【詳細なネタバレありレビュー】愛と量子とSFと。劇場アニメ『HELLO WORLD』が描く未来に、シビれ散らしました

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  • author ヤマダユウス型
【詳細なネタバレありレビュー】愛と量子とSFと。劇場アニメ『HELLO WORLD』が描く未来に、シビれ散らしました
Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

主観と観測、物理と無限。繋ぎ止めるはひとえに、ラヴ。

ひたすらに加速し続ける僕らの世界。テクノロジーや文化が前進するとともに、描かれるエンタメもまた変わってきます。特にSF映画なんてその影響や想像力をモロに受けるよなーと思いつつ、だからこそ「そう来たか!」なアイデアや表現に悶えつつ。

伊藤智彦監督が描くオリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD』を見てきたのですが、まさに「そう来たか」がふんだんに散りばめられていて、大満足でした。こう、2019年に描きがいのあるSFアニメーションだな、と。しかもそこに10代のラブストーリーもミックスしてる。SFと恋愛。この組み合わせに、僕らは何度心をブルっとさせられてきたことか!

レビュー…の前に本作の概要

伊藤智彦監督は『時をかける少女』『サマーウォーズ』で助監督を、『世紀末オカルト学院』で監督デビューし、直近では『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- 』の監督をつとめました。本作の原作は『正解するカド』の野﨑まど、制作会社はグラフィニカ。音楽はOKAMOTO’S、Official髭男dism、Nulbarich、OBKR、Yaffle、STUTS、BRIAN SHINSEKAIからなるスペシャルユニット、2027Sound

あらすじは以下。

京都に暮らす内気な男子高校生・直実(なおみ:CV.北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(CV.松坂桃李)が突然現れる。

ナオミによれば、同級生の瑠璃(るり:CV.浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。

「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救うため、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。

しかしその中で直実は、瑠璃に迫る運命、ナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された大いなる秘密を知ることになる。

Video: 東宝MOVIEチャンネル/YouTube


Video: 東宝MOVIEチャンネル/YouTube

キャッチコピーは「世界がひっくり返る、新機軸のハイスピードSF青春ラブストーリー」。それでは、詳細なネタバレありのレビューいってみましょう! 本当に詳細にネタバレしているので、まだ見ていないという方は気をつけて!

量子コンピューターによって無限性を得た世界

本作の舞台は2027年の京都。町中にはドローンが当たり前に飛んでいて、京都全域を監視・マッピングし、過去現在にわたっての京都を仮想現実的に表現する大計画「クロニクル京都」が進行しています。僕たち的に近いのは、今見ている景色の100年前のすがたをARで表示するような、そんな技術。文化遺産の3Dデータ化に似てますね。膨大なデータの蓄積を可能にしているのは、無限に等しいデータ容量をもつ量子記憶装置アルタラ」。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
量子記憶装置アルタラ。

穏やかな日々をおくっていた直実は、「10年後から来た自分」を名乗るナオミと出会います。ナオミの目的は、同級生の寡黙系青髪ヒロイン瑠璃を救うこと。ですが、ここでひとつの大きな仕掛けが明かされます。直実の世界はクロニクル京都が成功し、アルタラ内でシミュレートされているデータに過ぎず、ナオミこそ実世界の住人で、アルタラにアクセスして過去の自分=直実にアクセスしているのです。それを裏付けるかのように、ナオミの姿は直実以外には見えません。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
直実にはナオミが見える。

量子記憶装置はあらゆる事象、過去から未来を重ね合わせで記録する=無限の容量をもつとされており、たとえ過去の自分と交流することで直実の未来が書き換わったとしても、描写的には(この時点では)問題が無いとされています。ここの技術的フォローには感心しましたが、僕のもうひとつの懸念は、この手のどんでん返しって視聴者のユアーストーリーにそぐわない可能性もあるのでは、と。なんといいますか、旬ですし。結果的に、この演出は遺恨を残すことはなく、むしろ後半のギミックへの布石として機能しているように感じました。

ナオミがやってきた真の目的

データであることを告げられた直実少年はさして驚く様子もなく、10年分知識の予習があるナオミの助言に従うことに。決められた結末に介入するというのは容易ではなく、アルタラの自動修復システムが二人を邪魔してきます。直実の武器となるのは、ナオミから与えられた、万物を生成する手袋「グッドデザイン」。自分の世界がデータであることを自覚した直実は、あらゆる物質(たとえば水や銅)を生成する能力を手に入れ、なんやかんやで見事にヒロインを救出。ハッピーエンド!

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
青い手袋に見えるのがグッドデザイン。

しかし、ここでナオミの暗黒面が露呈。ナオミの目的は事故直前の瑠璃のデータを手に入れることで、そのために直実に接触し、事故を回避させたのです。ナオミは瑠璃を連れ去り、アルタラ内から瑠璃のデータを抽出し、ナオミがもといた現実世界へ持ち去ってしまいます。ナオミが暮らす世界の瑠璃は事故の影響で昏睡状態に陥っており、事故回避した瑠璃のデータを現実世界の瑠璃に移植することで、喪失した意識を補完しようとしていたんです。なんという一大計画!

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
抽出される瑠璃。

ナオミの半生を費やした計画は成功し、10年間眠っていた瑠璃はついに目を覚まします。しかしこれに黙っていないのはアルタラの自動修復システム。消失した瑠璃のデータを回収するため、なんとナオミの世界にも彼らが侵食してくるのです。無限の容量をもつアルタラ、その演算性能はデータの壁を超え(作中では論理結界の崩壊と表現)、現実世界へ溢れてくる。高性能AIやスパコンにいだく無意識的な恐怖は、こういう事態に接続してるのやもしれませんね。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
アルタラから溢れ出てくる自動修復システム。

繋がる世界、駆け抜ける愛

一方、アルタラ内の直実がいる世界では、データのレストアが進行中。ナオミ側からアルタラ内のエラーを修復する措置がとられたのですね。夢の世界が一気に崩壊する『インセプション』的な世界大崩壊がはじまるなか、直実は「瑠璃はこの世界の外にいる」と信じて、崩壊へダイブ。ナオミと瑠璃がいる世界にたどり着き、自動修復システム(狐面を付けた人型のアバター:上画像)たちをやっつけつつ、NTRじみたことをしたナオミにワンパンくれてやるのでした。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
直実がナオミにパンチ。

あとはもう加速するまま、ハイスピードSF青春ラブストーリーを地でゆくしかありません。アルタラから溢れ続ける自動修復システムたち、冒されてゆく現実世界。さぁどうするのか。ここからの展開は見ている人の解釈次第だと思うので、以下は僕の解釈になります。

事態を収束させるには、データを元ある場所へ帰すしかありません。大立ち回りのすえ、直実、瑠璃、ナオミの三人がやってきたのはJR京都駅。ここにデコード装置を生成し、瑠璃と直実を元の世界へ返還(あるいは変換)します。自動修復システムはナオミと直実のデータ重複を解決すべく侵攻しているため、ナオミは自分を殺すことで二人を帰還させるのでした。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
ナオミが身を呈して直美を守り、データの重複がなくなったために自動修復システムが消滅していく、と解釈したシーン。

帰還した二人は、しかして自分たちが記録であることを、この世界がデータであることを知っています。それでも(修復された)この世界は自分たちにとって真実であり、新たに始まる物語を前に決意を固めるのです。「Hello World」。ようこそ、僕たちの世界。

SF好きに嬉しい演出盛りだくさん

主人公の直実は本が好きで、なかでもSFを好んで読んでいます。直実の部屋にはハヤカワSF文庫や創元SF文庫が並んであるし、ナオミにこの世界の真実を告げられたときなんて「なんだかイーガンみたい」と、すごくSFファンじみた反応してましたからね。この反応は、僕たちSF好きがする反応のそれに限りなく近くないですか?

クロニクル京都として記録された直実は、その人生が決まっています。ナオミはこれに干渉して瑠璃の事故を回避しようとしましたが、じゃあ直実の未来が変わっちゃうじゃあないかと。これに上手くハマっているのが「この世界は量子コンピューターで演算」されているというギミックです。

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Image: (C)2019「HaELLO WORLD」製作委員会
アルタラのUIがめちゃカッコいい。

ナオミの干渉により直実の未来はオリジナルから分岐してしまいますが、記録がリニアではなく重ね合わせになる量子コンピューターならな、そうしたブレもある程度はOK。多世界解釈どんとこい。でも大きな事件は避けられないよということで、瑠璃の事故はしっかり対策しなきゃいけないし、ブレを戻そうとする自動修復システムたちも倒さないといけない。ハードSFに手がかかりつつも、突飛すぎない良い距離感に落とし込んだなと感じました。

であるなら、グッドデザインを使った物質生成も「いまここにモノがある低確率な状況を無理やり手繰り寄せる」という、蓋然性に介入するチートアイテムとして正しく機能しています(ブラックホールだって作れる!)。データの住人がデータであることを利用して立ち回るなんて、ワクワクしないわけがないでしょう?

納得できる、斜め45度からのどんでん返し

で、懸念に思われた「実はこの世界はデータでしたぁー!」については、以下の要素から納得できました。

・タネ明かしが序盤だった=これも物語の構成に関わってくるんだろうと思わせてくれた
・直実のリアクションが「わかってる人」のそれだから、スっと見れた
・データ世界だからこそできる表現をしっかりやってくれた

演出的に「な、なんだってぇー!?」なノリがほとんどなくて、というかその反応は本作に置いて重要じゃないんですよ。それらを踏まえた上でどう立ち回るか、何が起きるのか。本作はそちらにしっかりフォーカスしていたので、いわゆる唐突すぎる世界のタネ明かしにも、見ていてカドが立ちませんでした。この映画以降、そういった手の表現は一筋縄じゃいかなくなるでしょうねぇ。

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Image: (C)2019「HaELLO WORLD」製作委員会
直美とナオミが協力関係を結び、握手。

「この世界はすべてデータで、自分も好きな女の子もすべてデータでしたぁ!」に絶望するような手合の作品ではないので、そこはご安心ください。むしろ直実は「僕にとってはこれが現実なので」と、主観性を大事にするクールな価値観を持っています。主観、大事なのは主観なのです。

硬度は高く、見た目には優しいエンタメSF

本作が爽快に、あるいは胸にストンと感じられた要因は、テクノロジーが現在と地続きに感じられるところです。クロニクル京都は現在の地図観測技術の行き着く先かもしれないし、なんならARで今見ている風景の100年前の情景を映すなんて試みはすでに行なわれてます。ドローンによる3Dマッピングだってある。現行の技術が熟れてきた先に何があるのか、本作はそこも突飛すぎずワクワクできる点なのです。シンギュラリティになっているのは量子コンピューターと高速データ通信でしょうか。5Gの先、6Gや10Gが出てきた時、通信と観測はどこまで捉えてしまうんでしょうね。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
美しき京都!

一見すると日本らしい近未来。でも、仕組は現実的かつ論理的で、アルタラを運営する科学者たちの仕事っぷりは、現在のサーバー運営者や研究者にも通ずるものがあります。作中ではナオミや科学者たちが技術的な解説を入れてきますが、そこを理解できなくとも惹き付けるビジュアルや演出が、本作を見やすいエンタメSFにまとめています。むしろSF好きは、そうした一言二言の設定に「なるほどぉ!」と興奮できるでしょう。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
アルタラを運営する科学者たち。

どれだけ斬新な構想も、映像化するにあたってはビジュアルに落とし込まなければなりません。そこを脳内設定に忠実にしすぎて地味になることもあれば、突飛すぎて追いつけなくなることもある。本作には『インセプション』や『パプリカ』のような名作SFのエッセンスを感じましたが、記号としての架空をうまく混ぜ込みつつ、独自のサイエンス表現も楽しませていただきました。つまり、SF好きも楽しい、そうじゃない人も楽しい。でもSF好きのほうがきっと楽しい。

論理的超常を超えるものがあるとすれば

古来より、SFには少女と愛が似合うとされてきました。まぁそれはそれとして、行き着いた科学と愛はかなり対局に位置するものですよね。理論によって整然と実証されうる科学と、まったくもって曖昧な感情である愛。でも、メドローアしかりはんさようボムしかり、人類は相反せしものの調和に挑み続けるもの。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

そもそも本作は「直実、お前に彼女を作ってやる」という、やや不純な動機が序盤のうちから提示されます。ナオミにとっては直実と瑠璃が結ばれないと目的が達成できないからしゃーないのですが、恋愛感情ほど困難に立ち向かうためのエンジンはないのも、事実。それが十代の少年ともなれば、好きな女の子を一人守れずして何が世界だと! 言うべきではなかろうか!

多分に漏れず、読書少年だった直実も瑠璃のため世界を相手に戦います。そこに打算めいたものはなく、あるのは瑠璃を助けたいという一心。なんともまっすぐ、なんともシンプル。この作品において、もっとも複雑でない感情=純度の高い大容量データ=エネルギーなのではないでしょうか。だからこそ映えて見えるし、だからこそあらゆる超常をねじ伏せる力がある。愛は世界を救うと標榜されてるようですが、とんでもない。少年の愛は、一人の女の子を救うためにあるのです。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

思えばSF×彼女というのも『her/世界でひとつの彼女』に代表されるような連綿と続くテーマですよね。ナオミの「彼女を作れ」というセリフはマッドサインスの象徴で、どこか物理的に作り上げる感もあったりして、禁断のかほりもしなくもない。本作はそこがテーマのようにミスリードさせつつも、手に入れかけた愛を手放さないために奮闘する、まさしく青春ラブストーリー。愛はサイエンスを上回るんだなぁ。

最後1秒の仕掛け(ネタバレ度:極大)

ここまで読んでくれた人なら、もう言って良いでしょう。本作は最後もう1つ仕掛けがあります。公式サイトに「この物語(セカイ)はラスト1秒でひっくり返る」とありますが、実際ひっくり返ります。どういうことかというと、ナオミがいた世界もシミュレートされたデータの世界だったんです。マトリョーシュカ!

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
ナオミが目覚める瞬間。キャラクターの描画がCGじゃない!

つまり、直実が暮らす世界←アルタラを操作しているナオミがいる世界←を見ている世界、です。本作のラストシーンは、カプセルのようなハイテクベッドで寝ているナオミが目を覚ますと、青い髪の女性研究者に抱きつかれるシーンで終わります。まるでずっと眠っていた恋人を目覚めさせるため、頑張ってきた苦労が報われたかのように。お察しの通り、この女性は瑠璃です。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

伏線らしきものも実はあって、論理結界が崩壊してナオミの世界に自動修復システムたちが侵食してくるシーンがありましたが、あれはどちらの世界もともにデータだからこそあり得たのではないか? それに、万物の生成器であるグッドデザインが持ち込めるなら、少なくともあそこは現実世界ではないのでは?

ここからは推測ですが─。

ナオミは瑠璃の事故を回避するためアルタラに介入した。が、介入に失敗(あるいは成功したが直実による事故回避に失敗)した未来のナオミは、どこかの段階で昏睡状態に。しかし、作中で描かれたように事故の回避に成功したことでナオミの目的は達成。ナオミは死亡していますが、ナオミの最期はとても救われたものでした。愛する人を救えたナオミは、幸せのまま息を引き取ります。しかしこの行動によって瑠璃が生きている未来が発生し、今度はナオミ救出のため行動を起こす。そして死亡寸前のナオミのデータをサルベージすることで、ナオミの蘇生に成功、と。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

根拠は2つ。1つは量子コンピューターです。すべてを重ね合わせで観ている量子コンピューターに時系列は存在しません。もちろん、過去に瑠璃が救われたから未来の瑠璃が在るという関係性そのものは成り立ちますが、重要なのは瑠璃が救われたというケースを実証できたできたことです。

もう1つは、グッドデザインの存在。実はグッドデザイン、しゃべります。この声が瑠璃と同じで、おそらく干渉している瑠璃のアバター的存在なのでしょう。直実の世界を第3層、ナオミの世界を第2層、ラストシーンの瑠璃の世界を第1層と呼称して、もう少し説明します。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

グッドデザインは、直実が瑠璃救出のため崩壊地点に飛び込んだ際に垣間見た、抽象世界で直実に話しかけてきます(第3層と第2層のはざま?)。当時の直実の手にはグッドデザインはなく、そもそもグッドデザインはナオミが持ち込んだものでした。しかしここで意図的に直実と行動を共にするのは、ナオミを救うためには瑠璃蘇生というナオミ自身の目的に加えて、瑠璃奪還という直実少年の目的も達成させる必要があったのではないかと思います。

うーん、自信ない。ここはもう、見た人それぞれの解釈を楽しむゾーンですね。

主観をだいじに

長々話しましたが、ラストシーンの入れ子構造、SF脳な人なら早々と「この世界もシミュレーションなんじゃないの〜?」と訝しむこともなくはないでしょう。でも、その多重構造がただの驚かし要素ではなく、必要な演出と装置だったことこそ重要なのです。問題は、それがめっちゃ伝わりにくいってことですね…。あのラスト数秒だけの表現なら「またデータだったの!? もーどんだけなのよー」でとっ散らかしエンド解釈される可能性も少なからず、いや多分に、いやかなりある!

それでも本作についてヨシと僕が思える一番の根拠は、登場人物が救われているから。死んでしまった(生き返ったけど)ナオミや、新しい世界に降り立った直実と瑠璃、奮闘したアルタラ職員たち。皆が主観的な人生を謳歌し、これでいいのだと思っている描写があるんですね。主観や観測の重要度は、SFファンには言うべくもなく。そこのリンクも美しいし、一本筋が通っていると感じました。

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Image: (C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
これでいいのだ。

自分がどう思うか、それこそ大事。僕たちの人生もそうじゃないですか。SNS時代以降、誰が何を思っているかが筒抜けになってしまって、人の目を気にすることが増えがちです。なんなら物理的な監視の目も増えがちです。でも、自分がヨシと思うルートを選んでいくのは、大事なことですよ。箱の中の猫を知りたければ、誰かに聞くよりも自分で見たほうが良いのです。

監督にショートインタビュー

試写会直後、伊藤智彦監督にインタビューできました。ディープなことは聞けなかったのですが、芯の芯のような言葉もいただけましたよ。

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Photo: 西谷茂リチャード
伊藤智彦監督、ありがとうございました!

─人類が無限のデータや世界をも創造しうる、いわば神のような存在となったとき、人は幸せになれるんでしょうか?


伊藤監督:うーん…当人が不幸でないと思わなければ幸せなんじゃないでしょうか。


─監督にとって、SFと恋愛ってなんですか?


伊藤監督:夢、ですね(笑)。

あぁ、空想と恋愛は、僕たちをいつでもワクワクさせてくれるのです。夢を描いてくれてありがとう、伊藤監督!

Video: 東宝MOVIEチャンネル/YouTube

ハイスピードSF青春ラブストーリー『HELLO WORLD』は、2019年9月20日(金)公開。ぼくたちは無数の複雑な選択からたがいを選び、その選択をつらぬいているのだ(グレッグ・イーガン / 『ひとりっ子』)。

Source: オリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD』公式サイト, YouTube (1, 2, 3)

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