5次元ってほんとうにあるの?

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
5次元ってほんとうにあるの?
Illustration: Benjamin Currie (Gizmodo US)

やわらか~いアタマで想像してみてください。

あなたは1次元の世界の住人です。直線上に前か後にしか進めません。あなたの目に映るものは前方に点、後方にもまた点のみ。

2次元の世界では前後に加えて左右の動きが可能になり、すべての動きは平たい線によって表されます。この世界でなにかに穴を開けようとしても、対象はまっぷたつに裂けてしまいます。

3次元まで拡張されると、奥行きが加わります。モノが視覚的にとらえられるようになり、ふつうに互いの周りを動き回れるようになります。

この上に4次元の要素である時間が加わるんですが、時間の流れは常に一方通行で、前にしか進めません。これ、わたしたちが住んでいる素晴らしき世界

さらにその上に5次元があるとしたら?

5次元の世界ではどんな動きが可能になるのでしょうか。ひょっとしたら5次元はとっくに存在しているけど、わたしたちの4次元的なアタマで理解できていないだけ?

はたまた、宇宙にはひそかに11次元まで存在しているけど、次元が丸まったり縮こまったりしているために質の最小単位で存在している粒子でないと感知できないのかも?

考えだしたらそれこそアタマが異次元にふっ飛びそうですけど、きっと物理を学んだ人なら一度は5次元の不思議について思いを馳せたはず(たぶん)。

あらゆる疑問に専門家が答えてくれる「Giz Asks」シリーズ。今回は、そんなあなたのために、数学者や物理学者がガチで考える5次元をご紹介します。実は有識者の間でもけっこう意見が分かれているようですが…

Djuna Croonさんの意見

カナダ・バンクーバーの粒子加速器、TRIUMF(3大学メゾン研究施設)の論理グループに所属するポスドク研究員

5次元の存在は興味深い可能性ではありますが、自然界で成り立つかどうかは未知数です。

素粒子物理学の理論の多くは5つ目の次元を計算に入れているのですが、その次元は空間(時間ではなく)の性質を持っていて、無限ではなく有限だと考えられています。すなわち、わたしたちが知っている次元とは性質が異なるのです。

このようなもうひとつの次元は、たとえば実験で観測された素粒子の動きを説明したり、まだ発見されていないほかの素粒子の存在を示唆したり、重力のはたらきを説明したりといろいろ利用できます。

5次元がリアルに存在するかどうかに関わらず、数学的なモデルとして活用できるのです。5次元という設定なら、4次元では計算しにくかったものが計算できるようになったりします。

わたしたちが5次元を直接見ることはできないでしょう。だからといって、それが存在する証拠を見つけられないわけではありません。

たとえばですが、クォークを見つけた人はまだ誰もいません。でもクォーク理論をもってなら、もっと大きな複合体であるハドロンの性質を説明するのに好都合です。このことから、いまではクウォークが質の基礎単位であると認められています。

同様に、もし5次元理論が実測値を説明できて、今後の実験についても満足に予測することができたら、5次元の存在が認められることになるでしょう

Tim Wasseさんの意見

ウィーン工科大学理論物理学研究所に所属する物理学者

わたしはひも理論家としてアインシュタインの一般相対性理論と量子力学の融合を試みています。

じつは、ひも理論は、5次元はもちろんのこと、6、7、8、9と10次元が存在しなければつじつまが合いません。これらの高次元がないかぎり、論理的に一貫したひも理論を展開することはできないのです。

では、高次元とはどんな姿をしているのでしょうか?これらの次元をわたしたちの肉眼で捉えることはできませんね。だから、きっととても小さいのでしょう

古典的な例はストローです。すごく離れたところから見れば、1次元的にしか見えません。もっと近くから見てみると、2次元的に存在している円が見えてきます。このことから、宇宙のいたるところに存在しているはずである5次元というのは、とても小さな円であることがわかります。とても小さいために、わたしたちには見えません。

もちろん、もっと凝った方法で5次元を探す実験も行われていますよ。光や顕微鏡を使わずに、5次元の長さの上限を計算する方法はいくつかあります。この5次元の大きさ、もとい小ささによっては、近い未来に5次元を発見できるかもしれませんし、永遠にできない可能性もあります。

もし高次元が同時に存在していたら、それらはおそらく丸いでしょうが、原理上はさらに複雑なかたちも可能でしょう。たとえば、2つの次元がドーナツ型(要はふたつの円)だったり、球形だったりする可能性だってあります。

ここで疑問に思うのは、なぜこれらの高次元はわたしたちが慣れ親しんでいる3つの空間次元とあまりにも違うのか?

わたしたちの世界に存在している3つの空間次元は、小さい円なんかじゃありません。とても大きな円です。もしかしたら巨大な円になっていて、宇宙船で長い間ずっと一方向に飛び続けたら地球に舞い戻ってくるのかもしれません。いまのところそんな環状性は認められていませんが、可能性までは否定できませんよね。わたしたちが知っている3つの空間次元は、高次元とはまったく性質が異なるものだということだけは確実ですが、どうしてそうなのかはまだ誰にもわかりません。

たとえば2次元だけ( 左右上下には動けるけど前後はムリ)の世界があったとしましょう。この世界の問題点は、わたしたちが知るかぎりの生命体は存在し得ない、ということ。もしかしたら高次元についても同じようなことが言えるかもしれません。生命にとっては、3つの大きな空間次元に時間次元がひとつ加わった世界が一番住みやすいとも言えるかもしれません。もちろん、どうしてそうなのかはまだ誰にもわかりませんけど。

Sabine Hossenfelderさんの意見

フランクフルト先進研究所に所属する研究者

5次元が存在する証拠はゼロです。5次元(またはそれ以上)が存在するかもしれないという憶測のもと、理論研究を展開している物理学者もいるにはいますが、そういう人たちは決まって高次元を発見できない言い訳をします。典型的なのは、観測可能な距離が長すぎたり短すぎたりするので異次元を発見できないでいる、云々。

最近では高次元を加えた理論モデルで生計を立てている理論物理学者がやたらと多くいますね。たとえば、ある特定の性質を持つ5次元が存在すると想定した場合、宇宙マイクロ波に見られる異常をどう計算できるか、などなど。

しかし、証拠なしに――そして妥当な理由さえなしに――これらの高次元が存在するかどうかを議論するなんて、ユニコーンがレインボーなウンコするかどうかを議論したほうがよっぼどマシ

Peter Woitさんの意見

コロンビア大学数学科講師

5次元のあり方はたくさんあると思います。しかし、もし5次元にほかの次元のような性質が認められたところで、実験的な証拠がまったくないのは問題です。加えて、隠れた5次元の存在を想定している理論モデルに説得力がないことも問題です。

素粒子物理学の「標準モデル」は幾何学的な理論であり、したがって4次元を超越した幾何学的な次元を包括しています。しかし、これらの内包された次元はわたしたちの知っている4次元とは極めて異なった性質を持っており、わたしたちが知るところの物理学的な法則にもしばられません。

Sean Carrollさんの意見

カリフォルニア工科大学物理学科教授

5次元(6次元、7次元…)が存在するかどうか、わたしたちは知るよしもありません。ひも理論のような有望な理論モデルが高次元の存在をほのめかしてはいるものの、実験的な証拠が積み重ねられているわけでもありません。

もし高次元が存在するのなら、わたしたちの目から隠されているのでしょう。もしかしたら小さなボール状に丸まっているからかもしれませんし、わたしたちをかたどっている粒子や力学は3次元的な「ブレーン (brane) 」内に限られていて、それ以上の広がりを持つ高次元を知ることができないのかもしれません。

すべての可能性を肯定しつつ、今後も物理学者たちは実験を通じて5次元を探し続けるでしょう

Reference: TRIUMF, コトバンク

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