左利きには4つの遺伝領域が関連していると判明

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  • author Ryan F. Mandelbaum -Gizmodo US
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  • 山田ちとら
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左利きには4つの遺伝領域が関連していると判明
左利きに関連している脳内の領域 Image: G Douaud, University of Oxford via Gizmodo US

左利きさ~ん、なんだかちょっとうれしいニュースですよー!

このたびイギリスのオックスフォード大学の研究により、人のゲノムには左利きと関連している遺伝領域があることが判明しました。これらの遺伝領域は脳の形成に関係していて、特に言語をつかさどる脳の部分同士をつなぐ白質路に違いが出ることもわかったそうです。

人間だけ左利きが少ない

だからどうなの?って思うかもしれませんが、じつは左利きの生物学的な意義はふか~く、人間と動物を区別する特徴のひとつなんだそうです。

研究論文を発表した研究者のひとり、Dominic Furnissさんによれば、動物の場合はほとんどが右・左利きとほぼ半々なのに対して、人間だけは左利きが約1割しかいないんだとか。先史時代の壁画の分析結果からも、人間は少なくとも過去1万年の間はずっと90%右利き、10%左利きだったんだそうです。

さらに、そのように極端に少ないせいからか、左利きの人は昔からアンラッキーだとか、災いをもたらすだとかいろいろ言われてきたんだそうです。

英語で「右」は「right=正しい」ですし、フランス語の「左」は「不器用」という意味も。日本だってちょっと前までは学校で左利きをむりやり右利きに矯正してましたし、駅の改札はいまだに右利き用に設計されているから、左利きには「ピピッ」とやりづらかったりするんですよね…。

左利きの遺伝的な要因

このとおり、人間の生存には有利ではないようにも思える左利きですが、なぜそもそも1割だけ左利きになるんでしょう?

左利きになるかならないかは、この研究以前にも遺伝子の影響が絡んでいることがわかっていました。オックスフォード大学によれば、以前行われた双子の研究から、だいたい利き手を決める要因の25%は遺伝子に由来しているとわかったそうです。ただ、どの遺伝子が関係しているのかはこれまで特定できていませんでした。

今回の研究では、UKバイオバンクからおよそ400,000人分(うち左利き38,332人)のゲノムを分析して、4つの遺伝領域を特定することに成功。そのうちの3つは脳の発達と構造に影響するタンパク質と関わっていることもわかりました。これらのタンパク質は細胞のかたちやはたらきを定める細胞骨格に関係しているそうです。

脳の構造に違いが

そこで、研究者たちはさらに約9000人分の脳画像を調べてみました。すると、左利きに関係している4つの遺伝領域は脳の構造に影響していることがわかり、なんと言語をつかさどる領域をつなぐ白質路の発達に違いが見られたそうです。

主任研究員のAkira Wiberg博士によると、左利きの人の脳では、右脳と左脳にある言語領域がよりスムーズに情報を伝達する傾向が見られたそうです。もちろん、これは被験者全員のデータから見えてきた傾向に過ぎないので、個々の左利きの人がすべてそのようにスムーズな情報伝達を行なっているとは限りません。

それでも左利きにとってはなんだかワクワクするニュースです。もしかしたら、まだあくまで可能性でしかありませんけど、左利きの人のほうが言語的に優れているかもしれない…なんてことも!?

病気との関係も

ただし、マイナス面も。

左利きに関係している4つの遺伝領域は、非常にわずかながらにパーキンソン病に罹る確率が低くなるものの、非常にわずかに統合失調症に罹るリスクが高くなる関連性も見つかったそうです。関連しているだけで、因果関係は認められていませんが、今後これらの病状の進行を研究するうえでは貴重な発見といえるでしょう。

左利きを決めるのは遺伝子だけではない

カタツムリは左利きか右利きによって殻の巻き方が違うそうですが、これは細胞骨格と関連している遺伝子の違いによるもの。同じように、細胞骨格の違いが人間の脳に見られたのは今回の研究が初めてでした。

研究者のひとり、Gwenaelle Douaudさんによると、カタツムリやカエルなどほかの生物の場合、遺伝子による細胞骨格の違いは生まれる前から顕著なのだそう。ということは、もしかしたら人間の胎児の脳にも将来の利き手がわかるヒントが見つかるかもしれないんだとか。

ただ、利き手を決めるのは遺伝的な要素だけではないので、人間が左利きになるプロセスはもっと複雑で、もっといろんな要因が絡んでいるそうです。

それこそ技術の発展によっては、将来左利きに断然有利な世の中になるかもしれませんしね。その日が来るまで、少々肩身の狭い思いをしてでも左利きを貫き通しましょう。

Reference: University of Oxford