えめなデザインで充電不要。チャームなのでネックレス、ブレスレットもしくはキーチェーンとして身につけられる

好きじゃないところ:日常的に着用するには退屈なデザイン。分厚さが気になる時もある

結局、何ごともありませんでした。銃を持った男など存在せず、悪趣味な冗談だったのです。それでも、1年以上たって、押せば自分の位置情報を緊急連絡先と911に知らせることができる小型なスマートジュエリーinvisaWearを試す間、その経験を考えずにはいられませんでした。

銃の乱射事件やライドシェアサービスでの悪質な運転手、自然災害や襲撃など恐ろしいニュースばかりで、誰かが、特に女性がinvisaWearのようなものを欲しがっても無理はありません。

しかしこういったガジェットには2つの側面があります。命を救う可能性のある緊急通報デバイスとして市場に出される一方、終わりのない疑心暗鬼の感覚によるレイプ防止ガジェットに似た要素を持っています。理想的に言えば、深いトラウマを負った人にとってinvisaWearは安心感をもたらしうるデバイス。だけどもっと懐疑的に見てみると、これは全身に使うプラシーボや絆創膏のようなものです。

ダブルクリックでSOS

invisaWearは、電話を使えない危険な状況にいる際にチャームを2度押しすることで機能します。そうすると、最大5人の緊急連絡先にテキストメッセージでGPS位置情報が送られ、最寄りの911の通信指令係に連絡もできます。2度押しの際に自動的に911に通報する「911通報機能」を有効にしておくと、invisaWearのサービスが指定された緊急連絡先に発信して、その人に本人に代わって911に通報するという選択肢をアナウンスしてくれます。

invisaWearを初めてスマホとペアリングした際には、アラートを送る人の選択、そして身長、体重、誕生日や人種といった個人情報を入力するように促されます。さらに緊急時に911に送るためのアレルギーや持病、障害(聴覚障害、視力の悪化あるいは車椅子の使用者かなど)そして服用している薬などを記すこともできます。

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Photo: Victoria Song (Gizmodo)
厚みがあります。エッフェル塔のチャームはあんまり気に入りませんでした。

invisaWearを試すにあたってはアプリのテストモードを使いました(911に嘘の通報をして、助けが必要なほか誰かに迷惑をかけるつもりはありませんからね)。すべての過程を通して、invisaWearアプリにかなり感心したと言わざるを得ません。パートナーと親友には、私の緊急連絡先に選ばれたと知らせるテキストメッセージが送信されただけでなく、説明ページへのリンクがついていたのです。

そのサイトにはinvisaWearについてのわかりやすい説明、緊急連絡先とされた人たちがアラートを受け取った場合はどういう状況なのか、どの電話番号が保存されているか、invisaWearからの着信はマナーモードでも鳴る設定にするようにという案内が掲載されてました。テストモードはあくまでテストであって、命にかかわる危険な状況にはないと知らせてくれたのもよかったです。緊急連絡先となった2人はともに、アプリから提供されたGPS位置情報が正確だと確認しています。

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Screenshot: Victoria Song (Gizmodo)
緊急連絡先に送られたテキストメッセージのスクリーンショット

アプリには、デバイスを誤って押してしまった場合のフェイルセーフ機能も組み込まれていました。アプリから緊急通報をすると選んだ場合、発信するかどうか確認のポップアップが表示されます。

毎日着けられるかどうかがカギだけど...

アプリの安全装置は深く考えられて設計されていたのですが、invisaWearのような製品には問題が山ほどあります。ほとんどのウェアラブルと同じように、身に着けたくなるものでなければ、着用しないということです。この点でinvisaWearは成功かというと、そうでもないのです。

デバイスそのものは25セント硬貨ほどの大きさの円型チャーム。14金か、白銀の金属であるロジウムのコーティングを選べます。そしてチャームなのでネックレス、ブレスレット、チョーカーとして着用するか、キーチェーンやカバンにつけることも可能。

私は小さなエッフェル塔のチャームがついたロジウムのネックレスバージョンを選びました。数多くのフィットネストラッカーを試す者として、手首にはスペースがあまりないからです。不格好というわけではありませんが、invisaWearは私のスタイルに合うとは言えず、デバイスそのものの厚みが気になりました

思った以上に服と合わせるのに労力がかかってしまい、大体はシャツの下に落ち着くことに。世界がどれほど危険かを思い出させるデバイスのために、コーディネートをこんなにも試行錯誤するとは…。おかげで私の不安は軽減するというよりも、高まっている気がしました。

走っている間の着け心地はあまりよいものではありませんでした。夜の公園を1人でランニングすると惨事を招く、とわかるぐらいにはホラー映画を見ているので、invisaWearのようなデバイスは走ってテストするのがいいと思ったのですが...。耐汗性だったものの、分厚いチャームは鎖骨にぶつかってきます。上り坂ダッシュの最中には、骨に当たり続けました。アザにはなりませんでしたが、気が散る程度には痛かったです。

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Photo: Victoria Song (Gizmodo)
起動するにはチャームを2回押します。

デザインは明らかに女性向けに作られています。特に国連が実施した、女性への暴力に対するとても気が滅入るような統計を踏まえると、それは仕方がないことです。それでもinvisaWearのようなデバイスの恩恵を受けるのは女性だけではないので、もっとジェンダーニュートラルなデザインなら広くアピールできるだろうなと思いました。

システム設計における大きな難点は、Bluetoothを介してアプリがメッセージを送るには、スマホの30フィート(約9メートル)圏内にいる必要があるということ。もちろん、技術的な観点からは納得できます。しかし、現実を振り返ってみると、映画館から飛び出した時の私は自分のスマホから30フィートどころかだいぶ離れていたと確信しています。

そこが少し気になったのです。こういうデバイスを最大限に活用するには、自分の身にいつ何が起きるかなんて予想できないのでできる限り身に着けることが大事です。

でも、チャームだからこその柔軟性と1年のバッテリー寿命は実用的ですが、機能するにはスマホの近づけておく必要があるという事実は変わりません。デバイスのペアリングにトラブった経験のある人なら、30フィートのBluetoothの有効距離がどれほど不安定か知っていますからね。

「安心」の価値

価格は130ドル(約1万4300円)と、緊急通報するウェアラブル端末としては高額の部類にあたりますが、サブスクリプション費用はかかりません。WearSafeはオシャレとは言えませんが、本体がタダで月額5ドル(550円)のサブスクリプション型。一方、Rippleは本体価格が30ドル(約3,300円)、月額10ドル(1,100円)のサブスクリプションで24時間対応のモニタリングチームがつきます。invisaWearを1年ほど着用し続ければ、月あたりのコストがお手頃な競合製品と同じくらいになります。

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Photo: Victoria Song (Gizmodo)
ネックレスとしてのチャームは好きではなかったものの、キーチェーンにさりげなくつけられました。

invisaWearのようなデバイスを語るときに重要なのは、コントロールできない出来事に対して湧き上がる恐怖心が和らぐのかどうかです。

invisaWearがこれまで存在しなかった恐怖を生み出しているかのように思えた日もありました。そうはいっても、『シャザム』の上映に着けていった時は、1年半ぶりに避難経路を考えたりまた銃の騒動があったらどうすべきか想像したりせずに済みました。このデバイスを2度押しすればいい、それは何にもないよりマシだと分かっていたからです。

個人的には、invisaWearのチャームを毎日は着けないと思います。とはいえ、混んでいるコンサートや劇場では不安に感じるので、大規模なイベントに行く際には身に着けるでしょうね。当然ながら、こういったデバイスを着ける必要すらなくなる日がくればと願っています。invisaWearがもたらしてくれる安心感は、私にとってはお金で買えないものです。

まとめ

  • Bluetooth経由で接続し、電池バッテリーなので充電はいらずです。
  • 2度押しで、事前に選んだ緊急連絡先の5人にSOSを出して、911に通報できます。
  • チャーム型のデザインですが、フェミニンなスタイルなので、万人受けするわけではありません。
  • アプリの設計は秀逸。

Source: invisaWear, UN Women, WearSafe, Ripple

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