バックパックサイズの天体望遠鏡で素敵な写真を:Stellinaレビュー

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
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バックパックサイズの天体望遠鏡で素敵な写真を:Stellinaレビュー
Bellevia氏の望遠鏡とStellina
Photo: Ryan F. Mandelbaum

お金に余裕があって、星の写真を気軽に撮りたい人にはグッドニュース!

天体写真、撮ったことってあります? 私はないのですが、是非ともやってみたいことのひとつです。ただ、知識もなければ、必要な機材も一切ない。かと言って勉強してる時間もない。でも、気軽にそれができるガジェットがあったら...?という疑問を解消してくれそうなのが、この「Stellina(ステリナ)」です。

米GizmodoのRyan F. Mandelbaumはかなり気に入った様子。レビューを見てみましょう。


エンジニアのSteven Bellavia氏は、自分好みの天体望遠鏡がないことに悩み、結局自分で作ってしまいました。「Bellavia Mini」は彼の数十年の経験と天体望遠鏡作りへの情熱を、車のトランクに詰め込めるサイズの展望台に詰め込んでいます。Bellavia氏はすべてのディテールにこだわり抜きました。たとえば鏡胴はアルミではなく木製で、温度の変化による歪みを防いでいます。

つい先日、綺麗な夜空の下、彼が自身のBellavia Miniをセットアップしている間に、僕は子持ち銀河の写真を「Stellina」という新製品でサクッと撮っていました。ちなみに、僕は天体望遠鏡を買ったことはありません。

「信じられないスピードだね。なんてこった」とBellavia氏。

Stellinaは、バックパックサイズ( 49 x 39 x 13 cm )でスマホで操作し、モーター制御された「観測所」です。ゲーム『ポータル』のタレットにちょっと似ています。Stellinaは銀河や星雲、星の集団などをわずかなタップで撮影できます。

最初に耳にした時は、僕もちょっと懐疑的でした。価格は3999ドル(約43万円)ですが、そこそこ優秀な天体望遠鏡でも1000ドル以下で買えますし、Stellinaにはアイピースすらついていないんです!しかし、一晩この望遠鏡と過ごしたことで、空をもっと知りたい人にとってこれが素晴らしいテクノロジーの結晶であると確信しました。もしかすると、天体望遠鏡の世界に革命を起こしてしまうかもしれません。

Stellina

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Photo: Alex Cranz

これは何?:非常にスマートな望遠鏡。知識や勘がなくても、遠い銀河を見ることができる。
価格:4千ドル(約43万円)
気に入った:とても使いやすい
気になった:自分のキットを作ればもっと良い写真が撮れる

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Stellinaで撮影した子持ち銀河
Photo: Ryan F. Mandelbaum

見るためなのか、撮るためなのか

天体望遠鏡とは、そもそも何なのか? 自分で作ったりホビーストアで買って、アイピースを通して月や星々を見るための、夜空の顕微鏡だと思う人もいるでしょう。しかし、現在の天体望遠鏡の多くはリアルタイムに見るための物ではありません。多くはレンズやミラーを使うことで、可能な限り夜空から光を集める為に設計された展望台や天体写真用の装置です。それらはコンピューターに繋がったセンサーに長時間光を集め続けた上で、素晴らしい写真を作りあげるわけです。

では、Stellinaは「非常に高額な夜空の顕微鏡」なのか、それとも「悪くない価格の天体自動撮影機」なのか? 僕の当初の疑念は、前者であると思ったことに由来しています。

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Stellina
Photo: Ryan F. Mandelbaum

僕が最初にStellinaの存在を知ったのは2018年で、天体望遠鏡にまったく詳しくない僕はそこまで惹かれませんでした。「あぁ、はいはい。高額で『ディスラプティブ(破壊的)』なテックね。どうでもいいや」と思ったものです。

しかし、先日の夜に会ったBellevia氏は、Stellinaに興味津々でした。彼はアマチュア天文学コミュニティの一員ですが、アマチュアと呼ぶにはあまりに恐れ多い人です。このブルックリン出身の饒舌なエンジニアは、10歳で初めての天体望遠鏡を作りました。現在、彼はロングアイランドのサフォーク・コミュニティ・カレッジの天文学教授で、Brookhaven National Labの主任エンジニアでもあり、新しい大型シノプティック・サーベイ望遠鏡の制作にも関わっています。彼はStellinaに近いスペックの天体写真装置を作ったこともあり、製品として売られている他の自動撮影装置も扱ったことがあります。

今年の夏の始めにStellinaのレビュー用モデルを受け取った時、僕は即座にBellavia氏に協力を仰ぎました。ショッピングバッグに重いパッケージを放り込んで電車でマンハッタンを出て、車でカスター展望台に向かいました。この非営利の展望台は、光害の比較的少ないロングアイランドのノースフォークにあります。

驚くほど簡単なセットアップ

Stellinaのセットアップは、ビデオガイドを見ながらでも10分で完了しました。箱から取り出したら充電し、ポータブルバッテリーを取り付け、三脚をねじって接続し、アプリを携帯にダウンロードします。そこからは、携帯とStellinaをWifiを介して接続するなど、アプリに従ってセットアップを完了します。

空が暗くなったら、携帯を数回タップするだけで、GPSを通じて自動で場所を把握し、Bellavia Miniよりも遥かに速く星に焦点を合わせてくれます。その後は、アプリを使って夜空の撮影対象のリストから、撮影したい物をStellinaに指示します。

Bellevia氏のセットアップも完了した後、僕たちは子持ち銀河、オメガ(白鳥)星雲、M22球状星団、M11散開星団、創造の柱があるワシ星雲などを一緒に撮影しました。Stellinaは独自のソフトウェアを使い、空の写真を複数撮影した上で、十分な光を集めるために画像を重ね合わせ(スタッキング)て1枚の写真を作り出します。Bellavia氏の天体望遠鏡も、オープンソースのソフトウェアで同じことをします。

このスタッキングには最大で30分ほどかかりますが、その間、Stellinaのアプリは撮影している星の情報を表示してくれます。あるいはビールを開けて鳥やボートの話をしてもいいし、他の望遠鏡や裸眼で夜空を楽しむのもいいでしょう。僕たちの撮影中には宇宙ステーションが通過し、いくつか流星も見られました。

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アプリの様々なスクリーン。左は空がまだ撮影には明るすぎる時の警告。中央はM11散開星団を撮影中に出てくる説明。右は撮影中に温度が変わったことの警告。望遠鏡にわずかな変化があっただけでも画像の鮮明さが失われてしまうので、オートフォーカスを再起動するよう提案しています。
Screenshot: Stellina/Ryan F. Mandelbaum

柔軟性か利便性か

2つの天体望遠鏡は近いクオリティの写真を撮影しました。技術的問題でBellavia Miniは最終的な写真を作り出すことができませんでしたが、Bellaviaのスタッキングと画像処理用ソフトウェアはより柔軟なカスタマイズを行えます。

この2つを比べるのは、ホビイストのカメラで撮ってAdobe Lightroom(アドビ・ライトルーム)で処理した写真と、最新鋭のスマホで撮ってInstagram(インスタグラム)で処理した画像を比べるようなものです。熟練したユーザーなら、Bellavia氏の望遠鏡の方がより素晴らしい写真を撮れるでしょうが、Stellinaの方がよりシンプルで、エラーの可能性が低く、多くの人にとっては箱から出してすぐにより良い結果が得られるでしょう。

まだStellinaに懐疑的だった僕は、撮影中に何度かレンズの前に立つことで、完成した画像が既に撮影された偽物でないかを確かめました。前に立つ度にStellinaは撮影を中断し、僕の写真には通り過ぎた車のヘッドライトなどからくる不純物が写っていました。

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オメガ星雲の画像の比較。左は望遠鏡、トラッキングマウント、カメラ、ラップトップ、スタッキングソフトウェアを含んだ約4千ドルのセットアップ。中央はBellavia Mini、右がStellina。
Image: Steven Bellavia/Steven Bellavia/Ryan F. Mandelbaum

セットアップの簡単さ、使い心地、そして最終的な画像のクオリティにBellavia氏は舌を巻いていました。4千ドルと聞くと高いと思うかもしれませんが、彼によれば、彼の自作のBellavia Miniも3千ドルくらいだと言います。市販の望遠鏡でもより高い品質の写真を撮れますが、それらはトラッキングマウントやラップトップPC、カメラがさらに必要で、すべてを合わせれば結局3千から4千ドルになります。しかも、それらはセットアップにより手間がかかります。

直に見れないなら望遠鏡ではない?

Bellavia氏によれば、アマチュア天文学者にはStellinaを快く思わない人もいるそうです。Stellinaの広報チームは、「スマート望遠鏡」ではなく「観測所」と呼んでいます。アイピースの有無が体験を大きく変えてしまうからです。Bellavia氏も、伝統的な望遠鏡ではないというだけで、彼が自作した天体自動撮影機をまともに取り合わない人と接したことがありました。「過去の物にすがりたいっていう、よくある現象だよ」とBellevia氏。しかし、天体写真は話が別です。スタッキング無しにワシ星雲を見ることはできません。

とはいえ、二人ともStellinaには驚かされたものの、その夜いちばんの思い出を作ったのはStellinaではありませんでした。星雲の撮影途中、Bellavia氏は展望台の裏の小屋から、大きなドブソニアン望遠鏡を持ってきてくれました。シンプルながら強力なこの望遠鏡は、回転するスタンドの上に乗った人間1人ぶんの大きさのダンボールのチューブに、アイピースに向けて光を反射するミラーで構成されていました。Bellevia氏はこれを縦横無尽に使い、星雲、星、惑星、球状星団などを、我が家を紹介するかのような慣れた様子で見せてくれました。

ドブソニアン望遠鏡を通して生で見た球状星団に、僕はまったく新しい感動を覚えましたが、Stellinaの写真では同じ感動は味わえませんでした。その後の1週間、僕は環状星雲が本当に緑の輪みたいなんだと所構わず話していました。

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Photo: Alex Cranz

Stellinaの体験がアイピースのそれより悪いという意味ではありません。ただ、僕のように世界の多くをスマホを通じて体験している人にとって、Stellinaのそれは身近すぎるのです

しかし、Stellinaはデザインされた目的はしっかり果たしています。他の多くの天体写真撮影機よりセットアップが早く、ユーザーインターフェイスは直感的で扱い易いし、短い手順で素晴らしい画像が撮れるのです。しかも、創立者のCyril Dupuy氏によれば、ソーシャルな面もあります。去年彼が僕に語ったところによると、単純に撮った写真をソーシャルメディアで共有する、というだけにはとどまらないとのこと。彼らはアマチュア天文学や、民間による科学プロジェクトを将来的にリードしたいと考えているそうです。

しかし、アマチュア天文学に手を出したい人にとって、他の望遠鏡の代わりになるかというと、それはなさそうです。「細かい作業こそが楽しい部分だという人もいるからね」とBellaviaは言います。すでに市場には、Stellinaと同等、あるいはそれ以上の画像を生み出せて、なおかつ同額かそれ以下の望遠鏡、カメラ、アクセサリが存在します。それに、Stellinaではアプリのリストにあるものにしか焦点を合わせられないので、新しい星を発見することはできません。一方で、カジュアルに星を見たい人には4千ドルはとんでもない金額だし、ハッブル宇宙望遠鏡で撮られた写真ならグーグルでいくらでも出てきます。それに、ドブソニアン望遠鏡やそれに近いセットアップは遥かに安いでしょう。

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ワシ星雲。中央には有名な創造の柱。Stellinaで撮影。
Image: Ryan F. Mandelbaum

とはいえ、簡単なユーザーインターフェイスで、専門知識や煩雑なセットアップ無しに、自分で宇宙の写真が撮りたいという人もいるでしょう。Bellavia氏は、Stellinaは完璧な教育ツールになりえるし、自分のクラスのために1台欲しいとまで言っていました。

「校庭で天文学クラブやクラスが使うところが想像できるよね。『スマホを取り出せ。明日のクラスではこれを使うぞ』ってね」と同氏。

Stellinaは、素晴らしい宇宙の写真を撮ってみんなで共有したいけど、天体写真の撮影装置をセットアップしたり、趣味で天体写真を勉強する時間がない人向けで、驚愕なほどに使いやすいポータブル観測所です。「真の天体観測体験」をしたい人にはアイピースの欠如が残念かもしれませんが、これは伝統的な天体望遠鏡ではありません。Stellinaは有能で美しい技術の結晶で、夜空の素晴らしい写真を撮ることができます。

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