モバイルゲームでもない、これまでの据え置きゲームともちがうもの。
Appleがローンチするゲームのサブスクリプションサービス「Apple Arcade(アップルアーケード)」を先行体験してきました。100以上の独占・新作タイトルが1ヶ月あたり600円のサブスクリプションで提供され、毎月新作が配信されます。ハードウェア、ソフトウェアだけでなく、柱のひとつにサービスも取り入れていく最近のAppleの打ち手のひとつです。
iPhone, iPad, Mac, Apple TVにまたがってプレイできて、セーブデータはiCloudを通じて同期されます。ひとつのサブスクリプションで最大家族6人が遊ぶことができ、オフラインでもプレイ可能です。
まずは9月19日からiOS 13向け(つまりiPhoneとiPod touch)にはじまり、iPadOS、tvOSは9月30日から、macOS Catalinaには10月から提供されます。

ローンチタイトルのうちいくつかを実際にプレイして感じるのは、Appleがこれまでにない体験のゲームプラットフォームを提供しようとしていることです。
これまでのApp Storeで成功してきた「Flolence」や「Monument Valley」のように、作家性が強く独自の世界観をもっているゲームをベースとしながら、PlayStationやXboxのような据え置きゲームのような、ゲームプレイそれ自体に夢中になれるゲーム、そのミックスの世界観をApple Arcadeで作ろうとしてるのではないか、そんなことを思います。GoogleのStadiaやNintendo Switchともちがう、Apple独自のアプローチです。
世界観を重視した「Shinsekai」のゲームプレイ
Keynoteにも出ていたカプコンの完全新規IP「Shinsekai Into the Depths」は、深海の世界を探索するアクションアドベンチャー。ゲーム冒頭には深海のなか、ひとりで暮らす名もなき主人公(カプコンは「エクスプローラー」と言っていました)のイントロがたっぷりめに展開されます。サクッとはじまらずしっかり世界観を提示するスタイル。プレイヤーにこだわっている世界観を伝えるためでしょう。

明るい深海の岩肌や海藻、海に沈んだ人工物などが美しく描写され、すべて水中で録音されたというサウンドが臨場感を演出します。グラフィックは素人目に見ても「簡易的」なものではないとわかりました。そこそこのグラフィック性能がないと表現できないなって感じです。フレームレートを維持するのが大変そう。
イントロでは、世界にただひとり残されたエクスプローラーの活動のようすが、一切のセリフなし、動きだけで見せていくシーンで表現されます。エクスプローラーが海中服のずんぐりむっくりでゆっくり動くようすで、水の重さが伝わってくる感じ。
この作品はディレクターがアートディレクターも兼ねていて、子ども向けのクレイアニメーションにインスピレーションを受けているんだとか。フィギュアを使った模型から考えを巡らせるビジュアル先行型。画面から伝わってくるすべてでゲームの世界観を感じさせてくれます。
ゲームプレイはマルチタッチが基本です。オプションでデュアルショックやXboxコントローラにも対応しています。このShinsekaiはiPad ProのマルチタッチとXboxコントローラでプレイしてみましたが、どちらでも違和感なく操作できました。ただ、当たり前ながらそれぞれに操作方法は変わってくるので慣れは必要です。
新鮮だったのは、12.9インチのiPad ProとXboxコントローラの組み合わせでのプレイ。ごく主観的な体験としてはPlayStationやXboxの据え置きゲームをプレイしているのとほとんど同じ感覚なのです。これがなぜか不思議な感じ。簡易的なグラフィックのライトなゲームをちょこちょこっと遊ぶのではなく、1,2時間ソファーやこたつに座って黙々とゲームをする、そのときの感覚を思い出しました。
僕はドラゴンクエストやファイナルファンタジーのような、日本の王道RPGを辿って育ってきたゲームファンです。ナンバリングタイトルは発売日からプレイをはじめ、学校から帰るとごはんやお風呂以外の時間はテレビの前でRPGの世界観のなかにどっぷり浸かる。ゲームファンサイトのBBS(時の流れよ……)や学校では、ネタバレを避けながら友だちとお互いの進捗に花を咲かせました。
Apple Arcadeの、このカプコンのShinsekaiが、まるっきりそんなセピア色のそれだとは言わないのですが、テレビの前でコントローラを握りながら画面の向こうの世界に浸かる。その体験のかおりをApple Arcadeの先行体験は感じさせてくれました。
Sneaky Sasquatch (RAC7)

Oceanhorn 2 (Cornfox & Brothers)

Lego Brawls (LEGO)

Frogger in Toy Town (Konami)

Chu Chu Rocket! Universe (Sega)

ほかにも、コミカルなステルスゲーム「Sneaky Sasquatch」、大人がムキになって遊ぶARパズルゲーム「Spek」、セガの名作リメイク?「Chu Chu Rocket! Universe」、こちらもリメイク、コナミの「Frogger in Toy Town」、Wild of the fire感のある「Oceanhorn 2」あたりをプレイしました。
Apple Arcadeはまだ誰も知らない、未踏のゲームプラットフォーム

優秀なデベロッパーのクリエイティブをAppleが厳選して届けていく。ここにApple Arcadeとしてのスタンスが現れます。
今回プレイできたのはローンチタイトルのうちのほんの数タイトル、それも時間としてもごくわずかです。どんなタイトルが並ぶことになるのか、そのゲームプレイはどんなものなのか、ローンチ当初はそのあたりを見ていくとAppleがApple Arcadeでやりたいことが見えてくるかもしれません。
ですが今回の先行プレイで感じたのは、Appleが目指しているArcadeの姿は、まだ誰も知らない、App Storeが培ってきたスマホゲームの世界と据え置き型ゲームの世界観をミックスさせた未踏のゲームプラットフォームだってことです。うまくいくかはAppleもわからないでしょうが、方向性はおもしろそうです。
Apple TV+のようにハードウェアとの無料バンドルがないのが残念ですが、一月600円なら今後どんなカタログになっていくのかウォッチしながら試す価値ありと見ました。
※この記事はAppleからイベントの招待を受けて制作されています。