WiFiで人を検知するルーターが実用化されたぞ。
2013年MITのリサーチャーは、高速インターネットで家の隅々まで届くWiFi信号を利用し、ペットや人の動きを、壁を通り抜けても検出する方法を披露しました。そしてそれから6年後。Linksysは、トライバンド対応メッシュルーターに同様の機能を導入。この技術はまだまだ超初期フェーズではありますが、今後数年でスマートホームがどのくらい進化できるのか、非常に可能性を感じるプロダクトです。
米Gizmodoによる、使用レビューをお届けします。

これはなに?:自宅で、ワイヤレス信号を人感センサーとして利用できるメッシュWiFiシステム。
価格:1つで230ドル(国内では約2万2200円)、2つで350ドル(国内では約3万6000円)、3つで530ドル(国内では約5万2000円)。人感センサー機能は、月額3ドル or 年額25ドルのサブスク(日本国内では月額300円 or 年額2,700円)
好きなところ:クレバーなWiFiテクノロジーの代替使用を示してくれます。
好きじゃないところ:アクセスポイントの範囲が限られているため、配置が難しい場合があります。
新機能である「Linksys Aware」は、ファームウェアとスマートフォンアプリのアップデートを通じて、同社のVelopトライバンドAC2200ルーターで段階的に提供されています。私は3つのノードを含む同社のVelop AC6600メッシュWiFiシステムで実際に使ってみました。
質素なデザイン

ハードウェアのデザインとして、Linksys Velop製品のデザインはそれ以上でもそれ以下でもない、特筆すべき感想が無いというか、質素なデザイン。でもそれは良いことだと思います。それぞれが「僕のことは気にしないでください、邪魔しませんので」と言っているかのごとく、足元にそびえ立つ真っ白なオベリスクのようです。メッシュWiFiシステムの最大のメリットのひとつは、家中に広範なWiFiを張り巡らせるために、アンテナがあらゆる方向から突き出ているようなダサい特大ルーターを使う必要が無いことです。複数の小さなノードがすべて連携して動作し、信頼性の高いWiFiがすべてのデバイスに届きます。
インジケータもミニマル
各ノードの状況を示す上部のLEDですらミニマルです。色と点滅パターンの意味を理解するために時間がかかりますが、わかるようになると、一目でトラブル状況がわかるようになります。底の裏には、電源、リセットボタン、物理電源ボタン、2つのギガビットイーサネットポートがあります。Google Nest WiFiのようなメッシュWiFiソリューションとは違い、Linksys Velopは3個セットでも全部同じハードウェアであるため、どこに配置しても変わらずセットアッププロセスが簡単です。
ルータ間の距離に制限があってセットアップがちょっと大変だった
2つの5GHz帯域と単一の2.4GHz帯域を備えたトライバンドシステムですが、Linksys Velopシステムには、ノード間の通信を処理する専用のワイヤレスバックホールチャンネルがありません。ネットワークトラフィックに基づき、3つの帯域から自動的に選択します。また、イーサネットケーブルを使用して専用のバックホールチャンネルをつくることもできます。

ほとんどのメッシュWiFiシステムは、モバイルアプリからセットアップおよび構成できますが、Linksyも同様、アプリでセットアップのプロセスを比較的簡単に行なうことができます。(ただしプログレスバーを5〜6分見つめるタイミングがあります)
家族用にLinksys Velopシステムをセットアップした時のことですが、それぞれのノードの配置位置の距離が限られていることに、イラッとしました。
ひとつノードを家族の部屋のケーブルモデムに接続した後、リビングルームから約40フィート(約12.2メートル)離れた、視界を遮るものがないはずの位置にノードを置こうとしました。しかしアプリは、2つのノード間の信号がその距離は良くないと示し、近づけろと提案してきます。すべてのノードが適切に接続されていることをテストするために、何度も試行錯誤する必要があったため、かなりの労力を要しました。最終的には、自宅に3つのノード(メインフロアに2つ、2階に1つ)を設置して、家全体の地下を含む、最強のWiFiネットワークを構築することができました。
設定等はすべてアプリから

スピードテスト、ゲストネットワークのセットアップ、ペアレンタルコントロール、すべてのデバイスのトラブル状況の確認など、一般的な人が求めるほぼ全ての機能を、アプリで確認することができます。
また、例えば4Kストリームを処理するのための十分な帯域幅の確保や、コンソールでのオンラインゲームの速度低下を最小限に抑えるためにデバイスを優先するオプションもあります。
Linksys Awareで初歩的な動体検知が可能
そして本題である「Linksys Aware」。ノードが相互に絶えず放射電波を送受信しているという状態を利用し(この機能を使うには最低2つのノードが必要)、ネットワーク内を移動する物体によって部分的かつ断続的に遮られるため、それらの電波の強度の変化を検出することができます。
これは実に巧妙なトリックで、Linksysモバイルアプリでは、シンプルなスクロールグラフでリアルタイムに動体検知するワイヤレスネットワークの様子を実際に確認することができます。一番高いピークは私が歩き回っているときで、短いピークは完全に静止しようとした時を示しています。私の微妙な動きまで認識され、私が家から出ると、グラフはほぼフラットになりました。

ただし、この機能に多くの注意点があります。動体検知された時に通知をオンにすることもできますが、誰も家にいない(と思われる)場合にのみ、通知することも可能です。
また、Linksys Awareの感度の設定も細かく調整する必要があり、ねずみのような小さな物体、また人間のような大きな物体の動きを検知しアラートを受け取ることができます。そして現時点では、家の中のどこで動体検知がされたのか、どのフロアなのか、さらにどのノードで検知されたのかを確認することはできません。また電波は壁を通過するため、ワイヤレスネットワークが届く限り、壁の向こうの他人の動きも検知することができてしまいます。
セキュリティとネットワークパフォーマンスの両方を今後劇的に向上させうる技術
このテクノロジーはとても魅力的だし、MITの研究成果発表から製品化するのに6年しかかからなったことからも、Linksys Awareには、スマートホームの未来を劇的に変える可能性を秘めています。モーションセンサーを取り除いて、セキュリティを向上させ、家の中の人の監視の精度を上げ、ネットワークのパフォーマンスも向上させることもできるでしょう。これからWiFiメッシュシステムの導入を検討しているのであれば、LinksysのVelop ハードウェアをおすすめします。ソフトウェア・アップデートでどんどん機能が強化されていくのは間違いありません。
では、今すぐLinksysに切り替えべきかというと、そうとは思いません。動体検知の機能は、現段階ではまだまだ初歩的。比べて、今あるホームセキュリティシステムは(複雑なインストールなどしないといけませんが)、自宅でどんな動きが検出されたか場所まで教えてくれます。 また、Linksys Awareのアップグレードの対象となるLinksys Velopをすでに持っていたとしても、今の段階で月額3ドルまたは年間25ドルのサブスクリプションの価値があるとも思えません。しかしながら、私はこのテクノロジーがどのように発展し進化するかを、見守り続けたいと思います。なぜなら、ゲームチェンジャーになる可能性があると思っているからです。
まとめ
・Google Nest Wifiなどのプロダクトと比較すると高価格ですが、各ノードにギガビットイーサネットポートが含まれる、堅牢なメッシュネットワーキングのソリューションです。
・追加のハードウェアを導入する必要もなく、僅かな動きも含めてワイヤレスネットワークを利用して動体検知をできるというのは、WiFiテクノロジーの魅力的な使い方で、スマートホーム市場のゲームチェンジャーとなり得る可能性があります。しかしこのテクノロジーは、現段階では、限定的にしか活用できておらず、必要性が高いかと言われるとそうではありません。
・専用のバックホールチャンネルの代わりに、Linksys Velopシステムは、最高のパフォーマンスを得るための、3つの帯域を自動的に選択します。
・Linksys Awareの機能を利用するためには、月額3ドル、または年額25ドルのサブスクリプションが必要で、現時点では高価だと思います(編注:Linksysのアプリ内から契約します)。
・モバイルアプリのセットアップは簡単ですが、ノードの配置には試行錯誤が必要です。