世界初のカメラ付き携帯電話発売から、はや20年。
今のスマホって、カメラのせいでデザイン性が邪魔されている感、ありません? ディスプレイ上のノッチ(切り欠き)とかカメラレンズのボッコリしたでっぱりとか。機能的に仕方ないのはわかるんですけど、ちょっとフォルム的にスマートじゃない感じ。もうちょっとかっこよくならないかなー、と思っているそこのあなたに朗報です。ユタ大学の研究チームが超薄型レンズを開発してくれました! これで、レンズのデコボコがなくなるかも!
レンズは薄さと機能の両立が課題
現行のスマホカメラでは、厚さ数ミリ程度のレンズを通して小型センサーに光を集めて撮影します。数ミリって、意外と薄いじゃん、と思われるかもしれませんが、カメラの性能を高くするほどいろんな要素が追加されるので、結果的に薄型スマホでは収容しきれなくなっているのが現状です。
でも今回、ユタ大学で電気工学とコンピューター工学の研究者チームが、厚さわずか数ミクロンの光学レンズを発明したと発表されました。現状のスマホカメラのレンズよりも重さが100分の1、厚さはなんと1000分の1…!
光を十分集めたうえでシーン全体を1枚の写真に収めるには、カメラレンズは湾曲した形状になっていることが必須条件。ミクロン単位の薄さでどうやってそれを実現するかというと、そのレンズは世界中で使われている巨大な太陽炉と似たアプローチをとっているとのこと。全米科学アカデミー論文集に掲載された新作の研究論文に詳しく書かれています。
小さなレンズを組み合わせる太陽炉の技術を応用
太陽炉とは、太陽の光を集めてエネルギーに変える装置のこと。旧型の太陽炉には、高額で製造も困難な大型レンズが使われていましたが、今は大量の小型反射材をいろいろな角度に並べて、そこから中央タワーに光を反射する仕組みに。熱生成力の弱い小型レンズでも、数百個並べれば約3500度の高温を生成するんだとか。

今回研究者チームが開発したレンズもまた微細なパーツを無数に組み合わせた構造で、人間の目では判別できないほど。綿密な計算のもと、多数の超小型レンズがカメラのセンサーに向けて光を湾曲して反射することで、1枚のレンズと同じ役割を果たしています。
スマホ以外にも応用可能な、超薄型レンズ
新型レンズを開発するには、新しい製造プロセス、新しいポリマー、そしてそれぞれのパーツや構造の形状や配置を計算するためのアルゴリズムを生成するという、果てしない道のりがありました。そして生まれたレンズは軽量のプラスチック製で、デコボコは完全排除されています。大型レンズがついたカメラを1日持ち歩いた経験のある人なら、このありがたさがわかりますよね。
新型レンズがスマホに搭載されれば、カメラ部分のデコボコがなくなるだけでなく、フロントカメラとバックカメラが小型化されるので、スマートフォン本体をより薄く、小さくできるんです。
もちろん、この技術はスマホ以外にも応用できます。重い広角レンズや望遠レンズが不要になるため、偵察用ドローンの飛行時間を延ばすこともできますし、プロの写真家もバズーカみたいなカメラを持ち歩く作業から解放されるでしょう。
ここまできたら研究者の先生方、あとはこの(お邪魔な)ノッチを排除する方法を、見つけていただけませんでしょうか?