夢見る野心家とお堅い政治家、イマイチ相性が良くないようです。
木曜日に行なわれた、NASAのジム・ブライデンスタイン長官とのイベントの中、SpaceXのイーロン・マスクCEOは、SpaceXの知的財産を誰とでも共有できるようにすると公言しました。ですがNASAは、特にそれについて前向きということではなかったようです。
ツイートが火種だった
ふたりはカリフォルニア州ホーソーンにあるSpaceX本社で会合を開き、宇宙開発企業と連邦政府機関との間で高まる緊張を緩和しようと努めました。
ふたりの仲違いが公表されたのは2週間前で、それはマスクが彼のとこで作っているロケット「Starship」について最新情報を公開する前に、長官がTwitterで声明文をツイートしたときでした。長官はマスクに対し、SpaceXのクルー・ドラゴンを使って宇宙飛行士たちを、国際宇宙ステーションに送り届けることを優先すべきだ、と提案したのでした。
My statement on @SpaceX's announcement tomorrow: pic.twitter.com/C67MhSeNsa
— Jim Bridenstine (@JimBridenstine) 2019年9月27日
私は明日行なわれる、SpaceXの発表を楽しみにしています。それまでの間、商業乗員輸送開発は予定から何年も遅れを取っています。
NASAはアメリカの納税者による投資にも同程度の熱意が見られると期待しています。それを提供する時が来たのです
イーロン兄貴の反撃、いなされる
マスクはCNNの取材にツイートで返答し、「長官は商業乗員輸送とおっしゃいましたか? それともSLS?」と冗談めかして、開発が何年も遅れているNASAのスペース・ローンチ・システム(SLS)大型打ち上げロケットを名指ししました。
迎え撃つブライデンスタイン長官は、The Atlanticの取材にこう答えています。
私はそれが役に立つとは思いませんね。SLS、これは完全に別のミッションです。SLSは月に行きます。なので、このふたつを比較する理由がわかりません
そんな状況で顔を合わせるふたり
そして木曜日、ふたりは共同で行なう商業乗員輸送開発プログラムの最新情報発表のため、SpaceX本社に並んで立ちました。そこでのふたりの興味は、互いの胸中を穏やかにし、共通の目標を強調することだったように見受けられました。
LIVE: Talking to media about @Commercial_Crew progress @SpaceX with @elonmusk, @AstroBehnken & @Astro_Doughttps://t.co/tv8xJj9N0N
— Jim Bridenstine (@JimBridenstine) 2019年10月10日
妙に懐の広さを見せつけようとするイーロン兄貴
おそらく和平を申し出たかのように、自分が良い人間だと示すかのように、マスクは長官に対し、NASAはSpaceXの知的財産を誰とでも共有できることを強調。Tech Crunchが指摘しているように、彼はこの問題を2度取り挙げ、質疑応答にてこう発表しました。
私はジムとの間で、SpaceXのデータは専有だと考えるべきではないことを、とてもハッキリ明確にしました。競合他社の誰でも利用できます。無料です
そのごマスクは、またしても「ハッキリさせておきたいのは、NASAは我々の知的財産のすべてを、NASAが望む誰とでも共有できるということです」と繰り返したのでした。
長官の大人な塩対応
これに対し、ブライデンスタイン長官はマスクに感謝の意を示す一方、NASAが誰と情報を共有するかには、慎重でなければならない理由があることを明らかにしました。さらにTech Crunchいわく、長官はこう話したと伝えています。
知的財産というのは、国家のためになるものであって、我々が心から興味を持たない人々や国と共有することはできない、というものです
マスクは、人類が宇宙を探検できるよう、自分の革新的技術を広めたいと考えている“先見の明のある人物”だと自負しているように見られました。しかしNASAは、地球上でその技術を利用し、アメリカの関心と対立する終着点を目指す他者のほうに、政府はより一層の関心を持っている、と彼に釘を刺さねばなりませんでした。夢を見るだけではなく、石橋を叩いて渡る役人らしい大人の対応という感じですね。
Source: Twitter, The Atlantic, Tech Crunch