まるで楽曲がリマスターされたように響く高音質。
Bowers&Wilkinsのヘッドフォンのなかでも象徴的な一品と言っても過言ではありません。目を引くクロームと革のデザインが、「これはオシャレなものですよ」と米Gizmodoのエステス記者に囁きかけてきた、と話しています。
どうしてなのか理解に苦しみますが、Bowers&Wilkinsは最近、素晴らしいデザインを捨て、カーボンファイバーと織物という予想外の組み合わせに転換してしまいました。それでも新しいヘッドホンはユニークで素晴らしいものとなっています。
Bowers&WilkinsのPXワイヤレス製品のラインアップに採用されたカーボンファイバー製ヘッドバンドは、目を引くとはいえ、ヘッドホンとしては違和感を感じてしまいます。音はとても素晴らしいもので、彼らがこれまでに作ったなかで最高のアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載しています。頭に乗せた付け心地もよく、使用感も上々です。
Bowers & Wilkins PX5 and PX7

これは何?:ノイズキャンセリング機能を搭載した高級感のあるワイヤレス・ヘッドホン
価格:300ドル(約3万2,700円)~400ドル(約4万3,600円)
好きなところ:見事な音質。滑らかな自動一時停止機能
好きじゃないところ:Bowers&Wilkinsの革とクローム仕上げだった時代を懐かしく感じてしまう
新型PX5とPX7
新しいBowers&WilkinsのPXシリーズには、400ドルのオーバーイヤー型PX7と300ドルのオンイヤー型PX5があります(そのほか、ネックバンド型で300ドルのノイズキャンセリングのイヤフォンPI4と、200ドルのPI3も発売しました)。
前述したように、PXシリーズはそれまでの革とクロームのP5とP7ヘッドフォンに取って代わるもになりました。しかし高級感を楽しみたいという人のために、Bowers&Wilkinsはいまだに古い、番号なしの「PX」ヘッドフォンも400ドルで販売しています。数年前にPXヘッドフォンをレビューしましたときとても気に入ったのですが、今回PX7とPX5を数週間使ってみたところ、以前のモデルを選ぼうという気は消え失せました。
新しいPX7とPX5は、私がこれまで装着した中で最高のヘッドフォンです。私は、カーボンファイバー製ヘッドバンドの装着感と軽さから、オーバーイヤー型のPX7のデザインが気に入っています。前機種のP5と同様に、新しいオンイヤー型PX5も特筆すべき快適さで、頭を強く締め付けたり、ズリ落ちることもありません。これは、今年発売されたノイキャン付き「Beats Solo Pro」のガチンコ対決するレベルだと思います。

スムーズな自動一時停止機能
どちらのヘッドフォンも、スムーズな自動一時停止機能を備えています。ヘッドフォンを外したり、片方のイヤーカップを持ち上げたりすると音声が一時停止。再び装着するとまた再生が始まるのです。これは高級ヘッドフォンだけに搭載されている新機能ではありません。Jabra Elite 85hにも似たような機能がありますが、Bowers&Wilkinsのヘッドフォンのほうがこなれているなと感じました。とはいえ、それ以外にはPXシリーズの操作に関して特別なことは何もありません。
Bowers&Wilkinsが出した以前のモデルのように、右耳カップには音量、再生/一時停止、電源といった物理ボタンがあります。そして左耳カップにはノイキャンのトグルスイッチが付いています。全体的に、新しいSennheiser Momentum Wirelessと似ていますが、それが何か問題になっているということはありません。
音質がとにかく素晴らしい
PX7とPX5の違いは音質です。最高です。パンチの効いた低音、クリアな中間音、明るい高音と、これらのヘッドフォンはすべてをキチンとこなしているように感じます。その忠実度は驚異的で、それはおそらくQualcomm社製のaptX HD Bluetooth (24ビット高解像度オーディオの伝送を可能にするコーデック)のサポートのおかげだと考えられます。
新しいPXとPIシリーズは、市場で初めてaptX Adaptiveをサポートするヘッドフォンでもあり、aptX HDとaptXローレイテンシーを組み合わせることで、映画鑑賞やゲーム中の音の遅れをかなり解消しています。言い換えれば、Bowers&Wilkinsは他社がまだ使っていない技術を用いて、クラス最高のBluetooth体験を提供しようとしているのです。

知っている曲が驚くほどよく聴こえる
それにより、私は音楽を聴く機会が増えたことに気付きました。なぜならPX7の音質がよいからです。
アラニス・モリセットの『You Oughta Know』は、 Bowers&Wilkinsのドライバーを通すと記憶にある曲よりよい歌に聴こえます。ダフト・パンクの『Get Lucky』のベースラインは超絶に明確で、ナイル・ロジャースのギターリフと比べて際立っています。一方で、アリアナ・グランデの『thank u, next』は、より鮮やかに響き渡ります。
これらの曲は、PXシリーズのヘッドホンを通すことにより、リマスターされたバージョンになったかのようです。
アクティヴ・ノイズキャンセリング
同じくして、Bowers&Wilkinsの新型に搭載されたアクティヴ・ノイズキャンセリングにも感心しています。技術者たちがこの機能に力を入れたのは明らかであり、古いPXヘッドフォンのノイキャン機能よりも、劇的に改善されています。
かつてのノイキャンはヒドいものでした。ですが、新型PXヘッドフォンはソニーやBose並みの強力なノイズキャンセリングを提供しています。Bowers&Wilkinsのヘッドフォンは、ノイキャンの大御所たちにはまだ及ばないものの、肩を並べるくらいのレベルに到達していると言ってもいいでしょう。

やはり旧型の渋さが忘れられない
私のPX7とPX5に対する不満点は、音質とはほとんど関係ありません。音質がすばらしいということは、これまで語った通りです。特にノイキャンが印象的です。
私の不満は、このデザインがBowers&Wilkinsが作った旧型の革とクロームのヘッドフォンと同じように、ずっと使い続けられるかどうかがわからないところ。私としては、古いP7のほうが使い続けるほど見栄えがよくなっていったと思うのです。Bowers&Wilkinsが素材として布とカーボンファイバーを選んだ今、使い込んだことによる渋さのようなものが出てくるのでしょうか? また新型PXヘッドフォンも、旧型同様に折りたたみ式だったらよかったのですが、実際には折りたためるようにはなっていません。
以前より高価になった
不満はそれだけではありません。金額にももの申したい。オンイヤーのPX5が300ドル、オーバーイヤーのPX7が400ドルと、いずれも高価なヘッドフォンとなっています。
かつてのBowers&Wilkinsは、低価格でより多くの価値を提供していました。ですがPX7は、Sennheiser Momentum Wirelessと同じ価格で発売されているんです。とはいえ、Bowers&Wilkinsの最高級ヘッドフォンは、どれに関してもMomentumsと同じくらいよい音がすると思います。ベースのレスポンスは、前者の方が好きかもしれません。

これが私の勝手な願望ですが、Bowers&Wilkinsが以前デザインの新製品を作ってくれないかなと思っています。機能と音質はそのまま、あのデザインを踏襲してくれれば。私が懐古主義なのかもしれませんが。結局のところ、カーボンファイバーは未来的なものであること。それがすべてです。革とクローム仕上げなら常にクラシック感が漂います。
まとめ
・音が素晴らしい。
・ノイズキャンセリングが実に見事。
・デザインが魅力的。
・前モデルのように渋く熟成するかどうかが心配。
Source: Bowers & Wilkins (1, 2), WHAT HI-FI?