『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』レビュー:怪獣の前には誰でも平等に無力、これぞダイバーシティ

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  • author 中川真知子
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』レビュー:怪獣の前には誰でも平等に無力、これぞダイバーシティ
Image: Warner Bros.

自分でも予想していなかった部分に惹かれました。

先日、ゴジラ好きの6歳の息子と『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を見てきました。正直、最初はそこまで期待していませんでした。大味でVFXにモノを言わせた作品なのかな、と。しかし、途中で気づいたのです。これは絶対に子供に見せるべき最高の映画だって。

今日は、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が他に類を見ない優秀なダイバーシティ映画であることを伝えるべくレビューしていきたいと思います。

単なるモンスター大戦ではない

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のストーリーはこんな感じ。

舞台は 前作『GODZILLA ゴジラ』 の5年後。元モナークの一員であったエマ・ラッセル博士は、人類によって汚染された地球を正しい形に戻すべく、キングギドラ、ラドン、モスラを蘇らせてしまいます。ラッセル博士の思惑通り、地球は破壊され、人類は滅びようとしています。そんな神話怪獣の破壊を止められるのはゴジラ。モナークはキングギドラを倒すため、ゴジラに希望を託します。ラストは四つ巴の大乱闘の末の王降臨。

私を含め、観客はモンスター同士の大バトルを期待して劇場に足を運んだと思います。しかし、本作は怪獣たちの大暴れかと思いきや、エマ・ラッセル博士の家族を中心とした人間ドラマもしっかり描かれています。また、これまでひっそりと怪獣たちを研究してきたモナーク組織のメンバーも、芹沢猪四郎博士を筆頭に、モンスターに対して様々な感情を抱いていています。で、人間ドラマと怪獣大戦のシーンはほぼほぼ同じ分量なんです。

でも肝心のアクションは見えにくかった…

これは完全に私のミスなのですが、没入感を楽しもうと比較的前の方に座ったのが原因で、画面は全編通して暗く、アクションが始まれば動きが早すぎてほとんど見えませんでした。それでなくとも最新のVFXにおかげで怪獣達の動きが早くなっているのだから、想定して後ろの方に座ればよかったものを、できるだけ大画面の恩恵を受けようと張り切ってしまったのが仇になってしまいました。

まぁ、没入感や迫力を味わったといえば、そうだと思いますし「何が起こっているのか分からないけど怖い…!」という、画面の中のモブ的立ち位置の人たちのリアルな恐怖は疑似体験できたと思います。しかし、もうちょっとハッキリとスッキリとゴジラの様子を観察したかったです。

何より残念だったのが、キングギドラの3頭に個性を持たせるためにモーキャプ俳優を3人起用して差別化を測ったという事前情報を知っていたので楽しみにしていたのに、そのキャラの違いに気づく余裕すらなかったこと。後ろの方の座席に座った人曰く、その違いがハッキリとしていて良かったと聞いたので、非常に残念に思いました。

しかし、アクションを見えにくくしていたのは、座席の位置だけではありませんでした。今作ではストーリーに深みを出すために人間ドラマシーンが多く入ってきます。怪獣バトルシーンが始まっても、定期的にカメラが見守る人々のリアクションシーンを捉えるので、「バトルをお腹いっぱい観れた感」が微妙に満たされませんでした。

でも人間ドラマにこそ本作の最大の魅力があった

ゴジラ vs ギドラ、モスラ vs ラドンという夢の大戦が何度か小出しになるものの、画面は暗いし早いし目が滑る。はっきりと見えるのは怪獣たちの一挙手一投足にリアクションを取る人々。(自分の座席ミスを棚に上げて)「おいおい、主役は怪獣なんだからもう少し怪獣の活躍を見せてくれよ」と少々不満を抱いた頃、あることに気づいたのです。それは本作がダイバーシティを描く映画としてとても成功しているということです。

昨今のハリウッドはダイバーシティを重んじていたり、チャイナマネーで作っているからという理由で、意識的に色々な人種を登場させます。しかし、ホワイトウォッシュ(白人以外の役柄を白人が演じること)を取り巻くハリウッドのいざこざを知る側からすると、今のダイバーシティ云々は非常に白々しく感じさせられることが少なくありません。画面の向こうのスタジオ上層部の思惑や事情まで透けて見えてしまうようで、物語に集中できないことすらあります。

しかし、地球の頂点が人間ではなく怪獣であるという本作の設定の前では、あらゆるバックグラウンドを持つ人々が平等に見えました。国籍や宗教がなんであれ基本は無力、絶対的権力の前に人種マウンティング無し。そして、考え方は違えど、地球を良くしたいという気持ちはひとつです。これらがとても自然に組み込まれていることに気がつきました。おそらく、『ゴジラ』シリーズへのオマージュ云々をまったく知らない子供達は、怪獣大戦を楽しみつつ、ごく自然な形でダイバーシティと平等を目にできたのではないかと思います。

これは、最終的に人間が地球再建の舵取りをするディザスタームービーでも、人間が倒せるレベルのモンスターパニックムービーでもできなかったことだと思います。怪獣を神と崇め、完全に主導権を明け渡しているモンスターバースだからこそできるアプローチではないでしょうか。マイケル・ドハティ監督がこれを意図していたのかどうかはわかりませんが、このサブリミナル・ダイバーシティには感動すら覚えました。

本作は、そのVFX技術やモンスターの動き、日本が誇る『ゴジラ』シリーズへのオマージュやリスペクト、小ネタなど注目ポイントがおありすぎて、褒められたり酷評されたりしています。私は、この作品が、ハリウッドが今後目標とすべきダイバーシティ表現の答えであると感じて、とても価値が高いと思いました。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は絶賛公開中。魅力を余すところなく楽しみたいなら、ぜひ後ろの方の座席でご覧ください。没入感とラストの鳥肌ものの迫力を楽しみたいなら、前の方の座席もいいですよ!

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』見たい? ほしい?

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https://godzilla-movie.jp/

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