銀行業務の自動化がアメリカ20万人の雇用をなくす日

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銀行業務の自動化がアメリカ20万人の雇用をなくす日

米銀がテクノロジーに投じるお金は年間1500億ドル(約16兆円)。その刈り入れ時がやってきたようです。

AI化で、アメリカの銀行業界は「今後10年で約20万人がリストラ」され、「金融史上最大の労働から資本への移転」が起こると、Wells Fargo銀行アナリストのMike Mayo氏が最新報告で発表しました。職を失う人は「全行員の1割」で、「バンキング業務効率化の黄金時代」がやってくるとFinancial Timesに話していますよ?

人員削減されるのは主に顧客対応窓口、コールセンター、支店で、それぞれ20~30%がカットになって、高性能なATM、チャットボットに置き換えられて、投資判断もビッグデータとクラウド処理で行えるようになるのだそう。

欧米の銀行はこの夏にも大型リストラが吹き荒れて、全体で3万人が失業したばかりです。最近の目立つところを拾ってみただけでも、こんなにあります。

・ドイツ銀行:18,000人を2020年までに削減。

・シティグループ:数万人規模の削減を予定。

・HSBC:4,000人削減。

・バークレイズ:3,000人削減。

・ソシエテジェネラル:1,600人削減。

・クレディ・スイス:当面採用凍結を発表。

それやこれやで「かつてないほどテクノロジーの存在感が増す10年になる」と、Mayo氏はCNBCニュース(動画下)でも盛んに投資家向けにアピールしていますよ。

・いま銀行の収入は過去80年で最低水準。

・収入が減ったら、支出を減らさなければならない。銀行の出費の半分を占めるのは人件費。

・これをテクノロジーの力で削減する。テクノロジー化が進む黄金時代に入る。

・銀行だってもうノーチョイス。年間1500億ドル(約16兆円)ものお金を技術に投じている。

・それは25年も前からのことで、あまり成果は上がっていなかったが、やっ自動化が大規模に進められる基盤がそろった。ゴリアテ(巨人。ここではメガバンク)の大勝利。

・銀行の支出で一番負担が大きいのは人件費で、出費全体の半分を占める。それをテクノロジーで削る。

・銀行株買うなら今がチャンス。

メガバンクのアナリストがここまであからさまなテクノロジー礼賛、リストラ万歳も珍しくて、普通シンクタンクや都銀がリストラの未来予想を発表するときには、もうちょっと遠慮するものなのけど…。いくらオブラートにくるんでもリストラはリストラっていう割り切り方がすごいですね。

モルガン・スタンレーの大型吸収合併のときも「ゴリアテの大勝利*」と言っていたので、好きな言い回しなんでしょうね。要は大きなものは勝つ、と。 拡大化路線で小さな銀行はどんどん吸収合併されていき、体力をつけた銀行だけが生き残って、これ以上大きくなりようがないほどに肥え太ったら、だぶついた行員を数千、数万人単位で斬り捨てて、最後に笑うのはひと握りの中枢の人だけ、ということですよね。

*編注:少年のダビデが巨漢の勇者ゴリアテを倒す旧約聖書のエピソードの逆。

まごころ対応なんてしていたら、すぐ大きなところに吸収されてしまうので、銀行の選択肢も減っていきそうです。Wells Fargo銀行と言えば、ゴールドラッシュ時代、金の山を幌馬車で東海岸まで運んで、お金に換えて戻っていたところから始まった銀行です。馬と人力だった160年前のウェルズさんとファーゴさんもこんな未来、想像もしなかっただろうなあ…。%!(EXTRA string= )

ゴリアテは、人の手が入らない純度の高い資本が集積する銀行とも言えるし、それを牛耳る人間とも解釈できます。いや、もしかしたらそれさえもマリオネットで、資本主義という目に見えない怪物なのかも。