地球を小惑星の衝突から護ってる人たちの話

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
地球を小惑星の衝突から護ってる人たちの話
Image: Elena Scott, Getty Images, Shutterstock via Gizmodo US

もうちょっとで『君の名は。』事態になっていたかも…。

つい先週、日本時間の7月25日午前に、地球と小惑星がニアミスしていたことが判明し、世界中が驚愕しています。

The Washington Postによれば、科学者たちの盲点を突いていきなり現れた小惑星『2019 OK』は直径57~130メートルのいびつな形をしており、地球から73,000キロメートル(およそ月までの距離の5分の1)の距離にまで迫ったそうです。専門家の話では、もしも地球に落下していたら、巨大な原子爆弾のごとく街をまるごと消滅させていただろうとのこと。

小惑星としては小ぶりなサイズ、また極端な楕円軌道などが2019 OKのアプローチを予測しにくくした原因だったそうで、「地球はだいじょうぶなんだろうか?」と一気に不安をかきたてられたニュースでした。

でも、たぶんだいじょうぶ。地球を小惑星との衝突から護るべく、昼夜研究に勤しんでいるヒーローたちがいるのです。

小惑星との衝突、核戦争、気候変動、未知のウィルスの出現…。人類が滅亡の危機にさらされるシナリオが数多く存在する中で、小惑星との衝突はもっとも研究と対策が進んでいるのではないか、と米ギズモードのライアンさんは書いています。

一体だれが、どうやって地球を護っているのでしょうか。以下、地球防衛の現状をまとめたライアンさんのレポートです。


私たちの知っているかぎり、今後数百年は地球に大規模な災害をもたらすような小惑星は来ません(が、『2008 ST』という名の小さな小惑星が2104年にニアミスする可能性もあるそう)。とは言うものの、2019 OKのような脅威がいつ私たちの頭上をかすめていくか予測がつかないのも事実です。

だから、アメリカ政府をはじめ世界中の科学者たちは、日々小惑星の脅威と真剣に向き合っています。

今年の春には米NASAやFEMA(米連邦緊急事態管理庁)、ほか各国の宇宙開発局が合同で地球に小惑星が衝突する事態を想定して、予行演習を行なったばかりです。

また、国際宇宙航行アカデミーが主催した2019年度のプラネタリー・ディフェンス・コンフェレンスでは、「もしアメリカ・コロラド州デンバーに大きな小惑星が落下してきたら」という架空のシナリオをもとに机上訓練が行なわれました。ただ、小惑星に核爆弾を打ち込む決断を下したばかりに、代償としてニューヨーク市を滅ぼしてしまうという痛い結果に終わったそうですが…。

「もし小惑星が地球に衝突したらその被害は甚大です。街、もしくは大陸がまるごと消滅し、文明が崩壊してしまうかもしれません。でも、衝突する可能性自体はものすごく低いのです。典型的な「高ダメージ・低リスク」問題ですね」とアメリカのニューメキシコ大学で地球惑星科学を教えているマーク・ボスロー非常勤教授は語っています。

小惑星はどこから来るのか

そもそも小惑星はどこから来るのでしょうか。

太陽系は、原始の太陽を取り囲んでいた塵から形成されました。その塵のほとんどは地球を含む惑星となりましたが、残りはお互いぶつかり合ううちに次第に小惑星を形成していきました。

火星と木星のあいだには無数の小惑星が漂う小惑星帯がありますが、これは木星の強大な重力が惑星形成を阻止したから。そして、それらの小惑星は、ときおり木星の重力によって軌道を乱されて、地球のほうへ近づいてきます。

小惑星のほかにも彗星などの物体が地球に近づくことがあります。これらの小惑星と彗星を合わせて「地球近傍天体(Near-Earth Objects)」、またはNEOと呼びます。NEOとは太陽の1.3天文単位(astronomical unit)以内に存在する小惑星や、太陽のまわりを200年以内に周回する彗星も含みます。1天文単位は、地球と太陽の平均距離である約1億5000万キロメートル。

Image: NASA/JPL-Caltech

上はNASAが公表しているNEOの動きを再現したアニメーションです。こうして見てみると、地球の軌道(画像上では白)周辺にはNEOがウジャウジャいますね……。

科学者はこのウジャウジャいるNEOのうち、地球に危険をもたらす可能性の高いものを「潜在的に危険な小惑星(potentially hazardous asteroids, PHAs)」と区別して呼びます。直径140メートルかそれ以上の大きさで、地球の軌道を横切る軌道を持ち、地球から0.5天文単位(およそ地球から月への平均距離の20倍)以内まで接近していくるものを指します。

もし実際PHAが地球に落下したら、地域的に甚大な被害をもたらすとボスロー教授は説明しています。隕石がひとつ落下することによって引き起こされる災害は、津波、熱波、衝撃波、豪風と、幾重にもおよびます。

ハレー博士の先見の明

隕石の危険性を最初に訴えた科学者は、おなじみハレー彗星の発見者でもある天文学者、エドモンド・ハレーでした。彼は早くも1694年には彗星が地球に落下する可能性を指摘しています。その後、18、19世紀に渡って何人かの科学者が同じように彗星による衝突を考慮してはいたものの、実際観測されていた彗星が少なかったこともあり、たいして心配されていなかったようです。

ロシアのエリギギトギン湖。およそ360万年前にできたクレーター内のくぼみ
Image: Getty via Gizmodo US

ところが1908年にツングースカ事件が勃発しました。ロシアのツングースカ川の上空に落下した隕石が大気中で爆発し、森を一瞬にしてなぎ倒したのです。

その後、地球のそばを通過した小惑星ヘルメスが観測されたのを皮切りに、1930年頃には大きな小惑星が多数発見され、徐々に人々の不安が募っていきました。

そして1980年には、ルイス・アルヴァレスと息子のウォルターらがメキシコ湾内の海底からイリジウムを含んだ6500万年前の地層を発見し、小惑星衝突説が生まれました。この発見が元となって隕石による恐竜絶滅説が提唱されるようになり、今や定説になりつつあります。

隕石の衝突がリアルタイムに

しかし、現代における最大の隕石落下事件は、地球ではなく木星で起こりました。

木星を周回していたシューメーカー・レヴィ第9彗星は1993年に発見され、瞬く間に注目されることとなりました。なぜなら、科学者たちの分析の結果、その軌道がいずれは木星と衝突することがわかったからです。

実際25年前、1994年7月に、シューメーカー・レヴィ第9彗星は木星に衝突しました。木星の表面に何ヶ月間も残っていた爪痕が、衝撃の強さをまざまざと物語っていました。

シューメーカー・レヴィ第9彗星の衝突は科学者たちにも大きな衝撃を与えました。すなわち、木星に小惑星がぶつかったなら、地球にも小惑星がぶつかってくることは大いにありうるだろう、と。

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Image: Shutterstock

衝撃を受けた人のうちのひとり、NASAのNEO観測プログラムマネージャーのケリー・ファストさんは、こう語っています。

アリゾナ州にあるクレーターなどを見てもわかるように、地球が過去に隕石の衝撃を受けたのは明らかでした。でもシューメーカー・レヴィの衝突は、今、この瞬間にでさえ、地球に隕石が衝突してきてもおかしくないと教えてくれたのです。

研究所の誕生

シューメーカー・レヴィ第9彗星の認知度と、アルヴァレスが提唱した小惑星衝突説が徐々に受け入れられていったおかげで、アメリカ連邦議会が隕石対策に本格的に乗り出したのは1990年代でした。

1992年にはNASAに小惑星を観測するプログラムの立ち上げを依頼し、1998年にはNEOに含まれる直径1キロ以上の小惑星を10年以内にすべてリストアップするよう要請しました。その年に誕生したのがNEO観測プログラムで、NASAジェット推進研究所(JPL)内に設置されました。その後は地球近傍天体研究センター(CNEOS)と改名され、今に至ります。

2005年、アメリカ議会はさらに意欲的なゴールを設定し、2020年までに直径140メートル以上のNEOの9割をリストアップする計画を現在進めています。

地球防衛大作戦

現在、小惑星の脅威から地球を護る事業は、数百万ドル規模の予算が投じられて国際規模に成長しています。アメリカの場合は、NASAが中心となって新たな小惑星を捜索したり、もし差し迫った危険があればその情報を政府、メディアと一般市民に共有する仕事を担っています。どのように衝突のインパクトを防ぐか、また隕石が地球と衝突しそうな場合にどのように対処するかなども研究しています。

そのほかヨーロッパのESA、日本のJAXA、ロシアのRoscosmosなど、世界中の宇宙機関がそれぞれNEOを観測し、研究するプロジェクトを運営しています。

アルジェリアにあるドゥアークジズ・クレーター。推定7000万年前の隕石衝突によるもの
Image: Getty via Gizmodo US

では、科学者たちは具体的にはどんなことをしているんでしょうか?

NASAはNEOWISEが管理する広域赤外線探査衛星(Wide-field Infrared Survey Explorer, WISE)と呼ばれる天文衛星を持っており、おもに小惑星の捜索に使われています。また、ハワイに設置されている赤外線望遠鏡施設(IRTF)は最近発見されたNEOを分析する役目を担っています。

そのほか、アリゾナ大学のカタリナ・スカイサーベイや、ハワイのパンスターズ・プログラムなども地球に衝突する可能性のあるNEOを発見する目的で運営されています。新しいNEOが発見された場合は、その小惑星の特徴をデータ化して地球近傍天体研究センターと共有し、周期や軌道が計算されます。同様の試みは世界中の機関で遂行されています。

知らざれる脅威

世界中の科学者たちが精を出してNEOを捜索し、トラッキングしているのだから、心配しなくでもだいじょうぶ…と思いたいですよね?

実際、現時点で知られている上では、地球をおびやかすような小惑星は存在しないそうです。地球近傍天体研究センターのデータベース上に載っている小惑星は、すべて今後188年間は地球に衝突しないという分析結果が出ています。

でも本当に心配すべきは、いまだ登録されていない、発見すらされていない小惑星がたくさんあるということ。

各国の懸命な努力にもかかわらず、およそ25,000個と言われているNEOのうち、まだ3分の1しか登録されていないという実状があります。理由は様々ですが、まずもって設備投資が不十分であることが挙げられます。たとえば、NEOWISEのエイミー・メインザーさんは、使用している天文衛星がそもそも古く、NEOを捜索するために作られていないと語っています。

やっかいなのは小さいやつら

そして、もっともやっかいなのが直径140メートル以下の小さめの小惑星。先週地球をかすめていった2019 OKもこの分類に入ります。

これらの小さな隕石は検出しにくく、衝突の直前までその存在すら知られない可能性が高いくせに、かなりの破壊力を持ち合わせている脅威です。実際2013年にロシアのチェリャビンスクに落ちた直径20メートルの隕石は、ツングースカと同様に空中で爆発して窓ガラスなどを割り、1,491人が怪我を負いました。つい最近では、2018年12月にベーリング海沖で空中爆発した隕石もあったそうです

これらの隕石はアメリカ議会が捜索範囲内に定めた140メートルを大幅に下回るサイズではありますが、災害を引き起こす危険性を十分に持っています。

実は、砂粒大の無害な小惑星は絶えず地球に衝突しているのですが、大気圏を通過している際に燃えつきてしまうので地上での被害には及んでいません。タフツ大学の研究によると、直径1メートル級の小惑星が地球と衝突する確率は1年に1回ほど。直径100メートル級の小惑星が地球と衝突する確率は10,000年に1回、直径1,000メートルの小惑星が地球と衝突する確率は1,000,000年に1回……というように、小惑星の直径が大きくなればなるほど確率は低くなっていくそうです。

チェリャビンスク級の隕石が私たちが生きている間に落ちてくる可能性は充分にあります」とニューメキシコ大学のボスロー教授は言います。「でもそのぐらいの隕石が衝突した事例はほんの数件しかないのに対して、台風や、竜巻や、大規模な洪水などの自然災害は毎年、地球上の様々な場所で起こっているんです」とも。

進化し続ける防衛作戦に期待

たとえ大きな隕石が地球に迫ってきたとしても、時間さえあれば回避できる可能性も出てきています。

たとえば、「アメリカ版はやぶさ」とも言われるNASAのオシリス‐レックスミッションは今後数百年の間に地球に衝突する可能性がある小惑星ベンヌを周回する軌道に乗り、今後も継続的な観測を行なっていきます。

さらに、2021年にはDART探査機(Double Asteroid Redirection Test)ミッションも打ち上げられる予定で、小惑星(65803)ディディモスに秒速約6キロメートルで宇宙機を衝突させて小惑星の軌道を変えるという、なんとも大胆な実験を行なう予定だそうです。もしもこの実験が成功すれば、今後同様の技術で地球に接近してくる小惑星の軌道を変えることができるようになるかもしれません。

ほかにも危険な小惑星の軌道を変えるアイディアがあるにはあります。仮に小惑星のとなりにとてつもなく重たい物を置いたとしたら、その重力が小惑星を引きつけて軌道を変えられるかもしれません。最終手段として核爆弾を小惑星めがけて投下する方法もあるものの、既述したようにニューヨークを滅ぼしてしまうような好ましくない結果を招くとも限りません。

とにかく、科学者たちが小惑星衝突の危険を回避するために、日々努力していることは確かです。衝突の可能性は低いからと言って、決して無視できる脅威ではありません。

私たちの生きているうちは、隕石による地球滅亡はないでしょう。そして私たちの子供も、そのまた子どもたちも」とボスロー教授は語ってくれました。「100年後以降からとなると、まぁ、今後も警戒は怠らないほうがいいし、なにか見つけたら、その時代の方法で対処すればいい」とも。

そしてもし、数百年後に地球が迫りくる小惑星の危機にみまわれても、その頃には新しい技術が開発されていて、もっと効果的な対処法も編み出されていることを切に願います。

Reference: The Washington Post, NASA Jet Propulsion Laboratory, CNEOS, OSIRIS-REx Mission

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