いずれは日本も?
隣近所で不審者を通報して特典もらっちゃおう♪というノリで、Amazon(アマゾン)の防犯カメラ付きドアベル「Ring」を広める構想が、Ring社内で真剣に話し合われていたことがわかりました。
Motherboardが入手した社内プレゼン資料で明らかになったもの。見張りの班を地域ごとに作って、犯罪を報告するとRingの割引クーポンがもらえるという総監視社会を広める構想です。
たとえば、特典がもらえるのは、こんな人。
・見張りの班を作って隣近所のメアド6~10件を集めたキャプテン
・警察に不審者を通報した住人
・RingをSNSで広めた人
通報するのは、こんな目撃情報。
・不審なバンや車
・作業員を装った不審者
・隣近所をウロウロしている不審者
・車の中を覗き込んでいる不審者
班として特典がもらえるのは、こんなとき。
・新規メンバー10人獲得
・犯罪摘発
見張りの班にはエリアマネジャー(Ring社員)が担当について、Ringの監視カメラが捉えた映像を警察に通報する手順をサポートします。めでたく犯罪摘発になると、こんな特典がもらえます。
班の全員に「Ring購入50ドルOFF」のプロモコード
そうです。特典が配られて、またまたRingが売れるんです。ワクテカが消え去る音が聞こえますね。
これ本気ですかとMotherboardが取材したら、Ring広報はAmazonに10億ドル(約1062億円)で昨年買収される前の話だし、構想はけっきょく長続きせず終わったと説明しています。
この構想は一般公開を待たず、2017年に廃止になりました。弊社はお客様のプライバシー、セキュリティ、主体的コントロールを3本柱に据え、今後も地域のために投資、改善、技術革新を続けていきます。中には公式プログラムになる構想もあるし、試運転の段階を通過できない構想もあります。
確かに後日リリースされたデジタル五人組アプリ「Digital Neiborhood Watch」には、内部資料にあるような制度は含まれていなくて、隣近所の不審者を通報しても、50ドルの割引クーポンはもらえなくなってます。
アメリカでは普通に歩いている黒人の若者が不審者として自警団に撃ち殺されたりとかあるし、そこまでいかなくても、勝手に見張ってメンヘラ気味な怖い人はどの町内にでもいますからねぇ…。どっかの誰かから「見張り狂がキャプテンってどういうこっちゃ!? 勘弁してくれ」と苦情がきて企画倒れ、だったのかもね。
Ringはいろいろプライバシーのことで話題になりますしね。ウクライナのR&D拠点では、メアド打ち込むだけで世界中の監視映像すべてにアクセスできて、自由にダウンロードできる権限が全社員にうっかり付与されていたとかいう内部情報もありました(The Interceptより)。米Gizmodoの取材では否定してますが。
総監視社会待ったなし
そんなゆるい感じなのに、米Gizmodoが入手した警察向けのRingのプレゼン資料では、すでに「米国内225の警察と提携済み」とあって、「え? いつの間に!?」と全米に焦りが広まっています。
Ring広報は全署にRing導入に関するSNS拡散用の文例を配っていて、それ以外の配布は認めていません。プレスリリースも完全にコントロールしています。裏を返せば、どの署も一字一句違わないで発信しているということ。それに気づいた市民団体がネットで調べたら50署あって、地図(下記)を公表し、大問題になりました。米Gizmodoの調べでは、公表されていないものまで含めたらもっとあった、というわけです。
提携とは、上記の五人組アプリ「Digital Neiborhood Watch」利用者の自宅の防犯カメラの映像が警察直結になる、というものです。そんなことが知られたらRingが売れなくなってしまうので、各署管内に売り込む間は提携を控えるよう警察と密約を結んでいたり、なかなかにグレイな動きを見せています。
メールがみんな転送されてきてわかったんですが、たとえば、初期提携組のフロリダ州フォートローダーデール署では管内2000人のアプリ加入ごとにRing100台を署に寄付し、警察官に50ドルのRing割引クーポンを配布していました。上官が部下に宛てたメールでは「警察は売り子じゃないんだから、競合他社の製品よりRingを薦めるようなことがあってはならない」と釘を刺しながらも、「アプリのダウンロードは推奨したい」と大っぴらに言ってます。で、自治会の防犯講習に警察官が寄付のRingを持っていって、抽選会で配布したりしてたんです。アプリをダウンロードする約束で。まさか警察に映像が筒抜けになるなんて、知らないで入ってた人も絶対いますよね…。
Source: Motherboard