2019年のポップカルチャーハイライト&ローライト

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2019年のポップカルチャーハイライト&ローライト
Image: Paramount, Universal, Disney, Cartoon Network,Getty

今年も終わりに近づいてきましたが、ポップカルチャーの点においては相変わらず良くも悪くも話題に事欠きませんでしたね。米Gizmodoは、今年のポップカルチャーのハイライト/ローライトをリストアップしました。


今年は良いニュースも悪いニュースも盛りだくさんの年でしたね。でも、そんなときでもポップカルチャーがひと時の安らぎを与えてくれます。驚きと喜びを呼び起こした「ベビーヨーダ」や、皆が恐怖でひとつになったソニック・ザ・ヘッジホッグの不気味な歯など、今年も話題には事欠きませんでしたしね。以下は2019年のポップカルチャーにおけるハイライト(とローライト)のリストです。

ハイライト

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彼らにまた会えるのが楽しみ
Image: Sony

コミック映画がオスカーを席巻

コミック原作の映画が興行収入で他を圧倒するようになって何年にもなりますが、それらがオスカーの対象になるような「シネマ」として扱われるべきかどうかは、『ダークナイト』でヒース・レジャーが助演男優賞を獲得して以来激しい論争の的になってきました。それは最近話題になった、マーティン・スコセッシのマーベル映画に関するコメントと、それに対する激しい怒りを見ても明らかです。それに関してはまた後ほど。

しかし2019年のオスカーは、そんな軽く見られがちなジャンルに大きく歩み寄りました。『ブラックパンサー』は最優秀作品賞こそ逃しましたが、ノミネートはされましたし、他では多くの賞を獲得しました。これによって、スーパーヒーロー映画でもジャンルの限界を押し広げるような作品であれば、作品として高く評価されるのだと証明したのです。『スパイダーマン:スパイダーバース』が長編アニメ映画賞を獲ったのも、ヒーロー映画が認められたと感じられるうれしい瞬間でしたね。

グースが有名人(猫)に

色々な意味で猫が印象深い年でしたが、いい意味で一番印象を残したのはマーベルでしょう。コミックファンの中で、『キャプテン・マーベル』の猫、チューイーが映画では原作通りのフラーケン(猫型のエイリアン)じゃなくて一瞬ガッカリした方もいたと思います。しかし、そこに颯爽と現れたのが我らがグース

ポスターでの分かりづらいカメオ出演に始まり、次にオモチャが登場したのですが、この辺りでスタジオもグース(本名はReggie、他にも3匹代役がいます)をもっと前面に推し出すべきだと気づいたのか、猫好きのファン直球ど真ん中な宣伝を出したりしました。Disney+で観たいスピンオフがあるとすれば、やっぱりグースの冒険でしょうか!?

マーベルスタジオ社長のケビン・ファイギがスターウォーズをプロデュース

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)成功の立役者の一人として誰もが認めるのが、プロデューサーのケビン・ファイギです。彼の描いた膨大なマーベルの世界を作り出すというのは、10年前には不可能だと言われていました。しかし、いろいろな協力があったとはいえ、それを可能にしたのは彼の功績だと考えられています。

そんな彼ですが、MCUを構築している最中も、スターウォーズへの愛を惜しみなく発言していました。スターウォーズシリーズは彼にとって、ひょっとしたらマーベル以上に大切なフランチャイズなのです。だから、今年の9月に報じられた、彼がスターウォーズの映画をプロデュースするというニュースは非常にエキサイティングだったのです。

考えてもみてください。10年に渡って20作品以上になる壮大なストーリーを描いた彼が、もうひとつの壮大な世界を手がけるんです! もしかしたら、スカイウォーカーに縛られがちなスターウォーズの物語を、もっと新しい方向に押し広げてくれるかも知れないですよね。

新しい『ブレイド』と『マイティ・ソー』

今年のサンディエゴ・コミコンのマーベル・パネルディスカッションは、激しい熱狂が予想されていました。観客は期待に身が震え、その空気はヒリヒリしていました。『アベンジャーズ:エンドゲーム』でインフィニティ・サーガの幕を閉じたマーベルは、MCUのその先を公開する予定だったのです。パネルはもちろん期待通りでした。2時間の間、マーベルスタジオのケビン・ファイギ(つい先ほどで出てきましたね) は、新作『ブラックウィドウ』の映像やDisney+の新情報など、爆弾のようなニュースを次々投下しました。

でも、パネルの中で最も印象深い瞬間は、マーベルヒーローの仲間入りを果たしたキャラクターの発表でした。まずは、『マイティ・ソー』の第4作目、『Thor: Love and Thunder』の製作が発表され、ナタリー・ポートマン演じるジェーン・フォスターが、コミックに倣って新たなソーになることが判明しました。それだけでなく、オスカーを2度受賞したマハーシャラ・アリがウェズリー・スナイプスを継いで新たなブレードを演じることも発表されました。どちらもファンにとって大きな衝撃でしたが、それは単純にエキサイティングなだけでなく、現実の世界に沿った多様性を、ようやくマーベルスタジオが受け入れたと見られたからです。

高校生による驚きの再現度の『エイリアン』

ニュージャージー州、North Bergen High Schoolの演劇部の生徒たちが、リドリー・スコットの『エイリアン』を劇として演じたこと大きなニュースになりました。国語の教師を務めるPerfecto Cuervo氏が監督したこの劇は、わずかな予算を機転と想像力でカバーし、再現度の高い特殊効果や驚くほど見事なゼノモーフのコスチュームを作り上げました。劇は、エイリアンのファンはもちろん、監督のリドリー・スコットや主演のシガニー・ウィーバーにまで高く評価され、特にシガニーは4月26日(別名エイリアンの日)に行われたアンコール上演に来客して、部の監督、スタッフ、キャストをビックリさせました。

Star Wars: Galaxy’s Edgeが公開

スターウォーズを観た人は多くても、その世界に住んだことはもちろんありません。しかし、カリフォルニア州のディスニーランドとフロリダ州のウォルト・ディスニー・ワールドに今年登場したStar Wars: Galaxy’s Edgeが、それを変えました。新たに14エーカー拡張された施設は豪華で没入感が高く、スターウォーズの世界に忠実でした。つまり、『スターウォーズ』と書かれたTシャツを着たスタッフがいるなどというレベルではなく、惑星バトゥーで勃発した反乱軍とファースト・オーダーの抗争の真っ只中なのです。

オープン当初は誰もが期待したようなヒットではなかったし、批判する人も多いようです。しかし、私たちのような多くの人々にとっては、スターウォーズの世界に一日でもいいから住んでみたい、という夢を叶えてくれるのです。自分専用のライトセーバーを作ったり、ミレニアム・ファルコンを飛ばしたり、ブルーミルクを飲んだり、宇宙港カンティーナでひと時を過ごしたり、さまざまなことができます。もしあなたがスターウォーズ ファンなら、Galaxy’s Edgeは実にユニークな体験をさせてくれるでしょう

ベビーヨーダ…この一言で十分

私たちがDisney+のローンチを心待ちにしていた大きな理由のひとつは『マンダロリアン』です。スターウォーズ としては初めての実写のTVシリーズということで、リリース前からの熱気は凄じく、キャスト製作チームの公開、続いて興味をそそる画像クール予告映像で盛り上がりました。そして11月12日に公開された本編は、期待を裏切りませんでした。スターウォーズの世界観を大きく広げ、寡黙な賞金稼ぎを私たちに紹介しつつ、ヴェルナー・ヘルツォークを惜しみなく出演させてくれました。

しかし最も衝撃的で、『マンダロリアン』、いやスターウォーズすべての見方を大きく変えてしまったのは、第一話の最後の一瞬。ベビーヨーダの登場です。多分実際の名前はそうではないと思いますが(本編では「The Child」と呼ばれる)、その呼び名は一瞬にして広まりました。そのあまりの愛らしさは瞬く間にネットに広まり、さまざまなミームの対象にされ、商品化を叫ぶ必死の声を生み出しました。

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ちょっとチューンナップが必要かも
Image: Sony

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の初予告公開

映画の発表は、ある意味ルーティンワークになっています。インターネットで製作発表を知り、キャスティング決定のニュースなんかを追ったりして、最後にトレーラーが公開。その繰り返しです。しかし、新しい『ゴーストバスターズ』の公開に関し、ソニーとジェイソン・ライトマン監督は違うアプローチを試みました。オリジナルの共同執筆者であり、監督のアイヴァン・ライトマンの息子であるジェイソン氏がシリーズを監督すると発表された数時間後にはティザーが公開されたのです。勿論、映像は本当にわずかで、恐らく本編には使われすらしないものだったでしょう(今はちゃんとした予告があります)。しかし納屋の中、布に覆われたECTO-1の映像は、世界中のゴーストバスターズファンの想像力を掻き立てたのです。映画を発表するなら、これくらいやらないとね!

ソニックのデザインが修正

映画『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の最初の予告が公開された途端、インターネットには恐怖の悲鳴がこだましました。監督のジェフ・ファウラーは完全なリデザインをファンに約束しましたが、これには警鐘を鳴らす声もありました。映画でドクター・エッグマンを演じたジム・キャリーは、「映画の製作にソーシャルメディアがここまで影響力を持つべきではない」と発言し、また、すべてを作り直さなければならないVFXチームにかかる負担も、主にCG業界から聞こえてきました。しかしありがたいことに、パラマウントは修正のために3ヶ月公開を遅らせることにしたのです。

結果は上々で、11月に公開された予告第二弾は、よりソニックらしいデザインになりました。ソニックのコミック版などを担当したり、米国では古くからソニックに関わっていたことで有名なTyson Hesse氏がリデザインに協力したこともあり、恐怖でしかなかったソニックは楽しくて生き生きとしたものになったのです。映画自体は一般的な子供向け映画に見えますが、果たしてリデザインに使われた時間、苦心、資金に価値があったかどうかは、まだわかりません。でも少なくとも、あの不気味な歯がなくなっただけ良かったのでは?

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 3』のためにジェームズ・ガンが復帰

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 1』と『Vol. 2』の監督、ジェームズ・ガンがドナルド・トランプ大統領を批判したことに対し、保守系の活動家たちは彼を貶めるための喧伝を行いました。その武器は、彼が昔Twitter(ツイッター)に投稿した、性的暴力や幼児性愛をネタにしたジョークです。もちろんそれらのジョーク自体は非常に問題な発言なので彼も謝罪しましたが、時すでに遅し。ディズニーは彼を『Vol. 3』の監督から降ろし、映画の製作自体を凍結しました。…とりあえずその時はね

しかし今年の3月、ジェームズが 『Vol. 3』の監督に復帰したと発表。しかも実際には、ウォルト・ディズニー・スタジオの社長であるアラン・ホーンとの長い交渉の末、発表の数ヶ月前にはすでに契約していた様子でした。待ち望んでいたファンはホッと一息つきましたが、ジェームズにとっては反省の機会になったようです。のちのインタビューにおいて、自分の発言に対してすべての責任を負うこと、そしてこの一連の体験は学ぶ機会になったとしています。彼は、ツイートを理由にディズニーがクビにしたのは、当然のことだと思っているそう。実は彼、ディズニーに復帰するまでの間にDCと契約し、スーサイド・スクワッド』の続編の監督が決まっていたので、『Vol. 3』の製作はそちらが完成した後になります。

AziraphaleとCrowleyのロマンス

LGBTQの人々は、映画、テレビ、アニメを問わずあらゆるジャンルのファン層の、実はかなりの大部分を占めていたりするのですが、作品上でそういったキャラクターが出る機会がまだまだ少ないため、好きな作品を深読みし、ロマンスがないところにロマンスを作り出すしかないという状態がまだ続いています。Amazon Prime(アマゾン・プライム)で公開された『Good Omens(グッド・オーメンズ)』のAziraphaleとCrowleyの間には決して性的な要素はないのですが、彼らの千年以上の友情はプラトニック以上に見えてなお、純粋で心を打ち、観客に共感を呼びました

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エルヴィスそこのけ、ステグのお通りだ!
Image: Cartoon Network

ロックな合体が誕生

『スティーブン・ユニバース』において、新たなジェムの合体はいつも盛り上がるのですが、スティーブンがコニー以外の人間と合体するのは本当に久し振りなので、ステグ・マルチバースなんてワイルドな展開を誰も予想していませんでした。『スティーブン・ユニバース』において、合体はキャラクター同士の様々な愛の形の象徴として使われます。愛と一言に言っても、健全なもの、プラトニックなもの、あるいは不安定なものや、虐待的なものなど色々あります。しかしステグの場合は、スティーブンとグレッグの間にシリーズを通して築かれた、家族のような絆を表現しています。ちょっとしたすれ違いから、いかに絆が壊れかねないかに重きを置きがちなこのシリーズにおいて、これは貴重な瞬間です。

『ウォッチメン』のおかげでタルサが知れ渡った

オクラホマ州タルサにおける、1921年のブラック・ウォール・ストリートの暴動は、米国史において大きな転換点でした。しかし、米国の教育システムにはびこる組織的な人種差別が原因で、多くの人(主に黒人以外の人)はHBOの『Watchmen(ウォッチメン)』を観るまで聞いたこともありませんでした。原作のコミックはもちろん高く評価されていますが、それにしてもそれを元にしたテレビシリーズが、米国の文化の中でも黒人に対する人種差別に深く根ざした部分を題材にし、思慮深く丁寧に描くとは誰も予想しませんでした。しかし、全9話のひとつひとつで『Watchmen』は見事にそれを成し遂げました。その成功の背景には、プロデューサーのデイモン・リンデロフが描いた初期コンセプトの素晴らしさがあります。同時に、『ウォッチメン』を取り巻く人種差別や警察による暴力の痛ましく複雑な現実に対して、繊細でバランスのとれた視点を提供できる、多種多様な声が脚本チームに必要だと理解していたHBOも大きく貢献しています。

ローション男は結局何者 !?

HBOの『ウォッチメン』は、とにかく大胆さが自慢です。驚きのどんでん返しや衝撃的な展開、そして今年だけでなくテレビ史に名を残す数々の名シーンのおかげで、2019年のテレビチャートのトップに一気に上り詰めました。しかしどんな名シーンも、第4話(『If You Don't Like My Story, Write Your Own』)に登場したとある人物には敵いません。その名も…Lube Man(訳注:ローション男)

こんなシーンです:我らがヒーロー、Regina Kingの演じるAngela Abarはコスチュームに身を包み、パトロール中。視線を感じた彼女は通りの反対側を見ます。確かに彼女は見られていました…全身をギンギラギンのスパンデックスに身を包んだ男に。彼は突然逃げ出します。彼女もそれを追いますが、男はベルトに差していたボトルの液体を自分の体にかけ、道路上をスライディングして排水溝に滑り込んで姿を消しました。彼はその後一切物語に出てきません。

ちなみに、いまだに何の説明もありません。ただ分かっているのは、アンジェラ同様、視聴者も何が何やらまったくわからない、美しい数分間に出会ったということです。

MCUのLGBTQヒーローが発表される

MCUは、LGBTQを代表するキャラクター、特にストーリーを左右する重要な役柄が待ち望まれていました。しかし今年、スタジオはついにそんな状況が変わると発表しました。サンディエゴ・コミコンにて女優のテッサ・トンプソンとケビン・ファイギが発表したところによると、2017年の『マイティ・ソー バトルロイヤル』で彼女が演じたヴァルキリーが、2021年の『Thor: Love and Thunder』でちゃんとしたLGBTQのストーリーラインを得るとのこと。

それだけではありません。その1ヶ月後、ファイギは2020年公開の『The Eternals』にも、公表されていない同性愛者のキャラクターがいると発表したのです。唯一ファイギと製作チームにお願いするのは、キャラクターがLGBTQに対する理解の元に描写され、それがMCUの世界にさらに多様なキャラクターを生む礎となることです。

マトリックス4

『マトリックス』は、2003年で終わったものだと誰もが思っていました。しかし、ハリウッドはどこまでいってもハリウッド。ウォシャウスキー姉妹による革命的なSF映画シリーズは、続編が何年もされていましたが、今年まで正式な発表はありませんでした。ラナ・ウォシャウスキーが監督し、キアヌ・リーヴスとキャリー・アン・モスが改めてネオとトリニティの役を演じると発表されましたが、今、本当に現実世界なんでしょうか?

キアヌサンス

正直な話、キアヌ・リーヴスが格好悪かった時代なんてないんです。でも2019年は彼にとって、特にギーク的な面で大活躍な一年でした。『トイ・ストーリー4』ではバイクスタントマン、デューク・カブームの声を演じ、『ジョン・ウィック3』では洪水のような量の弾丸をぶっ放し、ゲーム『サイバーパンク2077』ではサプライズ出演を果たしました。さらにカートゥーン映画の『Spongebob Movie: Sponge on the Run』ではタンブルウィードの声をあて、ビル&テッドの最新作『Bill and Ted: Face the Music』では久しぶりにエクセレントなエアギターを披露し、極め付けには『マトリックス』シリーズの最新作まで待っています。しかもまだ2019年が終わるまでには少し時間があるので、もしかしたら、ずっと噂されていたMCU入りもあるかも?

ローライト

「Maclunkey」事件

Disney+のローンチを後世の歴史家が紐解くとき、それはたったひとつの言葉に集約されるでしょう。それは「Maclunkey」。

11月12日のローンチから数分と経たず、ひとつのニュースがネットを駆け巡りました。『スターウォーズ エピソード4/新たな希望』の、ハン・ソロとグリードの有名なシーンがDisney+で変わっているというものです。これで2度目なわけですが、今回はグリードがハンを撃つ瞬間、「Maclunkey」と言うのです。なぜでしょう? 現在まで誰もわかりません。しかし、瞬く間に「Maclunkey」の言葉はネットに広がっていき、人々はこの奇妙な単語がスターウォーズ語録に加わったことを喜びました。ネットではこの言葉をどれだけネタにできるかで競い合いが始まりました。

実は、この変更はジョージ・ルーカス本人から来たのでした。何年も前、彼は映画を4Kリマスターし、そのときになぜかこの言葉を追加したのです。なので、「オリジナル・スターウォーズ・トリロジー」とは言うものの、実はまったく「オリジナル」ではないことを私たちに思い出させてくれるものとなってしまったのです。こんなときになんて言うかって? Maclunkey!

スパイダーマンをめぐる駆け引き

2019年の1ヶ月の間、スパイダーマンは宙ぶらりんの状態でした。スパイダーマンの版権を所有しているソニーピクチャーズと、トム・ホランド版スパイダーマンを登場させて成功に導いたマーベルが争っていたのです。ソニーは金銭的な問題から、スパイダーマンをマーベルにこれ以上貸すつもりがなかったのです。ファンはもちろん騒然となりました。

1ヶ月の間、どこもスパイダーマンの話題で持ちきりでした。彼の映画はどうなるのか? 物語はどう決着するのか? 両社が新たな契約を結べないのか? さまざまな情報が飛び交い、会社同士の要求やどちらが悪いかなどで盛り上がり、駆け引きの末に元鞘となりました。とりあえず、スパイダーマンはMCUの映画に出演し続けます。

しかし、今回の争いは映画業界の問題点をさらけ出しました。スタジオ同士がマスコミを使って公の場で喧嘩する。噂が歪められ、事実として報道される。なんでもないことを、さも重大であるかのように騒いだだけの1ヶ月でした。

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ホラーショー
Image: Paramount

ソニックのデザインの不気味すぎる歯(とそれ以外の全て)

今年は、悪い意味で記憶に残る予告編が多く出ました。7月には映画版『キャッツ』の予告が公開され、巨大な家具のセットや不気味なCGの猫人間に、人々は喜んだり恐怖したりしました。でも、そんなものは4月30日に公開された『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の足元にも及びません。リアル志向のデザインのおかげで悪夢のようになってしまったソニックは、ソーシャルメディアに絶え間ない悲鳴を発生させ続けました。その目、手、毛並み、そして何より、なぜかそこだけ人間っぽい歯! でも、こう考えれば納得できました。これは誰もが知っているソニックではなく、神の失敗作だと。と同時に、こんなものが存在する世界に神などいるはずがないので、神の存在を否定する証拠でもあるのです。

ソニックのデザインが神がかり的に酷く、ファンの受けがあまりに悪かったので、パラマウントは2020年まで公開を遅らせ、リデザインを余儀なくされました。しかしハイライトでも書いたように、これにはVFXチームへかかる負担や予算の面で懸念の声が聞かれました。ありがたいことに新しいデザインは素晴らしいのですが、映画の出来はまだ様子見です。

CIA出身だと証明せねばならなかったトム・キング

コミック業界でスターになることの欠点は、特定のジャンルに関わる人間はこうあるべき、と不可解なルールを押し付けてくるナードが押し寄せ、あることないことを叫び出すことです。

たとえば、バットマンやヴィジョンのライターのトム・キングは、ライターである前はCIAに所属していました。コミック好きで、なおかつスパイ物が好きな人たちから凄く好かれそうに見えますよね。でも、彼の経歴に難癖をつけたがる人たちが増えたため、彼は自分が軍に所属していたことを証明せざるを得なくなってしまいました。別にそんなことをする義務なんてなかったのに。

『アベンジャーズ:エンドゲーム』がリーク

2019年の初め、世界の注目は『アベンジャーズ:エンドゲーム』の結末に集まっていました。マーベルスタジオとディズニーはネタバレを防ぐため、アーリースクリーニングの回数を制限し、ネタバレしないよう呼びかける宣伝を出演したスターたちにさせ、徹底したキャンペーンを行いました。

しかし、そんな苦労も海賊版映像がネットに流れたことでムダになってしまいました。映像は許可されたスクリーニングで撮影されたもので、映画の衝撃シーンのほとんどを前後関係を見せずに公開してしまいました。その目的は明らかに、まだ見てないファンにネタバレして怒らせるためでした。多くのサイトが映像を流したり、内容を説明したりして、他人の悲しみを元に金を稼ぎました。

映像がリークしたことは確かにニュースの対象ですが、それを建前に自分の利益のためにネタバレをする様に、現代の人類の汚い部分を見た気がします。

『The Hunt』がお蔵入り

Craig Zobelによる社会風刺バイオレンス、『The Hunt』は、元から過激さをウリに製作されており、『Watchmen』のニック・キューズとデイモン・リンデロフによる脚本は、リチャード・コネルの『最も危険なゲーム』のようなスタイルで、裕福なリベラル派をハンターにし、保守派の人間をその獲物にするという設定でした。

Zobelによれば、これはテーマ的には「両派とも皮肉る」つもりだったそうですが、9月27日の公開に向けて銃撃を前面に押し出した宣伝が、現実世界での複数の銃撃事件と重なったことで不適切と判断されてしまいました。

それだけでなく、作品をまったく見ていないトランプ大統領が、保守派のマスコミに煽られ、『The Hunt』の不和を煽るストーリーを批判するツイートを行いました。そういったネガティブな要素が重なった結果、ユニバーサルは『The Hunt』の公開をキャンセルすることに決定。現在、いつ公開されるかは不明です。

『エンドゲーム』の申し訳程度のLGBTQキャラを、ルッソ兄弟が大げさに盛り上げた

今年はジャンル映画において、LGBTQを代表するキャラクターに不満が残る1年でした。実際に現在の流れを変えるようなものはなく、ただ将来への約束だけで、これまでのように口先だけではないことを祈るしかありませんでした。

しかし、今年最も腹立たしい瞬間は『アベンジャーズ:エンドゲーム』の公開数日前に起こりました。監督のアンソニーとジョー・ルッソの兄弟が、『エンドゲーム』において、MCUの10年の歴史で初めて同性愛者のキャラクターを登場させるとメディアに吹聴しました。「この膨大なフランチャイズのマイルストーンだ」とさも大事であるかのように発表したのです。

当然、それがMCUの誰のことなのかとファンは推測をはじめました。10年かかりましたが、それでも重要な一歩を踏み出せたことを誰もが喜んだのです。ところが蓋を開けてみれば、MCUで初めてのゲイのキャラクターとは…ジョー・ルッソ

ルッソは小さなカメオで出演しているのですが、その役はキャプテン・アメリカが参加している、サノスの指パッチンを生き延びた人々のサポートグループの一人。登場シーンはほんの一瞬で、彼は新しい男性と付き合いはじめ、やっと大災害から前へ進めそうだと話し…そこで終わりです。出たと思ったら退場して、それ以降出てきません

問題は出演が短かったことでも、それがルッソ兄弟にとって自身の映画への出演だったことでもありません。それは、プレスツアーで散々歴史的瞬間だと盛り上げようとしたことです。

実際、事実を知らない誰もがそれを信じて最初は盛り上がりました。しかし、現実にはLGBTQのキャラクターと呼んでいい最低限のラインしかクリアしていないのです。マーベルはその後、「本当に小さい役で、話題にする意図はなかった」としていますが、それで余計にガッカリしました。マーベルはもっと努力する必要があるし、将来的に(また将来の約束!)は『Eternals』や『Thor: Love and Thunder』などでもっと重要なLGBTQキャラクターが出ることを期待します。

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はぁ…
Image: Warner Bros.

ワーナーが『ジョーカー』のレッドカーペットインタビューをキャンセル

トッド・フィリップ監督の『ジョーカー』は話題に事欠きませんでした。ストーリーのテーマについて訊かれたホアキン・フェニックスがインタビューを中断したり、米軍が兵士に注意を喚起したりなど、公開前でこれなら、映画が公開されたらキャストや監督が質問責めにあうだろうと予想されました。

しかし、公開が近づくと、ワーナーはそれ以上の悪いニュースを避けるため、ハリウッドではお決まりのレッドカーペットでのインタビューをキャンセルしました。スタジオにとっても印象が良いことではないし、監督のトッド・フィリップとホアキン・フェニックスにとっては特にそうです。二人とも、その後はより思慮深く映画について発言しています

警察とパニッシャーの関係がリアルすぎる

パニッシャーの共同クリエイターであるGerry Conwayは、自分たちをパニッシャーと結びつける警察官を公に批判しています。コミック上でも、フランク・キャッスルは自分と警察はまったく違うと発言しています。それにもかかわらず、暴力沙汰が頻繁に取りざたされる米国の警察はパニッシャーのドクロロゴを堂々と着て、一般市民に恐ろしいメッセージを送り続けました。

マーベルからお目こぼしを受けている限り、警察はライセンスされていないパニッシャーグッズ(警官の命の大切さを訴えるBlue Lives Matter運動や、警察が平和と混沌を分けるラインだとするThin Blue Line運動などをモチーフにカスタマイズされたものが売られています)を買って街中で着て、「お前が悪いと思ったら、俺たちはお前を拷問にかけて殺してやる」と市民に暗にメッセージを送っているのです。

テレビ番組多すぎ!

贅沢な悩みかもしれませんが、2019年は正式に、観たいシリーズをすべて観るのが不可能になった年だと思います。というか、すべてを観てなお、仕事して、寝て、たまに外に出かけるような日常を送るのが不可能になったと言うべきでしょう。一気見形式か1話ずつかに関わらず、新たなストリーミングサービス(Disney+Apple TV+)は、HBO、Netflix、Amazon、DC Universe、さらに古き良きNBC(The Good Placeがいいんですよ)に到るまでが提供しているストリーミングサービス地獄にさらなる火を投下しているようなものです。

視聴者はより厳選せざるを得なくなりました。ですが、津波のように押し寄せるコンテンツは止まりそうにありません。来年にはHBO Maxがローンチし、Disney+は様々なマーベルシリーズを用意していて、CBS All Accessからの新たなスター・トレックなどなど…。観てたらそれだけで人生が終わっちゃいそう!

スコセッシ対スーパーヒーロー

Empire誌のインタビューにおいて、名監督のマーティン・スコセッシは、マーベル映画に対する不満を公にコメントしました。彼のコメントをまとめると、「あれはシネマじゃない。遊園地だ」ということになります。しかし大きすぎる反発に、彼はNew York Timesに寄稿し、より注意深く言葉を選んで説明しました。彼によればフランチャイズ映画は、映画産業をのっとった「即座に消費するには完璧な製品」だそう。もう少し読むと、彼の不満はマーベルではなく、芸術的な表現よりブロックバスター映画に拘るようになったハリウッドそのものに向けられていると分かります。

それは否定できません。でも、『ミッドサマー』や『The Lighthouse』などを楽しんで、同時に『アベンジャーズ:エンドゲーム』などを楽しめる映画ファンだってたくさんいるのです。たとえ映画界の重鎮と言えど、大スケールでうるさくて、(確かにちょっと)下らないスーパーヒーロー映画がファンに運ぶ楽しさを、否定することはできないのではないでしょうか?

声優、Vic Mignognaが彼を糾弾した被害者二人に訴訟を起こした

今年の初め、アニメ声優のVIc Mignognaに対し、セクシャルハラスメントの疑いが囁かれるようになりました。結果、制作会社のFunimationとRooster Teethは彼を将来のプロジェクトから外しました。2月にはio9が複数の疑いについて調査を行い、彼による性的暴行、ハラスメント、他にも不適切な行動に関して複数の女性からの証言をとりました。

しかし、話はそこで終わりません。MignognaはFunimationと彼の共演者二人(と彼女たちのフィアンセ)を相手取って名誉毀損で訴訟を起こしました。訴訟の資金の多くは、オルタナ右翼派のユーチューバーが起こしたGoFundMeで集められています。裁判は数ヶ月に渡って行なわれ、「人間は糞の塊でできていないので、相手をクソと呼ぶのは名誉毀損」などというビックリするような主張がニュースで広まりました。その間も、訴えられた被害者たちや関係者は、Mignognaの支援者たちからハラスメントを受け続けました。

Mignongnaの訴えは結局棄却され、テキサス州の反威圧訴訟法に基づき、彼には被害者側の訴訟費用、約25万ドルが請求されました。これは上告を諦める場合払わなければなりません。

Skydance Mediaが元ピクサー社長のジョン・ラセターを起用

ウォルト・ディスニー・アニメーションスタジオとピクサー・アニメーションスタジオのCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)のジョン・ラセターは、2017年、同社で働いていた女性数人からのセクシャルハラスメントの報告が元で退陣しました。しかし、1年弱で今度はSkydance Mediaが、2021年から映画をリリース予定の新しいSkydance Animationの主任に彼を任命しました。

この発表にはTime’s Up運動の人々や業界の他の人々から反発が相次ぎました。大きな反発の原因は、スキャンダルから間もない今、アニメーションスタジオを彼に任せるのは早すぎるということです。しかも、スタジオの社員には彼と仕事したいかどうかを選ぶ権利もなかったのです。

トイザらスの苦戦

かつては子どもの夢の国のようだった、トイザらスの苦戦は続いています。昨年、バイアウト後に投資ファンドから課せられた借金が原因で、トイザらスは米国で約800店舗を閉店し、グローバル実施権以外のほぼてを売却しました。また、2018年の夏にはおよそ3万人の従業員が退職金や福利厚生もなく解雇になり、彼らはトイザらスを相手取って訴訟を起こし、同年11月に2千万ドルの退職基金を獲得しました。一見トイザらスも終わったかと思われましたが、死体は蘇りました。

トイザらスは、ブランドを存続させるために、ホリデーシーズンに2店舗(テキサス州とニュージャージー州)開店しました。店は他のブランドにスペースをリースして販売させ、殆どの商品の購入はオンラインで行うよう促されます。しかし実は、ウェブサイト自体はTarget(ターゲット)によって運営されています。つまり、多くのオモチャや他の商品はTargetを通じて売られているのです。投資ファンドによる壊滅的な企みにより、ここまで落ちぶれたトイザらスを見るのは悲しいものです。これを見てわかるのは、投資ファンドによる経営は、投資ファンド自身のための経営であり、買収した企業のことなど一切考えていないということです。絶対に

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