単刀直入に聞いてみましたよ!
デジカメ界は、「ミラーレス」ブーム。レンズ交換式カメラといえばミラーレスしか知らない方もちらほら出てきているのではないでしょうか。各社の新製品もミラーレス、特にフルサイズミラーレス機が目立っていて、もはやミラーを搭載する一眼レフタイプは息をひそめている感じがします。
もしや、もう一眼レフカメラって「オワコン」なのかな……?

そう思っていたところ、キヤノンからハイアマチュア向けAPS-Cデジタル一眼レフの新製品「EOS 90D」が発売されました。キヤノンといえば、EOS R/EOS RPといったフルサイズミラーレス機が人気ですし、コンパクトなAPS-Cミラーレス機「EOS M シリーズ」も絶賛発売中。すっかり一眼レフはオワコンだと思っていたところにEOS 90Dの発売...どういうことなんでしょう? キヤノンさんに直接聞いてみることにしました。
「一眼レフってオワコンじゃなかったんですか?」って。

今回お話を伺うのは津幡さん。「カメラメーカーさんいらっしゃい」企画ではEOS R/RPについて語っていただきました。
そして津幡さんにお話を伺う場所は、東京・浅草にある遊園地「浅草花やしき」です。なぜ花やしきなのかって?

キヤノンさんに急に「一眼レフはオワコンですか?」なんて質問をしたら怒られちゃいそうじゃないですか。でも花やしきなら長年愛されてきたパンダカーのようなアトラクションがたくさんあって、和やかな雰囲気でインタビューできそうだと思ったんです。
それに、僕は東京の下町育ち。花やしきは庭みたいなもので、僕自身も緊張しないで質問できそう。いやー、昔は金魚すくいとかあったんだけどなー。
ということで、さっそく津幡さんへのインタビュー、スタートです!
単刀直入に聞きます。「一眼レフはオワコンですか?」

ギズモード編集部(以下ギズ):今日はよろしくお願いします。まあ、花やしき名物のパンダカーにでも乗っていただいて。それでですね、昨今のデジタルカメラ界隈の流れを見ていると、ミラーレスが全盛で、もはやデジタル一眼レフはオワコンなんじゃないかと思ってたんですけど、どうなんですか?
津幡さん :いやいや...! たしかに今はミラーレスが盛り上がっていますが、一眼レフがオワコンなんてことはありませんよ! 現に我々も、こうして新製品のEOS 90Dを発売していますから。
ギズ:ほんとですか? キヤノンさんとしては、ミラーレスと一眼レフの関係性についてどう考えていらっしゃるんでしょう。ぶっちゃけ、ミラーレスのほうが優先度が高いとかあるんじゃないですか?
津幡さん:キヤノンでは「フルラインアップ戦略」を掲げています。つまり、デジタル一眼レフのEFマウントもやりますし、ミラーレスのEF-Mマウント/RFマウントもやっていきますということです。
その中でもデジタル一眼レフは、光学ファインダーと長年培ってきた操作体系が強みのカテゴリです。EFマウントの新機種であるEOS 90Dは一眼レフの最新技術を惜しみなく詰め込んでいるだけでなく、ミラーレスの強みも吸収しています。デジタル一眼レフだから手を抜いているとか、優先度が低いということは一切ありません。
ギズ:あくまですべて本気ってわけですね。
五感で感じる「シューティング感」まで設計されている
ギズ:でもミラーレスは小さくて軽いのに画質だっていいじゃないですか。今一眼レフを選ぶメリットがいまいちわからないんですけど、一眼レフの優位性ってどんなところなんですか?
津幡さん:まずはやはり光学ファインダーが搭載されているところです。ファインダーを覗いたとき、電子ビューファインダー(EVF)のようなデジタルの映像ではなく、レンズから入ってきた光をそのまま見ているところが違います。それによって見ている映像に遅延がないのでシャッターチャンスを捉えやすいと思います。それに、個人的には一眼レフの方がシューティング感があると思います。

ギズ:シューティング感?
津幡さん:ミラーの動きによるバシャバシャという軽快な音も含めて、撮っている感があるのが、一眼レフだと思います。そしてEVFを通した映像を見ながら撮影をすると、撮れているだろうと思ってしまうんですよね。1枚1枚丁寧に撮っていくとか、カメラならではの被写体を捉えたぞ!みたいな感触は、一眼レフのほうが大きいかなと思います。
ギズ:撮っている感、僕らでもなんとなくわかるんですけど、物理的には何が要因になっているんですか?
津幡さん:ミラーを動かして撮影している、というところですかね。ミラーレスの場合はミラーがないため、常にEVFや背面液晶に映像が流れていて、それを切り取るという感覚。一方で一眼レフは映像ではなく肉眼で見ている景色を切り取るという感覚です。そこがちょっと違うのかなと。

ミラーレス(下):直接センサーに光が届き、撮影する。ファインダー(EVF)にはセンサーの映像が表示される。
ギズ:撮れているだろうじゃなくて撮った!という感覚が大事なんですね。一眼レフのミラーの機構も進化していたりするんですか?
津幡さん:もちろん進化しています。昔はミラーを跳ね上げるときにミラーバウンドによるブレが起きていたのですが、今はモーターで制御しているので減速して寸止めできるようになってブレも少なくなったんですよ。

ギズ:ミラーがあることのデメリットが減っているんですね。
津幡さん:そうですね。それと、シャッターを切ったときのバシャバシャというミラーの音の要素が重なって、五感に訴えかけてくるところも切り取った感につながっていると思います。
ギズ:五感に訴えるというのも、意図的にやられているんですか?
津幡さん:はい、たとえばシャッター音にはとてもこだわっています。
ギズ:というと?
津幡さん:キヤノンのカメラは機種によってシャッター音を変えています。ユーザーの方もとてもそこにこだわってらっしゃいます。たとえばフルサイズ一眼レフの5D Mark IIIはカチャン、カチャン、という粘りのある音でした。EOS 90Dは、秒間10コマの連写が可能ということもあり、サクサクッとシャッターを切っているような音にチューニングしているので、軽快な感触になっていると思います。
ギズ:機種の性格によってシャッター音も設計されているんですね。
ユーザーの身体に染みついた操作感は変えない
ギズ:ほかにはどんな優位性があるんでしょう?
津幡さん:ミラーレスはミラーボックスがない分、本体を小型化できるんですが、その分、一部操作性が従来の一眼レフから変更になっている面があります。
ギズ:小さいがゆえにボタンの配置とか大きさとかに制限が出てくるということですね。
津幡さん:そうなんです。ボタンを少なくする代わりにタッチパネルでの操作がメインになったりするわけです。なので、ミラーレスはどんどんスマホっぽくなっていってますね。
ギズ:スマホ...たしかにカメラのモニターってタッチ操作でできることがどんどん増えてますね。
津幡さん:一眼レフは、光学ファインダーやミラーボックスも含めて機械的な要素が強く残っています。ファインダーから肉眼で被写体を見て、指でダイヤルを回して露出変更などの操作をする。一眼レフ歴の長い方は、このダイヤルをこれだけ回せば絞りが1段変わるということを身体で覚えている方も多いです。

ギズ:一眼レフのこの操作感は今後も変わらず残るんですか?
津幡さん:ダイヤルの感覚などはあまり変えないようにしています。ミラーレス=直感的という認識が定着しつつありますが、光学ファインダーのほうが直感的に操作ができるという人もいます。どっちがいいというわけではなくて、一眼レフならではの特徴が確実にあるんです。だから一眼レフは今後もなくならないと考えています。
一眼レフでありミラーレスでもある贅沢カメラ「EOS 90D」
ギズ:新製品のEOS 90Dにもキヤノンの見慣れたボタンやダイヤルが受け継がれていますね。このカメラ、「APS-C一眼レフの完成形」とも言われていますが、どういうところが完成形なんでしょうか。

津幡さん:まず、操作性という観点では、ダイヤルの位置や大きさにもこだわりました。初めてマルチコントローラーを2つ搭載し、EOS Kiss X9iなどのエントリークラスやEOS 5Dシリーズなどハイエンド機から乗り換えても、操作性で違和感がないようにという配慮です。
ギズ:エントリーから来てもハイエンドから来ても困らないと。
津幡さん:はい。さらにファインダー視野率に関しては約100%を実現しています。これまでAPS-Cの機種では97%や95%でしたが、この機種では100%にこだわりました。光学ファインダー上に撮影情報を表示する「インテリジェントビューファインダー」にもこだわっています。
ギズ:視野率100%ということは、撮影できる画とファインダーで見える画に差がないということですね。

津幡さん:そのほか連写速度はバランスを考えて秒間10コマとしました。また、トリミング需要にも耐えられるよう、画素数は約3250万画素と増やしています。動画撮影は初のクロップなしの4K動画撮影に対応しています。
ギズ:APS-C一眼レフとしては全部盛りに近いスペックですね。だから「完成形」ということですか。
津幡さん:それだけじゃありません。測距点(オートフォーカスでピントが合わせられる点)に関しては、45点のオールクロスセンサーを搭載していますが、それでも端っこのほうでAFができない。そこでミラーレスの強みも盛り込み、ライブビュー撮影時にデュアルピクセルCMOS AFを使用できるようになっています。その場合は横約 88%、縦約 100%の範囲を網羅しています。
ギズ:デュアルピクセルCMOS AFってキヤノンのミラーレスカメラにも使われている技術ですよね。センサー上で高速なオートフォーカスができるっていう。
津幡さん:そうです。これによりライブビュー時は広範囲の測距点をカバーできますし、瞳AFも使えます。つまり、光学ファインダーでの撮影からライブビューに切り替えればミラーレス機としても使えるんです。
ギズ:...今まで「一眼レフ」と「ミラーレス」という風に分けて考えていましたけど、たしかにこれって一眼レフがミラーレスとしても使えてるってことになりますね。
津幡さん:測距エリア以外にも、拡大してピントを合わせたり、暗いところでもピントを合わせやすかったりと、ミラーレスのメリットが享受できます。一脚を付けて動きものを撮りたい人は光学ファインダーで撮るし、三脚に据えて風景を撮りたい人はミラーレスとして撮る、というように何でも撮れるんです。キヤノンでは「撮影領域の拡大」と呼んでいます。
ギズ:ライブビューにしたときの瞳AFなどの性能は、キヤノンのミラーレス機と同じなんですか?
津幡さん:はい、同じです。このように惜しみないスペックを投入し、光学ファインダーでの軽快な撮影とライブビューでのミラーレス的な撮影の両方に対応したという贅沢な機種。そういう意味で「完成形」と謳っています。
初心者にこそ一眼レフの流し撮りに挑戦して欲しい
ギズ:贅沢な機種と聞くと撮影の技術が高い人向けのように思えるのですが、いっぽうでEOS 90Dには初心者向けの「流し撮りアシスト」という機能が搭載されていますよね。
津幡さん:流し撮りをするハイエンドユーザーというのは、シャッタースピード1/15で被写体を止めたい!といったように、自分の設定で撮影しますよね。でもエントリー層の方は、流し撮りがどういう仕組みで撮影されているのか、なんで背景は流れているのにメインの被写体は止まっているのかというメカニズムがわからないと思うんです。下手したら、流し撮りという言葉すら知らない可能性もあるわけです。
ギズ:たしかに。カメラが好きな人は知ってますけどね。
津幡さん:でも、カメラファンも多いですが、鉄道とか飛行機が好きな人の方が、圧倒的に人口が多いんですよ。そういう方たちへ向けて、流し撮りっておもしろいよね、カメラの醍醐味だよねと感じていただきたい。特に光学ファインダーは流し撮りに向いています。エントリー層の方でも一眼レフに挑戦してもらいたいですし、「カメラは難しくない」「こんな撮影もできるんだよ」ということを楽しんでいただきたいという思いです。

ギズ:なるほど。ではその流し撮りアシスト機能を試させてもらいたいので、ちょっとこの「カーニバル」というアトラクションに乗っていただけますか?
津幡さん:え? 僕が乗るんですか?
ギズ:ええ。そうじゃないと僕が流し撮りアシスト機能試せませんから。
津幡さん:わ、わかりました。
ギズ:おお、津幡さんがぐるぐる回ってる! でも流し撮りアシスト機能を使えば、俺だって!!
津幡さん:はぁ、結構怖いもんですね……。で、どうでしたか? ちゃんと流し撮りできましたでしょうか。
ギズ:ええ、バッチリですよ! 流し撮りアシストモードにして津幡さんをファインダーで追ってシャッターを押すだけで、ちゃんと流し撮りできました。自分でシャッタースピードや絞り値を設定する必要がないので、気軽にチャレンジできるのはいいですね。
津幡さん:ハァハァ...そうですか。それはよかった。
一眼レフだということを忘れそうになるライブビューの瞳AF
ギズ:EOS 90Dはミラーレスの旨みも味わえる贅沢カメラだとおっしゃってましたけど、ライブビュー時に使える瞳AFがまさにミラーレスっぽい機能ですよね!
津幡さん:そうですね。静止画だけでなく動画撮影時にも瞳AFは有効です。かなり画面の端でも瞳AFが使えます。
ギズ:そうなんですかー。この瞳AFも試してみたいので、すいませんがこの「ぴょんぴょん」に乗っていただけませんか?
津幡さん:え? また僕が乗るんですか?
ギズ:ええ、僕が瞳AFを使って上下に動く津幡さんを撮影しますので。
津幡さん:そうですか。じゃ、じゃあ乗りますね。
ギズ:おおおお、かなり画面の端でも瞳AF効いてますよ! 「ぴょんぴょん」は結構細かく上下に動くアトラクションですけど、画面内に津幡さんが映るようにしておけば、高精度で瞳にピント合ってますね!! ライブビューにすると一眼レフだってことを忘れてしまいそうです。
津幡さん:そうですかーー! 瞳AFの精度をご体験いただけて何よりですううううぅぅぅ!!
津幡さん:ハァハァ。EOS 90Dは、いわゆるミドルクラスのデジタル一眼レフカメラになるわけですが、そういうクラス分けに関係なく、一眼レフ全体の未来はまだまだあるんですよ。実現したい機能もまだありますし。だから、決して「一眼レフがオワコン」というわけではないということをみなさんにお伝えしたいですね。
結論:デジタル一眼レフはオワコンなんかじゃなかった
今回、津幡さんのお話を聞いて、一眼レフのイメージが変わりました。一眼レフは過去のものではない、今後もずっと必要とされていくものなんだなと。そしてキヤノンはその一眼レフをスペックだけじゃなく、五感に訴えかける撮影体験まで設計して作っていました。
EOS 90Dは一眼レフとしての進化だけじゃなく、ミラーレスカメラの進化も両方楽しめるカメラ。ということは、もしあなたがまだミラーレスカメラしか使ったことがないのであれば、カメラ人生ちょっとだけ損してるのかも。
EOS 90Dは9月20日から発売しており、キヤノンオンラインショップでの価格はボディ単体が15万円、EF-S18-135 IS USMレンズキットが19万7500円。その他、望遠ズームレンズとのセットも販売されていますので、お好きなセットを選べます(価格はすべて税抜)。

デジタル一眼レフはオワコンなんかじゃない。デジタル一眼レフ派のみなさんも、まだデジタル一眼レフ未体験の方も、「完成形」EOS 90Dで撮影の楽しさに触れてみてはいかがですか?
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撮影協力:浅草花やしき
Source: キヤノン