100年後とかだと思ってた「空飛ぶ車」、実は4年後には走るんだって…:空飛ぶ車の今まとめ

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  • author 中川真知子
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100年後とかだと思ってた「空飛ぶ車」、実は4年後には走るんだって…:空飛ぶ車の今まとめ
Image: NEC
今年8月、浮上実験に成功したNECの「空飛ぶ車」の試作機

まだちょっと現実味がわかないなぁ。

私は知りませんでした。なんというか遠い未来の夢を聞かされているような気がしていました。でも、着々と準備は進んでいるらしく、日本の経済産業省も去年12月にロードマップを発表しているんですよね。

それによると、2019年には試験飛行や実証実験をし、2023年を目標に事業をスタートさせようと考えているんですって。2023年って4年後ですよ。2019年って今です。もう実験始まってます。2020年半ばには私たちも空飛べちゃう? 映画『フィフス・エレメント』みたいな世界きちゃう?

では、そんなSFチックな近未来に向けて、今、日本は空飛ぶ車実現に向けてどんなことをしているのでしょうか? それを知るべく、インフォバーングループのUnchainedと新東通信主催の「日本版!”空の移動革命”を考える」イベントに参加してきました。そこで聞いた情報をもとに空飛ぶ車の今をまとめます。

空飛ぶ車=大きなドローン

Video: metichannel/YouTube

空飛ぶ車と一言でいっても、人によって想像する外見はさまざまだと思います。経産省が考えているのは、大型のドローンのような乗り物で、ヘリコプターとは異なり電動化。部品点数も騒音も少なく、自動飛行との親和性も高い設計です。

大型のドローンのよう=垂直飛行可能ということ。つまり、出発地と目的地の点と点の移動が可能になるんです。飛ぶ位置は、高層ビルよりも高く、ヘリコプターよりも少し低い場所を想定されています。大量生産可能で、最終的には操縦士も必要なくなるようですよ。

広く普及するようになれば、一台数千万円以下の価格で取引されることも考えられますし、最終的には運行コストがタクシーレベルにまで下がる可能性もあります。

日本のメーカーたち

Video: SkyDrive Inc/YouTube
SkyDriveが公開している空飛ぶ車のあるサラリーマンの暮らし

日本でも空飛ぶ車を開発している会社があります。具体的には、自動車業界などの若手が中心になって作られた有志団体のSkyDriveや、東大発のスタートアップ企業であるteTra aviation、そしてKDDIや三菱商事、キャノンなどが出資しているPRODRONEが挙げられます。

人を乗せて移動させるだけなら、今でも十分

では、実例を紹介しましょう。Uber Elevate Summit 2019に参加していた経済産業省の製造産業局 総務課 課長補佐 伊藤 貴紀氏のプレゼンより。

Video: Boeing/YouTube

アメリカのBoeing(ボーイング)今年1月に完全自動操縦の試験飛行に成功

CARTIVATOR(カーティベーター)、空飛ぶクルマの屋外飛行試験開始!

有志団体CARTIVATOR(カーティベーター)ならびに株式会社SkyDrive(スカイドライブ)は、2018年12月、eVTOL機※(いわゆる空飛ぶクルマ)の...

https://www.skydrive.co.jp/posts/5436911?categoryIds=1541081

日本のSkyDrive去年12月に2人乗りドローン(eVTOL)屋外飛行試験に成功

Video: 毎日新聞/YouTube
NECが2019年8月に行なった浮上実験のようす

NECは2019年8月に試作機の浮上試験に成功。

teTra aviationは2020年2月に最終審査予定。

Video: EHang/YouTube

中国のEhang今年4月にウィーンで乗客を乗せた実証実験成功といった具合。

人を乗せて移動させるだけなら、今でも十分いけるくらいなんです。Ehangのテスト飛行の映像を見ると、体験者のコメントは総じてポジティブだし(ネガティブコメントを編集カットしてるわけじゃないよね?)、乗り心地も抜群のようです。

今でさえ飛行機がほぼオートで動いていることを考えれば、自動化された空飛ぶ車の安全性は、ローンチ段階でかなり高いレベルで担保されていると思います。

では、空飛ぶ車があると日本はどうなる?

今回のイベントには、官民、大手企業、スタートアップ、自治体の代表者が集まりましたが、空飛ぶ車ができたら次の4つに期待していると話していました。

物流:人や物の運搬

災害時の移動手段:道路が寸断されてしまった時にもドクターヘリや物資輸送の役割を担う

観光:すでにUberがロウアー・マンハッタンとJFK空港の間をヘリ輸送していますが、空飛ぶ車でも同じようなことが期待できます(なにせ、成田から都心部への移動に時間かかりますからね…)。

地方での移動手段:道路や線路の維持が難しいような地域でも、ポートさえあれば開通できます。将来的には、利用者が少ないにも関わらずサービスを維持しないといけない路線バスなどの代わりになりそう。都市部はルールや規制がガチガチなので、地方に遅れてのサービス開始になりそうですが、渋滞解消と生産性向上が見込まれる

でも、夢のようなモビリティを実際に運行させるまでにクリアしなければいけない課題があります。しかも、同時に解決しないといけないんですって。

解決すべき4つの課題:技術、法律、ビジネス、不安

前述のように、現時点で既に大型ドローンは人を乗せて飛べるんですよね。でも、今後やろうとしていることは、ビジネスとして成り立たせること。ビジネスにしないと、続きません。そしてビジネスにするなら、ちゃんと安心して人に利用してもらう必要もあります。そこで、以下のクリアすべき4つの課題が立ちはだかるわけです。

・安全性やバッテリー、軽量素材などの技術開発

・操縦者の資格、空域や電波などのインフラ制度

・収益性の見込めるビジネスモデルとなる担い手

・心理的な壁をなくす社会受容性

技術開発の部分なんかは、ドローンが苦手とする「」や「バードストライク」なんかの対応策も含めて色々解決しないといけない部分があります。たとえば、ドローンが離発着する場合、横から風を受けると縦の軸がブレますが、乗客がいるとこのままでは気持ち悪いということで、エアロネクストという会社の開発している「4D Gravity」という次世代ドローンが紹介されていました。離発着時に強風に煽られてもジンバルのおかげで機体が安定するそうです。

最後の社会受容性というのは、私たちが感じる空の車に対する不安を、時間と成功例の積み重ねを実際に見てもらうことで解消していくこと。正直なところ、これ以上飛行物が増えるのは漠然と怖いです。落ちてくるんじゃないの、って。でも、あるメーカーの話によれば、飛ぶものは落ちることが大前提で作られているので、実際に飛ばす前に、ほぼほぼ落ちないレベルにまで完成されているのだそうです。でも、どんなに環境整備したとしても恐怖心を持ってしまうことは理解できるので、まずは落ちたとしても大丈夫だと人々が考える場所、例えば川の上をルートに選んで運行し、時間をかけて安全性を見てもらってから広く普及させていくことを考えているのだそうです。

すでに始まっている「空のサービス」

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空飛ぶ車はまだですが、日本における飛行機以外の空の輸送サービスは、すでに開始されています。たとえば、AirXという会社は、「AIROS」という特定のヘリポートから観光地や空港、ゴルフ場等ちかくの特定の場所へヘリ輸送してくれるサービスを行なっています。ヘリなんて報道や高須クリニックの高須院長くらいしか乗れない物だと思っていましたが、清水の舞台から3回くらい飛び降りれば払えない訳でもない。たとえば、東京ヘリポートから軽井沢までの移動は55分なんですが、3人で24万3000円。もし友達との旅なら3で割って8万1000円。公共の乗り物に乗ったらキャーキャー騒がれて困ってしまうほどの有名人(なのに車の免許は持っていない)とかなら、日常利用できるかも。

それに、離島の問題を抱えている広島では、ドローンで輸血用血液を運ぶテストをやったそうです。

また、これに関しては実用は先になりそうですが、A.L.I. Techcnologiesという会社では国内初となる「空飛ぶバイク」を開発していて、実際に運用されるようになれば、空飛ぶ車同様に災害時などで活躍することが期待されています。

空飛ぶ車がある未来をわたしの生活圏で想像してみた

経済産業省の作った動画をベースに、空飛ぶ車が当たり前に活躍する未来を考えてみました。実際、UberやGrab Taxiのように、アプリで配車依頼して目的地まで連れて行ってもらえるのでしょうか?

ポートの話が出ていたことから推測するに、完全にDoor to Doorではなさそうですよね。じゃぁ、川崎市のとある住宅街に住んでいる私の場合、どうなるのでしょうか? 道路なら空飛ぶ車が停められるスペースがありそうですが、通行車の流れを止めるわけには行きません。だとしたら、駅近の比較的広いバスロータリーの一角にポートを作るのが現実的なのかも。となると、動画のように夜中に急病人を病院まで連れて行きたい場合、ポートまでの足が必要になります。Uber同様、陸も空も全部カバーするようなシステムが日本でも求められるでしょうし、その連結がスムースにいくようになるまでは、救急車のほうが便利ということになってしまいそう。だとしたら、救急病院まで30分圏内という我が家より、動画にもあったような「ポツンと一軒家」的なおじいちゃんの家から町の病院みたいなシチュエーションの方が大活躍してくれそうです。

ちなみに、わたしは閉所恐怖症なのと、ちょっとした高所恐怖症なので、多分、空飛ぶ車に乗ったら数分で失神する自信があります。でも、これってセスナに乗ってみるまでわからなかった恐怖症なんですよね。そのときはパイロットにお願いして速攻で降ろしてもらいましたが、完全自動化された空飛ぶ車の場合はどうなのでしょう? 怖くて降りたくても飛んでいる地域によっては急に止めることができず、目的地に降り立ったら乗客が気を失ってた、なんていうリスクもあるかもしれません。

しかしなんにせよ、新しいモビリティが増えるのは楽しみです。空飛ぶ車に乗って目的地までタクシー価格でひとっ飛びなんて、想像しただけでワクワクします。4年後、10年後、私たちの生活はガラッと変わり、今ある地方の課題なんかも解決されていくのかもしれません。

Source: 日本版!「“空の移動革命”を考える」