【ネタバレあり】『ターミネーター:ニュー・フェイト』レビュー:良い! 面白い! でも、許せない部分もある

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  • author 中川真知子
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【ネタバレあり】『ターミネーター:ニュー・フェイト』レビュー:良い! 面白い! でも、許せない部分もある
Image: ©︎2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

このレビューは私情を挟んでいます。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開されましたね。『T2』の正当なる続編である本作のウリは、なんといってもジェームズ・キャメロンとサラ・コナー役であるリンダ・ハミルトンのカムバック! ジェームズ・キャメロンは監督ではなく、脚本プロデュースですが、それでも彼がしっかり物語を作り、がっつり入ったことは大きな意味があると思います。それに、アーノルド・シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンのツートップに加え、ジョン・コナー役のエドワード・ファーロングも出ているんですよ。特にエドワード・ファーロングのカムバックには大きな期待と不安が寄せられていました。だって、ねぇ、今と昔じゃ随分と違うじゃないですか。どうやってエディをジョンにさせるのか、みなさん戦々恐々と見守っていたんじゃないでしょうか。

でね、この『ニューフェイト』の感想なんですが…、良い! しっかり面白い! でも、許せない部分もある!という感じでした。ではどんな風に良くてダメだったのか? それを正直に書いていきましょう。

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Image: ©︎2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

GOOD #1 オリジナルキャストカムバック

もうこれに尽きる。本作の魅力はなんと言ってもコレ。だって、リンダ・ハミルトンが再びサラ・コナーを演じるんですよ? これ以上に嬉しいことってありますか? なんで演じることになったのかって、それは『T2』の続編にあたる物語だからです。サラは「審判の日」を止めたけれど、何かがあった。だから、いまだに絶賛闘う女なんです。そんな彼女の前に現れたのは、未来からやってきた半サイボーグのグレースと、グレースがどうしても守りたいヒスパニック女性のダニー。この二人の関係は微妙に『T1』のカイル・リースとサラ・コナーに似ています。

で、なぜか溶鉱炉に沈んで溶けていったはずのT-800が歳を重ねてキャビン・イン・ザ・ウッドなところに住んでいます。ネタバレで書いてしまうなら、彼は「審判の日」の後に新たに送られてきたT-800で、任務を終えた後に、ひっそりと山小屋で暮らしていたのでした。

まぁ、突っ込みどころ満載のキャラクター設定なわけですが、いいんです。だって、『ターミネーター』シリーズのファンは、サラ・コナーをリンダ・ハミルトン以外に演じて欲しくないし、T-800をアーノルド・シュワルツェネッガー以外に演じて欲しいと思っていないから。多少のことは気にしない、タイムパラドックスも、何もかも気にしない方がいいんです。


GOOD #2 アクションは『T2』の10倍増し

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Image: ©︎2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

アクション面ですが、これはどれも素晴らしかったです。まず、どんなアクションも『T2』の遺伝子を受け継いでいるので、何を見てもワクワクします。それでいて、アクションひとつひとつがグレードアップしていてダイナミック。私は前情報を一切入れずに映画をみたので、新型ターミネーターのRev-9が2体に分裂して独自に動けることを知った瞬間、顎がはずれんばかりに驚きました。これまでにもいろんなタイプのターミネーターが出てきましたが、まさか分裂できるとは。いや、中身だけで動けることは『T1』でもわかっていたことですが、その中身を覆っている側は単体で動かなかったじゃないですか。それが普通に動くんですから。T-1000の液体金属要素も兼ね備えているし、破壊力も修復力も抜群。あれは完全に反則でしたね。あんなすごいドッキリをトレイラーで見せてしまっていたのは問題でしょう。いやはや、最近のトレイラーって見せすぎです。映画ファンの楽しみを奪わないでいただきたい。…って話がそれました。うん、とにかくアクションは全部面白かったです。本当、凄かった。

でも、褒めるところばかりではありません。ファンだからこそ気になる部分もありました。それが次のふたつです。


BAD #1 回想シーンのシュワちゃんがダメ

前半の回想シーンでVFXで若返ったシュワちゃんとリンダ・ハミルトンが登場するのですが、これが酷かった。というのも、若き日のシュワルツェネッガーの良さを表現し切れていないんですよ。昨今はデジタル俳優の起用やデジタルでの若返りが珍しくありませんが、どんなに特徴を掴んだモデリングだとしても、若さからくる荒さや野心、当時の熱意を落とし込むには至っていません。それは目の奥に潜んでいたり、肌の毛穴から発せられるオーラだったりするので、技術で再現できるものなのかどうかはわかりませんが、とにかく一眼で「これはアーニーじゃない」=「ターミネーター じゃ無い」と思ってしまうわけです。まぁ、あえて偽っぽくすることで『T2』のT-800と『T2』後に新たに送りこまれたT-800と差別化したと言われたらそれまでなんですが、『T1』のそれとも違うので、やっぱり受け入れられないわけです。

ウィル・スミス主演の『ジェミニマン 』のデジタル俳優もそうでしたが、「不気味の谷」を乗り越えつつある今、デジタル俳優の良し悪しを左右するのは、その人物に魂が入っているかどうかになるでしょう。これは相当難しいと思います。果たして可能になる日がくるのでしょうか?

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Image: ©︎2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

BAD #2 アクションが記憶に残らない

上でアクションを褒めましたが、それは劇場特有の勢いがあってこそだと思いました。まるで演舞を踊っているかのようなRev-9とグレースのアクションは圧巻で、重機に頼ったシュワ様たちのパワーファイトも80年代を彷彿させて面白かったです。でも、欲を言うなら、アクションの全てを理解できるようなスピードとカメラワークで見せて欲しかったかも。

というのも、私が古いタイプの人間だからなのかわかりませんが、早すぎるとどんなことが起こっているのかわからないんです。「うぉぉ、すごいことが起こってるわ!」と思うし、しっかりゾクゾクもするのですが、劇場を去ってからの楽しみが少ないんです。

例えば、『T2』ならT-1000とT-800とサラとジョンがどんな流れで戦い、どんな感情を通わせていたのかをはっきりと追うことができたし、なんなら再現することだってできました。でも、今作はアクションは速く複雑化し、場面設定もより困難に非現実的になっているんですよね。続編はそうあるべきなので、否定するのはお門違いかもしれませんが、Blu-rayを買って小さなスクリーンで見たら同じような感動は得られないだろうなーというのが残念なところ。それと、アクション映画好きに多く見られる「もしかして頑張れば自分でも再現できるんじゃないか?」というワクワク感を与えてくれないのも残念ポイントです。

ブルース・リーの真似をしてヌンチャクを振り回したり、シュワルツネッガーの真似をしてショットガンをスピンコックしたり、キアヌ・リーブスの真似をしてブリッジしたりした頃は楽しかった。

Video: widget_psz / YouTube

研究したくてVHSを巻き戻したり、 DVDをコマ送りしたりしたものです。アーノルド世代のアクション映画ファンは誰しもこういう楽しみをしていたと思うので、アクションを激しくするあまりに「追えないアクション」になってしまったのは寂しく感じました。


色々書きましたが、不満があるのも作品を愛しているからこそです。私は熱狂的なアーノルド・シュワルツェネッガー信者でファンなので、アーノルドが活躍してくれることは純粋に幸せです。リンダ・ハミルトンを再び大画面で見られて、それがさらにパワーアップしたサラ・コナーであることも嬉しいです。『T2』以降の3作にガッカリした人は是非劇場で見てほしいです。きっと満足できると思いますし、アーノルドのファンなら、私と同じようにVFXの若きシュワ様に不満を持つと思いますよ。

あ、ちなみにシュワ様本人もあの若き日のT-800には満足していないんですって。つまり、シュワ様も認めた「公式モヤモヤ」! 存分にモヤモヤしてください、遠慮は入りません。

映画『ターミネーター:ニューフェイト』は全国で公開中です。


Source: 『ターミネーター:ニューフェイト

『ターミネーター:ニューフェイト』 ほしい?

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