スマートウォッチの睡眠トラッカーって意味あるの?

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スマートウォッチの睡眠トラッカーって意味あるの?
Image: Gizmodo US

そう言われると、睡眠トラッキングってどれほどのもんなのでしょ。

睡眠。それは体が必要とする働きの1つで、6時間から8時間寝ないと次の日キツイ。まぁ、それぐらいの認識です。睡眠の質について深く考えたことがなかったので、果たして自分の睡眠が普通なのかいいのか悪いのかさっぱりわかりません。が、Fitbit Charge 3を使い始めたことで、それがちょっと変わってきました。

Fitbit Charge 3を使い始めてから、毎朝のルーティンにFitbitアプリで睡眠レポートをチェックするというのが加わりました。何時間寝たのか、睡眠レベルどれくらいを何時間過ごしたかを確認しています。さて、レポートを見れば見るほど湧いてくるある感情があります。それは星占いを見た時の感情とも似ていて、「本当にぃ?」という信じたいながらも疑ってしまう気持ちです。

Fitbitの睡眠レポートがどれほどのものなのか、疑ぐり深い私は睡眠について調べてみることに。結果、睡眠とは実に奥深く複雑なメカニズムで、正直、手首の端末でそのすべてを把握できるとは思えませんけれど…。

寝ている? 起きている? きちんとトラッキングできている?

睡眠について、まだまだ解明されていないことが多くあるとはいえ、間違いなく言えることは、我々にとってとても重要な要素だということ。睡眠時間の欠如は、多くの健康被害を引き起こし、長期的には命の危険すらあります。睡眠を研究する人の多くは、大人が必要な平均的睡眠時間は7時間から9時間としており、質の高さも健康に影響を及ぼします。質の高い睡眠とは、つまり寝つきがよくて一晩ぐっすりってやつね。

初期のFitbit(現モデルのFitbit InspireとFitbit Ace 2含む)は、手首の動き(上下、横への移動)を感知する三軸加速度計を使った基本的な睡眠情報をトラッキングしています。Fitbitの睡眠科学者であるConor Heneghan氏いわく「たくさん動いている=寝ている可能性は非常に低い」とのこと。シンプルですね。これ、スマートウォッチじゃなくてもよく睡眠の研究で被験者に使われる方法です。アクチグラフと呼ばれる小さな加速センサーをつけて眠ってもらい、睡眠中の動きのデータを収集。それをアルゴリズムを用いて、寝ている・起きているのパターンに割り振っていくわけです。2011年のレポートでは、アクチグラフの収集データによって、健康な成人=被験者の睡眠パターンを87%から99%の精度で正しく寝ている状態を割り出すことができました。が、これはアクチグラフによって採取されたデータの精度であり、探してみてもスマートウォッチの加速度計によって収集されたデータの精度という研究レポートは見つけられませんでした。今年発表された論文で、スマートウォッチ収集のデータも悪くないと好意的に書かれているものはありましたけど。このレポートの筆頭著者であるSRIインターナショナルのHuman Sleep Reserch ProgramのMassimiliano de Zambotti氏いわく「全体的に、(スマートウォッチも)基本的なアクチグラフとそう大差はない」という見方だといいます。

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Image: Maddie Stone

寝ている状態は、なかなか高い精度でトラッキングできるものの、起きている状態を正確に把握するのが難しいのだとか。Zambotti氏いわく、その精度約50%。理由は、計測器は人間は寝ている時は動かないというのをモットー(?)にしているため、例えば悪夢を見てゴロゴロしまくる夜の場合、起きている判定され、事実と差がでてしまうのです。このことから、2016年のレポートでは、加速度計ベースの睡眠トラッキング端末は、往々にして睡眠時間を長めに捉えてしまう傾向があるとまとめられています。

マサチューセッツ大学でモーションベースの睡眠トラッカーを研究する神経科学者、Rebecca Spencer氏は、こうも指摘します。例えば、一緒に寝ている人、犬がたくさん動いた場合、それを感知して、ターゲットは寝ているにもかかわらず起きていると認定してしまう場合もあるのだとか。Spencer氏いわく、モーションベース端末の最大の弱点は、装着している人以外は何も動かない想定があることだといいます。

とはいえ、Spencer氏、6つのスマートウォッチとアクチグラフを比較研究したピッツバーグ大学のAndres Kubala氏は、加速度計による睡眠トラッキングの精度が悪いわけではないと補足。Kubala氏いわく「一般消費者が、自身の睡眠パターンを知りたいと思えば、商業モニター(スマートウォッチなど)を購入するのは問題ないでしょう。けっこういい睡眠予測がでるとは思いますよ」

睡眠サイクル

寝ると一言で言っても、単純なことではありません。その間に、脳みそや体は、睡眠サイクルを通してたくさんのことをこなしています。睡眠サイクルは4つのステージに分けることができます。うち3つは、目の動きが少ない状態、俗にノンレム睡眠と呼ばれるステージ(N1, N2, N3)です。心拍数、呼吸、脳波が穏やかでゆっくり、深い眠りについている状態です。ノンレム睡眠ステージのN1とN2は、Fitbit的には「軽い睡眠」と分類しており、この2つが一晩の眠りの大部分をしめています。N3は「深い眠り」、一晩では短い時間ですが、睡眠研究者たちはこれが翌日の疲れなどに大きな影響を与えると考えています。4つ目のステージはレム睡眠。目玉の動きが活発で、心拍数、血圧ともに上昇、手足の動きはないものの、脳は起きているときに近い活動をみせています。これ、夢を見ているという状態なんですって。科学者たちは、このレム睡眠と深い眠りであるN3が、人間の記憶に重要な意味を持つのではと考えています。

4ステージの睡眠サイクルデータをとるのに、睡眠ポリグラフ検査があります。被験者が身体中に電極つけて、脳波や筋肉、目の動きのデータを収集。データを見て、研究員がどのステージにあるかマニュアル判定します。研究所などで行われるため、被験者はお泊まりとなります。

もちろん、Fitbitではここまでできません。脳波とれませんから。代わりにどうしているかといえば、アルゴリズムを使います。動きのデータと心拍数、年齢や性別などのデータを元にアルゴリズムを使って、眠りのステージを予測しています。Fitbitの協力で研究された2017年のレポートによれば、睡眠トラッカーのアルゴリズムは、レム睡眠なら70%、ノンレム睡眠なら60%の精度でポリグラフ検査と一致。SRIのZambotti氏のFitbit Charge 2に関する研究でも結果は近く、浅い眠りなら80%、レム睡眠なら75%という数字に。ただし、両者ともに深い睡眠になるとその精度は50%ほどに下がるという見解。

さまざまな研究を見れば見るほど、Fitbitによる睡眠ステージデータは、良く言っても「およそ」というぼんやり予想と考えておくべきでしょう。京都大学で消費者ウェアラブル端末とデジタルヘルスを研究するZilu Liang氏は、それは当然だとしてこうコメント。「睡眠ステージを理解するには、たくさんの生物反応を調べる必要があります。Fitbitはたった2つの情報(動きと心拍数)で割り出しているわけですから、ステージを正確に割り出すのはもちろん難しいのです」

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Image: Maddie Stone

それでも、Fitbitにがっかりする必要はありません。一般人=フツーの人にとっては、そもそも睡眠データの正確性そのものが大きな問題ではないという見方もできるんです。睡眠に関する研究300本近くを解析した2017年のレポートによれば、重要なのは2点だけ。1つ、レム睡眠が長すぎる(睡眠トータル時間の40%以上)のは良くないということ。1つ、深い睡眠が短すぎる(とたるの5%未満)のも良くないということ。

アリゾナ大学のSleep and Health Research Programのディレクターであり、FitbitのアドバイザーメンバーでもあるMichael Grandner氏いわく、睡眠ステージのデータはおおまかな予想であり、スマートウォッチユーザーにとって、睡眠というものを意識するきっかけになればいいとのこと。「良く眠れないと思っている人が、睡眠トラッカーのデータを見て、数字的にも良く眠れていないとわかれば、ある意味安心もします」これを元に、睡眠の専門家に相談するなど行動に移せることが重要なんだとか。Grandner氏いわく、絶対ダメなのは睡眠サイクルに不安を持ちがなら自己診断のみで終わらせること。

睡眠に対する研究、理解が進んで行く一方で、一般消費者はスマートウォッチによる睡眠トラッキングを使い続けて問題はなし。睡眠障害のない健康的な人ならば、Fitbitの睡眠データを見て、自分でもそこそこ納得がいくでしょう。例えば、横になってじっとしていたけど、全く眠れなかったなんていう夜もあるわけで、そんな時Fitbitは7時間睡眠と数字だすでしょうが、それは事実と異なると自分でわかるわけで。あくまでも、アルゴリズムによる睡眠時間・サイクルのおおまかな予想値だと思っているぶんには何も問題ありません。Grandner氏の言うように、睡眠トラッカーのデータに大きな変化がでた、数字が悪く体調もすぐれないという場合は、すぐに専門医のアドバイスをうけること。専門医のドアを叩く、スマートウォッチの睡眠トラッキングがそのきっかけになることが、医療機器ではない今のスマートウォッチの役目としてきっともっとも重要なことなのですよ。

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