Facebook、仮想通貨「Libra」を発表→米下院が即反応「やめて」

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  • author かみやまたくみ
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Facebook、仮想通貨「Libra」を発表→米下院が即反応「やめて」
Image: Libra Association/YouTube

ザックコインと謎のブロックチェーン。

2019年6月18日、FacebookがCalibraという別会社を使って仮想通貨「Libra」を2020年上半期にローンチ予定と発表しました。ケンブリッジアナリティカ事件など、さまざまなトラブルを起こしてきたFacebookということで、Libraに対する反応はいきなり散々なもの。さまざまなメディアで懐疑的な見解が示されています。

でも、いちばん強烈なのは、米下院がすぐさまこの動きに反応して「Libraをやめろ」という声明を出したことでしょう。

Libraとは

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Image: Facebook

Libraは「Facebookとその関連アプリ上で使える仮想通貨」です。

・専用のウォレットアプリ上で管理される。低コストで送金などもできる
・MessengerやWhatsAppでも使える
・ユーザーの消費データなどはFacebookに共有されない
・詐欺やロンダリングなどの犯罪対策もばっちり
・ブロックチェーンが使われる
・現在、開発の初期段階

その目的は表向き、「今現在、金融サービスを使えていない人たちにそうしたサービスを提供するため」とされています(世界の成人の半数が有効な銀行口座を持っていないのだそうです)。

Image: Libra Association/YouTube

でも、昨年の不祥事に反省しつつ、便利でソーシャルグッド!と素直に褒められない、怪しげな点がLibraにはあるのが問題です。

そのブロックチェーン、いる?

米GizmodoのMatt Novakは、Libraの不可解な点を指摘しています。Facebookの資料(Libra white paper)を見てもわからない点があると。

FacebookはLibraを「powered by blockchain(ブロックチェーンで動く)」と表現しているんですが、結局のところLibraにどうしてブロックチェーン技術が使われているのかが謎なんです。Bitcoinのような暗号通貨とは異なり、Libraはリアルの資産に紐付いています。Libraはマイニングされませんし、生み出されるLibraにも上限(天井)はありません。ローンチ時点では分散化もされないようです。

マイニングなどは暗号通貨でブロックチェーンが関わってくるポイントです。でもLibraはそういう通貨ではない…?

Financial Timesは以下のように書いており、「Libraは実際にはブロックチェーンを使っていないのではなかろうか」という見解の模様。

Facebookはグローバルな疑似バンキング・支払いネットワークを構築しようとしていると考えると、これをブロックチェーンを使って実現したいと思うはずはありません。資料の著者たち自身が指摘しているように、ブロックチェーンを使うと変動しやすくスケールしにくい通貨になることが示されているのです。中国のSNS向け巨大ペイメントサービス「WeChat Pay」(Facebookがグローバルレベルで競合しようと思っている相手)はブロックチェーンを用いていません。PayPalだって、Venmoだって使っていません。インターネットマネーは、ブロックチェーンを用いる必要なんてないのです。これがLibraが実際にはブロックチェーンマネーではないと思われる理由です。

じゃあブロックチェーンは何に使われるんだろ…? 教えてよ、マーク。

米下院が「開発を停止して」

日経XTECHは、6月19日なって米下院金融委員会のマキシン・ウオーターズ委員長の次のような声明を報じています。

「過去のトラブルを考慮し、フェイスブックに対して、議会や規制当局が内容を精査し対応するまで暗号通貨(仮想通貨)の開発を停止することに合意するよう求める」

その一方で、米下院は仮想通貨マーケットへの規制が欠けているとも考えているよう。

ウオーターズ委員長は同時に「仮想通貨マーケットには現在、投資家、消費者そして経済を強固に保護する規制の枠組みが欠けている」とも指摘した。そうしたなか、仮想通貨マーケットにフェイスブックが「問題」を抱えたまま参入してきたことを、「仮想通貨が引き起こすプライバシーや国家安全保障、サイバーセキュリティーに関連するリスクに規制当局が真剣になるべきだとのウエイク・アップ・コール(目覚まし)だと認識すべきだ」と主張し、仮想通貨規制そのものの必要性を強調した。

規制が必要なマーケットにシリコンバレーの問題児がやってくるのはやめてくれよ、ってことのようです。気持ちはわかりますが、まだLibraの実態が闇の中すぎて、やめろというのが妥当なのか否か、外からは判断しにくいなぁというのが率直なところです。

金融サービスを使えていない人たちにそうしたサービスを提供するというFacebookの建前は確かにきれいですが、営利企業のやることですから、お金を生み出すからくりは用意しているでしょう。送金などのトランザクションに伴う手数料は低いようなので、ザックは謎のブロックチェーンをこっそり活用して荒稼ぎする気なのでは、なんて思ってしまいます。

いきなり手を出すのは怖いなぁというのが正直なところですね…。

Source: Facebook (1, 2), Gizmodo US, Financial Times, 日経XTECH