火星での生命発見の日迫る? でもXデー以降、僕らの日常ってなにか変わるんだっけ?

  • 9,023

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田洋路
火星での生命発見の日迫る? でもXデー以降、僕らの日常ってなにか変わるんだっけ?
NASAの「Mars 2020ローバー」のコンセプト画像
Image: NASA/JPL-Caltech

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NASAのチーフサイエンティストJim Greenさんなんですが、最近のTelegraphのインタビューで意味深な発言をしてます。なんでも、近々火星で生命の証拠が見つかる可能性があるけど、我々のほうが「準備ができていない」んだそうです。どういうことなんでしょうか?

そしてGreenさんは、地球外での生命の発見は、太陽が地球の周りを回っていないのを知ったときと同じようなインパクトを世界に与えるだろうと言っています。人類にとって初となる地球外生命の発見が驚愕ものであるのは間違いないですが、地球上で生活する我々に大きな実影響を与えうるものなんでしょうか?

地球外生命の発見まで秒読み?! でも心の準備のうほうが…

Greenさんは、今後の火星での任務で、2021年までにレッドプラネットの表面を走り回るするはずになってる2つのローバーについて、Telegraphに話しました。NASAのいまだに名のないローバー「Mars 2020ローバー」と、ExoMars計画で導入されるESAのローバー「ロザリンドフランクリン」のことです。

Greenさんいわく、ローバーどちらか、あるいは両方が生命の痕跡を検出する可能性があるんだそう。しかもこれはかなり現実味のある話みたいで、その証拠にGreenさんはいまからもう公衆に速報を伝えることの心配をしておられます。

Greenさんの話では、「生命の痕跡の発見は、コペルニクスが『いや、我々が太陽の周りを回っているんだ』と言ったときくらい完全に革命的なもので、まったく新しい思想が加わるというのに、我々がそうした事態への準備ができているとは思えない」

だから発表を危惧している…というわけです。

Greenさんに真意を確認してみた

いや~、Greenさん大きく出たな…といった発言内容です。ただここではっきりさせておきたいんですが、現時点で、火星に生命がいる、あるいは過去にいたとの決定的な証拠はなく、生命発見に関する喫緊の発表も見当たりません。念のためではありますが、コトをはっきりさようってことで米GizmodoからGreenさんに連絡してみました。

Greenさん、メールで以下のように答えてくれています。

私たちが生命をすでに見つけていて、発表に向けて調整しているとの考えは正しくありません。私たちにあるのは、生命体探査のためのミッションです

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Image: NASA
NASAチーフサイエンティストJim Greenさん。

「人類の月面着陸が、宇宙の中での私たちの立ち位置の概念を変えたのと同じく、地球以外の場所での生命の発見も、文明を移行させる出来事となるでしょう」

私たちの日常はなんら変わらないんじゃない?

ところが、私たちが話を聞いた一部の専門家は、地球外生命を見つけることで、地球が本当に大きく変わるという意見には反対でした。たとえば、ワーヘニンゲン大学&リサーチ(WUR)の上級生態学者で、MarsOneプロジェクトのアドバイザーでもあるWieger Wamelinkさんはこうです。

「まあ、多分『準備はできていない』です」ただ、これは「主に哲学的な問題であり、日々の生活に影響を与えるものではありませんこのことに対して証券取引所は反応しませんし、国が戦争に向かうこともないでしょう

Planetary Science Institute(PSI)の上級サイエンティストSteve Cliffordさんに関しては、23年前の重要イベントを例にあげ、意外に人類は追加の準備は不要だと説きます。

「1996年、ジョンソン宇宙センターの科学者は、火星隕石ALH84001に生命の痕跡を発見したと発表しました(結局いまも確証は出ていませんが…)。その発表はメディアで広く取り上げられており、人々はその発表に大きな関心をもって情報を追いかけましたが、広範な懸念を引き起こしたという証拠はほとんどありません。火星やそれ以外の場所で、生命が存在する明確な証拠が発見されれば、宇宙で生命が一般的である可能性についての、ここ数十年にわたって合理的/科学的な視点で議論を深めてきたことが準備として役立ったのだと思います」

それでも革命的と言う理由がある

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Image: ESA
ESAのExoMarsローバー「ロザリンドフランクリン」のコンセプト画像。

地球外生命がこの太陽系で発見されるとの考え方が、何十年ものあいだ主流でした。それでもなお、火星での生命発見が「革命的」と言えるんでしょうか? 米Gizmodoは例のごとく専門家にメールで意見を求めました。

NASA Jet Propulsion Laboratory(JPL)の研究科学者で、NASAの2020ローバーチームのメンバーでもあるBethany Ehlmannさんの回答はこうです。

火星でもし生命が発見されてニュースになったのなら、宇宙で生命が存在することが、どの程度レアか一般的かに関しての、人々の考え方を揺さぶる大事件になると思います。ニュースは素晴らしいもの考えさせるものになるでしょう。それこそが、Green博士が伝えたかったことだと思います

ヴァンダービルト大学の天文学教授David Weintraubさんからは以下のような内容の返信がありました。

はい、そのような発見は重要で、コペルニクス的転換よりも重要とすらいえますが、哲学的という意味では両者は非常に似ていると思います。コペルニクス以前、宗教的、哲学的、形而上学的を問わずほとんどの思想家は、地球が宇宙の中心であり、したがって私たちは創造の中心であり、神の関心の中心だと考えていました。地球を越えた生命の発見は同様に、人類を中心からはずすでしょう。地球上の生命はもはやユニークではありません。正直、これ以上重要な発見は考えられません

コロラド大学の地質科学の教授Bruce Jakoskyさんもこの考えに同意します。

我々は、生命が銀河全体に広がっているのではないかと考えています。地球以外の地から1つでも生命の例を見つけ出せばおてがらものです。[こうした発見は]この分野で働いている科学者以外の人々にとっては、即重要なものではない[かもしれません。そして]日々の活動を変えることもありません。ただこのニュースは、私たちの宇宙に対する哲学的見解全体を変えるでしょう

信仰へのインパクトは大

宗教への影響はどうでしょう。地球外生命発見は、信仰にとっての大きな危機をもたらすでしょうか?

Weintraubさんは言います。

不幸なことに、私はこれらの質問に何年も費やしました。私の2014年の本、『Religions and Extraterrestrial Life』は、世界の宗教がどんな反応をするかを包括的に説明しています。簡単に言うと、ETをすでに信じている人(例:モルモニズム、バハイ)、単純にそのような生命を想定している人(ヒンズー教、仏教)、ETが私たちの手に追えるものでなく神の所業だと考える人(ユダヤ教)、およびそれ以外(ほとんどの保守派キリスト教)は大きな問題を抱えることになるでしょう

ただし、特定の宗教団体はいまですら恐竜の化石の真実性を否定しているので、地球外生命の証拠にも反論することは想像に難くありません。

地球以外の惑星で生命を見つけることは、たとえその生命が単なる微生物であったとしても重要です。私たちの裏庭、火星で生命が発見されたとすれば、さらに重要な意味を持ちます。

我々の太陽系に、2つ目の居住可能な惑星が見つかったとなれば(惑星汚染の結果ではなく、地球上の生命から独立して発生したとすれば)、全銀河の居住可能性に関する私たちの概念と期待は修正を余儀なくされます。それは、私たちの銀河、ひいてはおそらく宇宙全体が、非常に生命に優しいことを強く示唆しています(いわゆる親生物性の宇宙)。したがってこの点に関して、Greenさんが火星での生命の発見が絶大な意味を持つと言っていることは、まったくそのとおりです。

Greenさんよ、ちょっと先走りすぎじゃないのかい

しかし同時に、親生物性の宇宙は、フェルミパラドックスをさらに複雑にします。これは、なぜ地球外知能の兆候が見られないのかに関する未回答の疑問です。もし生命がいたるところに存在するんなら、なぜ宇宙人が見当たらないのでしょうか?

火星にかつて生命がいた、あるいは今もいるという説は、魅力ある理論的可能性です。しかし、GreenさんのTelegraphへのコメントが示唆しているように、発見がほとんど確実であると言うのはフェアではありません

「“火星の生命”を見つけることに“近づいている”と言うGreenさんは、大口をたたいています」と、Weintraubさんは言います。

あなたや私が知らないことは彼も知りませんよ。…Mars 2020ローバーまたはExoMarsローバーは、はたしてより強力な証拠を見つけるでしょうか? あり得ます。そのために設計されているプロジェクトです。でも、それを見つける日が近いというのは誤解を招くもので、科学的証拠、あるいは科学的リーダーシップが不十分な発言だと思いますよ

見つかる見つからないは置いといて、まずどう扱うかを考えようぜ

Jakoskyさんは、太陽系のどこかで生命を見つけることが、必ずしも近いとは限らないと言います。

もし生命がそこに存在するのなら、生命の証拠を示す可能性がいずれは観測されるでしょう。しかしこれは、(Greenさんの)声明が示唆するものとは大きく異なります。私たちは、そこにいると勘ぐっている、あるいはすでに知っている生命を見つける日に非常に近づいているだけです。私たちが火星に行くのは、生命を見つけるためではなく、生命がそこに見当たらないことを確認しに行くことでもあるんです。これは、生命の証拠を発見したり、生命が存在しない証拠を発見したり、測定結果から判断できなかったりすることを意味します

そしてこの点が重要なのですが、Greenさんが科学界にて準備不足のレベルを主張するのは正しいことです。そうした問題はただちにクリアできるものではありません。たとえば、NASAの天文学者で科学史家のSteven J. Dickさんが『Scientific American』で昨年指摘したように、地球外の微生物をどのように責任を持って処理するかは、すぐにはわかりません

[…]恐ろしいのは、微生物の生命が実際に発見された場合の対処方法に関するガイダンスが存在しないことです。

微生物の話で言えば、人間にとって存在理由のあるもののみに本質的な価値を与える人間中心の倫理を採用するか、すべての生物を重視する生体中心の倫理を採用するかが重要になります。

つまり、科学的な価値のある微生物のみを考慮するのか、それとも微生物自体に価値があると見なすのかが重要となるわけです。微生物自体に価値があるとすれば権利が発生します。その権利は、地球上の微生物が持ち込まなれないというものです。

惑星汚染ポリシーは、私たちが他の世界で発見するかもしれない微生物に権利を与えるようです。結局のところ、これらのポリシーの中心的な目標は、生命を宿す可能性のある惑星を汚染から保護することです。それは一種の生体中心の倫理と言えるでしょう

ビビるな楽しめ!

Wamelinkさんは、この評価に完全に同意しているわけではなく、危険をおよぼすかもしれない微生物を隔離するためのプロトコルがアポロ計画中に導入されたと述べています。

強調しますが、私たちは地球上の細菌やウイルスに対する厳格なプロトコルを持っています。これらのプロトコルは非常に厳密であり、ワーヘニンゲン大学では”遺伝子組み換え生物”やその他の細菌にも設置されています。こうしたプロトコルは、地球外生命体にも簡単に適用できます

そしてPSIの上級サイエンティストDavid Grinspoonさんは、

私たちが完璧に準備ができていないのは当たり前です。準備ができるようなものなら、それは興味深い発見でさえないでしょう。革新的な何かにどうやって完全に備えることができますか? なぜ心配するのかがわかりません。むしろ楽しんで期待するべきでしょう。そういった意味で準備は万全です。さあ、かかってきなさい!

ところで、NASAの2020ローバーとESAのロザリンドフランクリンには大きな成功への期待がかかっています。過剰な期待が和らげられたうえで、火星での生命体探査が続けられることを願います。

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