コーディング研修が出世払い+毎月20万円おこづかい…ってほんとに?

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  • author 福田ミホ
コーディング研修が出世払い+毎月20万円おこづかい…ってほんとに?
Photo: Shutterstock

うますぎる話みたいだけど、ほんとです。

近頃は米国でも日本でも人手不足と言われ、特にソフトウェアのコーディングができるエンジニアは将来的にもますます足りなくなっていくと予測されています。シリコンバレーのエンジニアは平均年収が1000万円超え、なんて景気の良い話も聞きます。

そんなに需要があるならいっちょコーディング勉強しようかな?と思っても、いざやろうと思うと独学って難しいし、学校に通うには時間が必要です。だからって「コーディング勉強したら収入アップできそうだから」ってって理由で会社を辞める人はあんまりいないと思います。だいたい、勉強中の生活費はどうするんだって話になります。

そこでModern Laborという会社がこの問題を解決しようとしている、とMotherboardが詳しく伝えています。彼らは5カ月間でコーディングを教えるブートキャンプを運営しているんですが、その参加者からすぐさま学費を徴収するんじゃなく、逆に毎月2000ドル(約22万円)のおこづかいを与えているんです。総額1万ドル(約110万円)、ちょっとした宝くじ並みです。

じゃあModern Laborがどうやってお金を回収するかっていうと、ブートキャンプが終わってエンジニアになれた人からだけ、収入の15%を2年間収めてもらう、という仕組みなんです。つまり参加者側から見ると、勉強しながら生活できる程度の収入がもらえて、勉強の対価は就職できてから払えばOKということなんです。

リアルに出世払いOK!

Modern Laborの仕組みは奨学金にも似ていますが、多くの奨学金制度が実質的には借金なのに対し、Modern Laborから参加者が受け取るお金は返す必要のないお金です。もしブートキャンプが終わっても、参加者の収入が終了後5年以内に4万ドル(約440万円)に満たない場合、支払い義務はありません

この手の仕組みを運営する会社は、Modern Laborが初めてじゃありません。勉強する人に資金提供して就職後に収入の一部を徴収する仕組みは「Income Sharing Agreement」(直訳:収入共有契約、ISA)と呼ばれ、近頃はその考え方で作られた大学で卒業生の8割以上が年収7万ドル(約780万円)で就職するなどの成果を出しています。ISAを取り入れたい学校をサポートするサービスなども生まれていて、そこからさらにISAの流れが広がっています。

特に米国では国民の抱える学生ローン総額が1.5兆ドル(約167兆円)以上あるとされ、学生ひとりあたり平均では3万7000ドル(約410万円)以上になります。大学の学費が日本に比べて高く、年間3万ドルとか5万ドルとかするためですが、これじゃお金のある人しか教育が受けられなくなってしまいます。ISAは、より多くの人に教育の機会を与える仕組みとしても期待されています。

「先立つもの」を「事後でOK」にする仕組み

とはいえ、気になることはいろいろあります。まず勉強してもスキルが身に付くとは限らず、さらに仕事につながるとは限りません。でもその場合は上にも書いたように、参加者がModern Laborにお金を払う必要はなく、参加者が負担するのは勉強に費やした時間とかエネルギーとかしぼんだ希望のケアだけになります。ただしその場合困るのはModern Laborのほうで、彼らはブートキャンプの運営費を肩代わりしっぱなしになります。

もうひとつ、「収入の15%」ってわりと多いんじゃないかっていう心配もあるかもしれません。もしいきなり超高収入、たとえば年収2000万円とかになった場合も収入の15%を払うとしたら、その金額は1年で300万円、2年で600万円にもなります。でもModern Laborの契約では、参加者が卒業後に払う金額は累計3万ドル(約330万円)までという上限が設定されているので、この点も安心です。他のISA契約でも、同じような上限が設けられているようです。

それでも330万ってどうなの?と思う人もいるかもしれませんが、Modern Laborがブートキャンプ参加者に支払うお金は5カ月で1万ドル(約110万円)、そして他のブートキャンプでは参加費が2万ドルというケースもちらほらあり、さらに2年ローンした場合の金利なども考えると、やっぱりそれくらいなのかなという感じがします。

そして330万円はあくまで上限で、Modern Laborへの支払いが発生する年収の下限である4万ドルの場合、年間の支払いは15%で6000ドル(約67万円)、2年間で1万2000ドル(約132万円)となります。下限の場合、参加者がブートキャンプ中に受け取れる1万ドルを差し引くと、Modern Laborに入るお金は20万円ちょっとです。

なのでModern Laborとしては、ブートキャンプ参加者にいかに確実にスキルを身に着けさせるか仕事を見つけてもらって自社の実入りを増やしてもらうかが超重要になります。そこでModern Laborは通常のブートキャンプとは違い、参加者と企業のマッチングまで手がけるところも「売り」にしています。

もやっとする部分もちょっとあり

参加者にとっては良いことづくめみたいですが、Modern Laborはまだ始まったばかりの仕組みで規模も小さく、ブートキャンプ参加者は現在3人だけだそうです。またModern Laborのブートキャンプは基本的に在宅で進められるので、参加者はパソコンを監視されていて、やりかけのプロジェクトを放置してTwitterにふけったりはしにくいです。作業時間は「週30時間」が最低限とされていますが、Modern LaborのWebサイト上では「40〜60時間」とされていた時期もあり、運営方針がはっきりしない印象を受けます。

さらに他のISAの事例も含めると、良い話なだけに制約もあるのが見えてきます。Philly.comによれば、DigitalCraftsという別のブートキャンプ用のISA契約では、参加者はブートキャンプ終了後もDigitalCraftsから銀行口座の動きや税務申告書類などを把握されることに合意する必要があります。また「DigitalCraftsは参加者との契約を第三者に売ることができる」という条文もあり、つまりブートキャンプ運営会社の中で何らかの事情が変わったら、全然縁のない会社にお金を払うことになったりする可能性もあります。

とはいえ、全体的にはすごく希望の持てる仕組みだと思うので、法的な面の整備もされつつ、もっと広がっていけばいいなと思います。今後何年かで、Modern Laborのような会社の収支がちゃんと合うのかどうかの検証もなされていくことでしょう。

世の中が早いペースでアップデートされていってる今、大人になってから新しいスキルを身に付けなきゃいけない場面はこれからもっと増えていくと思われます。そんなときにこのISAみたいな仕組みを利用できれば、誰もがもっと柔軟にジョブチェンジとかスキルアップとかできて、人手不足も解消できるしみんなハッピー…ってのは夢見過ぎでしょうか?

Source: Modern Labor via MotherboardCNBC経済産業省USA TodayLeifPhilly.comCourse Report

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