Appleのクレカ「Apple Card」レビュー:「シンプル」「プライバシー」が裏目に

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  • author Victoria Song - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
Appleのクレカ「Apple Card」レビュー:「シンプル」「プライバシー」が裏目に
Image: Victoria Song/Gizmodo US

いちいち注目されるのも、わりと面倒と。

今年8月、米国でApple Cardのサービスが始まりました。チタン製のカードがAppleっぽくていいなとか、キャッシュバックが毎日もらえるらしいとか、プライバシーがとかいろいろあるんですが、実際どうなんでしょうか? 旅行、出張も含めて1カ月ほど使ってみた米GizmodoのVictoria Song記者がレビューしています。


友だちと食事をして、会計すべくApple Cardを取り出すと、それはカチャっという音を立てます。シルバーでトリミングされた真っ白なカードは、友だちの目を引きます。それは白いカードが珍しいということもあるし、カチャカチャいう音のせいでもあります。友だちはApple Cardを手にとって「ほんとに金属なんだね」なんて言いながら裏表ひっくり返し、自分が金属のカードを持っていればそれと見比べたりするかもしれません。必然的に「Apple Cardのメリットは?」「使うべき?」みたいな会話が始まります。みんなの視線が私に集まり、判決を下すことを迫ってくるんです。

こういうやりとりこそ、私にとってはApple Cardを持つデメリットのひとつです。Apple Cardそのものがダメってことはないし、でもそもそも手数料無料のカードで何か問題あるほうがまれです。ただApple Cardは、絶賛するほど素晴らしいってわけでもありません。友だちのiPhoneをひったくってでもWalletアプリを開かせて、彼らの金銭管理を改善させよう…とかは全然思いません。でもApple Cardを使ってみる価値があるかどうか聞かれれば、私が強いて言える最善のことは、「Apple愛の度合いによる」ってくらいです。

Apple Card

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Image: Victoria Song/Gizmodo US

これは何?:Appleのクレジットカード

価格:手数料はなし。あとは月々の買い物代。

好きなところ:手数料ゼロ! キャッシュバックがすぐ入る。プライバシー。

好きじゃないところ:キャッシュバックはそんなに貯まらない。人からやたら話しかけられる。ひけらかしっぽく見える。


Apple Cardが発表された今年3月、私は懐疑的でした。12.99〜23.99%という金利は平均よりほんのちょっと低い程度だし、キャッシュバックも、Apple Pay信者でApple製品を買いまくるとかじゃない限りたいした金額になりません。あと一応Apple Cardのウリはプライバシーで、ユーザーの取引情報を第三者に共有しないと言っていたり、物理カードにユーザーの名前以外の情報を入れてなかったりします。そしてもちろん、すべてはAppleのWalletアプリで行なうので、Androidユーザーには全然意味がありません。

私はApple Cardを1カ月ほど使ってみましたが、正直このカードを必要としている人はいないと思います。特に、定番の支払い方法には向いていません。とはいえApple Cardを使うことで、キャッシュレスな未来とか、モバイル決済が広く普及した世界とか、そういったものを垣間見ることができたと思います。そういう意味で、Apple Cardはイケてるとは思います。

Apple Cardの基本

まずApple Cardの申し込みプロセスはすべてデジタルで、iPhoneが必要になります。Appleは8月に10本シリーズの動画を公開して、Apple Card申請手続きから使い方までの詳細を説明しています。よっぽどクレジットスコアがひどいとか(訳注:米国では過去の取引履歴を元に個人に信用スコアが付いていて、スコアが低いとカードの審査に通らない)、借金を抱えているとかの悪条件じゃない限り、申し込みは数分で承認されます。利用限度額と金利は、カード発行元であるGoldman Sachsがユーザーの信用情報に基づいて魔法の方程式で決定します。

私はTransUnionという信用会社のスコアで800近い悪くない数字で、割り当てられた利用限度額は6500ドル(約70万円)、金利は17.99%でした。まあ、そんなもんかなという感じです。クレジットカード一般に、新規契約者の金利の平均は19.24%なので、金利に関してはまあ良かったなと思いました。でも限度額は、私が持っている他のカードの半分くらいでした。なので「12.99%」という金利に惹かれてApple Cardに申し込むと、多分がっかりすると思います。(とはいえ米Gizmodo読者の何人かの方が「自分は12.99%だったよ!」とスクリーンショットを送ってくれたので、ないわけじゃないみたいです。)

Apple CardはWalletアプリ上ではすぐ表示されますが、物理カードは申し込まないともらえません。そして申し込んでからも、配送に4〜6日かかります。私はApple Cardの申請をした直後、ニューヨーク州からバーモント州を経てカナダのモントリオールまで、5日間のロードトリップの予定がありました。ニューヨーク以外でコンタクトレス決済がどれくらい広まっているのか、この機会に見てこようと思ってたんですが、どっちかというと「Apple Cardをモバイルオンリーでどれくらい使えるか」の実験になりました。

ただし物理カードを持っていたとしても、Apple Cardはキャッシュバック率の設計上、なるべくApple Payを使いたくなるようにできています。キャッシュバック率が一番高い3%になるのは、Apple製品購入かUber・Uber Eats利用、またはWalgreen(ドラッグストア)での買い物のときだけです。2%になるのは、iPhoneを使ってApple Payで支払った場合です。物理カードを使う場合は、1%にしかなりません。なのでどうしても物理カードじゃなきゃいけない場合以外、なるべくApple Payを使わなきゃ、という意識が働きます。

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普通にお財布にしまっておけば、汚れる心配はなさそうです。
Image: Victoria Song/Gizmodo US

実際どれくらい使える?

旅行中苦労したのは、どのお店ならApple Payが使えそうかがわかりにくいことです。ニューヨーク州ハーフムーンにある薬局では使えたし、バーモント州バーリントンの駐車メーターでも大丈夫でした。モントリオールの地下鉄のチケットも買えました。汗だくでランニングした後に地元のスーパーに入って、Apple Watch上のApple Cardでゲータレードを買えるのは便利です。

ただコンタクトレス決済のできるお店ならどこでもApple Payが使えるわけじゃありません。たとえば私の近所のGregory's Coffeeでパンプキンスパイス・ラテを買おうとしたときは、Chase Payなら使えるけど、Apple Payはダメ、と言われました。さらに近所のデリでは、コンタクトレス決済自体受け付けてません。米Gizmodoが入ってる巨大オフィスビルのカフェテリアでも使えませんが、そこから半歩隣のコーヒーショップでは使えます。2%のキャッシュバックのために「Apple Pay使えますか?」と聞いて店員さんにうんざりした顔で見られるのは、ちょっとした苦行でした。なので不安にもなりましたが、一方でこの数年のコンタクトレス決済の普及ぶりも素晴らしいなと思いました。

Apple Payはオンラインでも、特にアプリで使えるものが多いんですが、どのアプリで使えるのかを探すのは意外と大変です。たとえばLyftやSeamless(フードデリバリーアプリ)では使えますが、Amazonアプリでは使えません。Airbnbでも使えますが、プロフィールの支払い方法にあらかじめ追加しておくことはできなくて、最初に宿を予約して、その支払いをするときにApple Payを使う、という流れじゃないといけません。Apple Payに対応してないアプリとかWebサイトでは、Apple Cardの番号を入力すればそれでも支払いができるんですが、そのためにはまずWalletアプリを開いてApple Cardをタップし、3つのドットのボタンをタップし、Face IDにはじかれないように祈りつつカード情報のメニューまでスクロールし、その中のカード情報をコピペする、という手順が必要です。これを何回もやらなきゃいけないとしたら、ましてこれだとキャッシュバックが1%になってしまうことを考えると、かなりつらいです。

「シンプル」「プライバシー」がかえってアダに

物理カードに関しては、見栄えの良いカードです。汚れやすいって話もありますが、私はこのカードを普通にスマホケースに入れていて、大丈夫でした。ジーンズのポケットにクレジットカードをむき身で入れて歩いてる人って、どれくらいいるんでしょうか? とはいえ物理カードを使っているときに、Appleは多分想定していなかったであろう問題にも気づきました。

ニューヨークからベルリンまでの長いフライトの後、寝ぼけ眼でApple Cardをホテルのフロントの人に渡したんです。するとその人は困惑気味に、このカードにはチップも磁気ストライプもカード番号もないんですが…と返してきました。私は、いえチップも磁気ストライプも付いてますが…?と返したんですが、気まずい数秒間が流れ、結局別のカードを引っ張り出すことになりました。同じことは、ニューアーク空港から家までのタクシー料金を支払おうとしたときにも起きました。運転手さんがぶっきらぼうに、このカードには情報もチップも磁気ストライプもないじゃないかと言ってきたんです。私はiPhoneを取り出して、上に書いたようにカード番号を確認するかと思ったんですが、ふとどうでもよくなって、運転手さんを無視して自分で支払い端末にカードを通しました(失礼な態度で悪かったと思うんですが、時差ボケしてたのと、これさえ終われば家のベッドで寝られる!という思いだったんです)。さらに眼科医のところで支払いをしようとしたときにも、同じ事態になりました。端末がカードを読み取れるまでに、受付の人がふたり、10分がかりで、何回も何回もカードを通してました。1回なら別にいいかと流せたんですが、3回ともなるとほんとにどうなってるのかと思います。

ただ他のたくさんの場所では、この問題は起こりませんでした。でも、他のクレジットカードでこういう問題が起きたことはまったくありません。これ以外で店員さんにありがちだったリアクションは、「これ新しいApple Cardですか?」「どうやって申し込むんですか?」「良いですか?」「どうするのがいいですか?」といった質問です。私は人見知りなので、ドラッグストアで生理用品なんかを買ってるときにこういうレベルのやりとりはしたくないんです。Apple Cardを使う人が増えれば目新しさも薄れると思うんですが、今はとりあえず、さっさと買い物を済ませたいときは他のカードを使ってしまいます。

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磁気ストライプがはっきり見えると思うんですが、見えないという店員さんもいるんです。
Image: Victoria Song/Gizmodo US

これがApple Cardのおかしなところです。シンプルを身上とするカードなのに、逆に面倒になることが多いんです。こうなる理由のひとつは、プライバシーとかセキュリティにこだわりすぎてることです。たとえば何かを買うたびに、Face IDで認証しなきゃいけません。Face IDは私の場合3分の2くらいのときはすんなり使えますが、そうじゃないときは手間が増えます。この認証はオフにもできますが、それじゃ3分の1のためにせっかくのセキュリティ機能を使わないことになってもったいないし。カード番号がないのは、仮に盗まれてもオンラインで使われたりしないという意味でクールなんですが、お店の人が「何も書かれてないんですけど!」となるって意味ではあんまりクールじゃないです。安全性と利便性のトレードオフはあるあるなんですが、Apple Cardのプライバシーへのこだわりは、多分意図していなかったであろう厄介ごとを生んでいます。

あと私は家計管理ソフトのYou Need A Budgetを愛用してるんですが、Apple Cardは「購入情報は秘密にすべき」というコンセプトなので(Appleは「ユーザーが何をどこで、いくらで買ったか」を把握しないと言っています)、買い物情報を自動でエクスポートするソフトには対応していません。多分こういうソフトはAppleの基準と合わないのでしょう。なので出費を細かく管理したい人は、Apple Cardで使ったお金を手動で記録していく必要があります。自分があえてやっていることとはいえ、Apple Cardだといちいち入力しなきゃいけないのか〜と思うと、実際支払いをするときに抵抗感があります。

「プライバシー」はどれくらい守られる?

そもそもAppleの言う「プライバシー」って、どれくらい意味があるんでしょうか? Appleのサイトには「もちろんGoldman SachsはApple Card運営のために情報を使いますが、同社が第三者にマーケティングや広告の目的で情報を共有または販売することは決してありません」とあります。つまりAppleがユーザーの買ったものを把握してなくても、Goldman Sachsは知ってるわけです。それに、このAppleの文言の中にも、Goldman Sachsが自分たちの中で「必要」と判断した目的でユーザーのデータを使わない、とは書かれていません。うがった見方かもしれませんが、お金持ち相手の巨大銀行が、私みたいないちユーザーのデータの扱いをどれくらいちゃんとしてるのか、不安があります。

米Gizmodoでは以前、AmazonがChase銀行と組んで出しているクレジットカードのデータの扱いについて詳しい記事にしたんですが、Amazonの場合はChaseが運営目的でもマーケティング目的でもデータを共有する、としていました。Appleとはその点が違います。でもChaseが評価できるのは、Chase自身がユーザーのデータを内部利用する可能性もきちんと明記していたことです。つまりChaseの金融商品の広告が、Amazon・Chaseカードユーザーに届くかもしれない、ということです。Apple Cardの場合、Goldman Sachs内部でデータを使う可能性が書かれていません。しかも最近Goldman Sachsが個人向け銀行業を拡大したところなので、もし急にGoldman Sachsの個人用ローンの広告なんかがメールで届いたりしたら、Apple Cardのせい?と思うことは必至です。

「新しいカードが郵送されるとき、普通はデータがどう使われるかという情報開示が一緒に送られてきます。こうした情報開示は1999年金融サービス近代化法(グラム・リーチ・ブライリー法)で義務付けられていて、たいていはクレジットカード発行元が他の会社と情報を共有または販売するか、少なくとも他の商品の販売のために内部的に使うかといったことが記されています」

Credit Card Insiderのアナリスト、Oliver Brown氏がこう教えてくれました。

「(Appleの)情報開示は、他の多くのクレジットカード発行元よりも情報共有が少ないことを示しています。それでもGoldman Sachsが取引データを入手し、マーケティング目的ではありませんが、内部的に利用する可能性は残されています

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Image: Victoria Song/Gizmodo US

Apple Card、使うべき?

で結局、Apple Cardは別に問題はないんですが、騒がれるほどすごくもない、です。クレジットスコアが最高じゃなくても申し込めて、金利も30%とかじゃないってことはたしかに良いと思います。でも私がApple Cardで一番気に入ったところは、Appleが推してるプライバシーとか毎日もらえるキャッシュバックみたいな見栄えの良い部分じゃなく、そういう部分はむしろ欠点につながってました。

たとえばキャッシュバックが毎日もらえるDaily Cashは、月末まで待つとか、めんどくさいポイントシステムを読み解いて申し込むとかじゃないので、良いと思います。ただキャッシュの貯まり具合はほんとにちょっとずつなので、別に今月でも来月でもあんまり重要じゃない感じです。これまでのところ、私が1カ月くらいガンガン使って貯まったキャッシュバックは15ドル(約1600円)くらいです。もちろん、その気になればすぐ15ドルもらえるってのはうれしいですが、別に歓喜して両親に報告するってほどでもないです。

今月私は、Apple Payが2014年に始まって以来一番たくさん使ったと思います。そしてApple Cardを持っている限り、これからも極力Apple Payを使っていくと思います。実際お店では、Apple Payのロゴを前よりもまめに探していて、わからないときはお店の人に聞いています。なんというか、「手数料ゼロ」「資産管理健全化」「プライバシー」といった世のため人のためっぽいメッセージではありますが、その裏では私みたいな、もともとApple Payとかクレカとかそんなに気にしてないユーザーを取り込むことこそAppleのねらいなんでしょうね。まあそういう感じだとは思ってましたが、結局私も、Apple Payに取り込まれています。

で、Apple Card使うべきでしょうか? クレジットスコアが低めでこれから再構築しようとしていて、かつ毎月きちんと支払いをするつもりの人には、いいんじゃないかと思います。または「Apple Pay命」とか心臓にタトゥーを入れてる人、友だちの前でチタンのカードをカチャカチャ言わせて「わー」とか言われたい人にも、いいと思います。でもそうじゃない多くの人には、多分もっと良いカードがあると思います。ただ他のカードだと、これほど騒がれないでしょうけど。

まとめ

・手数料無料、金利12.99〜23.99%。キャッシュバックはApple製品購入、Uber・Uber Eats利用・Walgreenでの買い物が3%、Apple Pay利用が2%、物理カードだと1%です。

・金属の物理カードは、本当にカチャカチャ音がします。

・Apple Cardは他のカードよりは、情報を守ってくれます。でもGoldman Sachsは内部的にデータを利用できるのと、プライバシー保護のせいで実用上は不便な場合があります。

・みんなに「これ使うべき?」って聞かれます。

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