AirPods Proレビュー:ワイヤレスの役割は、音質じゃないのかも。それで良いのかも

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  • author ヤマダユウス型
AirPods Proレビュー:ワイヤレスの役割は、音質じゃないのかも。それで良いのかも
Photo: ヤマダユウス型

音楽を聞く以上の意味が、イヤホンにあっても良いじゃない。

AirPods Pro」が発表された当時、僕はSNSの盛り上がりっぷりに違和感を覚えていました。褒めすぎじゃない? 盛ってない? 本当に良いイヤホンなの? あれからいくつものレビュー記事が出ていますが、その使い心地はマジで良いみたいですね。編集部綱藤くんもソニーの「WF-1000XM3」より推してるくらい

僕が使っているワイヤレスイヤホンは「Jaybird Tarah Pro」。ですが普段は基本的にDAPと有線イヤホン、それかヘッドフォンを使っています。なんでかっていうと、音楽サブスクに入ってないから。高音質の音楽ファイルがデバイス上にあるので、どうしても有線で聴きたくなっちゃうのです。Spotifyとか使うようになったらワイヤレスをメインにしたいんですけど……すぐパケ死(死語)しない? あれみんなどうやってるの?

さておき、今回はそんな僕が2週間肌身はなさずAirPods Proを使ってみたので、そのレビューをお届けします。仕事柄いろんなワイヤレスイヤホンを試していますが、どうしてAirPods Proはこんなに盛り上がっているのか。どのへんがセンセーショナルなのか。後発レビュー勢として、そのへんの実感的な部分を深堀りできればと思います。

先に僕のスタンスも表明しておきましょう。ワイヤレスイヤホンのターゲットではない立場から見ても、AirPods Proはマジで素晴らしいイヤホンです、悔しいけども欲しいと思いました、悔しいけども! この悔しさがどこに起因するものなのか、一緒に解き明かしていきましょうぞ。

AirPods Pro

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Photo: ヤマダユウス型

これは何?:ワイヤレスイヤホン界に突如表れたエース by Apple

価格:3万580円

好きなところ: 最高峰のノイズコントロール、ストレスフリーなコンパクトさ

好きじゃないところ: 値段の割に、音質が。値段の割に!

鳴らしての感動は、それなり

初めて耳につけて音楽を聞いた時の感動は、ゼンハイザー「MOMENTUM」や、B&O「E8」ほどではありませんでした。どうも立体感、臨場感に欠け、3万円のイヤホンから期待する音としてはやや感動不足だと、当時のメモに書いてあります。

Proじゃない現行モデル、第二世代AirPodsと比較すれば、良い音です。でも、インナーイヤー型のAirPodsとカナル型のAirPods Proを比べるのはフェアではないでしょう。同じカナル型界隈で比較すれば、もっと良い音で鳴るイヤホンはたくさんあります。金額を思えばもう少し心と耳にグっと来る音がほしかったとも思うので、音質については平均点、普通。ある意味Appleの音らしいというか、AirPodsの系譜らしいチューニングといえなくもないですね。

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Photo: ヤマダユウス型

ワイヤレスの接続性や起動速度については、ストレスまったくなし。ポケットからケースを出す、右のイヤホンを取り出す(もう接続してる)、両耳にイヤホンをはめる、再生。一連の流れはとてもスムーズで、遅延も気になるほどではありませんでした。まぁ、このへんは最新のワイヤレスイヤホンですし、3万円ですし。

ガジェ界を震撼させた、ノイキャンと外音取り込み

平均点な音質をフォローしてあまりありまくるのが、Apple初挑戦にして大戦果をあげたノイズキャンセリングでした。その威力は、バスや電車で使えば体は揺れてるのに音がしないことに違和感を覚えるほど。ライブハウスの最前列で使っても、赤ちゃんが寝ていられるほどの静寂が手に入るほど。

これは間違いなく、僕がこれまでに体験してきたノイキャンの中でも最高峰のキャンセルっぷりです。大差とまではいかないでも、WF-1000XM3より強力。高音や女性の話し声はやや通るものの、低音はごっそりハイパスしてくれてます。

して、ときにノイキャンは逆位相の音が不快なノイズとして感じられることがあります。AirPods ProのノイキャンはWF-1000XM3ほど自然とは言えず、わずかに逆位相の違和感があるものの、聞いてるうちに慣れてくるレベルでした。人の感覚器は順応するものですから、これくらいの違和感は許容範囲内かなと。

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もひとつ。強力なノイキャンの感動をさらに引き上げているのが、外音取り込み機能。これが機能的にもデザイン的にも、ほんっと、ほんっっっと、上手いことできてる。機能としては珍しいものではありませんが、AirPods Proの外音取り込みは聞こえ方が自然すぎて笑っちゃうほどです。ガジェットに詳しくない友人に試してもらったところ、椅子から立ち上がって驚くという昭和のリアクションを見せてくれました。

ノイキャンと外音取り込みの2つを、AirPods Proはノイズコントロールという言葉でまとめています。お察しの通り、自在なるノイズ制御こそAirPods Proが絶賛されているゆえん。世界から音を消す強力なノイキャンと、元の環境音をそのまま感じられる外音取り込み。2つの世界のシームレスな行き来は、今までのイヤホンにはない感動をもたらしちゃってます。ノイキャンON時にアナウンスがないのも、シームレスさに繋がっているでしょう。効果音は鳴りますが、音を止めないで移行してるのがグッド。この仕様、わりと珍しい。

イヤホンの軸(うどん部分)を1秒ほど長押しするだけで、静寂の世界と現実を行き来できる。この感覚は、まるで自分だけ違う次元にスライドするような、特別な浮遊感があります。イヤホンを外さないことで、静寂と現実の体験が地続きに感じられるんですよ。服を脱げば涼しくなるのは当然ですけど、着たまま涼しくなったらちょっとすごいでしょ? AirPods Proは、次元をジャンプできるウェアラブルガジェットなんです。

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Photo: ヤマダユウス型

あと、レビュー中はスマホだけでなくMacとも繋いでたんですが、移動時はDAPで音楽を聞くことが多い僕の生活の場合、Macとの連携の方が都合が良かったですね。ノマド作業中にノイキャンONで文字起こししたり、YouTube流してBGM代わりにしたり。withスマホではなく、with Macな使い方、すごくありです。むしろその使い方が便利すぎて欲しくなったんだよなぁ…。

結局、ワイヤレスに求めるのは何なのかとゆー話しで

そもそも論ですが、Bluetooth経由で再生する楽曲の音質には限度があり、iOSならばAACコーデック以上の伝送速度≒解像感は(なかなか)得られません。良いイヤホンは独自のドライバーユニットを開発したりハウジングを工夫したり、とかく企業努力マシマシで音質を追求しますが、音質としての優位性がケーブルイヤホンにあるのはもう物理的に仕方ないもので。

ということは、真に音質を求めるならケーブルにするべきで、ワイヤレスを選ぶ段階である程度の見限りをしてる、と言われても強く言い返せない次第にございます。もちろんその範囲内で各社工夫してますし、それぞれの違いが面白いのは言うまでもありません。

じゃあ、へつられた音質をどうやって補うか。あるいは音質はそのままに、音楽をよりよく聞くにはどうすれば良いのか。

そこで出るのが、そうだね、ノイズキャンセリングだね。雑音を消すことで聞いている音楽に傾聴させるスタイルはワイヤレスの優位性を知らしめ、今ではノイキャン力はそのままワイヤレスイヤホンスペックの指標になりつつあります。ケーブルイヤホンならノイズを消すのではなく音質そのものの向上に努めればいいわけですから、ノイズを消して聞こえを良くする試みは音質の天井が見えているワイヤレスならではの手法ともいえますね。

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Photo: ヤマダユウス型

この「より良い音楽を聞くための環境づくり」は、スペックの引き上げというよりも体験のデザインです。AirPods Proは、とかくココに注力したイヤホンとも言えるし、音質以外の部分をデザインし直すことで音楽の聞き方に貢献しようとしたイヤホンともいえます。新機能である「イヤーチップ装着状態テスト」も、ちゃんとした位置でちゃんとした音を聞くためのアシスト機能として、よくぞ追加してくれたなと思います。まぁこれの精度はイマイチで、明らかに左右をズラした状態でもOKと判定しちゃうんですけど。もうちょっとシビアに判定してくれてもいいのよ?

なーんてことを言ってると「それってつまりは小細工じゃないか!」と、音質じゃない部分を頑張ることで聞こえ方を誤魔化してるのではと、訝しむ気持ちもやはり湧いてくるもので。でも、ワイヤレスイヤホンである限りどうやったって音質の追求には限度があるし、Boseやゼンハイザーといった音質ドリブンなメーカーがめちゃくちゃ頑張ってるのに、Appleが追い抜けるとは、正直思えません。っていうか別にAirPods Proの音質は悪い音質ではありません。3万円の音ではないってだけで、まったくもって問題ないサウンドをしています。

となると、3万円するAppleのワイヤレスイヤホンに期待しているのは、少なくとも音質じゃあないですよね。じゃあ他の要素みてみようか、ノイキャンは…おお、すごく良い。外音取り込みもくっきり聞こえる。本体ケースも小さいし、バッテリーも充分。よし、トータルで考えるとコレでいいな

…っていう、そういう話しなんですよねぇ。音質は諦めたけど、それ以外が良すぎる。その音質も決して悪いものではないし、人にオススメできるレベルには鳴ります。僕はね、これが悔しい。お値打ち系ならともかく、お高いイヤホンならやっぱり音質に突き動かされたかった。それがどうですか、このノイキャンの使い勝手の良さ、携帯性の良さは。音質至上主義だったライターがAirPods Proにほだされてしまうなんて! いや別に良いんですけど!

美しくデザインされた製品は、生活もデザインする

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Photo: ヤマダユウス型

新しいAirPods Proは、Mac、iPhone、iPadなどのサイクルにガチっとハマるAppleエコシステムのサウンド部分を担うガジェットになったと言って良いでしょう。そのイズムは本体デザインだけでなく、使う人のライフスタイルまでApple色に染めるという思想的部分も、しっかり継承しています。実際の無線連携だってとってもスムーズ。スムーズな連携は、使っていて気持ち良いものです。

そして、強力なノイキャンと自然に聞こえる外音取り込み機能は、一度使えばもうメロメロになってしまうほど良くできてます。カフェ作業や移動時はノイキャンを、周囲に溶け込みたい時は外音取り込みを。それらの機能はただ音楽のためにあるのではなく、日々のあらゆるシーンでユーザーの体験をサポートします。AirPods ProはQOLを向上させ、今までのライフスタイルを拡張するでしょう。

ノイキャンは音楽以外にも使い先があるものですが、AirPods Proはユーザーの生活のデザインがそもそもの視野内にあります。AirPods Proがあれば、ワイヤレスに音楽が聞ける以上の体験がある。本体の小ささだって、いかにも常備してくださいって感じじゃないですか。美しくデザインされた製品は、生活もデザインする。その典型ともいえる製品だと思います。…まぁ、そのデザイン思想において、音質のプライオリティはそれほどなんでしょうけど、ワイヤレスイヤホンなるガジェットにおいてはそれもアリな気もしますし。そこが、あぁ、悔しい。

悔しいといえば、なんでカナル型になっちゃったんでしょうね。僕、AirPodsはインナーイヤー型だから好きなとこもあったんです。カナル型と違って位置調整も考えなくて良いし、着けやすいし脱ぎやすい。ほどほどに外の音も聞こえて安心感がある。それがカナル型になっちゃったもんだから、ライバルも一気に増えましたよ。Huawei(ファーウェイ)の「Free Buds 3」はインナーイヤー型でノイキャンを実現したし、別にカナル型にしなくても良かったと思うけどなぁ。音質的にはカナル型のがそりゃ良いけど、音質はセーブしておいてカナル型にはするんすね〜って思わなくなくもないよ。

あなたが求めるワイヤレスの推し要素は?

予算3万円でワイヤレスイヤホンを探すなら、かなり贅沢で間違いのない選択肢があります。その中でも、音質優先でいくのか、バッテリーを選ぶのか、デザインか、あるいはノイキャンの性能で選ぶのか。ワイヤレスイヤホンは、そうした物件探しにも似た推しスペックの自問自答が必要になってくるものです。ここまでの予算になると特に。

AirPods Proは、多くの人にとって満足ゆく音質であることは保証します。同額のイヤホンでもっと音質の良い機種はありますが、その違いがわかるかどうかはまた別の話しですし、些末な聞こえ方の違いに同額出すなら、強力なノイキャンやコンパクトさ、iOSとの連携性を重視するという判断は、まったくもって間違いじゃありません。えぇ、トータルで見るとってやつ(何がトータルだイヤホンだもの音質でしょうが! え、ワイヤレスの音質にはこだわってない? そんなー)です。

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Photo: ヤマダユウス型

劇的な表現をするなら、生活を一変させるイヤホンとも言っちゃっても良いと思います。実際使っててもめっちゃ便利でしたし(ほら、便利って表現だもの)。静寂と現実の境界を手に入れたなら、どこでだって一人になれるし、いつだって世界と一体になれます。イヤホンを外さなくて良い。それだけのことでこんなにも普段のタスクがスムーズになり、ストレスフリーになるのかと驚くはずです。

そもそものそもそも論、ワイヤレスイヤホンに3万円出せる人がどれくらいいるのかはわかりませんけどね。そういう意味でも、インナーイヤー型AirPodsは優しかった。でも、AirPods Proがもたらしてくれる驚くべき体験は、音楽を聞く以上にあなたに根付いたものになるはずと思いますよ。イヤホンで生活が変わるなんて、想像できますか?

まとめ

・Appleの作ったノイキャン機能付き完全ワイヤレスイヤホン

・音質は普通だけど、ノイキャンが強力で、外音取り込みモードが驚くほどナチュラル

・耳に届く音をコントロールする能力は、ライフスタイルを変えるほど

・3万円クラスでライバルが多いなか、総合力の高さがとても魅力的

Source: Apple

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