干上がって完全に砂漠に…。
青々と水をたたえた貯水湖の画像は2019年2月に撮影されたもの。そして、それがわずか4か月後には衝撃的なまでの変貌を遂げています。インドで6番目に大きい都市、チェンナイ(旧マドラス)が、深刻な水不足におちいっています。
人口465万人を抱えるチェンナイ市は、なんとか水を確保するために淡水化プラント(海水を脱塩する工場)をフル稼働させて、連日トラックや電車で水を運びこんでいますが、長期的な解決策とは言えなさそう。
いままでの水管理が不十分だったことに加えて、地下水の過剰な汲み上げも水不足の原因となったようです。そこに気候変動が追い打ちをかけ、水の循環が機能しなくなってしまいました。
気候変動は熱波を呼び込み、水の蒸発をうながして地表の温度も上昇させます。チェンナイでは過去60年間で気温が1.3℃も上昇し、地中の水分がどんどん吸い取られてしまっていました。
チェンナイだけじゃない
恐ろしいことに、チェンナイ市のみならず世界中の都市でおなじような現象が起きています。南アフリカのケープタウンでは去年貯水湖が干上がりました。ブラジルのサンパウロは2015年の干ばつで水不足に。
カリフォルニア州でも干ばつがここ数年続いていましたが、2018年~2019年に記録的な雨量を観測したおかげでなんとか助かったようです。
気候変動で地球の気温がじわじわと上昇している今、雨が急にドバッと降ったり、反対にまったく降らなかったりと、気象パターンがおかしくなってきているのは地球どこでもおなじ。明日は我が身かもしれません。
検証:チェンナイの場合
チェンナイでは2018年に雨が200日近くも降らなかったのに加えて、雨期もたいした雨が降らずに終わってしまいました。今年に入ってからチェンナイ市の4つの貯水湖が縮小しはじめ、5月の猛暑がさらに水を奪いました。

6月中旬には貯水湖がすべて枯渇し、市の役人がBBCのインタビューに「もはやチェンナイを救えるのは雨しかない」と苦しいコメント。その後もパラパラとした雨しか降らず、危機的な状況が続いています。
なんとか水を確保しようと給水トラックに頼る人々に対し、中には水の値段をふっかけている悪徳業者もいるらしく、社会的弱者にとっては死活問題となっています。
都市化の弊害
チェンナイの水不足は乱開発のせいでもあるようです。
1940年代以降、チェンナイの人口増加率は2ケタで高止まりしています。人口が急増しているのに水管理が計画的に行なわれてこなかったせいで、市内の水供給システムはムダが多くて非常にお粗末な状態。水道のメーターすらないので、水の使いすぎもモニターできていないそうです。
都市化が進んで地表がコンクリートで覆われ、雨水が地中に浸透しづらくなったのも地下水の枯渇につながってしまいました。井戸を掘っても水が出ないとなると、貯水湖に頼るしかない。でも降雨量が足りなくて貯水湖の水も底をついてしまうと、もう給水トラックに頼るしか生きる道はありません。

解決策は?
チェンナイの悲劇は、気候変動に伴う環境の変化と、政策の失敗とが重なった結果でした。
単に淡水化プラントを増設するだけでは、今後も同じようなことがまた起こるかもしれません。対策として、世界資源研究所(World Resources Institute)のラジ・バガット氏は
・積極的な雨水貯蓄
・水の再利用
・農地の灌漑(かんがい)効率を上げる
などを勧めています。
気候変動の影響はもう待ったなし。水資源を守るために、今からできるだけのことはしておきたいですね。
Source: BBC News