Apple Watch Series 5の常時点灯ディスプレイを支える賢い技術とは?

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  • author David Nield - Gizmodo US
  • [原文]
  • 塚本直樹
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Apple Watch Series 5の常時点灯ディスプレイを支える賢い技術とは?
Image: Apple

これが実に便利。

Apple Watch Series 5にはシリーズ初の「常時点灯ディスプレイ」が搭載されていて、時間を見るのに手首をひねる必要がありません。その技術の詳細について、解説してみましょう。

初代Apple Watchが2015年に登場した時、優れた有機ELディスプレイを搭載していましたが、その動作は遅く、使いにくいものでした。さらに、運転中や地下鉄の中、皿洗いの途中でも、時間を見るには手首をひねる必要があったのです。おしゃべり中や会議中に手首をひねるのは、あまり行儀が良いとはいえません。

その後Apple Watchはアップグレードを重ねましたが、速度やパフォーマンスは改善されたものの、ディスプレイに関する改善はごくわずかでした。

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Image: Apple

画面の明るさはApple Watch Series 2の「第2世代」有機ELディスプレイで向上し、ディスプレイサイズはApple Watch Series 4にて40mmと44mm(以前は38mmと42mm)に大型化され、常時点灯機能に利用されるLTPO有機ELディスプレイが採用されました。そう、実はApple Watch 5の重要な機能はApple Watch Series 4にも搭載されていましたが、バッテリー性能が十分でなかったのか、あるいは技術的なハードルがあったのか、2019年までは完全には利用されていなかったのです。

理由がなんであれ、LTPO(低温多結晶酸化物/LTPSとIGZOを組み合わせた技術)、Apple(アップル)にいわせれば低温ポリシリコンと酸化物(Appleが特別に開発したもの)のおかげなのです。

AppleはApple Watch Series 5のディスプレイの詳細をあまり明かしていませんが、iFixitがそのパネルと制御基板の秘密を解き明かしています。

AppleはApple Watch Series 5にて、2つの異なるディスプレイ回路技術とその利点を利用しています。まず低温多結晶シリコン(LTPS)は、iPhoneを含む多くのハイエンドスマートフォンの有機ELディスプレイで採用されている、電力効率の高い技術で、基本的にピクセルのオン/オフを制御します。

そして第2に、より革新的なインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)技術で、各ピクセルに供給される電圧、明るさ、色(赤、緑、青の組み合わせ)を指定します。IGZO回路はすでに、iPadやMacBookなど一部のApple製品で使用されています。

そして最後に、1Hz(毎秒1回の画面更新)の可変リフレッシュレートです。これは秒針を動かすのには不十分ですが、歩数や時間を伝えるのには十分です。この低いリフレッシュレートによって消費電力が削減され、明るさの低減と組み合わせることで、一日中バッテリーを持続させることができるのです。

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Image: Apple

実はこれの技術、iPad Proの「ProMotionテクノロジー」として以前にも搭載されており、リフレッシュレートを適時変更してレスポンスを改善したり、消費電力を節約しています

またLTPSの優れた電力効率にくわえ、IGZOによるディスプレイ周波数の上手な処理が、Apple Watch Series 5のディスプレイを特別なものにしています。なおAppleによると、LTPOは単独で動作しているのではなく「業界唯一の低温ポリシリコンおよび酸化物ディスプレイ(LTPO)、超低電力ディスプレイドライバ、効率的な電源管理回路、新しい環境光センサーなど、複数の先進技術を連携させてこの新機能を実現しています」とのことです。

これらのテクノロジーの組み合わせで、Apple Watch Series 5では常時点灯が可能になっているのです。iFixitが指摘しているように、小さなシャーシへとパーツを収める技術も大切な要素です。

IHS Markitのアナリストの去年の報告によると、LTPOには製造上の複雑さや、標準的なLTPS(IGZOではなく)ディスプレイと同等の解像度を実現する際など、いくつかの課題があるそうです。しかしエネルギー効率などのメリットを考えれば、投資に見合う価値があるかもしれません。さらに今後のAppleは、折りたたみディスプレイに目を向けていることもありえそうですね。

Source: Gizmodo US