グラフィティアート界のレジェンド、フューチュラが語る「テクノロジーとの接点、ECサイト閉鎖の真相」

  • author Jun Fukunaga
グラフィティアート界のレジェンド、フューチュラが語る「テクノロジーとの接点、ECサイト閉鎖の真相」
Photo: 照沼健太

まさかのテック好きでした。

地元ニューヨークのストリートを拠点に70年代から活動を開始し、これまでにミューラル〈壁画〉、スプレーアート作品を世に送り出してきたグラフィティアート界のレジェンド中のレジェンド、フューチュラ(FUTURA)。

アートシーンだけでなく、これまでに70年代オリジナル・パンクの雄であるザ・クラッシュ、90年代のクラブシーンを席巻したMo'Waxのジェームズ・ラベルら音楽業界のカリスマたちへの作品提供や、ストリートブランドOff-White(オフホワイト)のディレクターであり、2018年には、ルイ・ヴィトン、メンズ部門のアート・ディレクターに就任したヴァージル・アブローとのコラボでも話題になるなど、グラフィティアートの領域に留まらない幅広い活躍で知られています。

そんな彼が手がけるブランド「Futura Laboratories」とクリエイティブプラットフォーム「Co:Labs」とのコラボレーションイベント「Secret Experience by Co:Labs x Futura Laboratories」が9月29日、9月30日の2日間限定で原宿・JINGにて開かれました。

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FUTURAの代表的なスタイルの一つである「Atoms」が光でオブジェとして初めて立体化し、その周囲をパノラマウォール、床面、ロッドのLEDで覆い尽した。

注目は、従来の2次元ではなくデジタルを駆使して表現されたアート作品の展示。3Dアニメーションを使った展示や、LEDと音楽、スモークを連携させた空間演出など、これまでのグラフィティアーティストとしてのイメージからは一線を画すものでした。

ではなぜ、アナログなイメージのあるグラフィティアート界のレジェンドは今回、テクノロジーを駆使したデジタルでのアート表現に取り組むことにしたのでしょうか?

意外にもギズモードのファンということで快く受けてくれた今回のインタビュー。彼が考えるデジタル、テクノロジーとアートの関わりについて話をうかがいました。

ギズモードのことはずっと知っているし、ファンだよ(笑)

──「ギズモード・ジャパン」というテック・メディアからのインタビューになります。よろしくお願いします。

FUTURA(以降F):ギズモードのことは知っているよ。もうずっと有名だしね(笑)。

──ありがとうございます。

F:僕はギズモードのファンだし、ここ20年くらいの間、オンラインだとかヴァーチャルリアリティ空間においてプレゼンスを確立するとかそういうことに取り組んでいるけど、例えば、Instagramだとかモダンなテクノロジーが世の中に誕生する前からオンラインで活動しているんだよ。だから君たちが紹介している新しいテクノロジーが生み出すソフトウェアやアプリ、プログラムにはとても関心を持っているよ。

──そうなんですね! では、それに関連してお聞きしたいのですが、最近、気になっているテクロノジーやガジェットはどういったものですか?

F:そうだね、最新のiPhoneには興味がないかな(笑)。確かに最新のテクノロジー自体には興味があるんだけど、考えてみるとそういうものって、実はもう多くの人が手に入れていると思うんだよね。だから、個人的には何が何でも”最新型”を手に入れる必要はないと思う。常に新しいものに興味を持ってそれを吸収することについては特に否定しないよ。

でも今回、「Futura Laboratories」と「Co:Labs」がコラボしてこういった展示ができたことは、テクノロジーが新たな道筋を示してくれたからだと思っている。今までの僕の作品は2次元での表現だったけど、動画だとかこういった感じの3次元で作品を表現できることは自分にとっても新鮮なんだよね。だからそういう意味ではこれまでとはまた違った期待感を膨らませるものになっているんだよ。

──今回は、これまでと違ったデジタルテクノロジーを使っての作品リリースとなりますが、デジタルという形式を採用した理由をおきかせください。

F:「Futura Laboratories」にとって、デジタルを使った表現はまさに今後の方向性といえるものなんだ。今回のコラボは僕にとってもこれまで自分が認識していたアートをさらに広げてくれるような期待感を持っているんだ。もちろん、こういったものはプロダクトだとか作品という形で表現されはするんだけど、今回の作品ではそのイマジネーションをひと押しして、若者たちにもわかる言語、媒体、つまりデジタルとして表現することを試みたんだ。

僕自身はまだ”アナログの世界の卒業生”なんだけど、これまでにもオンラインには携わってきた。1996年にはウェブサイトを立ち上げたし、HTMLの知識も独学で勉強した。そういったことは自分のアイデンティティを表現するためにやってきたことで、今回の「Futura Laboratories」の取り組みは物理的、有機的なアートをこれまでとは違う形で表現する、リブートするということなんだ。つまり手描きのグラフィティを、テクノロジーを使って、作品を違う形で投影し、表現していくことだと解釈している。今回のコラボは僕にとっても新たな領域を切り開いてくれるものなのさ。

ドローンをプログラミングしてスプレー塗装するアーティストを知っているかい?

Photo: 照沼健太

──あなたの作品は、これまでグラフィティというアナログなスタイルをとってきましたが、作品のモチーフにはデジタルやテクノロジー、フューチャリスティックな要素を強く感じますし、時には未来に対する警告を感じることもあリます。今後、未来的なものを描くことについてどうお考えですか?

F:その質問については僕自身、これから考えていかなければならないことだし、今回のコラボをひとつのきっかけにして今後、その認識はどうあるべきなのかを追求していくべきだと思っている。ところで君は、KATSUっていうアーティストのことを知っているかい? 彼はドローンをプログラミングしてスプレー塗装でアートワークを作るアーティストなんだよ。その手法はこれまでのグラフィティ、ストリートアートをひねって解釈してみせたものなんだけど、それもいってみればこれまでのグラフィティとは同じ分野のアートなんだ。でも僕らがいう”グラフィティ”というものは、かつてやってきた”公共物への落書きとして違法になってしまう”ようなもので、ギャラリーに展示されているようなものは、もはやグラフィティとは言えないんだ。

KATSUの話をしたのは彼と今の僕とではやり方は違うけど、テクノロジーを駆使する手法を取っているアーティストとしては共通しているからさ。機会があればコラボしてみたいと思うよ。でも今後については明確な目的みたいなものは実はないんだ。ただ、どこかには向かっていきたいとは思うけどね。

──80年代にはグラフィティ界隈だけではなく、パンクロック(ザ・クラッシュ)、90年代にはクラブ・ミュージックに影響を与えたジェームズ・ラベルのMo'Wax周辺などこれまでいろいろな出会いがあって、ご自身の可能性を広げてこられたと思います。そして、今はファッションやテクノロジーをうまく利用している様々なアーティストとコラボしていますね。そういった”時代のカルチャー”を作ってきた若いアーティストとコラボするようになったきっかけについてきかせてください。

F:アートも音楽もいってみれば芸術のひとつなんだ。そのふたつのクリエイティヴな領域が組み合わさって生まれたのが音楽業界とのコラボだった。80年代当時、ザ・クラッシュは僕の地元ニューヨークで活躍していたんだけど、僕自身は彼らの音楽についてはまったく知らなかった。でもひょんなきっかけがあって、彼らのために作品を作ったら、すごく気に入ってくれた。そこから付き合いが始まって、何かコラボしようという話になったんだよ。

あとジェームズ・ラベルとのコラボも僕のキャリアの中では重要な出会いだったといえるね。当時の若者たちは音楽にとても興味を持っていたし、僕自身も若者たちの心を掴むにはどうしたらいいのか?ということを考えていた。音楽は僕にとって新しい媒体だったんだけど、音楽とコラボをすれば、きっと彼らの心を掴むことができる。そう思ったからアートと音楽のコラボを始めたよ。まあ、今となってはそれはごくごく一般的なものになっているけどね。

幅広くコラボに取り組んでいるのは、「Futura Laboratories」の存在を多くの人に知ってもらうためなんだ。だから、今回の「Co:Labs」とのコラボも僕の知名度を上げてくれると思っているよ。そして、それはすべて自分のアイデンティにつながることでひとりの人間の存在をみんなに知ってもらうだけでなく「Futura Laboratories」というブランドの存在も知ってもらいたいという想いがある。だからこそ、今後もいろいろなコラボに取り組んでいきたいと思っているよ。

「Futura Laboratories」のECサイトを閉鎖したのは転売対策ではない

──最近、ご自分のECサイトを閉鎖されましたね。これだけ転売が広まったのはインターネットの弊害とも感じます。この点についてどのような見解をお持ちですか?

F:そうだね、君がいうとおり「Futura Laboratories」のECサイトを展開して、スケートデッキを販売していたんだけど、まず閉鎖した理由は別に転売行為が広がっているからではないんだ。僕が使っていたECサイトのプラットフォームセキリュティがあまりにも脆弱だったから海賊盤のECサイトに乗っ取られてしまったんだよ。例えば12時きっかりにECサイトでスケートボードを販売するとしよう。普通ならお客さんは1分くらいで購入することが物理的に可能なんだけど、そこにBotが不法に介入してきて、別の海賊盤ECサイトに彼らを誘導するということが起きてしまった。それに対して僕は怒りが収まらなかったんだ。

定価120ドルのものを500ドルで転売することは、ある意味でビジネスといえば、ビジネスだから理解できなくもない。もし、僕が営利目的で大量生産して売れば売るほど儲かるという考えをもっているんだとすれば、まあそれはそれで構わないよ。だって転売されようが僕自身は少なくとも利益を得られるわけだから。でも、僕のお客さんは、限定数生産のスケートデッキの価値をちゃんと見出してくれている。僕自身もそのことに喜びを感じている。だからこそ、今回、ECサイトは閉鎖したけど、近い将来もう一度立ち上げたいとは思っている。でもその時には悪用されないようにしっかりとしたセキリュティシステムを導入する必要がある。

やっぱり転売目的でなく、自分で使いたいから商品が欲しいという人がいる限り、僕としては販売はしてあげたい。ただ、そういう気持ちを利用して悪質なことをする奴らに対しては怒りを覚える。ビジネスで何かを勝ち取りたいなら公平にやる必要があるし、人の立場を悪用するようなことはやめるべきだ。僕に関していえば、自分でECサイトを立ち上げて、販売だけじゃなく梱包から出荷まで全部1人でやっていたんだよ。だから当然、そこには僕の感情も込められているわけで。そして、お客さんもECサイトで商品を購入するという体験を通して僕とパッションを共有するんだ。そうすることで彼らと僕との間に信頼関係が生まれるんだよ。だからこそ、不法行為を働く奴らがその信頼関係を壊していくのは許せないし、認めることはできない。そういうことがあったのでECサイトを閉鎖したというわけ。ただ良い勉強になったから、この経験は今後に活かしていきたいと思うよ。

Photo: 照沼健太


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