もはや職人による工芸作品。Netflixの人形劇『ダーククリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス』監督&プロデューサーにインタビュー

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  • author 傭兵ペンギン
もはや職人による工芸作品。Netflixの人形劇『ダーククリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス』監督&プロデューサーにインタビュー
Image: Netflix

セサミ・ストリート』、『マペット・ショー』のジム・ヘンソンと『スター・ウォーズ』のヨーダでおなじみのフランク・オズがタッグを組んで、全編アニマトロニクスを駆使して1982年に送り出したダークファンタジー映画『ダーククリスタル』。

今回は37年ぶりの新作として製作された、Netflixシリーズによる前日譚『ダーククリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス』のルイ・レテリエ監督と、製作総指揮でジム・ヘンソンの娘であるリサ・ヘンソンにインタビュー。制作の舞台裏についてたっぷり語っていただきました!

Video: Netflix Japan/YouTube

──オリジナルの映画は1982年に公開され、その続編も企画はされましたが公開はされませんでした。そんな中で今回の前日譚の企画は何年前くらいから始まったものなのですか?

リサ・ヘンソン(以下、ヘンソン):約3年前からですね。冒険好きなNetflixは、元の映画に見た目も雰囲気も似たTVシリーズを作ることに乗り出してくれたんです。以前からルイ(・レテリエ監督)とは『ダーククリスタル』の続編映画の話をしていたので、彼に「映画10本分の作品をやってみない?」と提案して監督になってもらいました。それから6カ月くらい準備をしてから、撮影はだいたい2年前くらいから始めましたね。

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Image: Netflix

ルイ・レテリエ(以下、レテリエ):撮影とパペットの準備には2年くらいで、撮影期間は1年かかっていますね。実は正式に制作が始まる前からシリーズの見た目を決めるためのテスト版としてショートムービーを作っていました。これもいずれ見られるようにはなると思います。

今作の制作過程ではパペットについて本当にたくさん学ぶことができました。Netflixがパペット学校の授業料を払ってくれたようなものですよ(笑)。

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Image: Netflix

勉強としてアトランタにあるCenter for Puppetry Arts(人形芸術センター)に行った時、世界中から集められたありとあらゆる構造のパペットを見ました。あまりに感動したので、そこにあるすべての構造を映画で使おうと決めました。

残念ながらベトナムの水上人形劇だけはやれませんでしたが、それ以外は導入することができたと思います。シーズン2があったらたくさん水を出してやるかもしれませんね(笑)。

──それから完成したのはいつ頃ですか?(インタビューは2019年8月初頭に行なわれたもの)

レテリエ:昨日の夜ですね(笑)。Netflixは全エピソードを同時に配信するし、各デバイス用に最高な形で対応したバージョンを用意しなければならないし、さらに各国語バージョンが必要なので、どうしても制作は複雑になります。

──企画自体はNetflixから提案されたものなのですか?

ヘンソン:NetflixにTVシリーズの話を持ちかけたのはこちら側です。ただ、私たちはTVシリーズにするならアニメーションにするのが現実的だろうと考えていました。ヘンソン社は『アバター 伝説の少年アン』に感銘を受けていたので、あのような2D作品を作りたいと思っていました。

ちなみに、この時に3DCGという案は考えませんでした。どうやっても偽もののパペットという感じになってしまいますからね。

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Image: Netflix

とにかく、そのような形で当初は2DアニメとしてNetflixに提案していました。しかしNetflixは、「パペットでやれば?」と言ってきたのです。私たちはパペットでシリーズをやるのは映画並みの予算が必要で厳しいだろうと考えていたのですが、Netflixは規模も予算も映画並みのシリーズを喜んでやらせてくれたのです。

──いくつかのエピソードを見させてもらいましたが、どこでCGが使われているのかぜんぜんわかりませんでした。一体どんなところで活用しているのですか?

レテリエ:CGと実写の区別をつかなくさせるのが僕らの狙いですからね。パペットの技術とCGの技術がまるで空中でハイタッチをするような最高の形で、パペットの映像にCGを付け加えて使っています。

基本的に視聴者の目がそれに慣れないようにCGと実写をうまく組み合わせています。完全にCGのところもあれば、完全に実写のところもあり、ちょっとだけCGを使ってトーンを変えたり修正をしたりと、いろいろな使い方をしています。

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Image: Netflix
ルイ・レテリエ監督

ヘンソン今作で導入している「今の技術」は、1982年の段階では私の父は使うことができなかったものです。たとえばグリーンスクリーンの合成でパペッティア(人形遣い)を消したりする技術ですね。ハリウッドから見れば技術的にはかなり古いものですが、1982年の段階ではないものでした。

だから今回の映画では、パペッティアがパペットの隣にいられるので、1982年の映画とは異なり、飛び上がったり戦ったりするアクションシーンができるようになりました。しかし、そんなシーンでもCGでアクションを作るのではなく、パペッティアがパペットを操っています。

──1982年の映画では画面に映らないように下からパペットを操作していることが多かったと思いますが、今回は合成が使えるようになってやり方が変わったのですね?

ヘンソン:そうなんです。パペットはケーブルの塊なので1982年の映画では、下に隠れている状態ではキャラクターを素早く動かすことができませんでした。

しかし、今はパペッティアを隠す必要がなくなったのです。ちなみに、私たちはこの姿を隠さないやり方を「文楽」と呼んでいます。日本の「文楽(人形浄瑠璃の系譜)」からは父の代から影響を受けていますからね。

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Image: Netflix

レテリエ:とはいえ、今作の大部分では昔と同じようにようにパペットを操作しています。しゃべるシーンでは頭に手を入れて口を動かしていますし、たとえ宙に浮くようなシーンでも周りで動かしているのは人です。

──技術が上がって楽になったところがある一方で、Netflixの配信サービスは4K画質だったりと、難しい部分はあったりしませんか?

レテリエ:高画質でなければならないという難しさはあって、今シリーズのためのREDと協力してカメラを作ることになりました。今の基準ではなく未来の基準に合わせて、8K画質でビスタビジョンで撮影しています。

その高画質で撮影された映像を1982年の映像と見比べながら、ちゃんと同じカメラで撮られたような雰囲気になっているかどうかを確認しつつ、最終的な映像を作っていきました。

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Image: Netflix

──Netflixは今作を作る上での仕事のパートナーとしていかがでしたか?

ヘンソン:この企画にすごく力を注いでくれて、同社の重役は作品のプロデューサーのような存在でしたね。制作中に難しい状況になった時や今までにない挑戦をするとなった時に熱心に手助けをしてくれましたし、必要なものはすべて用意してくれました。

レテリエ:上手くいかないときも解決策を一緒に模索してくれる、真のパートナーだったと思います。毎日が登山のような難しい状況でしたが、Netflixは常に応援してくれました。

そして今作の一番のファンでもありました。実際、重役のうちの一人は『ダーククリスタル』の世界については何でも知っている人でしたね。それでいてとにかく自由にやらせてくれたので、最高の気分で仕事ができましたよ。

──こういう舞台裏の話を聴いていると、ぜひメイキングが見たくなってくるのですが、いずれメイキング映像は公開されるのでしょうか?

ヘンソン実はNetflixはすでにこの作品のメイキングをドキュメンタリーにしています。多分、シリーズの公開と同時期に見られるようになるのではないでしょうか。

シリーズの途中で見ても、終わった後に見ても大丈夫でしょう。とにかくすごくいいドキュメンタリーになっていると思います。

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Image: Netflix

レテリエ:とにかく難しい撮影でしたが、私を含め映像を撮影するチームから、パペットを動かすチーム、そのパペットを作るチームと、皆が一眼となって取り組みました。今まで関わってきた映像作品とはかなり違う体験でしたね。

ヘンソン:本当に手作業が多い制作現場で、たとえばパペットの毛は2人のチームがすべて手作業で縫い付けています。今の大作映画ではエンドクレジットにはたくさんのCGアーティストの名前が出てきますが、このシリーズではたくさんの手工芸職人の名前が出てきます。もはやこのシリーズは工芸作品でもありますね。そんな制作の舞台裏がドキュメンタリーでは見られると思います。

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Image: Netflix

レテリエ本編ではその姿を見ることがない真のヒーローである、パペットを作るアーティストやパペッティアの姿が見られるドキュメンタリーとなっています。

とにかく、こんな素晴らしい人達と一緒に作品を作り上げられてワクワクしましたし、幸運だったと思います。なのですごく心を動かされるドキュメンタリーになっているでしょうね。

──かなり制作は大変そうな作品ですが、この前日譚のシリーズはシーズン1で終わりなのでしょうか?

レテリエ:それは皆さん次第ですね(笑)。多くの方に気に入って貰えれば、もっと作ることができるでしょう。とにかく皆さんがこの作品を、この世界を我々と同じように大好きになってくれることを願います。かつての映画のファンはもちろん、新しいファンも増えるといいですね。

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Image: Netflix
左からリサ・ヘンソン、Brian Froud、Wendy Froud。Brian FroudとWendy Froudは、映画『ダーククリスタル』も手掛け、現在も彼らの息子トビーと共に作品に参加したコスチュームデザイナー

制作チームが全力を尽くし、Netflixもそのサポートにかなり力を入れた凄まじい作品だということが伝わってくると思いますが、本編をみるとその成果が如実に現れている凄い作品となっています。オリジナルの『ダーククリスタル』の雰囲気を丁寧に維持しながら、ちゃんと今の作品として仕上がっていて本当に素晴らしい。映像は美しく、圧倒されます。

個人的には魅力的な『ダーククリスタル』の世界設定が、10話という時間をかけて映画以上にじっくり描かれるのもワクワクさせられました。舞台裏がわかるドキュメンタリーも非常に非常に楽しみですね……!

Source: Netflix

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ダーククリスタル: エイジ・オブ・レジスタンス | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

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