バケツ一杯の頭、男根、フランケンシュタインなど1775体。FBI元捜査官が語る、人体ブローカー強制捜査の悪夢

  • 48,869

バケツ一杯の頭、男根、フランケンシュタインなど1775体。FBI元捜査官が語る、人体ブローカー強制捜査の悪夢
Image: Wikimedia

ちなみに人間の頭は3万円。メールで買えます…。

献体を募り、バラバラにして売りさばく「人体ブローカー」。アメリカでは大学病院でも篤志献体協会でもなんでもない普通の民間会社が献体をすすめ、入手した人体でボロ儲けし、ちょっとした社会問題になっています。

Reutersが実際に人間の頭を取り寄せるなどして5年間調べて把握しただけでも人体ブローカーを行なっている会社が34社あり、非営利法人はわずか9社で、残りは全部営利目的でした。なにしろ善意の献体。原資はほぼゼロ。利幅がとてつもなく大きく、3年間で1250万ドル(13億6000万円)儲けてる会社もあったんだそう。寄付の使途とお金の動きを把握している州は4州しかないため、どれだけの市場規模なのかは不明ですけど、Reutersが開示請求で4州から入手した記録をもとに試算したところでは、2011年から2015年までの“取引高”は推定5万体、延べ182,000パーツにのぼるものと見られています。

FBI捜査官がPTSDになった凄惨な現場

ちゃんと医学の進歩のために使われているならまだしも、Reutersが頭をメール発注でアッサリ購入できてしまったことからもわかるように、その実態はいい加減で、名無しの骸を山のように積み重ねてチェーンソーで解体し、買い手の身元確認もなく売りまくるブラック会社も少なくありません。その代表例が2014年にFBIの強制捜査であえなく閉鎖となったアリゾナ州の「Biological Resource Center(BRC:生物資源センター)」で、ガサ入れのときの陰惨極まりない現場の模様を元FBI捜査官が今ごろになって語り、改めて衝撃が走っています。

以下がそのMark Cwynar元捜査官証言。

それは「身の毛もよだつシーンの連続」だった。「腐敗した頭部」もあれば「バケツ一杯の頭、腕、脚」、クーラーボックス「いっぱい」の男根もある。壁には「女の頭を男の体に縫い付けたフランケンシュタイン状のおぞましいものがぶら下がっていた」(Arizona RepublicKTVKより)

現場から押収された人体はけっきょく計1,755体、ごみ袋に分けて142個、10トン分にもおよびました(Reuters)。運んでも運んでも運びきれない…。ハンニバル・レクターの猟奇殺人現場の比じゃないです。Reutersが取材した元FBI捜査官Matthew Parkerさんのほうは、遺体を搬送するだけでPTSD(心的外傷後ストレス障害)にかかってしまったんだそうですよ…。

「夜も眠れなくなった。まるで盗難車を解体して売るジャンクヤードのようだった」(Parker元捜査官)

ちなみにCwynar元捜査官の証言のほうは、「説明が違う」と遺族33人が同社を訴えている集団訴訟で明らかになったものです。父親と祖母の遺体を献体した原告のTroy Harpさんは、「体細胞のサンプルを採集し、がんと白血病などの研究に役立てる」という説明を信じたから献体に応じたのだといいます(KTVK)。でも、Reutersが調べたところでは、うち21体は米軍の爆破実験に使われていたんですね。道端に仕掛けた爆弾が人体に与える影響を調べる実験。遺族には「軍の実験には使わない」と言って、軍には「遺族の同意はとれている」と嘘をついていたんです(少なくとも軍はそう説明している。知って買ったとは口が裂けても言えない)。

人体の料金表

BRCは極端な例かもしれないけど、法律は一体どうなっちゃってんでしょうね。遺族が火葬代で困っていると「献体なら無料」だとすすめて、遺族は社会の役に立つならと同意する→火葬場は二束三文の紹介料をもらって(経営の苦しい葬儀社にとっては貴重な収入源)、ブローカーに引き渡す→あとはなんの説明義務もないグレーゾーンです。気になる末端プライスですが、以下は2013年当時のBRCの料金表です。

全身 2,900ドル

頭と胴体 2,400ドル

脊髄 950ドル

脚1本 1,100ドル

足1個 450ドル

膝 375ドル

骨盤 400ドル (AZ Central、法廷資料より)

Reutersの調査ではもう少し高くて、頭1個300ドル、全身1体5,893ドルでした。こんな金儲けの道具に使われていたと知って遺族は青ざめているわけですが、「料金はサービス料。違法なことは何もしていない」というのが会社側の言い分です。

事実、アメリカでは胎児を除き、移植目的以外の人体の売買は完全に合法です。やっと最近になってコロラド州が人体ブローカー規制法を制定しましたが(アリゾナ州はこの事件後可決したけど施行は塩漬け中)、献体後の遺体の保管、売買を取り締まる法律はない州がほとんど。BRCの場合、刑事訴訟のほうは管理不行き届きなどの罪で有罪となり、2015年にStephen Gore社長に懲役1年・保護観察4年の実刑判決が下されましたけど、社長は「慈善事業」であって「事業運営のガイダンスになる正式な法律なんて何もなかった」と判事に涙ながらに訴えていました。いや、ガイダンスもなにも、あんたフランケンシュタインつくるのがアウトなことぐらい常識でわかるでしょうが常識で!壁に飾るな、このど阿呆め!…ハッ、すみません、献体登録者なもんで、つい取り乱してしまいました。

遺族のHarpさんは今、国全体で法律を決めて欲しいと訴え、「完全にホラーで、いまだに信じられない。ただただ信じられない」とKTVKに心境を語っていますよ。ほんとにわたしも訳しながら焦りまくりです。死ぬときは這ってでも日本帰ろうと思います 。

Sources: Reuters, KTVK, Reuters, AZ Central

2019年8月1日:保護観察としている部分は、記事公開時は「執行猶予」となっておりましたが、誤訳と判明したため訂正しております。

    あわせて読みたい

    powered by