読者の皆さんが生まれる前のお話かもしれません。
その昔、『ねるとん紅鯨団』という集団お見合い番組がありましてね… 最後の「告白タイム」に至るまでに、事前にチェックしたり、お話ししたりと探り合いをするわけなんですが、クラウドファンディングでプロジェクトの見極めを行う経緯を考えると、何だかちょっとそれに似てるなぁ、と。
Kickstarter(キックスターター)やIndiegogo(インディーゴーゴー)といえば、とても革新的なテクノロジーがいくつか生まれたことで知られる、クラウドファンディングサイトですよね。カッコよくて、便利で、最新鋭のものに投資したい!とお考えなら、そういうところに行けばもうよりどりみどり。
え?「じゃあ早速投資する♡」って?
ちょーっと待ったァァァ!
サイトに掲載されたプロジェクトでも、実行可能なものか、それともおじゃんになりそうかを見極めるサインがあるんですって!
というわけで、「お願いします!」と手を差し伸べる前に、みなさーん、チェック!
おじゃんになった事例は、実際あるんです。一時は米Gizmodoでも、Kickstarterについて取り上げることをやめていたくらいですし。ビッグなドリームがあれば、ビッグな製品が絶対できる!って、んなわきゃありません。ポシャったクラウドファンディングプロジェクトといえば、最近のものではBLOCKSのスマートウォッチ。5年間一度も製品が出荷されていないそうで。
それでもKickstarterやIndiegogoは、失敗よりは成功を増やすべく、継続的に変更を加えています。プロジェクトを登録する際には、ガジェットの完成見取り図ではなく、実際に稼働する試作品を用意するよう奨励していますし。近ごろではKickstarterも、プロジェクトの説明に大げさな言葉遣いを控えるよう、働きかけているそうです。盛っちゃダメってことですね。
見た目だけでプロジェクトを支援してはならぬ!と言うつもりはありません。ですが、優良なプロジェクトであっても、十分な注意が必要です。これからあげる質問事項を十分考慮してくださいね。そうしたら、出資した分からより多くの見返りも期待できるのではないでしょうか。
どんな製品なの?
「この製品って、本当に作れるの?」 なんて、初歩的な質問かもしれませんが、ちゃんと確認しましょう。iPhoneケースをうんぬんするくらいならいいのですが、スマートウォッチやハードウェアエコシステムを一から作るとなると、完全に別問題です。野心的なプロジェクトがダメだということではありませんが、すでに市場にあるものや、技術の傾向に対し、どんな試みをしようとしているかを評価していただきたいんです。
開発者は誰?
支援を考えているプロジェクトにどんな人たちが関わっているかを、こんなふうにじっくり観察しましょう。
・過去にやってきたことは?(KickstarterやIndiegogoで、あるいはそれ以外でも)
・専門分野は?(ソフトウェア? ハードウェア? マーケティング?)
・このプロジェクトを軌道に乗せられそうな人たちかしら?
成功というものは、数多くの苦労や努力のたまものなのです。なので、プロジェクト関係者の経歴を、インタビュアーになったつもりでチェックしましょう。
資金調達の目標は?
実際開発されるものに関しては、いいも悪いも人それぞれ。しかし当然のことですが、資金調達の目標が高ければ、達成も難しくなりますし、目標が低いものと比べると、リスクや不安定さも高まります。なので、「秒速でお金が集まってるよ!」というだけで、目標が達成できると決めつけているようなプロジェクトには要注意。PRのスキルがある切れ者がバックについているだけかもしれません。価格の安い製品や、資金調達の目標額が低い方が、実現可能性も高くなるというものです。
どんなふうに掲載されてる?
クラウドファンディング製品がどのように掲載されているか。プロジェクトが最終的に成功する可能性を見極めるには、その「質」を見るといいでしょう。たとえば、「Photoshopや文章がお上手」なら「製品開発に関してもお上手」だとは言い切れません。ですが、洗練されたものであれば、一定レベルのプロジェクトであることがわかります。まともな画像や動画を使っているか、そして、時間と努力を費やし、思いも込められている広告文かということにも注意してみましょう。
そう、思いを込めた言葉こそ、「告白タイム」での成功につながるのです。

実際の目標は?
プロジェクトの目的が何であるか、次のように調べてみましょう。
・ナプキンの裏側に描いたようなスケッチを現実にしようとしているものか?
・既存の製品をベースにして作るものか?
・巨大テクノロジー企業向けのアイデアとして使われるようなプロジェクトか?
Kickstarterに掲載されるプロジェクトは、みんながみんな一から開発されるものではありませんし、完成品を世に出してくれるわけでもありません。なので、プロジェクトの目的を読み、ご自分の目的と照合して精査しましょう。
これまでに行われたことは?
KickstarterやIndiegogoでは、期間が終わってしまったプロジェクトを完了させるために、あと少しの資金援助を募っているというよい兆候も。といっても保証はありませんが。
さて、
・製品開発者は市場調査をしていますか?
・試作品を作っていますか?
・適切なテストを行っていますか?
・もしくは、アイデアだけのプロジェクトですか?
土台がしっかりしているほど、成功する確率もより高くなります。
そういえば、あの番組では車が「わ」ナンバー(レンタカー)かどうかも厳しくチェックされていましたね…
バッカー(支援者)のオプションとは?
KickstarterやIndiegogoにおいて、プロジェクトが実現するものなのかどうかを見極めるには、小売価格別に並んだ、支援金額リストに着目しましょう。もし、早期に申し込んだバッカーということで、最終的な小売価格にかなりの額の早割が適用されるのであれば、「このプロジェクトは実際どれくらい出資を受けることになるんだろう?」という疑問が浮上してきます。逆に、既存製品のおまけやグッズをたくさん提供してくれるというようなプロジェクトなら、そのチームが自分たちのやっていることをちゃんとわかっているという印です。
それ、動く?
Kickstarterでは現在、動作する試作品をプロジェクトに表示してもらうことが好ましいとしています。プロジェクトに試作品があれば、メリットも大きいですし。少なくともこのガジェットは架空のものじゃないとわかりますからね。大量生産するにしても、まずはちゃんと動く試作品があってこそ。報道機関に試作品を提供して、テストや評価をしてもらうようなクラウドファンディングプロジェクトもありますが、それにも注意が必要です。

チームのコミュ力は?
プロジェクトの掲載画面では、コメントやディスカッション、アップデートをチェックして、他のバッカーさんたちの疑問点を確認しましょう(「フリータイム」で情報交換、ですね)。それから、(これ大事!)プロジェクト開発者のレスの速さもチェック! 顧客やユーザーとろくに連絡も取れないチームに出資したとして、半年後、1年後にどうなっているかを考えたら、ちょっとゾッとしませんか?
これがどうしてクラファンに?
企業が空飛ぶホバーボードを使って、本気で世界を変えようとしているなら、KickstarterやIndiegogoで出資を募る必要ってあるんでしょうか? それとも、個人投資家からお金を必要なぶん確保できるということ? 「これは実現するぞ!」というプロジェクトを嗅ぎ当てるのはなかなか難しいことですが、 その製品が従来のルートから資金を得られなかった理由を考えてみるのも。
これはクラファンお気に入りのプロジェクト?
そりゃKickstarterもIndiegogoもお金を稼ぎたいですから、自サイトでいちばんイケてるプロジェクトを宣伝して売り込みますよね。そして皆さんは、大切なお金を使って出資して、プロジェクトを支援するわけで。クラファンオススメのプロジェクトは、サイトのトップページやカテゴリーリストに掲載されていたりします。クラファンサイトのお気に入りを示すバッヂがついたものを見かけたら、「支援しようかな」と思っちゃいますよね。もちろん、クラファンの専門家だって見込み違いをすることもありますけど。
男女グループが対面したときの一番人気が必ずしも大当たりではないように…
「細字部分」とは?
契約書などに小さい字で書かれた不利な条件のことをそう呼びます。Indiegogoでは、「フレックス・ファンディング」といって、資金調達の目標を達成できなくても、バッカーから集めたお金をキャンペーンの関係者がキープできるというシステムを採用したプロジェクトもあります。こういった一見わかりにくいものには、常に注意が必要ですね。
なので、こういうところを見落とさず、「ごめんなさい!」してしまいましょう!
こんなふうに大昔のテレビ番組を引き合いに出すような人間には、細字部分を見落とさぬよう、メガネ型拡大鏡が必要なのかもしれませんな…キャッ。