脳がとろけるような快感は得られない?
Appleが背筋に戦慄が走るようなことをやらしてくれました。もちろん良い意味ではなく、です。
iPhoneで撮影された写真・動画を紹介する「Shot on iPhone」の新しいキャンペーンの一環で、Appleは4本のASMR動画を公開しました。女の人が呪文のように奇妙な言葉を囁き続けたり、男性がひたすら木工作業をしていたり、山道をハイキングする足音がガシャガシャ鳴っていたり、テントやキャンプ用品の上に雨が降り注ぐ音がしばらく続いているのです。
ASMRとは
ASMRとは簡単にいうと音フェチ動画。『スター・ウォーズ』のカイロ・レンが機械音で喋り続けるコスプレ系や、ケーキを作るときに発生する音をフューチャーした料理系など多岐に渡りますが、ひとくくりにYouTubeで人気のあるジャンルです。
好んで聞く人たちは、そうした強調された音が癒やしをもたらしたり、くすぐったくなる感覚を憶えるといいます。これは耳のオーガズムという意味の俗語「イヤーガズム」とも揶揄されます。かつてはIKEA(イケア)が、自社製品をASMRで紹介する斬新なCMもありましたよね。
強烈に不快感を憶える人も
ですが私は、幽霊になった自分の墓石に、氷のように冷えたガソリンをチョロチョロと掛けられるような感覚を味わいました。これら4本の動画を「聞いて」みて、死んだ自分の背筋に、山に棲む鬼婆のバーバ・ヤーガが、硬い爪を幾度となくスーっと這わせたかような気分になってしまいました。特にそれを味わったのはハイキングに次いで囁き声だったのでした。
ASMR動画も撮影できる、そうiPhoneならね
快楽ではなく恐怖に縮み上がるような反応だったとしても、それはそれでAppleはASMR動画でとても良い仕事をした……ともいえるかもしれません。
動画の説明いわく、これらを撮影したのは、ほかのApple広告も手掛けている映画監督のアンソン・フォーゲル氏とのこと。いずれもiPhone XSとXS Maxで撮影したものですが、iPhoneだけで同じ結果が得られると考えるのは少々誤解を招きます。動画の説明には、追加のソフトウェアと業務用ハードウェアが使用されていることが追記されています。
続編も作られそう
これらの動画は「シーズン1」と呼ばれているので、今後さらにAppleから似た動画が公開されるのでしょう。ですがAppleさん、後生だからマジでホントに料理系だけでは作らないでください。濡れた具材と乾いた材料をグチャグチャと混ぜる音だけは、編集部に「聴け」といわれてもカンベンです。窓からコンピューターを放り投げることになりかねません。