ブラックマンデーにアマゾン砲。量子コンピュータがクラウドBraketにど~ん

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • satomi
ブラックマンデーにアマゾン砲。量子コンピュータがクラウドBraketにど~ん
IonQラボで黙々と働くKai Hudek博士 Image: Erin Scott via Gizmodo US

もうエイプリルフールじゃないからね!…と、Amazonが量子コンピュータにだれでも好きなときに好きなだけ触れるクラウドサービス「Braket」を月曜、ベガスのAWS re:Invent 2019で発表しました。

アクセス開放ではIBMが先行していますが、11月にIgnite 2019でMicrosoftが発表した量子クラウドサービス「Azure Quantum」みたいに、Amazonも複数のスタートアップの技術が使えるのが特徴です。Amazonで触れるのは、IonQ(イオンQ)、Rigetti(リゲッティ)、D-Wave(Dウェーブ)の量子コンピュータで、IonQはMSと掛け持ちに。

新規参入についてAmazon Web Services量子コンピューティング部門ディレクターのSimone SeveriniさんはGizmodoに声明で次のように語っています。

「現段階の量子コンピューターにアクセスを開放することは応用の第一歩なので、Amazon Braketでは、お客様から関心の高い将来性のある技術の開発元であるD-Waveなどとコラボする道を選んだ」

「量子コンピュータの真価を長期に渡って引き出していく共通のゴールのもと、ともに力を合わせて、研究者がもっとイノベートしやすい環境を整備していきたい」

量子コンピュータって何?

量子コンピューティングは決定論ではなく確率論がベースの処理で、1980年代にリチャード・ファインマン博士が提唱した理論をもとに、Google、IBM、Microsoftなどの大手とIonQ、Rigettiなどの新会社が実用化を進めている新分野。日本でもQunaSysが出資を確保したり大小さまざま盛り上がってますけど、Amazonも言っているように、たかだか10年前まではエイプリルフールネタぐらいに思われていたものです。

周囲のノイズに敏感で、管理がものすごく大変。それに既存のコンピュータを全方位的に凌駕する万能選手ってわけでもないんですが、大きな数字、分子の動きとかの細かいもの、最適化では超えるんじゃ…と期待されており、金融、エネルギー、製薬などのセクターの企業をはじめ、政府からもサイバーセキュリティ、核兵器の応用に大きな関心が寄せられています。

「Braket」って?

物理学者が量子データの表記に使う「ブラケット記法」からきたネーミング。まあ、いくらアクセスできても、使いこなせなきゃ意味ないわけですけど、Amazonのプレスリリース日本語)によると、Braketプログラムでは量子デバイスとシミュレーションの両方で「量子コンピュータのアルゴリズムを開発、テスト、動かせる」のだそう。SDK、チュートリアル、学習環境もあって、利用者はビルドインのアルゴリズムと新規アルゴリズムを試運転でき、量子プログラムの処理はすべて自動とのことです。

デバイスは3社3様

気になるマシンは各社各様です。IonQの量子コンピュータはイオントラップ型日本語図解)で、レーザーで閉じ込めた原子1個1個がそのまま、量子データのユニットになります。 今ある量子デバイスの中では一番、ノイズがない(フィデリティが高い)ものとされます(比較表)。

Rigettiの超電導量子コンピュータは、超電導ワイヤで生成した人工原子がキュービット。

NASAやロッキード・マーティンが巨額出資しているD-Wave公式日本語サイト)は、同じく超電導から生成したものですが、原理的に異なる量子アニーリングを採用しています。ほかの量子コンピュータが扱う問題のサブセットのみ実行し、最適化を得意とする技術ですね。

クラウドで量子コンピュータが使える他社サービス

だれでも使える量子コンピュータといえば、IBMのQiskitが有名で、幅広い超電導量子ビットマシンに触れます。Googleも量子超越性を旗印にCirqプラットフォームで公開する予定。MicrosoftもAzureプラットフォームで上述のIonQのシステムを提供しながら、独自の量子コンピュータの開発を進めています。

Amazonは今回初めて名乗りを上げた部分が他社との違いです。Wiredの報道によれば、カリフォルニア工科大学(CalTech)に量子研究所も開くそうなので、もしかしたらそこから独自開発の量子コンピュータが生まれる日がくる…のかも。

エイプリルフールネタにしかならなかった10年前を思うと、よくもまあ、ここまで…と地味な研究の成果に頭が下がります。量子が勝てるように組んだ演算でしかまだ勝てない黎明期で、量子のキラーアプリが生まれるのは何(十)年先かもわからない状態ですけど、このNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Technology:ノイズだらけで拡張性もいまいちな量子技術)時代をブレイクスルーできたら、いろいろ面白いことになりそうですね!

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