【インタビュー編】挑戦、融合、からの興奮。TRIGGERの映画『プロメア』は新手法の宝庫だった

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  • author ヤマダユウス型
【インタビュー編】挑戦、融合、からの興奮。TRIGGERの映画『プロメア』は新手法の宝庫だった
Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

アナクロと最先端、その両取りがあるとしたら、きっとこういうスタイル。

劇場アニメ『プロメア』は、2015年の『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』ぶりに アニメーションスタジオTRIGGERが手がけるオリジナル映画。現在、絶賛公開中でございます。

Video: TOHO animation チャンネル/YouTube

スタジオ見学に引き続き、3DCGを担当する株式会社サンジゲンの石川真平さん、キャラクターデザインを手がけているコヤマシゲトさん、そして監督をつとめる今石洋之監督へインタビューを行ないました。本作のミソともいえるについても聞いてきましたよ!

石川真平さん(3Dディレクター)

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Photo: ギズモード・ジャパン

──今作は今石監督から「とにかくシンプルに」というオーダーがあったそうですが、CGでシンプルさを表現する際にどのような点を意識されましたか?

石川真平さん(以下、石川さん):「細かくならないように」ですね。質感やディテールを詰め込むよりも、なるべく直線的なかたちに落とし込むようにしました。

今作だと炎がたくさん出てくるんですけど、パっと見は宝石のようにも見えつつも動いたら炎かなってところまで持っていけたらなと。なので、単体で見るととてもグラフィカルで平面的です。CGはリッチに見せていくのが得意なので、こうした作業は初めてでしたね。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──シンプルな表現のほうが簡単なようにも感じますが、リッチにするのが得意なCGでシンプルさを表現するのは難しそうですね。

石川さん:なんせチープに見えがちですからね。そうならないよう、シルエットがきれいに出るようなバランスを探っていきました。質感も盛らず、色も2〜3色にしています。もっと使うとしても、大きくグラデーションをかけるようにしました。

──炎を武器や生物に変換する表現は色んな方法があると思うのですが、今作の「不定形のエフェクトを物理に寄せる」というアプローチには興奮しました。あれもシンプルさが活きたかたちでしょうか?

石川さん:「固い炎が〜」みたいなことを今石さんに言われたりしました(笑)。本当は固くはないんだけど、炎が何かに当たって割れたり切れたり、そこに立体物があるかのような表現というか。炎であるけど、物質的でもあるというか…細かく突っ込まれるとよくわからないですね(笑)。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──アクションシーンではカメラワークの躍動感が素晴らしかったです。縦横無尽に動くカメラのモーションはどのように作っているのでしょうか?

石川さん:今石さんが描かれた絵コンテがあるので、それを元にCG側で再現していくという感じです。でも、CGのソフトは正確すぎることがあって、絵コンテ通りにならないことも結構あります。そこは各アニメーターが誇張したり、いわゆる嘘パースを効かせたりして調整していますね。

──『プロメア』を3つのキーワードで表現するとしたら?

石川さん:技術を伝える意味での、継承。CG表現としての、遡行。ちょうどプライベートで子供が生まれたので、三男(本作も我が子的な意味で)。

コヤマシゲトさん(キャラクターデザイン)

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Photo: ギズモード・ジャパン

──今作のキャラクターデザインで、最も意識したのはどのような部分でしょうか?

コヤマシゲトさん(以下、コヤマさん):今作はビジュアル全般を見て欲しいというオーダーを今石さんから受けていたので、それを見越した上でのデザインを心がけました。特に直線的なフォルムを重要視していて、服のシワや髪などもどんどん省略して描いてるんですね。ガロのズボンも断面はほぼダイヤ型だったり。影も複雑にならないように、メカだったらパキっとした直線になるようにしています。テーマとしては「リアルにしない」ですね。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──デフォルメの究極のような感じでしょうか?

コヤマさん:そうですね。かたちのデフォルメはわかりやすいんですけど、色もデフォルメしているのが今作です。アニメって、リアルに寄せていくという手法が通常化してしまっているというか、病理のように蔓延していて。たとえば鼻の穴を省略しているキャラクターがいるとして、鼻を省略してるのに色やシワは省略してないってどういうことなんだっていう(笑)。そうした、デフォルメのラインをすべて合わせていくことを今回は意識してデザインしていきました。

──キャラクターデザインをするときに、インスピレーションの元にしているものはありますか?

コヤマさん:いっぱいあるんですけど、僕も今石さんもアメコミだったりバカな映画は好きですね。『キルラキル』にもそうした要素は入ってると思います。あと、ハリウッドのアニメ映画とかではコンセプトアートを最初に作って画面設計するじゃないですか。でもいろいろと工程を挟むうちにリアルになってしまうんですよね。

僕や今石さんは、完成画面よりもむしろ最初のコンセプトアートみたいなシンプルな絵のほうがカッコいいと思っていて、この絵のまま劇場で流したいっていうのがあったんです。なので、『プロメア』には"コンセプトアートがそのまま動く"というイメージが根っこにありました。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──カートゥーン的というか、動きと色の組み合わせが今まで見たことがない表現だなと感じていましたが、そういう意図だったのですね。

コヤマさん:ガイナックスにいた頃に『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』という作品をやったんですけど(石川さん、コヤマさんも参加していた今石監督作品)、あれが自分たちの中でも上手くいったなと思っていて。

あれは等身の低いカートゥーン的な作品だったんですけど、『キルラキル』のような等身の高いキャラクターとカートゥーン的なルックを合体させた作品って今までやったことがないよねって話になったんですね。なので『プロメア』は、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』の要素も、『キルラキル』や『天元突破グレンラガン』の要素も、全部を足した作品かなと思います。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──実際のキャラクターデザインはどのようなフローで行なうのでしょうか?

コヤマさん:今石さんはかなりロジカルな人で、なんとなく描いてみてカッコイイからこれでOKなんてことはないんですよね。ポケットのかたち1つにしても筋道立ってないといけない人で。

今作はリオがいるバーニッシュ側は三角を基調に、ガロのいる体制側は四角を基調にしています。そういうコンセプトを今石さんとずーっと話していて、お互いに描いては見せ合って、持ち越して(笑)、っていうのを繰り返してましたね。そうしたデザインが決まったら、今度はそれを設定画にしないといけないので、その時はアニメーターさんやイラストレーターさんにも手伝ってもらいました。

──『プロメア』を3つのキーワードで表現するとしたら?

コヤマさんシラーチャソース(打ち合わせの際にはコレが必ずあった)、和三盆(日本の最高級のお砂糖という純度の高さ)、鰹節(複雑な工程の果てに、最後に残るのが最高級のダシ=今石味)。

今石洋之監督

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Photo: ギズモード・ジャパン

──今回は「炎」が大きなテーマとなっていますが、どうして炎を選んだのでしょうか?

今石洋之さん(以下、今石さん):これは中島さんから出てきたアイディアなんですよね。脚本について話してた時に出てきたんですけど、確かにアニメとして描きがいがある題材だなと思って。炎って動いてないと表現できないし、かたちもなければ触れもしないし。でも、それを触ったり掴んだりする違和感はアニメならできるし、面白いなと思いましたね。

──CGにもシンプルさを求めるというのは、なんだか時代に逆行しているようにも感じました。なぜシンプルでいこうと思ったのでしょう?

今石さん:まぁ普通みんなリアルにしたがりますよね(笑)。

サンジゲンの石川さんとは『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』でもご一緒したんですけど、あの省略したCG表現がすごい良かったんですよね。色トレス(線画の色を塗りの色となじませる技法)にするだけですごく良いCGになるなと思って。パンストをやってたときの一番の発見はあれかなと思いますし、今回サンジゲンと組んでガッツリやるぞってなったら、一番うまくいったアレを最大限拡大して使うのが良いかなと。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──最近のアニメーションはリアルさで競い合う面も少なからずあると思うのですが、今石監督としてはこの風潮はどう思われますか?

今石さん:僕は、リアルにするならいっそ実写とか写真を使えばいいのではないかと昔から思ってたタイプなので…まぁ絵描きとしてリアルに描くのが面倒ってのもあるんですけど(笑)。

これ以上ビルの窓を細かく描いてもなぁって思うこともあるけど、一方でそれを描く快楽もやっぱりあるし、その絵に対してすげぇって思うこともあります。描き込むことで広がる世界観があるのも知ってるんですけど、それはもう得意な方々がいらっしゃるので、僕はリミテッド・アニメーションとして省略を突き詰めるほうが性に合ってるかなと思いますね。

──炎をシンプルに表現するというのは、そもそもどういうイメージなのでしょうか?

今石さん:これって、2Dの作画をする時に普通にやってることなんですよ。2、3色の塗り分けと6枚くらいのリピートだけで炎に見せるっていうのを、我々は何十年もやってきました。これを実際の炎の映像から起こそうと思うとすごい枚数になるし、単純化できないくらい複雑なんです。こうした表現の省略はずっとやってることなんですけど、3Dだと深く考えずとも情報量が上がっちゃうんですよね。

──情報量が上がるという感覚、よくわかります。複雑すぎるとそれを理解することに意識が向いてしまうといいますか。

今石さん:僕は、これがCGの弱点だなって勝手に思ってます。ハリウッドくらいになるとまた違う表現もできるのかもしれませんが、じゃあ日本でCGのアニメをやるなら、単純にセルシェーディングにするのではなく、省略はしつつも3Dにしか描けない炎ができるんじゃないかなって。実際、今作は最初にCGで炎を作って、そこから場所によっては手描きにしたりしています。

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Image: ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

──さきほどはガロのグルグル目を修正するかどうか(スタジオ見学の記事を参照)という話をされていましたね。あれはアニメーターのアドリブだったそうですが、アニメーター由来のアイディアや表現はよくあるのですか?

今石さん:よく来ますね、特にサンジゲンの3Dアニメーターさんはよく仕込んできます(笑)。その表現が面白ければ通すし、面白さが足りなければむしろ足して返すくらいです。着想が面白かったら、活かしつつ「もっとこうしてみよう」とか。もしくは着想そのものがズレてたら、今回はごめんなさいっていうこともありますけどね。

自分がアニメーターだった頃も、自分のアイディアが通ると嬉しかったし、ダメな時は「やっぱりな」ってなりましたし。ダメなときって、描いてる時に「なんか違う気がするけどとりあえず出してみよう」みたいな感覚があるんですよね(笑)。

──今作で最もこだわった表現について教えてください。

今石さん:とにかく大変だったんですが、ほぼ全編を色トレスにしたことですね。でも普通のセルアニメのようにも見える部分もあるので、その両方の美味しいところを作りたいなと

『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』のときと一番違うのは、脚本が中島かずきさんというところです。中島さんの脚本は本当にドラマチックで、感情移入できて、その感情が爆発するダイナミクスがある。でも、映像があまりにアート寄りだと見ていて感情移入できないんですよね。映像に目がいってしまうというか。その調度良い塩梅を狙っているのが今回苦労してるところです。

──『プロメア』を3つのキーワードで表現するとしたら?

今石さん詰め込み満腹食あたり。でも、喉越し爽やか(笑)。


キーワードのチョイスとか、今石さんにいたっては3つじゃないっていう、この感じがなんともTRIGGERらしくて最高でした。

『プロメア』を見た時は初めて目にした表現がたくさんあって、なんと表現すべきかわからなかったんですが、実際の制作としても新しいことをやろうとしていたのですね。かといって斬新なだけでなく、アニメーションとしての興奮や物語としての感動も手抜かりはない。全部盛り、まさにTRIGGER全部盛り

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Photo: ギズモード・ジャパン

劇場アニメ『プロメア』は、絶賛公開中。連休も終わってまったりモードな脳髄に、インフェルノ級にホットなTRIGGERアニメーションはよく効くはず。満腹覚悟で、いざ劇場へ!

Source: 映画『プロメア』公式サイト, YouTube

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