32連勝で賞金2.6億円。全米驚愕のクイズ王『Jeopardy!』ジェームズついに敗る。祖母は日本人、本業はスポーツ賭博

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  • author satomi
32連勝で賞金2.6億円。全米驚愕のクイズ王『Jeopardy!』ジェームズついに敗る。祖母は日本人、本業はスポーツ賭博
Image: Jeopardy

棒高跳びを初めて背中から飛んだ人。

そんな常識破りな戦術で次々と賞金記録を塗り替え、衝撃を与えた米国長者番組『Jeopardy!(ジェパディ)』のクイズ王James Holzhauer(‏(34が月曜、ついに敗れました。32連勝で勝ち取った賞金は計246万2216ドル(約2億6600万円) 。

何を隠そう、私は『Jeopardy!』を全部録画して一気見しているマニアでありまして、本当にこのジェオパディ・ジェームズ(愛称)は最高に面白かった…!

正答率97%

こんな人間が地上にいるんだな、と。

賭け金の大きな出題から選んで全賭けする異例ずくめの戦術で、賞金1回平均7万7000ドル(約834万円)という驚異的スピードで歴代不動の覇者ケン・ジェニングの74連勝・252万700ドル(2億7300万円)の賞金記録に迫り、記録突破の王手をかけた月曜は久々にだれもがTVに釘付けとなり、過去14年の月曜枠で最高視聴率を記録しました。

記録にはわずかに及びませんでしたが、新たなレジェンドの誕生です。

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ジェームズ・ホルツハウアー vs. ケン・ジェニングの賞金対決。実際このプロジェクション通りの展開になった。最後は650万円差
Image: Cheddar - YouTube

ところで『Jeopardy!』って何?

あまり日本では馴染みのない番組かもしれませんが、『Jeopardy!』はアメリカで半世紀以上続く国民的クイズ番組です[Wikipedia]。毎日晩ご飯の夜7時になるとあのジングルが流れ、全米最高の頭脳があらゆるジャンルの知識とスピードを競います。日本の表記は『ジェパディ!』ですが、原音ではオ(o)にアクセントがあります。

これと双璧を成すのが、7時半からの長者クイズ番組『Wheel of Fortune』で、あっちがエンタメ性を高めた庶民出場版であるのに対し、『Jeopardy!』は教授、弁護士、医師、作家、軍人、エンジニア、アナリストなどが出るハードコア版、ですね。

司会はカナダ生まれのアレックス・トレベック(78)で、1984年の復刻版開始から35年間ずっと出ていて、出題の制作にも関わってます。3月にステージ4のすい臓がんと発表したときには「アレックスがいない世界なんて考えられない」と誰もがショックを受け、エールを送りました。その甲斐あってか最近では腫瘍が縮小中で「そんな馬鹿な」と医師も目をみはってるのだそう。ただ、いつ倒れてもおかしくないステージではあるので、アレックスが生きているうちに、1回でも長く、という思いは誰もが抱いているのが今の『Jeopardy!』コミュニティ。

ギャンブルに明け暮れ才能を無駄に遣う神童

そこに彗星の如く現れたのが、アレックス版『Jeopardy!』の放送が始まったのと同じ1984年に生まれたJames Holzhauer(ジェームズ・ホルツハウアー)です。ドイツ系で、母方のおばあちゃんは日本人。

保育園の頃から計算がめちゃ得意で地元シカゴの新聞に神童と騒がれ飛び級をするほどだったのですが、授業や宿題をさぼってオンラインポーカーなどに勤しむ神童だったため成績は万年Cのままサンダル履きで卒業し、うだつのあがらないデスクワークを経てラスベガスのギャンブラーになりました。専門はスポーツ賭博。過去最大の負け金は200万円(独身時代)。

『Jeopardy!』に本腰を入れたのは、タイ放浪中に英語教師仲間の古典文学者メリッサさんと出会って結婚し、長女が生まれた辺りからです。本業を1年間休んで子ども図書館の本を読み、ブザー攻略本で早押しスキルを高めて予選に挑んだものの、なかなか声がかかりません。「この俺に何が足りないんだ?なんでもやるから教えてくれ」とギャンブラーの掲示板で意見を求めたら「笑え」と言われ、笑い続けていたらやっと2回目のオーディションで声がかかりました。

『Jeopardy!』ジェームズ、誕生

ジェームズのすごさはまず、過去歴々のデータを頭に入れ、賞金を最大化するように問題を選ぶこと。そして「デイリーダブル」という全賭けポイントで有り金全部はってくる胆力です。たまたま答えがわかる問題が出れば一気に2倍、外せば全部パー。いくら頭脳明晰で儲かると頭でわかっていても、通常はせいぜい20~30万円で、100万円はるのはなかなか普通の人ではできません。それを、やるわけですよ。チップの山を全部前に出すジェスチャーで。

あれを最初みたときには、とんでもないのが出てきたなあ、と(笑)。

プロの賭博師の戦術と子ども図書館で培った雑学が功を奏し、4月9日には1回あたりの歴代最高賞金記録の7万7000ドル(約834万円)を抜いて、 11万914ドル(約1202万円)を獲得(お嬢さんの誕生日11/09/14に合わせた)。 4月17日には13万1127ドル(約1420万円)勝って新記録をまた更新。

けっきょく32連勝中に歴代賞金記録トップ10を総なめし、それまでの過去最高賞金7万7000ドルが1回あたりの平均値になるという超人っぷりを発揮しました。

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倍賭けポイントの賭け幅。ジェームズは毎回百万円単位で賭ける
Image: Cheddar - YouTube

番組制作側は終わって正直ホッとしてるかもね…。まあ、ジェームズを破ったEmmaさんもこれとまったく同じ戦略で勝ったので、女ジェームズで泣いているかもしれませんけど。走り高跳びが一夜にして変わったように、『Jeopardy!』もこれが新しいスタンダードになると言われています。

アンチ

連勝記録、賞金記録が夜な夜な続き、アンストッパブルなことが誰の目にも明らかになってくると、人の心というのは不思議なもので、それまでの尊敬は畏怖に変わり、やがては軽蔑に変わっていきます。

そのうちボロッボロに負けた出場者がTVで「ジェームズは傲慢だった。金の亡者。あんなの『Jeopardy!』じゃない。もっと楽しくやるもんじゃないの?」と言ってみたり。まあ、その女性は「Wheel of Fortune」みたいな妙にテンション高いノリだったので、むしろそっちが浮いて見えたし、ジェームズと競り合った男性のほうは「僕にはナイスで、息子に『お父さん、すごいね』と言ってくれた」とかばっていて、渋い人は負けても渋いんだなあ、となりましたけどね。

まあ、『Jeopardy!』に出るような人たちは学校も一番で、生まれてから無敵な人ばかりなので、負けたことがないんですね。それが負けたときの反応を見るのもファンとしては見どころだったりするのでした。

夢の戦いを終えて

さて、勝負を終えたジェームズは、こんなツイートをしています。

Jeopardyに出れて我が生涯に一片の悔い無し。これ見るまではそう思ってたさ

ははは。

最後は彼らしくない小さな賭け金で負けてしまったので、「負けるほうに賭けてわざと負けたんじゃねーの」という陰謀説まで出回りました。その点についてはESPNで「『Jeopardy!』は事前収録だからギャンブル自体、成り立たない」ときっぱり否定していますよ。

2番手の男性が全賭けして正解だった場合の金額に1ドルを足し、自分が不正解だった場合のリスクヘッジをすると、あの金額になるんだそうで、数理的にはあれで正解だと、TIMEマガジンも書いてます。

気になる賞金の使い道ですが、家族の分の残りはラスベガスの青少年支援活動(夜働く家庭が多いのでベガスは非行率がとても高い)に寄付するそうです

天国のおばあちゃん

数ある名場面の中でも印象に残ったのは、ジェームズが天国のおばあちゃんにキスを捧げたシーンです。なんでも日本から子育ての応援にきたおばあちゃんが『Jeopardy!』のファンで、英語もそんなにわからないのに毎晩見ていたそうなんですね。それを見て育ったジェームズは、自分もいつか出ておばあちゃんを喜ばせてやると心に誓ったのだといいます。

うちのおばあちゃんは英語は片言だった。でもいつも一緒に座って見てくれた。だから約束したんだ。大きくなったら僕も出るよってね。そのことがずっと頭を離れなくて。25年かけてやっと約束を果たすことができたと思ってます。(1:11~)

ジェームズを抱っこするおばあちゃんの写真は、兄のイアンさんがABCニュースに提供していますよ(0:18)

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