AIに抱いていた疑問と恐怖が浮き彫りに! リブート版『チャイルド・プレイ』レビュー

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  • author 中川真知子
AIに抱いていた疑問と恐怖が浮き彫りに! リブート版『チャイルド・プレイ』レビュー
Image: © 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.

愛が溢れるホラー。

AIがいれば、寂しい心を埋めてくれたり(『AI』)、暇な時には話し相手になってくれるし(『Her』)、将来的には自分の介護をしてくれたり、泥棒の手伝いまで(『素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー』)してくれます。

一方で、進化しすぎたAIが人間に下克上してきたり(『ターミネーター』)、感情を揺さぶってきたり(『エクス・マキナ』)する恐怖も常に付きまといます。

先日公開したリブート版『チャイルド・プレイ』は、そんなAIの良いところと超悪いところを表裏一体にして、笑っちゃうくらい怖くした作品です。オリジナル製作時のアイディアの原石を元にした内容で、笑える要素満載なのに、劇場を後にしてAIだらけの家に帰ってきたらゾッとさせてくれるコスパ良しの内容に仕上がっていました。

では、今日は「ちょっとAIの開発やめてくれない?」とGAFAMに嘆願書を送りたくなるスラッシャーホラー『チャイルド・プレイ』をレビューします。


AI搭載スマートトイなチャッキーさん

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Image: © 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.

大雑把にストーリーとして、今回のチャッキーはおなじみのGood Guy人形ではなく、スマートデバイスを作るカスラン社のバディ人形。バディ人形にはAIが搭載されていて、タブレットでプログラミングできるし、スマホがリモコン代わりにもなります。人間の行動や会話からどんどん学習しますし(超ハイテクなファービー人形みたいに)、リアルタイム情報がわかるセンサー付きのカメラも搭載されています。つまり、動いて学べて一生の忠誠心を誓ってくれるスマートホームというわけ。

バディ人形は、持ち主の親友(バディ)になるために開発されました。だから、持ち主の喜ぶことは率先して行ないたい、持ち主が困っていることがあれば率先して解決してあげたいんです。これがさらっとした友情なら嬉しいのですが、バディさんは常に愛を求めていて、常に究極の愛を与えたいタイプなので困りもの。その独占欲が暴走し、行動がいきすぎてしまうんですね。

〜ここからけっこうネタバレ〜

私たちのAIに対する漠然とした恐怖を描いた設定

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Image: © 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.

前述の通り、本作のチャッキーは人間の言葉や行動から学習して、どんどんスマートになっていきます。でも、人間の感情は結構複雑。まぁ、ディープラーニングでかなりの部分まで人間らしい思考回路ができるようになるとは思うのですが、本作では初歩的な部分でクリティカル・エラーを起こしてしまいます。それが…、ホラー映画事件

チャッキーの持ち主…、もとい親友であるアンディは、同じアパートの友人ふたりとR指定のホラー映画を見ています。その映画では、『ヒルズ・ハブ・アイズ』とか『クライモリ』とか『悪魔のいけにえ』とか『マーダー・ライド・ショー』的なことが展開されていて、少年たちは大爆笑。しかし、その様子を見ていたチャッキーは、殺しシーン=面白いと勘違いしてキッチンに向かい、少年たちに向かって包丁を振りかざします。

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Image: © 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.

このシーンを馬鹿げていると笑えるなら良かったのですが、私は心底ゾッとしました。というのも、人間って「嫌い」といいつつ本当は好きの裏返しだったり、「どこかに行ってほしい」と言いつつ本心は抱きしめて欲しかったりすることがありますよね。劇中のアンディも、幼さゆえに母親の恋人に対する気持ちを過激な言葉で表現してしまいます。そして、ホラー映画事件同様、チャッキーは言葉通りに受け取り行動してしまうのです。

今の世の中、私たちの生活はAIに監視されていると言っても過言ではありません。「警察を呼んだのか」という会話に反応したアレクサが警察を呼んで、暴力を振るわれていた女性が救出されたというケースが何件か起こっていることからも、AIは言葉を額面通り受け取ることがわかっています。これらのケースは良い結果につながりましたが、これがふざけあってた時に発生した言葉の場合、AIはそのニュアンスを理解できるのか。『チャイルド・プレイ』はそんなAIに対する不安を浮き彫りにしています。

そして問いかける倫理観

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Image: © 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.

本作はオリジナルが構想された88年に生まれた「高度なおもちゃが持ち主の成長に伴って飽きられてしまったらどうなるのか」がベースになったストーリーになっているんですね。

バディ人形は、カスラン社の社長であるヘンリー・カスランの「自分自身が認められ、理解され、愛されること、それが幸せ」のモットーに、持ち主を親友と認定してひたむきに愛してくれます。しかし、人間の方はというと、バディ人形をあくまで人間の友達の代用品と捉えています。この埋められない溝がバッドエンドを引き起こします。

映画『AI』でもそうでしたが、人間の虚無感や寂しさを埋め合わせるためだけに生み出されたAIの末路は悲惨です。『AI』でも『チャイルド・プレイ』でも、人間にもなれずおもちゃにもなれず中途半端に生きなくてはならないAIたちは、自らの存在意義を自問自答し苦しんでいます。人間のように自らの自由意志で行動できれば『エクス・マキナ』のように活路を見出せるのでしょうが、「持ち主を愛すようにプログラム」されているAIには、待つか、過激な方法で愛し続けるかしか選択肢がありません。

「今の世の中にマンモスを蘇らせていいのか」「臓器移植のためにヒト遺伝子をもつ生物をデザインしていいのか」に近い倫理観でしょうかね。技術はあるけど、人間のエゴのためだけに人間に近い感情を持つAIを作っていいのでしょうか。この本作はそういう疑問を呈しているのかも。

で、肝心なホラーとしての魅力はあるの?

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Image: © 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.

AI云々が注目されますが、ホラー映画としてもしっかり面白いと思います。私は結構楽しみました。しっかり笑いましたね。あるあるな驚かせ方もあれば、『チャイルド・プレイ』シリーズのウリでもあるお茶面なグロ・デスもたっぷりありました。今回はスイカ・デスや、スマートホーム・デスといったデスが観客を楽しませてくれるんですが、私は特にキャビネットの上のスイカ・ヘッドに笑いましたね。

また、『チャイルド・プレイ』シリーズのこだわり(?)でありツッコミどころである、どう考えても可愛らしくない人形デザインも健在。「爆売れ人形」という設定ですが、デザイナーの怠慢としか思えないほど可愛くありません。だいたい、頭が大きすぎ。後半で次世代バディ人形がお披露目されるんですが、それが本当に酷い。デザイナーをクビにしたほうが良いレベル。

オリジナルの『チャイルド・プレイ』とはかけ離れた設定ですが、私はこの時代だからこそ存在する不安を反映していて面白いと思いましたよ。愛にあふれたホラーを見たい人にオススメしますよ。

『チャイルド・プレイ』は公開中。みたらマーク・ハミルの歌うバディソングが頭から離れなくなりますよ!

最後に、試写会会場で見かけたリアル・チャッキー人形をどうぞ。

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Photo : 中川真知子
この人形は結構可愛いと思った。抱き心地の良さげな大きさだから家に一体ほしい

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映画『チャイルド・プレイ』公式サイト

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