人間に新しい手をくれる。車椅子用ロボットアーム

  • author 中川真知子
人間に新しい手をくれる。車椅子用ロボットアーム
Image: Kinova - YouTube

これぞテックの存在意義だ!

テックは人間の生活を豊かにしてくれる一方で、脅威です。テックに頼りきっている私たちは、テック無くして家から締め出され半日も路頭に迷いますし、プライバシーだってダダ漏れ。率先してプライバシーを公開する中毒もありますし、なんだかテックという巨大な手のひらの上で転がされているみたい。

だから、私はテックが好きだけど怖いです。古き良き、テックが私たちの生活を助けてくれている時代に戻った方がいいんじゃないか、アナログベースでテックがスパイス的な生活に戻った方がいいんじゃないか、とも思う時があります。

でも、Digital Trendsが紹介したJacoアームを見たら、テックの素晴らしさと今後も開発されるべき理由を改めて感じられました。市販の電動車椅子に取り付けたロボットアームが、上半身の動きに制限がある人に変わってドアを閉めたり化粧をしてくれたりするんですって。ユーザーの独立性をあげて、希望と喜びを与えてくれるんですよ。すごくないですか?

Jacoアームを開発したKinovaのマーケティングとコミュニケーションを統括するSarah Woolverton氏は、Digital Trendsに次のように話しました。

「このアームはユーザーがすでに持っている電動車椅子を拡張してくれます。ユーザーがいま使っている操作方法に合わせて、ジョイスティックでも息でも操作できるようになります。」

Jacoアームの制作秘話

Jacoアームが開発された裏には、Kinovaの共同創設者であるCharles Deguire氏の感動秘話があります。Deguire氏の叔父さんは、筋肉変性疾患である筋ジストロフィーに苦しんでいたそうです。今のところ治療法がなし。

親戚の苦労する姿を見ていたDeguire氏は、上半身が不自由な人の力になれる何かを作りたいと考えたようです。

「彼は共同創設者と一緒にエンジニアリングに行き、最初のJinoca Jacoを開発したんです。今から12年前のことになりますね。それ以来、全力を尽くして改良を続けてきました。」

前出のWoolverton氏はDigital Trendsに語りました。

「(Jacoアームは)ユーザーに飲み物を取ったり、ドアを開けたり、化粧をさせたりできます。以前なら多くのユーザーができなかったことなんです。こういったことができるようになることで、ユーザーはある程度の独立性を得ることになります。Jacoアームを使い始めて数日で、ユーザーが何をしたか、どう使ったか、何をできるようになったかの素晴らしい話を聞くことがあります。とても誇らしそうで、本当に感動させられます。」

現在、Kino Roboticsはカナダ、ドイツ、そしてアメリカにオフィスを構えるほど成長したそうです。しかし、同社のアーム普及に立ちはだかる壁が……。

保険適応外の国では高すぎる

アメリカの医療費は高いと耳にしますよね。保険に高いお金を払っていても、カバーしてくれる範囲が狭くて必要とする医療が受けられない、薬が買えないなんてこともザラです。そして残念ながら、アメリカの医療保険ではJacoアームは適応外なんです…。日本もまだです。ドイツでは保険適応されているんですけどね。

保険がカバーしてくれないとJacoアームの値段は3万5000ドルもします。日本円にして約380万円ですよ。そうそう手が出る値段じゃありません。たとえ無理して買ったとしても、その後の支払いで生活が立ちいかなくなる可能性が高いです。

「価格は私たちにとって重要な問題です。」とWoolverton氏。「私たちは主に保険がカバーしてくれる市場をターゲットにしてきました。そうでなければユーザーに届かないからです。」

状況は変化しつつある

しかし、状況は変わりつつあるとWoolverton氏は感じているようです。

「私たちは以前より受け入られらているのを感じます。究極のところ、数年後には市場が開かれると思います。Jacoアームがユーザーの自立性を高め、最終的には保険会社の負担を軽減できることを理解してくれることが重要です。介護者やその他の負担を節約することになるのですから。」

開かれた未来に希望を持つ一方で、Kinovaは、自己負担で手に入れないといけない人たちのために低価格なJacoアームの開発も進めているそうです。


Jacoアームの記事を書きながら、きっとスマートスピーカーも体が自由にならない人の独立性をサポートしているんだろうなと思いました。声さえ出せればいろんなものをコントロールできるんですもん。同じテックでも、立場や環境によって希望であったり脅威であったりするんでしょうね。テックを見る目が変わるなぁ。

Source: Digital Trend

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