見た目はPC! 頭脳はスマホ!
コンピューターの頭脳、CPU。つい数年前まで、PC向けのCPUといえばインテルかAMDの2択で、よそのチップが割り込む余地なんてほぼゼロでした。ところが最近、スマホ向けCPU(SoC)で存在感を増してきたクアルコム社のスナップドラゴン(Snapdragon)がこの領土に殴り込み。マイクロソフトの協力も得て、インテル入ってない、AMD入ってないPCが誕生したのです。
ちまたではスナドラPCなんて呼ばれているこのマシン、実際どれくらい使えるヤツなんでしょう? CPUにPC向けにカスタマイズされた「Qualcomm Snapdragon 850 Mobile Compute Platform」を採用し、OSにARM版Windows 10 Homeを搭載した2in1ノートPC「Yoga C630」をLenovoからお借りしてレビューしてみました。
Lenovo Yoga C630

これは何?:スマホ向けのCPU「Snapdragon」を採用したWindowsマシン
価格:12万1306~円(税別)
気に入った:軽快な動作、バッテリーライフ、スマホ感覚でネットに繋げる
気になった:使えるアプリが限られている、モバイルするにはちょっと重い、スピーカーがしょぼい
中身はスマホでもWindowsはヌルヌル動く
CPU以外のYoga C630のスペックは、メモリ4GB(グラフィックメモリと共有)、ストレージ128GBのSSD。SIMスロットも備えており、SIMカードを入れて設定するとインターネット接続が可能になります。そのほか、eSIMも内蔵されています。ていうか、これハード的にはほぼスマホですよね? これでWindows動かせる? メモリ足りなくない?
なんて思いながら起動しわたけですが、第一印象で感じたのが、「こいつ、意外とヌルヌル動く!」ということ。起動してから動作可能になるまでのタイムラグもあまり感じませんし、EdgeでWebサイトを表示させても、特にストレスは感じません。
「スナドラってこんなに動くんだ!」
素直にそう思いました。YouTubeで動画を再生してみても、普通に見られます。ひっかかったり、カクカクしたりしません。僕が持っている、ちょい古めのCore M搭載のノートPCよりスムーズです。なんか悔しい。





仕事用のアプリはちゃんと動かせるの?
第一印象は結構よかったのですが、普段使いのメインマシンとしてどれくらい使えるのでしょうか。

まずはビジネスマンのお供、Microsoft Officeを使ってみます。使えることは使えるのですが、スナドラPCではWindows Store版のOfficeしか動きません。まあ、別にそれで何か困るということはないのですが、若干の違和感はありますね。
動きに関しては、普通に使えます。Office関連のファイルを開いたり、編集したりはもちろろん、新規で書類作成するのにもそれほど不満を感じることはないでしょう。合格!
お次はAdobe Photoshop。ARM版Windows 10でPhotoshopを使うには、ちょっと面倒な手順が要ります。そもそも、搭載されているARM版Windows 10はSモードとなっています。このモードでは、Microsoftストアで公開されているアプリしかインストールできないのです。で、MicrosoftストアにPhotoshopはないんですね。通常のWindows 10のように好きなアプリをインストールするには、このSモードを解除する必要があります。
Sモードを解除するだけでは、まだPhotoshopは動きませんよ。Adobe Creative Clioud経由ではPhotoshopのインストールは不可。最新のAdobe Photoshop CC 2019は64bit版で、ARM版Windows 10は64bitアプリを扱えないのです。
ひとつ前のバージョンであるAdobe Photoshop CC 2018の32bit版をAdobeからダウンロードして使ってみました。

なんかエラーが出ました。まあ、3D機能とかフィルターとか使わなければ大丈夫みたいです。

デジタル一眼レフのRAW画像を読み込んで、Adobe Camera RAWで読み込みました。一応現像とかできますけど、やや動きが重いかな。

Photoshopでの編集もしてみました。うーん、やっぱりちょっと動きが重い感じ。緊急用としてはいいかもしれませんが、快適に画像編集したいという方には向いていません。
ちなみに、個人的にPhotoshopよりも利用頻度の高いLightroom Classicはインストールできませんでした。残念。
スマホ感覚でネットにつながる感覚はクセになっちゃいそう

しばらく持ち歩いてい使ってみたのですが、やはりいつでもLTE接続ができるのは快適ですね。外出先でも画面を開けばネットに接続しているというのは、慣れちゃうと戻れなくなるかも。ほんとにスマホ感覚になります。

あとはバッテリーの持ち。フル充電で最大18時間と言われていますが、実際に見てみると14時間ほど。それでも十分ですよ。USB-C充電ができるので、モバイルバッテリーからの充電もできるのは安心感が高まります。
先ほども書きましたが、キーボードとタッチパッドの操作性もよく、画面も見やすいので、キーボードからの文字入力がメインの人にとっては、すごく使いやすいのではと感じました。Microsoft Officeもモバイル版とはいえ動きますし。僕みたいにテキストエディタとかOneNoteでガシガシ文字入力をするという人にとっては、特に不満は感じませんでした。
スマホ感覚とは言えないボディ&価格
気になるところもいろいろあるんですよね。まずは重さ。1.25kgあるんですよ。イメージしていたよりも重たいんです。たとえば、タブレットモードにして使ってみようかなと思っても、片手で持っているのがちょっと辛い感じです。

「スナドラ搭載!」と言われると、なんとなく軽いのかな? って先入観があったのも大きかったかと思います。

あとは、スピーカー。低音がほとんど出てません。まあ、こういうノートPCに音質を求めているわけじゃないのでいいんですが。でも一応スピーカーあるのなら、もうちょっと頑張ってくれてもよかったかなと感じました。テントモードにすると、反対側にスピーカー向いちゃうのもなんかアレだし。
そして最後。Office搭載のモデルが直販価格で15万6384円(税込)というところ。正直、15万円出して移動用のサブノートPCを買うのは、辛いかな。その価格帯だったら、選択肢はいろいろありますしね。10万円を切るくらいの価格であれば、ちょっと心がぐらつく感じ。8万切ってたら思わずポチっちゃうかも。そんな感じ。
結論:あと1、2年待ってみてから考えよう

メインマシンとして使うにはちょっと非力なので、基本はモバイル用のサブノートPCという感じになるかと思います。LTE接続ができる、バッテリーの持ちがいいという面では、モバイル用途にピッタリです。
しかし、モバイル用途のサブノートとして考えると、ちょっと重たいし価格も高いです。ARM版Windows 10 Homeということでやや面倒な面もあり、「スナドラPCだ!」という点にテンションが上がる人以外には、あまり心に刺さらないような気がします。
このYoga C630はハード面ではよくできているので、あとは価格がもうちょっとこなれてきて、ARM版Windowsの成熟が進めば、モバイルノートPCの第一選択肢になってくるのではと思います。あと1、2年、スナドラWindowsがどうなるか見守ってみましょう。

Source: Lenovo