「キヤノンの真の姿」を見てきた。デジカメ以外の技術もすごい、超テック企業なのです

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  • author 編集部
「キヤノンの真の姿」を見てきた。デジカメ以外の技術もすごい、超テック企業なのです
Image: ギズモード・ジャパン

いちばん身近なプロダクトがデジカメ、ってことでした。

先日、ギズモード編集部でキヤノンのミュージアムを見学してきました。キヤノンといえば、デジカメのリーディングブランドのひとつ。「さぞやたくさんのカメラが展示されているのだろう」と思っていたのですが…予想とは少し異なっていました。半導体監視カメラ医療機器といったぼくらが知っているキヤノン製品からすると予想外な分野の展示もたくさん!

実のところキヤノンは産業向けの製品も多数展開しており、総合テック企業とでも言ったほうがその真の姿には近いようです。はえー、知らなかった…! この記事では、そんな風に驚かせてくれた展示内容をピックアップして紹介します(今回訪問したミュージアムは残念ながら一般公開されていません)。

なにこの「映像をまとめるテクノロジー」……SFじゃん!

キヤノン株式会社のミュージアム見学。カメラメーカーが監視カメラを作っていてもなんら不思議じゃないはずなのに、壁一面の監視カメララインナップを見るとちょっと意外に感じちゃいました。

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Photo: ギズモード・ジャパン

「なんか、めっちゃ力入ってるな」って。

映像要約

でもそれはほんの序の口…。一番の驚きポイントは、この壁の裏側にありました。SF作品などで見た覚えのある「映像要約」のテクノジーが、サラッと展示されていたんですよ。たとえばこちらは道路の監視カメラ映像なんですが、指定したルートを走った車両だけをピックアップして表示することができてしまいます。

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Photo: ギズモード・ジャパン

すごくないですか? この技術により、たとえば30分間の映像を30秒に凝縮して見られるわけです。しかも余計なものが映らないので通常より見やすく、車両の種類などでさらに絞り込むことも可能。

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Photo: ギズモード・ジャパン

ほかにも、車両のカラーや走行していた車線を指定することも可能です。画像認識で映像からデータを抽出し、求められた条件と合致する映像を切りはり合成する技術なので、その途中結果であるデータの統計も取れます。もしくは条件を先に指定しておいて、そういった車両が監視カメラに写ったらアラートを送るなんていうのも可能。

Video: キヤノンマーケティングジャパン / Canon Marketing Japan/YouTube

記憶力サポート

なんていう、警察や警備会社が重宝しそうな映像要約技術なわけですが、監視カメラだけにとどまらないと思うんですよね。スポーツ中継だったら「〇〇選手が活躍したシーンを見せて」とか、プレゼンや講義の録画だったら「〇〇について話していたパートを集めて」とか。一般ユーザーの映像まで広げられたら「過去5年の映像から〇〇くんが笑っている瞬間を切り抜いて」なんていう使い方も生まれそう。

でも近い未来にやってほしいなと思ったのは「自分要約=セルフサマリー」です。自室にあるIoTガジェットと身につけたスマートグラスのカメラ映像から、僕の日々をデータ化&要約。食事の映像から摂取したカロリーや栄養をトラッキングしてほしいし、久しぶりに会う人との前回の会話を要約して見せてほしい。時間の使い方を可視化するとか、会話内容からスケジュールやメモを抽出するなんてもしてほしい。色々やってほしいですが、セルフサマリーのデータはローカルで管理させてほしい…。

映像要約。日常的な使い方を夢みさせてくれるSFテクノロジーでした。

(西谷茂リチャード)

スタンプみたいに半導体を量産。「ナノインプリントリソグラフィ」技術

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東芝のメモリ工場で稼働するキヤノンのナノインプリント半導体製造機。
Image: canon

展示されていたテクノロジーの中で、いちばん驚いたのがコレ。

CPUをはじめとする半導体チップを、スタンプのように型を押し付けることで製造するという「ナノインプリントリソグラフィ」技術です。

いまのCPUやメモリといった半導体回路は「フォトリソグラフィ」方式といって、極薄のシリコンの板に、回路のイメージをレーザーといった強力な光で焼きつけて(露光させて)作っています。ちょうどフィルム写真みたいな感じですね。シリコンがフィルムで回路イメージがネガフィルム。レーザーが光源みたいな。

一方、「ナノインプリントリソグラフィ」はシリコンの板にインクジェットで樹脂の粒を並べて、マスク(スタンプ)を押し付けて回路イメージを描きます。おおざっぱには印刷機みたいなしくみ。

ムーアの法則が限界に来たと言われてもう数年が経ちましたが、CPUやメモリなどの集積回路はいまでも微細化が進んでます。いま最新のプロセスルールは7nm(ナノメートル)で、数年先にはもうちょっと細くできそう。ただ、フォトリソグラフィで細かい回路を作るには、強力なレーザーやたくさんの高精度なレンズが必要で、微細化のためには設備投資や運用でとにかくコストがかかるんです。

一方、「ナノインプリントリソグラフィ」はフォトリソグラフィと仕組みが違うため、このへんのコストがぐっとお安くなります。ナノスケールのスタンプを作るのにはコストがかかりますが、原型さえできてしまえばポンポンCPUやメモリを量産できるのです(ポンポンは言いすぎでした。ホントはナノサイズでの位置合わせなど手間はかかります)。微細化もすでに10nm台までは実現できており、将来的にはフォトリソグラフィを越えられる可能性も。

大昔は、同じ写真を何枚も作ろうと思ったら、フィルムを1枚づつ焼き増す必要がありました。それが印刷技術の発展で、簡単に・安価に写真を印刷できようになったことで、新聞やチラシに写真があふれかえるようになったのです。

ナノインプリントリソグラフィには、それと同じようなポテンシャルを感じます。近い未来、まじで身の回りのものになんでもチップが搭載されるようになるかも。

(金本太郎)

2.5億画素CMOSセンサーとかいうロマンの塊

とはいえカメラ方面もやっぱりスゴかったです。

カメラの高画素機ってロマンありますよね。有効画素数が5000万とかいってて、ディスプレイ上で拡大すると肉眼では見えなかった小さなものや細部まで写っていたりして。思わずニヤニヤしてしまうという。

じゃあ、極限までCMOSセンサーの画素数を高めたらどうなってしまうのか。カメラをセンサーから作っているキヤノンはもちろんその限界にチャレンジ済み、こうなります。

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Photo: ギズモード・ジャパン

これは「シャッターを切ったら18km先を飛んでいる飛行機がきれいに写っていたでござるの図」。機体どころかANAと787の文字までしっかり写っています。 800mmの望遠レンズと電子ズームも併用しているそうですが、驚きなのがCMOSセンサーのサイズと画素数。APS-Hで2.5億画素なんですって!

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Photo: ギズモード・ジャパン

APS-Hはセンサーの大きさを表す言葉で、APS-C以上フルサイズ以下というサイズ感。市販品のセンサーと同程度なわけですが、高画素機のセンサーとと同じ面積に5倍多く画素を詰め込んでるそうで。製造過程で1ミクロンのゴミが入ったらアウトが0.1ミクロンでもアウトになる、そんな超高精度の世界で生まれたものです。上述のナノプリントリソグラフィのような半導体技術を見たあとだと、なるほど作れるわけだ、と納得。

8K HDR対応リファレンスディスプレイが見せる「さよなら、ドット」な映像世界

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Photo: ギズモード・ジャパン

「リファレンスディスプレイ」はハイライトからシャドウまで階調が失われていないか、きちんと色が出ているかといったレベルまで映像品質を確認するための映像製作用ディスプレイです。TVやカメラでは4Kが本格的に普及し始め、6Kなどの製品も登場してきていますが、この8K HDR対応ディスプレイはそうした現状最高クラスの映像環境で楽しむコンテンツの製作に使うものです。

プロフェッショナル用途ということでハンパない性能です。実物が目の前にあるような感じなんですよ!

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画面全体を収めた写真
Photo: ギズモード・ジャパン
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アップで撮った写真
Photo: ギズモード・ジャパン

このモニターは寄ってもドットが見えません。サイズは55型、驚異的です。実物だと錯覚して手を伸ばす人がいても不思議じゃないリアルな質感が実現されてます。将来、お茶の間のテレビがこのレベルになるってことだよねぇ。

「価格は1000万円くらいですか?」とキヤノンの方に聞いてみると、「受注生産品ですので…」というお返事。あ…言えないやつ、ですね…?

(かみやまたくみ)

こんな最先端技術の隣に並んでいたレトロなカメラたちでイメージ通りのキヤノンも感じられるのもよきでした。

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Photo: ギズモード・ジャパン


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Photo: ギズモード・ジャパン


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Photo: ギズモード・ジャパン


Source: キヤノン株式会社 (1, 2, 3), Wikipedia

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