天文学者が銀河のブラックホールから前例のない閃光を発見

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
天文学者が銀河のブラックホールから前例のない閃光を発見
Illustration: ESO/MPE/Marc Schartmann via Gizmodo US

アインシュタインの一般相対性理論を証明するための研究が、ブラックホールの神秘に迫りました。

天の川銀河の中心にはブラックホールがあることがわかっています。いて座A*(「いてざエー・スター」と読む)と呼ばれるそのブラックホールの大きさたるや、太陽の質量の400万倍ともいわれています。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、過去20年間に渡っていて座A*周辺の天体の動きを観測し続けてきました。そして去る5月、いて座A*から今まで前例のない明るさの赤外線放射を確認したと論文で発表しました。ブラックホールの謎を解き明かすために重要な展開となることは間違いなさそうです。

ピカッと75倍の明るさに

「リアルタイムに変化するブラックホールを観測できるなんて、天体物理学ではものすごく珍しいこと」と興奮冷めやらぬ様子で米Gizmodoに話してくれたのは、UCLAの研究チームのメンバー、Tuan Doさん。

Doさんのチームは、ハワイ島にあるケック天文台に設置された赤外線カメラを使い、いて座A*を4夜連続で観測しました。5月13日には、赤外線放射がわずか2時間の間に75倍に膨れ上がったと論文に書いています。同じような閃光は4月20日にも確認されており、いずれの場合もすぐに消えてもとどおりの暗さになりました。そして、統計的にみても異常値ではなかったことがわかったそうです。

5月にケック天文台から観測された超大質量ブラックホール、いて座A*の様子を2.5時間分のタイムラプスでご覧ください。ブラックホールは常に変化しているが、今回の赤外線放射はいままで見たなかで一番明るかった。おそらく観測を始める前はもっと明るく光っていたと思われます!

たしかにピカッと光っていますね。でも、ブラックホールって光を含むすべてを飲み込むんじゃなかったでしたっけ?

事象の地平面に接近

ブラックホールには事象の地平面と呼ばれる境界面があり、そこより内側はブラックホールの強大な重力によって時空がゆがめられて脱出速度が光速を超えてしまうため、光さえも外に出てくることができないといわれています。ただ、ブラックホールに飲み込まれそうになっている天体が事象の地平面より外から放つ光やガスは観測可能です。

今回の閃光は、まさにそのような事態に陥った天体から発信されたのかもしれないと推測されるそうです。そして、もしそうだとしたら、アインシュタインが一般相対性理論で予測したとおりのことが起きていると考えておかしくないそう。

Doさんたちのチームはいて座A*のすぐ近くにあるSO-2と呼ばれる天体に着目し、過去20年間観測を続けてきていました。SO-2がいて座A*を巡る楕円軌道の周期は16年。そして今まさに、SO-2がいて座A*に一番接近しているタイミングなのだとか。

Illustration: Nicolle Fuller/National Science Foundation via UCLA Newsroom
SO-2がいて座A*の強大な重力にとらわられているイメージ図。

SO-2が放つ光は相対性理論の予測どおりに動いていると確認できたそうです。今回の閃光は、もしかしたらSO-2がいて座A*と接触した際に引き起こされたのかもしれません。あるいは、別のG2と呼ばれる天体がいて座A*に接近した際に放出したガスが、遅れて光ったのかもしれないとの見方もあるそうです。

どちらが正しいのかは、今後の観測で明らかになるのでしょうか。

見えないものをみるロマン

DoさんたちのほかにもSO-2といて座A*を観測し続けている研究者がヨーロッパにいるそうで、そちらでも今回の閃光が観測されたのかは気になるところ。そして、なぜこのところいて座A*が今まで観測してきたよりも活発なのか、今後どのぐらいこの活動が続くのか…などなど、まだまだわからないことだらけです。

それにしても、ブラックホールという直接見ることのできない物体が銀河系の中心にあるとわかっていること自体すごいのに、それを間接的に観測できちゃうなんてすごい…!

ブラックホールの謎とともに、その謎を追求している天才的な科学者たちの活躍にとんでもないロマンを感じます。

Reference: UCLA, Astrophysical Journal of Letters